真・槍の勇者と仲間達
「で、元康、お前が来たって事はやっと仲間交換って奴が……まだ無理そうだな」
お義父さんがホワイトスワンとコウを見ますぞ。
これが俺の仲間達ですぞ!
まだ孵化していないフィロリアル様達もいらっしゃいますがな。
「おや? していないのですかな?」
最初の世界では島に着いた当日から仲間交換が行われました。
出来る限り短時間での交流と言う事で俺とお義父さんの仲間が交換されたのでしたな。
赤豚が騒動を引き起こし、お義父さんの情報は怠け豚が赤豚に知られない範囲で俺に教えてくれたのでした。
で、俺はお姉さんを誘惑しようとして大失敗をしたのが記憶にありますな。
お姉さんの所に行ったら筋肉トレーニングをしておりました。
波に対してとても真剣に向きあっているという印象でしたな。
「ああ、錬と樹の方はしたらしいがな」
ふむ……先に錬と樹が行われたのですな。
「ま、ブラックサンダーとフレオンがお前の所で仲間だったから交流自体は無難……とも言い難い感じに終わったみたいだがな」
なんでも錬の元々の仲間……連中が割と蚊帳の外ではありますが、いるそうですぞ。
確かにいますな。
アイツらがフレオンちゃんとストーカー豚と交代で樹の所へ行ったとの話ですぞ。
交流は特に問題も無く、無難に終わったとか。
確かに錬の仲間やストーカー豚ならば問題を起こす方が難しいでしょうな。
「夜に宿に戻った所でフレオンと樹が謎の戦隊ポーズ講習をしていて、助けを求められて大変だったぞ」
なんとも楽しげなやり取りがあったご様子ですな。
俺も混ざりたかったですぞ。
今度ドライブモードをお披露目しましょう。
きっと今の錬や樹なら輪に混ぜてくれるでしょう。
「つーか……お前、どこかで女を補充するかと思ったらフィロリアルを連れてきたのな」
「当然ですぞ!」
「グア!」
ユキちゃんが一歩踏み出して鳴きますぞ。
「この子はホワイトスワンですぞ! そしてこちらはコウですな!」
「ピイ! ピイピイ!」
コウは差し出されるとお義父さんに向けて親しげに鳴き始めました。
何故かコウの反応が上々ですな。
以前のループではお義父さんを怖がっていたと思いますが……。
「ああそう」
「まずはこの子達をしっかりと育て上げた後、どんどんフィロリアル様を育てて行きますぞ!」
「部隊化するって事か……仲間交換とやらはいつ頃やれば良いんだ? むしろラフタリア達をいつお前に預ける事になるんだ?」
「前倒しでお姉さん達を俺が連れてLv上げをしますかな? ホワイトスワン達を育てるついでで出来ますぞ!」
俺がどれほど強いか見せる事も出来ますし、お姉さん達にレクチャー出来ますぞ。
戦闘に関して、それはもう色々と説明できますな。
ホワイトスワンを連携に入れた戦いも相談しながら構築する余裕も今の俺にはありますぞ。
お姉さんたちと打ち合わせですぞ!
「ナ、ナオフミ様、本当にやるんですか? 出来れば遠慮したいのですが……」
「あらー」
「んー……?」
ヒィイイ……お義父さん無しでフィーロたん達と一緒ですかな!?
まだ心の準備が出来ておりませんぞ!
「お、お姉さん達は良いですが、フィーロたんはお義父さんとの楽しい一時を提供したいですぞ」
「えーっと、つまりフィーロはごしゅじんさまと一緒に居れば良いのー?」
「そうですぞ。お姉さん達が俺と一緒にいる間にフィーロたんはお義父さんをお守りしていてほしいですぞ」
「だってーごしゅじんさまー! お姉ちゃん達とは別にフィーロがごしゅじんさまと一緒ー!」
フィーロたんがとても嬉しそうにしておりますぞ!
俺も嬉しくなりますな!
