真・弓の勇者と仲間達
という訳で翌日ですぞ。
「ユキちゃん。今日は錬達との仲間交換ですぞ」
「あの黒い方々ですわね。ブラックサンダーと言うフィロリアルが居ましたわね……足の速さで勝負をしたらどうなるか興味がありますわ」
この周回のユキちゃんはレーサーですな。
フィロリアル様を見ると勝負をしたくてしょうがないのでしょう。
ちなみにフレオンちゃんに関しては、そう言った興味を持たない様ですぞ。
走るのではなく飛んでいるのが理由の様ですな。
「ねーねーコウはラフーの所に遊びに行きたい」
コウが成長して天使姿になって下さいましたぞ。
早速お姉さんに懐いていて遊びに行きたいと仰っております。
ですが今回は仲間交換が目的ですからな。
「ちょっと我慢してユキちゃんと共に錬と狩りをして来て欲しいのですぞ。その後は自由にしていて下さって良いですぞ」
「わかったー」
「元康様の命ずるままにやりますわ」
それからユキちゃん達を含め、フィロリアル様の雛の世話をしてくださっている仙人に声を掛けますぞ。
ピヨピヨとフィロリアル様たちが楽しげに鳴いております。
「槍の勇者様、大分孵化させましたがこれで良いのですじゃ?」
「良いですぞ。仲間交換が一区切り付いたらフィロリアル様達を一斉に育てますからな」
「ほっほっほ……と笑いたい所ですじゃがちょっと数が多くて不安ですじゃ。しっかりと世話しきれるかワシも自信が無いわい」
「ユキちゃん達を信じるのですぞ。さすればフィロリアル様は思いのままのびのびと育ってくれるのですぞ」
ついでにルナちゃんも育てておくのが無難ですかな?
きっとお義父さんが開拓を始めるとすぐに出会えるでしょう。
共に育てるのも良いですが、先に育てても罰は当たりませんぞ。
「槍の勇者様の手慣れた育成ですじゃ、既にフレオンとブラックサンダー……そしてユキとコウを見させて貰っているので間違いはないじゃろう」
と言う訳で仙人にはフィロリアル様達のお世話を任せて俺は出発しましたぞ。
そんな訳でユキちゃん達に後を任せて俺は錬の仲間が居る部屋へときました。
ノックをして錬の仲間とブラックサンダーの居る部屋へと入りますぞ。
「よくぞきた、愛の狩人<タイムドライブ>。我が相棒、闇の剣士<シャドウセイント>の代わりに闇が足りぬ者達を導くのだな」
ブラックサンダーが出迎えてくれました。
逆に錬の仲間達は俺を怪訝な目で見ております。
「槍の勇者様……どうかよろしくお願いします。ところで付かぬ事をお伺いしますが、このブラックサンダーをレン様に紹介したのは槍の勇者様だと小耳に挟んだのですが」
「そうですぞ」
「何と言う事を……」
と、なんか錬の仲間たちは俺への視線が険しくなった様な気がしましたが、どうでも良い事ですぞ。
「では早速狩りに行きますぞ。ブラックサンダーも分かっていますな?」
「うむ……我等とは異なる異聞、槍の勇者の闇聖勇者<ダークブレイブ>冒険記<クロニクル>を見せてくれるのだろう! さあ、この漆黒の爪牙に見せて貰おう!」
相変わらずブラックサンダーはテンションが高いですな。
そんな訳で俺達は狩りに出ましたぞ。
とは言いつつお姉さんを連れて狩りに出た時と同じく魔物を倒して錬の仲間の底上げをするのは変わりませんな。
「エイミングランサーⅩ! ブリューナクⅩ! グングニルⅩ! リベレイション・ファイアアイⅩ! リベレイション・ファイアストームⅩ! リベレイション・プロミネンスⅩ! ハハハ! 弱い! 弱過ぎるぞぉおお!」
「わ、わぁあああああああ!?」
「し、島が焼き滅ぼされる!?」
「ブラックサンダーは元より、フレオンと言うフィロリアルの戦いも化け物染みていたけれど、それの比じゃない!」
「レン様も弓の勇者様もおかしくなってしまわれている! た、盾の勇者さまー! この方を止めてー!」
と、何やら錬の仲間達が何故か助けを求めていますぞ。
「この程度の戦いで恐れ戦くとは……まだ先は長い様だな」
ブラックサンダーがそんな錬の仲間達を冷めた目で見ておりましたぞ。
「いいか? ここでお前達も戦いに加わり、言うのだ……闇の炎で滅するが良い……と、それが分からない限り、貴様たちは闇聖勇者<ダークブレイブ>冒険記<クロニクル>に名を記す事すら出来んぞ」
「何を言ってるか全然わからないです!」
「レン様を元に戻して下さい! あの不器用だけど、一生懸命なレン様を私達は大切にしていたんです!」
「あの……実は責任感があって俺達に無茶をさせないようにしていたレン様をあんな風にさせたのがどれだけ罪深いか! 絶対に許しません!」
何やら錬の仲間達が不満を述べていますぞ。
ですがそんな錬を信じて辿る末路は死ですから今の方が結果オーライではないのですかな?
