怪獣リースカ
「一人一匹フィロリアルってか……まったく、俺はフィーロって事なんだろうが」
「フィーロたんは愛を司る至高の存在ですからな。お義父さんや婚約者、俺を含めたフィロリアル様ですぞ」
「よくわからん事を……確か婚約者はメルティだったか……となると俺にはサディナ同様居ないのか。それは良かった」
おや? 何故かお義父さんが安堵してますぞ。
間違いですぞ。
お義父さんは全てのフィロリアル様に好かれている方なのですぞ。
更にフィーロたんの愛も合わさって居るのですな。
『ラッフー』
おや? 俺の脳内でお義父さんが創造したお姉さんの毛髪を元に作った生き物であるラー……ああ、ラフ種が転がって自己主張しております。
フィロリアル様とも仲の良い方々でしたな。
お義父さんともとても仲が良かったのが印象的ですぞ。
しかもコウはラフ種のお嫁さんをもらっていたので尚の事ですな。
『ラーフー』
ポンッと脳内に居るラフ種は煙の様に姿を消してしまいました。
お姉さんみたいに神出鬼没なのですぞ。
ともかく、俺はフィロリアル様達の育成をしながら島での日程の三日目……樹との仲間交換をする事になったのですぞ。
「今日は樹が来るはずですぞ。樹は誤魔化したり手加減したり自慢をするかもしれませんがしつこく質問してはいけませんぞ」
「わかりましたわ」
ユキちゃんも最初は馴れておりませんでしたが徐々に孵化したフィロリアル様達のお世話が出来るようになってきておりますな。
少々自身にはストイックな所はありますが、俺の知るユキちゃんの様に気が利いてリーダーシップを発揮しつつありますぞ。
コウはお姉さんに預けたので既に俺の仲間枠からは外れてお義父さんのパーティー所属ですぞ。
お姉さんに撫でられて楽しそうでしたな。
フィーロたんはお義父さんにべったりでしたので嫉妬は……大丈夫の様ですぞ。
という訳で俺は一路、樹の部屋へと向かいました。
トントンと部屋をノックですな。
「はーい」
と、出てきたのはフレオンちゃんですぞ。
「あ、もとやすさん、今日から明日まで親睦を深めると言う話でしたね!」
「ぶぇええ……」
「そうですぞ」
ストーカー豚も室内で……何故かリスーカの着ぐるみを着てますぞ。
そういえば最初の世界でも着ていましたな。
後から仲間にハブられていた影響で着ていたとかなんとか。
この世界では燻製達は既に居ないのですが、何故ですかな?
「アレはどうしたのですかな?」
「ああ、そろそろリーシアさんにも衣装の着用を、といつきさんと話をしていたらあの衣装が良いと言いまして、着ているのです。確かにああ言うポジションの方が居ても良いと私の正義がビビッと感じてはいるのですが、もとやすさんはどうでしょうか?」
「よくわかりませんな」
なんでストーカー豚はあの衣装を着ているのでしょうか?
「ぶぇ!? ぶえぶえぶえ」
「フレオンちゃん、こやつは何を言っているのですかな?」
「え? 元康さん、わからないのですか? リーシアさんはもとやすさんに『ふえぇ!? い、イツキ様を元に戻して下さい』と言ってますよ」
はて……元に戻すとストーカー豚はこの島辺りで戦力外と捨てられてしまいますぞ?
何が目的なのですかな?
「そもそも元康さん、リーシアさんの言葉がわからないのですか?」
「ですぞ。コヤツはストーカーをする豚ですからな。豚は思い通りにならないと付きまとい、隙あらば殺そうとしてくるのですぞ」
俺が異世界に召喚される際の出来事が印象的ですな。
病んだ豚ほど身勝手で厄介な物は無いのですぞ。
「リーシアさんがですか?」
フレオンちゃんが小首を傾げながら着ぐるみ着用のストーカー豚を見ますぞ。
「もとやすさん、それは誤解です。おそらく元康さんの知っているリーシアさんはいつきさんを守ろうと、真実を発見しようとしていたのです。おそらくあの方々にいつきさんは担ぎ上げられ利用されていたのですからね」
あの方々とは燻製とその他の連中ですな。
このループでは三勇教一派に属して共々爆散しました。
ふむ……確かにストーカー豚はこれまでの周回を参考にすると病んだ豚の行動はそこまで感じられませんでしたな。
何よりフレオンちゃんのお言葉ですぞ。
俺の勘違いなのかもしれません。
ですが……う、俺の最初のループでの記憶が……お義父さんがストーカー豚が俺を狙っていると言った記憶が蘇って来ますぞ!
