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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
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真・勇者会議

 そんな訳で勇者会議の時間ですぞ。


「では行ってきますぞ」

「随分と浴場の方が賑やかでしたな」


 仙人が微笑みながら尋ねてきましたな。


「ですな。俺は覗きを宣言してお姉さん達との攻防を経験しましたぞ」

「随分と楽しげなやり取りがあった様ですじゃ。そう言えば槍の勇者様が正座させられておりましたな。足は大丈夫でしたかの?」

「大丈夫ですぞ。男としての役目を俺はしただけですぞ。叱られるのもセットですな」

「槍の勇者様は自由にのびのびとしたお方なのですじゃ」

「ユキの魅力は上がりましたか? 元康様!」

「バッチシですぞ。ですが背中を見せるだけが魅力ではないのですぞ」

「では足ですわね」


 うーむ……やはり俺の知るユキちゃんとは育った環境が異なるからか仰る事に違いがありますな。


「コウ見なかったんだよ」

「ほっほっほ」

「では勇者同士の会議に行ってきますぞ。世界をより良くする為の話し合いですな」

「いってらっしゃいですわ」


 と言う訳でユキちゃんと仙人達に見送られて俺は影豚の案内でホテルにある会議室へと案内されましたぞ。


「悪いですな! 遅れましたぞー」


 会議室に行くとお義父さん達が既に待機しており、今か今かと待っておりました。

 円形の机を囲うように腰かけますぞ。


「ブブブ……ブブヒ、ブブブブ」


 何やら影豚が司会進行として仰っていますな。

 因みに最初の世界よりも少しだけ時間が掛っているので島のボスが出現するようになってからの会議ですな。

 後はそうですな。

 最初の世界で願掛けのイベントアイテムであるアクセサリーを俺達は装備しておりませんぞ。


「さて、会議になる訳だが……錬と樹、お前達は事前に何か言いたい事はあるか?」


 おや? 俺が喋る機会は無いのですかな?

 いえ、お義父さんは思慮の深い方ですぞ。

 きっと錬や樹に探りを入れるつもりなのでしょう。


「フ……」

「それを話すのが今回の目的でしょう?」

「そうか……で、お前らがなんで覗きで罰せられなかったんだ?」

「下らない事をしなかっただけだ」

「不要な事ですからね」

「そうか……奇遇だな。出来れば平常のお前らがそう返したらよかったんだがな」

「ちなみに最初の世界では付き合いが良かったですぞ」

「……」


 お義父さんがじっと俺を見つめております。

 そんなに見つめると照れますぞ。


「ブブヒ! ブブー」


 影豚が何やら仰っていますな。

 おそらくそれぞれの仲間に関する感想ですな。


「仲間の感想ねー……錬、お前はもう少し、仲間は一般の連中なんだから引き入れるとかせずに表の戦い路線で行けば良いと思うぞ? 裏の顔はブラックサンダーとやってくれ」

「そうか……フ、善処しよう」


 お義父さんは錬の扱いが上手になってきましたな!


「フッ……俺の感想だがラフタリアと言う<幻影戦士>にはもう少し印象を消し、隙あらば敵を屠る戦い方を意識させた方が良い。幻影剣は実に光るモノがある。サディナは……獣人でなければ完璧だ。フィーロは……戦いに置かず表の世界で平和に過ごさせるんだな」

「……」


 お義父さんが煤けた空気を纏って錬が感じたお姉さんへの感想を聞いております。


「お姉さんのお姉さん……サディナお姉さんは亜人姿もありますぞ。美人の方ですな」


 普段は獣人姿でおふざけをしているので錬は知らなかったのでしょうな。


「そうか……ではそちらの姿を普段の姿にさせる方が良い。決め技を使う時だけ変身させろ」

「なんでそこまで指導が入るのかは理解し難いが……はぁ……こっちも注意した手前、サディナに助言はしておく。守るかは別だがな」

「フ……良いだろう」


 錬の演技指導ですぞ。

 大変ですな。


「で、樹に関しては……樹に言っても解決はしないだろうな」

「僕に何か問題がありますか?」

「いいや……フレオンって奴と気が合うんだろうが他の奴の声にも耳を傾けるのが良いってだけだ」

「はぁ……参考程度に聞いておきます」


 樹は淡々とお義父さんの助言にピンとこないと言った様子で頷きました。

 以前のループを思えば、話を聞くだけマシですぞ。


「僕からの意見は……概ね錬さんと似た様子でしょうか。ラフタリアさんは目立たない様に動く才能を持っていると思うので、そこを伸ばすのが良いでしょうね。サディナさんはあの呑気でありながら実は力を隠しもっている所が良いですね」

