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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
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別の名前

 そうしてお姉さん達と別れて俺は仙人の下に行きますぞ。

 仙人は温泉でゆっくり休んだのかリラックスした様子で部屋におりました。


「仙人、只今帰りました」

「おお、槍の勇者様。カルミラ島での狩りはどうでしたかな?」

「全く問題ないですぞ! ホワイトスワンもコウも十分にLvが上がりましたからな。後は成長を見守るだけですぞ」

「うむ! それで……ホワイトスワンはいつ頃姿を変える事になるのですじゃ? ワシもまだ見極めが出来ていないのですじゃ」

「そうですな……そろそろお願いすれば姿を変えてくださる頃合いだとは思いますぞ。言葉も話せるでしょう」


 長年の勘としてフィロリアル様が天使の姿になり、お話が出来るようになるタイミングを俺はある程度把握できるようになっております。

 ちなみにホワイトスワンは砂浜で少々走り込みをしたがっていたので好きにさせておりますぞ。

 それと自身の成長を確認している様にも見えました。

 ユキちゃんに比べると本当にストイックなフィロリアル様ですな。


 アレがホワイトスワン、ユキちゃんの本来辿るべき姿だったのでしょう。

 もしも今度、別のループでユキちゃんに出会えたとしたらもっと走れる環境を用意すべきかもしれません。

 それくらい、ホワイトスワンは走るのが好きな様ですからな。


「ピ!」


 コウがポンポンと跳ねて俺の後ろを付いて来ております。

 ちなみにお姉さんに非常に甘えており、今もお姉さんの所に遊びに行きたがっておりますぞ。


「さっそくホワイトスワンの下に行きますかな?」

「うむ。ただ……フレオンの例から考えるに服の準備をせねばならぬな」

「そうですな。持ち込んだ機材を搬入した倉庫でお姿を拝見すべきでしょうな」


 という訳で俺は砂浜で走り込みをしていたホワイトスワンに声を掛けて宿が用意した馬車を収める舎へとやってきました。

 ここで俺はホワイトスワンの方に振り返り、手を合わせて祈りますぞ。


「フィロリアル様フィロリアル様、どうか天使のお姿を俺に見せてほしいのですぞ」

「クエ!」


 ホワイトスワンは首を傾げたりする様子も無く、俺の願いを聞き入れるように頷いて天使の姿へと変わっていきました。

 ただ……そうですな。

 俺が育てるフィロリアル様は総じてフィーロたんによく似た背格好になる方々が非常に多いのですぞ。

 ですが、ホワイトスワンは何故か大人の女性の様なお姿で降臨なさいましたな。


 髪は長くスラッとしており、肌は雪の様に綺麗ですぞ。

 全体的に整っており、お姉さんのお姉さんに負けない美女のお姿でした。

 胸もありますぞ。


 アレですな。

 一言で言うなら雪女の様な鋭さがある美女が背中に翼を付けて立っておりました。


「どうですか? 元康様、仙人様。私のこの姿は?」

「な、なんとまあ……とても別嬪さんじゃ……」


 仙人が目のやり場に困ったかのように視線を逸らしながらホワイトスワンを褒めますぞ。


「とても美人ですな!」


 ユキちゃんが成長したらこの様なお姿になるだろうと言う俺の想像通りの美女になっておりますぞ。


「やりましたわ! ただ……この姿で動くのはまだ馴れませんわね」


 ホワイトスワンは体の感触を試すように手を開いたり閉じたりをしております。


「それで元康様、仰る通りの姿を見せましたわ。次は何をすればいいのですか?」

「着る服を作るので魔力を糸にする機材を使ってほしいのですぞ」

「わかりましたわ」


 俺が機材を指差すとホワイトスワンは機材の使い方を聞いて回し始めますぞ。


「走り込みで魔力を糸に出来たら良いと思いますわ」


 この辺りの感想がユキちゃんとは異なりますな。

 本当に走るのが好きなのでしょう。


「それで元康様、仙人様」

「なんですかな?」

「なんじゃ?」

「私のホワイトスワンという名は牧場における出走羽名なのはご存知ですわね」


 確かにそうですな。


「新たな世界に挑む私……成長の意味で新しい名前が欲しいのですわ」


 おや? ここで名前変えですかな?