ただ、それはお義父さんなりの冗談……フレオンちゃんの言葉……うう、どっちか真実なのですかな!
「ふぇええ……」
「おや? 豚語ではなくなりましたな。豚では無くなったのですな」
「な、何を言っているんですかぁ……イツキ様ぁ……」
「ふむ、ストーカー豚改め、リー……スカ、でしたかな?」
「ち、違います! ふぇええ……」
リースカは何やらブンブンと頭を振ってますぞ。
「隊員リースカですか……悪くないヒーロー名ですね。私達のサポートをする役割としては皆さんにも覚えやすいかもしれません。いつきさんに報告しましょう」
「ふえぇええ……」
フレオンちゃんが納得したように何度も頷きました。
これで自己紹介は終わりましたな。
「とにかく、狩りに出発ですな!」
「はい! さ、隊員リースカさん、行きますよ」
「だから違いますー!」
「その姿の時はリースカになるんです! 変身ですよ!」
「ふえぇええ……」
と、リースカは着ぐるみを脱ぐと……豚が出てきました。
「ぶえええ、ぶえぶえ」
「人の言葉を喋るのですぞ。何故豚になっているのですかな」
キールみたいですな。
いえ、きっとキールみたいにリスーカ姿は呪いが解けた姿だったのでしょう。
これからはリスーカのきぐるみが無くなった時も作ってやりましょう。
そうすれば呪いが解けますぞ。
「ぶぇええええ!」
呪われたリースカが叫び声をあげましたが、結局リースカはリスーカ着ぐるみを着る事にした様ですぞ。
こうしてフレオンちゃんと共にリースカを連れて狩りへと出かけましたぞ。
「フレオンちゃん、リースカは大器晩成なのですぞ。丁度Lv80を超えた辺りでガクッと成長するそうですぞ。そこからの成長は凄いらしいですな」
「おお! そうなのですか! 大量に努力した結果、真のヒーローになれる素質を持っているのですね! まさにヒーローです!」
フレオンちゃんの目に炎が宿った気がしますぞ。
「他にも気という概念を扱う才能に長けているのですぞ。後で顧問がレクチャーしてくれるようになるはずなので成長の幅は果てしないですぞ」
「ふえぇえ……なんか改造されてしまいそうですぅ……」
「更に参謀としても有能で各地の言葉や伝承等、知識も相当ですから頼れる配下になるはずですぞ!」
「ですね! 私もビビっと感じてますよー! リースカさん! 行きましょう!」
「行きますぞー!」
「ふぇええええええええええええええええ!」
と、俺達はフレオンちゃんの背に乗り、一路狩り場に突撃して行ったのですぞ!
「エイミングランサーⅩ! ブリューナクⅩ! グングニルⅩ! リベレイション・ファイアストームⅩ! リベレイション・プロミネンスⅩ! リベレイション・ファイアアイⅩ ハハハ! 弱い! 弱過ぎるぞぉおお!」
フレオンちゃんとの楽しい狩りでしたな! 空からの絨毯爆撃ですぞ!
「ゴーゴーです! あ、巨大化する様なボスはいらっしゃらないのでしょうか?」
「カルミラ島にはおりませんな。人間に化けた魔物ならあり得ますな」
ライバルとかタクトの所の連中とかそう言った連中ですな。
「燃える展開ですねぇええ! フィロリアルマスク二号キーック」
フレオンちゃんが急降下からの蹴りで島のボスが一撃で倒せましたぞ。
俺はそのフレオンちゃんの攻撃を察知してリースカを抱えてフライングモードで滑空しましたぞ。
そして戻ってきたフレオンちゃんの背に乗り、決めポーズですな。
「ふぇええええええ!? ぐるぐるしますー! イツキ様ぁあああああ!」
こうしてリースカ育成の狩りは順調だったのですぞ。
少なくとも燻製達との狩りの様な面倒な事はありませんでした。
確かにストーカー豚改めリースカは樹の有能な配下であるのは間違いない様ですぞ。
と言った感じでその日の狩りも終わりました。
翌日、本島の宿に戻ると……お義父さんがお姉さんと錬の仲間達と何やら困った様に話をしておりましたぞ。
「ふえぇええ……」
リースカは目を回したように座り込んでおりますな。
フレオンちゃんにリースカを任せてお義父さん達に近づきますぞ。
おわ! ヒィイイイ……フィーロたんですぞ!
