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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
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真犯人

 ふう……ですぞ。

 お義父さんがそのまま部屋の中へ入れと誘導していますぞ。

 なので俺は合わせて部屋に入り、椅子に腰かけますな。


「で? 元康、お前は何を隠してやがる」

「お姉さん、誰か盗み聞きなどをしていますかな?」


 俺はお姉さんに尋ねますぞ。


「お姉さん? 私の事ですか?」

「フィーロたんのお姉さんなのですからお姉さんですぞ」

「本当、コイツは何なんだ?」

「え? えーっと……隠れている人はいないと思いますが……」


 それなら大丈夫ですかな?

 念のため、魔法を唱えますかな?


「隠れている奴がいたらすぐに離れないと敵味方関係なく燃やしますぞ!」


 そう宣言し、魔法を唱えますぞ。


「元康、何を!」

「リベレイション・ファイアフラッシャーⅩ!」


 カッと室内限定で炙りだしの魔法を形成しましたぞ。

 後は魔法の応用で防音をしておきました。


「……何か魔法の力を感じるが、特に変化は無いか」

「隠れている者がいると燃やす魔法ですぞ」

「そんな魔法があるのか……盗み聞きされたくないって事か」

「まずはどこから話したら良いですかな? 最初から話すとそれなりに長いのですが聞きますかな?」

「要点だけ……聞きたい所だがそれだけだと訳が分からなくなりそうだな」


 お義父さんはしばし考えた後に言いますぞ。


「一応信用してやった結果、あの女に報いを受けさせる事が出来たんだ。話くらいは聞いてやるとして……そうだな。何故、こんな回りくどい事をした? 特にあの茶番だ。何の意味がある?」