「またその話か……闇の剣士<シャドウセイント>は己が闇と心を解放して今に至っているのだ。貴様等の慕っている剣の勇者とは闇の剣士<シャドウセイント>が無理をして被っていた抑圧する殻にすぎん……闇の剣士<シャドウセイント>を思うのならそんな生ぬるい優しさ等、さっさと光へ返すが良い」
ブラックサンダーが冷めた口調で錬の仲間たちへと注意していますぞ。
確かにこれは一理ありますな。
正直に言えば最初の世界やフォーブレイへ一緒に向かった錬は何か無茶をしている様な気がしましたからな。
この周回の錬はとても生き生きとして楽しそうですぞ。
これからの周回でブラックサンダーを必ず錬に紹介しますぞ。
おや? 最初の世界とフォーブレイへ向かった錬が首を横に振っている様な気がしますが、謙遜しているのでしょう。
何せお姉さんが迎えに来た周回の錬はブラックサンダーのもう一つの姿であるクロちゃんと楽しく遊んでいましたぞ。
「俺も心を鬼にして、我慢する錬がありのままで居られる様にしているのですぞ!」
「槍の勇者……あなたって人は!」
お? 錬の仲間たちが親の敵の様に俺を睨んでおりましたが、気にする必要等ないですな。
「絶対にレン様を元に戻してみせます……みんな、ここは耐える時です」
「おおー!」
と、何やら錬の仲間たちは結束が強まっているようでしたぞ。
ああ、もちろん島のぬし戦等の大事な戦いはこれまでの経験を総動員した実践的な戦いをしましたぞ。
俺だけ先行して蹂躙しては無意味ですからな。
お義父さんの真似をしたり、共に連携して戦ったりですぞ。
まあ錬の仲間たちがまだ弱過ぎて手伝った様なものでしたがな。
避けるのではなく攻撃を受け持つ大事さは既にお義父さんが教えていたので他の工夫を教えるのが大変でした。
ちなみにブラックサンダーは決め技を放った後のポーズを実戦的に行いつつ戦闘継続をする方法等を教えていましたぞ。
そんな訳で錬との仲間交換は問題なく終わりましたな。
ホテルに戻ると……おや? ロビーにお義父さん達と錬が待機しておりましたな。
「あ、槍の人ーうるわしゅー」
ヒィイイ! さっそくフィーロたんが居ますぞ!
「ご機嫌麗しゅうですぞ」
「うん!」
フィーロたんがワクワクする様な顔で俺を見つめていますぞ。
ここはお土産を渡して道を譲って貰いましょう。
早速俺はフィーロたんにカマボコを槍で作成して渡しましたぞ。
「何これー?」
「カマボコですな」
「あ、ごしゅじんさまが前に出した料理に入ってたのを覚えてるーありがとー」
そう言ってフィーロたんはカマボコを受け取って食べ始めましたぞ。
そうして俺はホテルのロビーでお姉さん達と話しているお義父さんの下へ行きました。
ブラックサンダーは錬と視線を交差させた後、無言で近づいて隣に立っておりますぞ。
「……元康か」
「盾の勇者様!」
俺がお義父さんに声を掛ける前に錬の仲間たちがお義父さんに縋りついてきますぞ。
「この方が島を焼け野原に!」
「ええ……気持ちは分かります。アレだけ壊滅的な打撃を与えても数日もすると平然と魔物が溢れるカルミラ島って凄い所ですよね」
お姉さんが何やら同情的な態度でお義父さんと錬の仲間たちの言葉に同意しておりました。
「あー……なんか聞いたな。島の中央から火柱が上がっていて一般冒険者共が危険を感じて避難したとか……犯人は元康だよな。元康が行く島には警報を出して貰うようにした方が良いかもな」
お義父さんがため息交じりに仰っておりますぞ。
何か問題があるのですかな?