「……物は言い様だな。まあ、フィーロが居ればカルミラ島での戦いは十分に出来そうではあるが……」
「ナオフミ様……」
お姉さんがお義父さんの腕を掴んで懇願する様な顔をしております。
お義父さんは深くため息をした後、お姉さん達に顔を向けて答えますぞ。
「とりあえずだ。色々とあって元康は俺に悪意を持ってないらしいだろ? たった1日だから我慢してくれ。サディナもいるんだしな」
「やーん、お姉さんも怖いわーん」
「ニヤニヤしながら心にも思ってない事を言うのをやめろ……じゃあ俺はフィーロと一緒に出かけるから元康、ラフタリア達と上手くやれよ」
「当然ですぞ! お義父さんの期待に応えられる様に懇切丁寧にお教えしますぞ」
と、ふとお義父さんに近づいてシルトヴェルトに行った時のお義父さんを誘惑した時の様に顎に手を添えて言いますぞ。
「グア!?」
「な、何を!?」
ホワイトスワンとお姉さんが揃って殺気を放った様な気がしましたが、それより早くお義父さんが俺の手を弾きました。
「……元康、何の真似だ?」
「親愛の情ですぞ」
お義父さんが凄い渋い顔をしますぞ。
それから数歩後ずさって背を向けましたな。
「気色悪い事をすんな! フィーロ! 行くぞ!」
「はーい!」
お義父さんはそう言うと小舟に乗って出かけて行きますぞ。
「な、ナオフミ様ーーーー!」
お姉さんがお義父さんの後ろ姿を追おうとしていましたが、お姉さんのお姉さんに止められて見送っていたのが印象的ですな。
なーに、今日一日だけですぞ。
「では宿で荷物を置いて行くので早速狩りに行きますかな。ああ、夜にはお義父さんの所に戻って大丈夫ですから気楽に行きますぞ」
「ラフタリアちゃん、すぐにナオフミちゃんの所に戻れるわよ。言われた通りにがんばりましょ?」
「……はい」
「グアアア」
ホワイトスワンがお義父さんに向かって睨んでいた様に見えましたが、こうして俺達はカルミラ島での狩りをする事になったのですぞ。
仙人はお疲れでしょうからと宿で休んでもらいましょう。
温泉を堪能して下さいとお願いしておきました。
大事なのは狩りから帰った後のケアですぞ。
仙人にはそこを見てもらう予定ですぞ。
「とりあえずホワイトスワン達のLv上げをしている姿を見せつつお姉さん達に色々と話をするのが大事ですな!」
宿に荷物……フィロリアル様達の卵等を部屋に預けてから早速俺達は狩りに出ました。
もちろんお義父さんや錬達と被らない様に島を選んでの出撃ですぞ。
「他の冒険者達の迷惑にならない様に島の奥へと向かいますぞ」
「ええ」
お姉さんたちはしっかりと理由が分かれば同行してくださいますからな。
そんな訳でサクサクと他の冒険者達が居ない奥地まで移動する事が出来ました。
が、お姉さんが常時俺を警戒してお姉さんのお姉さんの隣を離れませんぞ。
「さて……ではどうしますかな? 俺としてはホワイトスワンとコウの育成を優先したいですが、連携してボスを倒したいというならそれを優先しますぞ」
「私達はナオフミ様に資質向上を施してもらって地道に上げている最中ですね」
そう言えば今回はクラスアップをせずにカルミラ島に来たのでしたな。
一旦龍刻の砂時計でのクラスアップをする為に島外へ出る予定でした。
「ではホワイトスワンとコウを育てるのと一緒にお姉さん達のLv上げをしますぞ。それからしっかりと打ち合わせをしてボス退治をしますかな?」
「……わかりました」
「わかったわー」
「グア!」
「ピイ!」
お姉さんたちは俺の提案を受け入れて早速狩りに出る事になりましたぞ。
まずはLv上げですからな!
俺も一肌脱ぎましょう!
「エイミングランサーⅩ! ブリューナクⅩ! グングニルⅩ! リベレイション・ファイアストームⅩ! リベレイション・プロミネンスⅩ! ハハハ! 弱い! 弱過ぎるぞぉおおおおおおお!」
カルミラ島に生息するボスの地域より少し手前で俺達は大暴れをしますぞ!
「や、槍の勇者……落ち着いてください! これは虐殺です! 戦いじゃないです!」
「グアアアア!」
お姉さんが止めますがホワイトスワンは俺の動きに合わせて追いかけてきますぞ。
ゲシゲシと魔物を蹴り飛ばしております。少しでも技術を上げようとしているのですぞ!
負けられませんなー!
「あらー……ここまで凄いと壮観ねー」
「ピィ!」
お姉さんの頭に乗って元気よく鳴いているコウが非常に印象的ですぞ。
「リベレイション・ファイアアイⅩ!」
カッとリベレイション・ファイアアイで一薙ぎして魔物共を蹂躙しますぞ。
「め、目から光線が!? 槍の勇者は人間なんですか!?」
「魔法でああ言う事も出来るのね。ラフタリアちゃんも光魔法が出来るんだからやってみる?」
「サディナ姉さんもふざけないでください!」
「お姉さんも覚えたいのですかな? ではまず資質の関係で魔法の構築をですな……」
「教えようとしないでください! 覚えたくないです!」
再出現するまで一休憩ですな。
ホワイトスワン達の上がったLvに合わせて資質向上を施しますぞ。
おや?