「それは俺がこの世界の未来から来たからですぞ。だから未来の知識があるのですな」

「……」


 お義父さんの目つきが疑わしいとばかりに細くなりました。


「仮にお前の言う通り未来の知識があるとして、なんであんな事をしたんだ?」

「それは未来の出来事とは異なる事をすると赤豚に報いを受けさせられないからですぞ」


 ここでお義父さんが止まりました。

 疑問符を浮かべていますぞ。


「赤豚?」

「赤豚は赤豚ですぞ」

「ラフタリア、コイツが何を言っているのか全然わからないんだが、わかるか?」

「えーっと……報いって所から考えて教皇か……髪の色から、今日亡くなったあの方では?」

「元康、そうなのか?」

「そうですぞ。奴は肥え太った豚ですからな」

「時々豚とか罵っていたが……そう言う事か。ラフタリアも二度目の波辺りからお前がおかしいと言っていたが、これも何か関係があるのか?」

「もちろんですぞ。俺がこのループに来たのは二度目の波が来る少し前ですぞ」


 何やら納得出来る所があるのか、新たにループし始めた時のお義父さんよりもこのお義父さんは理解が早い様ですぞ。

 お姉さんへの信用がそれだけ高いという事ですな。


「じゃあラフタリアが疑問に思っていた寝た振りって言うのも……」

「当然、痛くも痒くもありませんでした」


 へでもありませんでしたな。

 ぐるぐるぐるー。


「グラスという方に何かしませんでしたか?」

「援護として槍を小さくして足にぶつけてやったのですぞ」

「足を引き摺っていたのはそういう事か……」


 本当は倒しても良かったのですが、そうすると色々と未来が変わるかもしれなかったので我慢しました。

 奴も最初の世界では味方だったらしいですからな。


「そりゃそうだろうな。こんな強化があって強くなっているはずなのに、俺がやっと追い返したグラスって奴にやられるはずもないか」

「この方は……」


 お姉さんが嘆くように額に手を当てていますぞ。


「で……ビッチに報いとは、俺が改名の罰を与える事ではないんだよな?」

「もちろん……奴はお義父さんに――」

「待て。もしかして俺をお義父さんと呼んだか?」


 おや? お義父さんが何か凄く渋い顔をしておりますぞ。


「フィーロの姉だからお姉さんってのも妙だとは思っていたんだ。ラフタリアちゃんって呼んでいた奴がどうしてそうなる」

「それはフィーロたんが俺を救ってくれたからですぞ」


 ああ……今でもマジマジと思いだされますな。

 愚かだった俺を蹴って叱り、豚に騙されていた事実に落ち込んでいると、慰めてくれたあのお姿を。


「未来から来た、ループと言っている所から察すると……元康、これが何度目のループだ?」

「数えきれませんな。一度は終わりましたが、また始まっているのですぞ」

「一度終わった? にも関わらずまたループしたと?」


 このやり取りはまたループし始めた時にもやりましたな。


「俺はフィーロたんに心を救われたのですぞ。ですからフィーロたんのお義父さんであるお義父さんを親愛の情をこめてお義父さんと呼んでおります」


 お義父さんが口に手を当てて渋い顔をしました。


「ラフタリア、コイツの話を聞かずに部屋から追い出していいと思うか?」

「えー……一応、聞いた方が良いかと思います。どうもこの方に踊らされていたのは事実ですので」

「わかった。とにかく、フィーロがお前に何かやってその所為で、お前はフィーロに惚れて俺やラフタリアを妙な呼び方をしているんだな」

「そうですぞ。俺はフィーロたん一筋ですぞ」


 二番目は大きなフィロリアル様ですぞ。

 ですがフレオンちゃんはどうしましょうかな?

 無事に育ってくれただけで俺は満足ですが。


「その癖、フィーロには怯えている様に見えるが……」

「う……」


 痛い所を突いてきますぞ。

 ここは流すのですぞ。


「と、とにかく、色々とあって俺は真実に気づき、いろんなループのお義父さんのお手伝いをしているをしているのですぞ」

「……はぁ。なんか面倒そうな状況だが、わかった。で、ビッチにお前は何をするつもりだったんだ? アイツは自身が盛った毒で死んだ……いや、まさかお前――」


 さすがお義父さん!

 前後の状況から真実に辿り着いた様ですな。


「気づきましたな。本来の歴史では奴は治療院に運ばれて治療されて命を繋ぐ程度の毒だったのですぞ。それを俺がちょいちょい! とですぞ」

「そんな……」


 お義父さんとお姉さんが絶句しております。

 はっきりと頷きますぞ。


「とんだ真犯人がいたもんだ……女王に言うべきか?」

「残念なのは想像よりも毒の効果が強すぎた事ですな。奴がもっと無様な姿を晒すのを眺めていたかったですぞ」

「……何があったら、この女好き野郎がこうなるんだ? まあ、あの女の事だから色々あったんだろうが……」


 お義父さんがなんとも言えない表情ですぞ。

 そうですな。色々ありました。

 結論で言えば赤豚死すべし、ですな。


「二度目の波前後でこのループに来たんだから、それ以前に関しちゃ無関係か?」

「俺も初耳でしたな。赤豚の弟である王子が居たのは耳にしましたが、ウロボロス劇毒で死んだとは知りませんでした。どちらにしても、お義父さん直伝、やられたらやり返せですぞ」

「誰がそこまでやれと教えた……つーか、毒でも盛られたのか、お前は」

「俺ではなくフレオンちゃんですぞ」

「あの空飛ぶ洗脳フィロリアルか? フィーロが飛べる事を羨ましがっていたが」


 俺は頷きますぞ。

 これで最初の世界のフレオンちゃんの無念を晴らす事が出来ました。


「最初の世界で俺は天使姿のフィーロたんがフィロリアルであると知り、お義父さんが出来るなら俺もとフィロリアルを欲したのですぞ。その時に赤豚が持ってきてくれた卵にフレオンと名付けて育てました。ですが、大人になる前にフレオンちゃんは死んでしまったのですぞ。奴の言い訳だと『成長する際に体が耐えきれなかった』でしたかな」