 まあ、競羽用のフィロリアル様には幼名と言う物があって出走登録をする際に改めて名前を付けると言う仕組みがある所がありますな。

 ホワイトスワンはその認識で新たな名を欲しているのでしょう。


「元康様が私と見染めたのは道中の船での話では別の可能性の私からとの話でしたわね。私……元康様の配下としての名を求めますわ」

「つまり別の未来での名前を槍の勇者様に名付けてほしいと?」


 仙人が尋ねるとホワイトスワンは頷きましたぞ。


「そうですわ。元康様、元康様の知る私の名を教えてほしいのですわ」


 確かに道中で俺はユキちゃんの話をしはしましたが、名前までは言いませんでしたな。

 どうやら自身が選ばれた証としての名をホワイトスワンは求めている様ですぞ。

 わかりましたぞ。

 この元康、フィロリアル様が求める事には出来る限り応じる所存ですからな。


「わかりましたぞ! ホワイトスワン。これから君はユキと名を改めるのですぞ!」

「ユキですわね! わかりましたわ!」


 ホワイトスワン改めユキちゃんが喜びの笑みを浮かべますぞ。


「確かに元康様の仰る通り、選ばれてから今まで出せなかった位、力が漲り、驚くほどの速度で動けるようになりましたわ。私はまだまだ速くなりますわよ!」


 と、ユキちゃんは魔力を糸に変える機材を回し続け、服を作れる程に糸を作りましたぞ。

 さて……今回のユキちゃんに似合う服装は何が良いですかな?

 正直、長髪のユキちゃんは非常に和服、着物が似合いそうな気がしますぞ。

 まさに雪女をモチーフにするのがぴったり合いますな。


「魔力を糸にしなくても服を破かない様にすればいいのですわね? 仙人様」

「そうじゃが……」

「では私と背格好が同じ女性の着る服を用意して下さいまし。しっかりと着こなしますわ。化粧回しと同じですわよね?」


 フィロリアルレースの優勝羽には化粧回しを着けたりする場合があるのですぞ。

 確かに似合って居たりするのですが……おそらくユキちゃんはその化粧回しと服を同一視しているのですぞ。


「感覚は間違いないと思うのじゃが……ううむ。競争羽育ちのフィロリアルと言葉が通じるとこの様に認識されるのじゃな」

「服の準備ですかな。ではすぐに手配ですな」


 と言う訳でホテルの者に声を掛けて俺はユキちゃんが似合いそうな服を宿の衣装室から頂きましたぞ。

 急いで着物の作成ですな。


「どうですか元康様?」


 ユキちゃんはスラッとしたお姿で俺に服を着た姿を見せて下さいますぞ。


「とても似合っていますぞ」

「嬉しいですわ!」


 ユキちゃんはとても嬉しそうにスキップしております。


「それで元康様、これからどうするのですか? 私、元康様の命じるままに行動するつもりですわよ」

「ユキちゃんには非常に期待しておりますぞ。まずはこれから沢山のフィロリアル様達を育てますが、そのお手伝いと指揮をお任せしますぞ」

「元康様の命じるままにユキは使命を果たしますわ! 元康様が育てるフィロリアル達をみんな立派な競争羽に育て上げるのですわね」


 おや?

 ちょっとお願いの方向性が俺の知るユキちゃんとは異なりますな。


「違いますぞ。あるがまま……本能の赴くままにのびのびとありのままにフィロリアル様達を育てるのですぞ。ユキちゃん、君はまだ抑圧された過去の自分に縛られているのですな」