「島の奥地はあまり人が来ないので好きに戦えますぞ?」
まあ、何だかんだ活性化地域に来る一般冒険者の強さ等、その程度と言う事なのでしょう。
今までの周回でそれが物語っております。
ちなみに最初の世界のお義父さんの分析曰く、勇者無しで島のボスを倒すのはLv的に割に合わないからだろうとの話ですぞ。
ドロップ等が無い冒険者では確かに割に合わないでしょうな。
なお、お姉さんのお姉さんやパンダクラスなら苦戦もせずに倒せる相手なのは間違いないですぞ。
お姉さんのお姉さんたちがこの世界でも有数の腕前と言う事ですがな。
他に変幻無双流の老婆もですぞ。
「そうなのかもしれないが念の為だ。とりあえずコレで一応一巡したって感じだな」
「お義父さんは樹とのPT交換だったのでしたな。何かありましたかな?」
俺と錬のパーティー交換は問題なく終わりましたぞ!
問題はお姉さんですな。
なんでも最初の世界では樹が手加減した所為で怒らせてしまったと言うのは覚えていますぞ。
「いいや? まあ、洗脳フィロリアルとも話をしたが特に問題がある行動は見受けられないな……テンションが暑苦しくて疲れる以外はな。それと今度俺に面倒を押し付けたら容赦しないと念を押して置いた位か。効果はあまりなさそうだからどうしたもんか」
お義父さんがお姉さんとお姉さんのお姉さんに自身が洗脳されてないか何度も確認している様ですぞ。
「ただ、空飛ぶフィロリアルってのに乗っても俺は性能を余り引き出せんな」
耐えるだけでは出来る事も少ないとお義父さんは自嘲しているご様子ですぞ。
「ナオフミちゃんは文字通り盾なのよ。攻撃される時に居ると助かるわー」
確かにお姉さんのお姉さんとお義父さんが組んだ場合の戦闘も似た動きですな。
海中戦闘だとお姉さんのお姉さんはフレオンちゃんに匹敵する機動性を持って格上の魔物でさえも容易く屠り、相手の技をお義父さんを盾にして掻い潜って致命傷を与えるでしょう。
「あーはいはい」
「私も剣で戦うスタイルですから、フレオンさんとの連携は難しいかもしれないですね」
「ヒット&アウェイ戦法ならどうにかなるだろうが、空を飛ぶ優位性を生かしきれないからな……後は着ぐるみを着せられているリーシアか。アイツも苦労人だな」
「リースカですな」
「そんな怪獣みたいなあだ名を付けられてるのか……俺よりマシか」
「何がですかな?」
お義父さんが何を言っているのかよくわかりませんな。
で、今度はお姉さんとばかりに見ますぞ。
するとお姉さんは脱力した様に答えますな。
「特に大きな問題は無かったのですが……剣の勇者様と余り変わりが無いかと」
おお、樹もお姉さんを怒らせるような事は無かったのですな。
「これも洗脳フィロリアルの所為なのかね……本来だったらどうなってんだ、元康」
「お姉さんがカンカンに怒る結果になりますぞ」
「なら良かったと思うほかないな」
「アレでですか? まあ……怒ると言うよりも疲れるが正しいですが」
ユキちゃんの感想と照らし合わせると称賛目的の手加減を樹はしなくなっているのでしょう。
間違いないですな。
「弓の人がね、フィーロはメルちゃんと一緒にマーブルブラストをすると良いって言ってたよー」
「そっち路線も知っているのか……まあ、フィーロとメルティなら二人は! って路線で行けるかもな……メルティがやるかは知らんが」
お義父さんが樹の知っている特撮モノへの理解を示していますぞ。
あ! 確か優しいお義父さんがサクラちゃんと婚約者がアイドルをする際にそう言った感じに歌って踊ると良いと仰っていましたぞ!
確かにアレは非常に似合っていました。
なるほど、樹もアイドルに関して深い理解を持っているのでしょう。
今度フィーロたんがアイドルになった際に誘って上げるのが良いでしょうな!
「イツキちゃん、お姉さんに善玉怪人って言ってたけどどういう意味かしら?」
「まあ……樹の路線だとサディナは怪人枠だろうよ。ラフタリアは……どう判断したら良いか分からないから適当に扱ったって感じだな」
お義父さんが良かったなと呟き、お姉さんが嬉しくないですと仰っておりましたぞ。
とにかく、こうして仲間交換が順調に終わった様ですな。