「フィーロは?」

「メルティさんとペアを組んで活動させると正義として光りそうだと思っています」


 などという樹の言葉にお義父さんが溜め息交じりの反応をしています。

 何か思う事でもある様ですな。


「確かにあの二人は仲が良いが……一応一国の王女な訳だしな……いや、そういうヒロインはその手の界隈にはいるか。そういう意味では王道なのか?」


 とまあ、お義父さんも一定の理解を示しているご様子ですぞ。

 この辺りはお義父さんも地球の記憶があるという事でしょう。


「後は元康な訳だが、俺はほとんど関わってないから錬と樹、お前らの感想は?」

「フ……漆黒の爪牙はお前の紹介だと奴が言っていたな。感謝する」

「大事な空飛ぶフィロリアルであるフレオンさんを紹介してくれてありがとうございます。彼女のお陰で僕は身内の悪を裁く事が出来ました」

「……ユキとか名乗る奴は視界に入って無いのな。後はみんな各々方針を話し合うんだろうが……お前等自身の変化の所為で参考にならんだろうな」


 お義父さんがため息を吐きながらテーブルに両肘を付けて俺を見ますぞ。


「影とかも多少は話を耳にしていると思うが、どうやら元康は未来の記憶が来てこうなってしまったらしい。それで色々と暗躍して俺達に力と言うか、いろんな情報を教えてくれているそうだ。ブラックサンダーとフレオンとかな」

「ブブ、ブブブ……ブヒ」


 影豚がコクリと頷いてお義父さんに返事をしました。


「まあ、未来の知識があっても異なる出来事もあるから完全ではない様だな。自業自得で死んだ王女みたいに」


 ここでお義父さんが赤豚の末路を強調しました。

 俺が行った事ですが……お義父さんは余計な事を言うなとばかりに俺を見ているので黙っていましょう。


「ブ……ブブ」

「ああ、女王からの話でもしも次があったら愚かな娘が自滅するのを避けて自身の罪に向き合わせろとね」

「それは無理な話ですぞ。前にも生き残った時がありましたが反省など全くしませんでしたからな。しかも奴の正体は波を起こしている元凶の駒ですぞ」


 ちなみにお義父さんは豚の言葉が分からない事を理解してくださいましたぞ。


「ブヒ!?」


 影豚がここで驚きの声をあげました。


「闇の勢力に属した王女が勇者達の不和を招こうとしていた……なるほど」

「怪しい方でしたから当然の報いだったのですね。あの王女もまた正義の中に混じった悪だったのでしょう」


 錬と樹はアッサリと受け入れました。


「ブブブヒ! ブブブ!」


 おそらく詳細を尋ねていますな。


「元康、ザックリと程度で良いから噛み砕いて説明しろ」

「そうですなー……なんでも波を起こしている元凶である神を騙った女神が自らの魂の一部を転生させて、この世界に送った者が赤豚の様な豚らしいですぞ」

「赤豚って言うのはビッチの事だな。それは察しろ。信じていたけどどこかの未来で酷い目に遭わされたんだそうだ」

「ブ、ブウ……」


 お義父さんが影豚に詰問気味に言いますぞ。

 確かに赤豚を擁護など全く出来ませんからな。

 出来ない事は出来ないのですぞ。

 俺が赤豚に出来るのは出来る限り利用した挙句、惨たらしく殺す事だけですぞ。

 利用していると思ったら逆に利用されていたって奴ですな。

 甘い汁を吸う豚は屠殺して出荷するのが正しい処理方法なのですぞ。

 豚王への出荷と毒物で苦しめて殺すのだったらどっちが満足出来ますかな?

 フレオンちゃんを殺した罪は一度死んだ程度では償えないのですぞ。


「元康も慈悲と言うか猶予は用意したがアイツは元康の知らないどこから持ち出したか秘蔵の毒物で自爆した……それはわかっている事だろ? で、別の未来から来た奴から救いが無いと言っているのだから出来ないんだろうさ」


 お義父さんなりの誤魔化しの入った女王の提案への返答ですぞ。

 確かに行動は俺に一存するので赤豚の生存など不可能ですな。

 女王は何だかんだクズと同じく家族想いですからな。長所ではありますが赤豚相手には不必要な事なのですぞ。

 現に女王はその慈悲の所為で死んだのでしたからな。


「話を戻すぞ。錬と樹、お前等はそれぞれ知っているゲームの世界だと言っていたが、今はどう思っているんだ?」


 お義父さんの質問に錬は変わらず不敵な笑みを浮かべていますぞ。


「漆黒の爪牙の導きの下、闇を知った俺も察する事が出来た。ブレイブスターオンラインに似ている要素を内包した別の理<アカシックルール>で動いている世界、だとな」

「……ブラックサンダーに捕まって色々とボッコボコにされて知ったとかそんな所か。元康が相当強化したって話だしな」


 錬を生け捕りに出来るくらいにはブラックサンダーを強化しましたからな。

 強くなる方法をブラックサンダーに教えるのはもちろん、分かりやすいように紙にも記しましたぞ。

 ノート風にしてブラックサンダーが発したよくわからない難しいルビの入った感じで色々と強化方法を書いて置いたのですぞ。


「僕はフレオンさんに正義の中に潜む悪から救い出されました……当初は信用できないと思っていましたが、仲間達の本音を聞く機会もあり、フレオンさんの強さから来る教えを信じた所で色々と理解しました」