「あ、槍の人だー! うるわしゅー!」
「ご機嫌麗しゅう!」
もはや咄嗟の判断になりつつある槍で作っていたグミをフィーロたんに差し出しますぞ。
「お腹すいてませんかな?」
「またくれるのー?」
「もちろんですぞ。お腹が空いてないのですかな?」
「んーまだ空いてないけど食べるー」
「どうぞですぞ」
「わーい」
俺からグミを受け取り、フィーロたんは道を開けて下さいました。
なので俺はそのままお義父さんの下に行きますぞ。
「どうしたのですかな?」
「ああ、元康か……錬の仲間を含めて、ラフタリアが錬とブラックサンダーとの話に疲れたと悩みを聞く羽目になってな」
「まさか槍の勇者様よりも大変な方がいるとは……予感はしてましたが、思いませんでした」
お姉さんが疲れた様に言ってますぞ。
「ラフタリアちゃんは肩に力を入れ過ぎよー」
「サディナ姉さんやナオフミ様はあの方々とどうして合わせられるのですか!」
おお、お姉さんのお姉さんが錬とブラックサンダーとの緩衝材役をしていたのですな。
「錬の仲間もお義父さんに相談ですかな?」
「というか……俺の下で錬の手伝いをしたいって面倒な願いをしてきやがってな。それくらいこの二日間が快適だったそうだ」
なんともよくわからない相談をしているのですな。
とはいえ、村の奴隷達の例を見るに錬の仲間であればお義父さんもコントロール出来ると思いますぞ。
「盾の勇者様とのカルミラ島での戦闘はとても快適でした。剣の勇者様もあのブラックサンダーを名乗るフィロリアルと出会う前は、不器用ですが力になれる方だと思っていたのですが、最近ますます話がわからなくなってきまして……」
ふむ……こやつらは国に雇われた錬の配下ですからな。
場合によってはどこかで死んでいますぞ。
無害と言えば無害ですな。
ただ、みんなでフォーブレイに行った際にはデストロイしてやった記憶がありますぞ。
「おい元康、原因はお前にもあるんだから手伝え」
「錬の処理ですかな?」
シュッシュッと槍を左右に振りますぞ。
少なくとも教皇との戦闘時、錬は強化共有は理解していた様に見えましたぞ?
ブラックサンダーに錬の覚醒方法だとして教えたお陰ですな。
「処理……なんか槍の勇者様が剣の勇者様を刺殺しそうなんですが……」
「お義父さんが望むならブラックサンダーには悪いですがやってもいいですぞ?」
「サラッととんでもない事を言うんじゃねえよ」
まあ錬はブラックサンダーがいなければ俺としては割とどうでもいい相手ではありますが、お義父さんも必要だと思っているのですから仕留める必要は無いでしょうな。
実際、今は最初の世界に比べて無害ですぞ。
「話を戻して錬の問題ですな……お姉さんはどのように困ったのですかな?」
「えっと……私とフィーロの戦いを観察していた剣の勇者が私に魔法で隠れて魔物を一撃の下に倒せと言ったんです。そこまでは良いのですが相手を倒した後に背を向けて『幻影の暗殺<イリュージョン・キル>』と言ってポーズを取るんだと長くレクチャーをされまして……」
「一応付きあってはいたが疲れたんだったな?」
「はい……島の主らしき魔物にはフィーロが注意を引きつけた所で打ち合わせ通りに私と剣の勇者様で倒していた感じです……」
ふむ、錬は連携が下手なはずですが中々お姉さんと問題なく戦えているのですな。
「お姉さんの場合は技を放ったら、レンちゃん凄く楽しそうにしてたわよ」
「サディナって何が出来るんだ?」
「お姉さんのお姉さんは雷魔法の使い手ですぞ」
もちろん武術も相当な実力ですぞ。
色々と多芸な方ですな。
「ああ……そりゃあアイツ等が喜びそうだな。ブラックサンダーなんて名前にサンダーがあるくらいだし、雷を纏ったサディナなんて興奮する対象ってことか……飲んだくれのシャチがカッコいいかは別だが……いや、普段はふざけているけどいざって時に頼りになるのは、その辺りに理解されやすいか?」
お義父さんがブツブツと錬の分析をし始めました。