「お姉さん、信じないと強化が出来ませんぞ……」
資質向上をお姉さんに施そうとしたのですが上手く行きませんぞ。
「どうしたら私が貴方を信用していると思えるのでしょうか……」
「ですが信じないとこれ以上は上がりませんぞ……?」
既にお姉さんはLv40の上限に当たっているのが分かりますぞ。
「お義父さんだったらこんな状況でも信じる事を力にしますぞ」
「ナオフミ様をわかった様な事を言わないでほしいです」
「確かにお姉さんほどお義父さんを信じている方は他にいらっしゃらないのは確かですな。ですが今の俺も負けない様に信じておりますぞ」
「……」
お姉さんが目を細めつつ俺を見つめておりますぞ。
「ラフタリアちゃん、モトヤスちゃんも悪気は無いのはわかっているんだから少しは信じてあげなきゃね。分かり合えないんじゃないかしら?」
「はあ……わかってますけど感情が追い付いて行かないんです」
「わかりました。では夜、お義父さんに施してもらう事にしましょうですぞ」
俺も譲歩が出来る男ですぞ。
お姉さんが難しいと言うなら無理強いは出来ませんからな。
と言う訳でホワイトスワンとコウのLvと資質向上は手早く出来ましたぞ。
メキメキと成長してホワイトスワンとコウはもう戦力としてカウント出来る所まで来ましたな。
「さて……では島のボス戦をしますかな? 今回は戦闘経験が大事と言う事で俺は出来る限り手加減をすべきですかな?」
「確かに……貴方ならこの島の奥地に出現する主を一撃で倒せそうです」
「出来ますな。ですがそれではお姉さん達の求める情報は得られないと思いますがどうですかな?」
「そうですね……かといってこれ以上知らねばならない事があるのか、わかりかねますが……」
「ここはアレですな。戦闘の基本に立ち返るのが良いかもしれませんぞ。俺がお義父さんの様に敵の猛攻を受け止めるので、お姉さん達とホワイトスワン、コウがその間に攻撃するというのはどうですかな?」
お姉さんが最も戦いやすい戦闘スタイルだと俺は考えますぞ。
俺が敵を抑え込むことでお姉さんたちが全力で戦える方法ですぞ。
俺の提案にお姉さんが何やら深くため息を漏らしました。
「異論は無いんですけどね……それだと槍の勇者の戦いや強くなる方法を知る機会が無いと言いますか……」
「稽古ですかな? それならお姉さんのお姉さんと打ち合いをすれば見せられると思いますぞ」
お姉さんのお姉さんの銛使いは右に出る者はいませんぞ。
同様に長物を使えるのは一目瞭然ですからな。
俺も大いに参考にしましたぞ。
「あらーじゃあラフタリアちゃんの為にモトヤスちゃんとお姉さんが稽古をすればいいの?」
「なんか違う気がします……」
「勇者同士腹の探り合いなど無意味なのですぞ」
最初の世界の愚かな俺はそう言った考えがありましたが、世界を平和にするには不要な要素なのですぞ。
必要な事は全て話す。
大事な事ですな。
「いつでも俺はお義父さん達に情報提供をしますからな」
「はぁ……わかりました。ここで文句を言うのは筋違いですし、槍の勇者は確かに私達を尊重して尊敬出来る態度を示していますよね。早速やりましょう」
「ピイ!」
「クエ!」
コウはお姉さんの事が本当に気に入っているのかすり寄って鳴いているのが印象的でしたな。
ホワイトスワンも成長する自身の体を確かめるように空を蹴りながら答えますぞ。
そうして挑んだ島のボスを俺はお義父さんと同じく攻撃せずに受け止めてお姉さん達に戦ってもらいましたな。
ドロップ品でお姉さん達の装備を強化しておきました。
狩りを終えた頃になるとお姉さん達も大分馴れてきたのか連携も出来るようになっておりました。
そうして帰りの小舟での事ですぞ。
「槍の勇者……様、今日は色々と教えてくださり、ありがとうございました」
おお、お姉さんからの感謝の一言ですぞ。
ちょっと無理している感じがお義父さんに似ていますな。
「お礼を言われる程でも無いですぞ。これから波へ共に歩む勇者仲間ですからな!」
「……ええ、そうですね。ナオフミ様の為にもがんばりましょう……」
何やら疲れたとばかりにお姉さんは俺の言葉に頷いておりました。
「派手な戦いだったわね。お姉さんも力を出せて楽しかったわー。帰ってお酒を飲みましょ!」
ちなみにお姉さんのお姉さんは小舟に乗らずに獣人姿で泳いでおりました。
「クエー!」
ホワイトスワンは脚力の訓練としてお姉さんのお姉さんの隣で泳いでおりました。