 相変わらず樹は棒な発音で仰っていますぞ。


「洗脳音波は元より仲間の本音を聞いて考えを改めたと……どっちにしても元康からのメッセージはすんなり届いた様だな」


 俺でも驚きな位、二人とも強化方法を実践している様ですぞ。


「で、元康、お前の話じゃ四聖の強化以外に七星武器とやらの強化もあるんだったな。一部は既に使っているが改めて聞く……で良いんだな?」

「ですな。錬も樹も自身の強化も含まれると認識して下さっていますな?」


 俺の問いに錬はニヒルな笑みを浮かべ、樹は素直にコクリと頷きましたぞ。

 何事もすんなりですな。

 やはり錬と樹が意固地になっていたのは運命のフィロリアル様がいらっしゃらなかったからなのですぞ。


 おや? 記憶の中に居る最初の世界とフォーブレイに向かった世界の錬が違うと何度も首を横に振っている様な気がしますが……間違いは無いのですぞ!

 同様ですが樹は無表情でこちらを見つめていますぞ。

 錬と同じ反応をしているのはフォーブレイに向かった世界の樹ですな。

 キャラが被ってますぞ?


「意見は同じみたいだな……じゃあ元康の話を解読しながら武器の強化をするって事で行くぞ」

「了解ですぞー!」


 そんな訳でお義父さん達との勇者同士の会議は問題なく進んだのですぞ。

 最終的に纏めた強化一覧を記した物をお義父さんはご覧になり、複雑な仕組みで強化されているなと感想を漏らしておりました。

 ですが全部すればそれだけ強化が出来るのですぞ!


 とにかく、驚くほどすんなりと錬と樹にも強化方法を教える事が出来たのですぞ。

 あの頑固な錬と樹がですぞ!

 鉄は熱いうちに打たなければ意固地になる二人をこの様に説得できるのは大収穫なのですぞ。

 これからは途中のループに飛んだらフレオンちゃんとブラックサンダーにお願いするのですぞ!

 俺はそう決めました。




 数日後……カルミラ島での狩りを終わらせる予定日のちょっと前ですな。


「さて……非常に名残惜しいですが俺はちょっと用事で出かけてきますぞ。ユキちゃん、お願いした通りに他のフィロリアル様たちの育成を頼みますぞ。何かあったらお義父さんにお願いするのですぞ」

「元康様、本当にお出かけしてしまうのですか!? ユキは寂しいですわ!」


 ユキちゃんが名残惜しそうに俺の腕に絡みついてきますぞ。

 このユキちゃんは俺の知るユキちゃんの中でも特に甘えん坊さんですな。

 姿は大人に近いのに中身は幼いユキちゃんよりも寂しがり屋なのですぞ。


「お義父さんと言うのは尚文さんと言う方ですわね。元康様の親愛の情を受けて平然としている方なのですわ!」

「ユキちゃん。俺はお義父さんに途方も無い迷惑を掛けてしまったのですぞ。ですからこそ、償わねばいけないのですな。何より、お義父さんが居なかったら俺はユキちゃんとも出会う事等無かったのですぞ」


 そうですぞ。

 お義父さんがフィーロたんを育て、間違った俺を注意して下さり、落ち込んだ俺を励ましてくれたのです。

 それから俺の真の愛は始まったのですぞ。

 真の愛に目覚め無ければ俺はユキちゃん達と出会う事も無かったでしょう。

 全てはお義父さんとフィーロたんへの感謝なのですぞ。


「これは失礼しましたわ。ですが元康様、元康様は尚文さんをどのように思っていらっしゃるのですか?」

「何があっても尽くさねばならない方ですぞ。それほどの恩を俺は感じているのですぞ」


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[気になる点] 元康の用事とはいよいよ奴に制裁を与えるのかな? カルミラ島に行けない理由があるらしいのでそれも判明しそうですね。 [一言] 真・勇者会議は尚文以外おかしくなってるのに割とスムーズに話し…
[一言] 赤豚が生まれなければ、OLマルティが生まれるんですね、分かります。 生まれる前にBL本を捧げるのだ!!
[一言] 槍視点の登場人物の名前と顔がだいたい一致する。 毒されてるなぁ… 本編よりも長く本編よりも個人的には好きだし。
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