「これは失礼しましたわ。元康様の仰る通りにすれば私は更なる高みへと登る事が出来る……レースの事を考えない様にするのですわね」

「物わかりが非常に良くて助かるが……確かに、根を詰めるよりは良いのかもしれんのう」

「ピヨ!」


 やる気のユキちゃんと楽しげに鳴くコウが非常に印象的な出来事でしたな。

 こうしてカルミラ島到着1日目は終わったのですな。

 移動先の島にある宿で宿泊と言う手もありましたが、日帰りで十分でしたぞ。

 逆にお義父さんは出かけた先の宿で泊っていたのかお姉さんが宿内で少々不安そうにしておりましたな。

 ちなみにお姉さんのお姉さんは酒場で飲んでいたとの話ですぞ。

 そうして二日目ですぞ。


「お姉さんたち、本日はどうしますかな?」


 宿でお姉さんに声を掛けてこれからどうするか尋ねますぞ。


「お義父さんと合流するまで狩りに出ますかな? それとも宿で休みますかな?」

「えっと……」


 お姉さんは俺の隣にいるユキちゃんに目を向けますぞ。


「これは失礼しますわね。私は昨日までホワイトスワンと呼ばれていたフィロリアルですわ。今は元康様にお願いして名を改め、ユキと言う名前になりましたの」

「はあ……そうなんですか……そう言えばブラックサンダーというフィロリアルもフィーロ達と外見が違いましたね」

「そうですな。俺の知るユキちゃんはフィーロたんに近い背格好だったのは事実ですな」


 お姉さんのご指摘も当然の事でしょう。

 フィーロたんがサクラちゃん……それ所か同じサクラちゃんでも大きかったりしますからな。

 これがループによる弊害と言う事なのでしょうな。


「改めて自己紹介ですね。私はラフタリアと言います、ユキさん」

「よろしくお願いしますわ」


 お姉さんとユキちゃんが握手をしておりましたな。

 ユキちゃんならばお姉さんの事を気に入る事、間違いなしですぞ。


「それでお姉さん、話は戻りますがどうしますかな?」

「ナオフミ様と入れ違いになったら困るでしょうし……槍の勇者様はフィロリアルの育成をしたいと仰っていたので私達はここで待機します。ナオフミ様にお伝えしたい事は大体教えてくださっておりますし、交流は十分かと思いまして」

「後々幾らでも出来ますからな。俺もお義父さんを相手に出来る限りの話をしますぞ」


 俺とお義父さんの話し合いはいつでもウェルカムですぞ。

 という訳で降ってわいた自由時間、今日孵化したフィロリアル様の育成をするには良い日よりですな!


「ではユキちゃん、今日は新しく孵ったフィロリアル様の育成をしますぞ!」


 今朝、ルナちゃんも孵化しておりますぞ。

 ルナちゃんと言えばキールが居ないですな。島から帰ったらお義父さんの開拓事業で早速勧誘されるでしょう。


「わかりましたわ!」

「グア!」


 コウは大分大きくなり、お姉さんにすり寄っておりました。


「あの、槍の勇者様? この子は?」

「コウはお姉さんに懐いておりますからお任せしますぞ」

「いえ……任せられても困るんですけど」

「ですがお姉さんと亡くなったご友人、それとゾウにとてもよく懐くのがコウですからなー」

「……」


 お姉さんが俺を切なそうな顔をして見ておりましたがどうしたのですかな?

 そう言えばライバルが「救いはあるなの」ってよくわかってない最初の世界のお義父さんにループした際の話をした後日言ってました。

 何かあるのでしょうな。


「ゾウねー」

「お姉さんのお姉さんも面識があるかもしれませんな。ゼルトブルの闘士だそうですぞ」

「エルメロちゃんかしらねー」

「とにかく、コウも頼りになりますから頼みました。それが今日のお願いで良いですかな?」

「あー……わかりました。これも交流という事で妥協しましょう。ではコウさん、お腹が空いている様ですからご飯を用意しますね」

「グア!」


 と言う訳でお姉さん達にコウを預けて俺はユキちゃんと共に新たなフィロリアル様の育成をおやつ時まで行ったでしたな。

 二日目は特にそれ以外、大きく変わった事はありませんでした。

 最初の世界ではお姉さんに怒られた出来事でしたが、お姉さんも特に怒ったりする事もありませんでしたな。


「元康、ラフタリアから聞いたんだが、お前……ラフタリアにフィロリアルを預けたのか?」


 お義父さんはお姉さんから経過を聞いた後、俺に声を掛けて来ましたな。

 お姉さんはコウとフィーロたんと何かやり取りをしているのか少し離れた所で話をしておりました。

 どうやらフィーロたんにお義父さんと何をしていたのか聞いているみたいですぞ。


「そうですぞ。コウはお姉さんと仲が良いフィロリアル様ですからな」

「とうとうラフタリアまで洗脳する気か?」


 おや? お義父さんが何か警戒気味に言いますな。


「洗脳? そんなつもりは無いですぞ。コウが甘えん坊でお姉さんと仲が良かったから会わせて上げただけですからな」

「どうだかな……ラフタリアに妙な事をしたら許さんからな」

「ねえねえモトヤスちゃん、お姉さんと仲が良いフィロリアルはいないのかしら?」


 お姉さんのお姉さんの質問に考えますぞ。

 ……そう言えばお姉さんのお姉さんに特別仲が良いフィロリアル様は覚えておりませんな。


「出来ればお酒が強い子が良いわねー」

「生憎と覚えがありませんな。申し訳ないですぞ」


 お姉さんのお姉さんと言えばお義父さんを相手に飲み交わしていた記憶が印象的でフィロリアル様とは卒なく仲良く世話をしている感じでしかないですぞ。

 精々ヒヨちゃんでしょうか……それも同僚の様な関係だったと思いますな。


「あらー残念」


 フィロリアル様はお酒を嗜む方は非常に珍しいですからな。

 ヒヨちゃんとみどり辺りは飲めた様ですがな。

 何せヒヨちゃんとみどりは毒属性を扱えるフィロリアル様ですぞ。

 それでもお姉さんと飲み交わせるかと言うと難しかったのは想像に容易いですな。


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