「で……今は無駄に元気そうに樹を操っているが……なるほど、あの女が仮にフィーロを元康が手にしたらと考えるとやりそうなことだ」

「納得しちゃうんですか?」

「ラフタリアもよく考えてみろ。あの女だぞ? 無いと言い切れるか?」

「それは……」

「まあ、元康の言い分が正しいとするにはこれだけでは足りないが、色々と納得出来る部分もある。教皇相手にへでもないとばかりに即座に仕留めたしな」


 お義父さんはこの辺りの物わかりが良くて良いですな。


「何より……元康に教えていないはずの盾の名前を言った。ゲーム知識で知っていたのかとも思ったが、それにしたって辻褄が合わない。未来から来たと言うのにも信憑性無いとは言い難いだろう」


 この辺りの割り切りが早いのがお義父さんの良い所ですぞ。


「とにかく、あの女に自業自得で死んだように見せかけるためにこんな事をした、でいいんだな?」

「ですぞ。後の事は出来る限り答えますぞ。もはや目的は達成し、フレオンちゃんの身の安全は確保出来ましたからな」

「……じゃあ、そうだな。お前の知る未来の話で、本来はどんな出来事が起こるんだ?」

「そうですなー……愚かだった頃の俺は赤豚が治療院に運ばれた事で何が起こっているのか把握し、お姉さんを賭けて決闘をした時の様にお義父さんに赤豚の奴隷紋の解除を賭けて決闘しようとして女王に拒否された、とかですな」

「見てみたかったな。なんか羨ましいぞ。俺からすると宿敵で痛い目見せたいと思った奴が謎の従順な僕になってしまった様な感じで気色悪い」


 お義父さんは眉を寄せながらため息を漏らしますぞ。

 この辺りは最初の世界のお義父さんと似た様な反応ですな。


「おい元康、三回まわって鳴け」

「くるくるくるー! クエーですぞー!」


 お義父さんの命令に従って俺は優雅に回ってあらぶるフィロリアル様のポーズをとりますぞ!

 クエーですぞ!


 お義父さん、どうですかな?

 コロシアム仕込みのフィロリアル様のポーズはかっこいい事でしょう。


「はぁ……」

「ナオフミ様、ため息をするなら命じなければいいのでは?」

「本気でやるか試したんだ。なんつーか……俺って何の為にがんばったんだろうな?」

「これも槍の勇者をどうにかしたフィーロとナオフミ様のお陰だと言う事で……」

「ちなみにお姉さんによく怒られましたな。お姉さんでなくても他の奴隷でお義父さんは立ち直れるのですぞ、と言って怒られたものですぞ」

「ナオフミ様、この方を追い出しましょう!」


 おや? お姉さんから殺気が噴出していますぞ!

 何か失礼な事を言いましたかな?

 脳内にいるお姉さんが「貴方はどうして余計な事を言うんですか!」と怒っておりますぞ。

 ですが事実なのですぞ。


「待て待て……元康に本気で相手をしてどうする。仮に事実だとして無数のループにある話なんだしな。そう言う例もあるんだろう。じゃあ元康、ラフタリア以外の奴隷ってどんな奴だ?」

「ウサギとリザードマンですな」

「……ああ、アイツ等か。覚えてるぞ。あっちを買う可能性か……確かにあるかもしれんな」

「ナオフミ様……」


 お姉さんが切なそうな顔をしております。

 ここは慰めてポイントを稼ぎましょう。


「お姉さん、落ち込まないで欲しいですぞ」

「誰のせいですか!」

「あのループは俺がお義父さんを嵌める片棒を担がずに、錬や樹が行った際ですな。お義父さんを助けたかったのですがフィーロたんに再会しないとループを抜け出せなかったので、心を鬼にして任せた時にわかった事ですぞ」

「一度ループを抜け出したって奴だな……フィーロには会えたんだろ? なんでまたループをしているんだ?」

「わかりませんぞ」


 ライバルも調査すると言ってましたが、どうなっているのでしたかな?

 何か……俺がショックを受けている時に説明していた気がしますが、曖昧ですぞ。

 それ所ではなかったですからな。


「ちなみに俺が片棒を担ぎ、お義父さんが奴隷を買う機会を損なった際にはお姉さんのお姉さんとお義父さんが出会って救われますな。それで最後のチャンスをどうにか乗り越えたのですぞ。こうしてどうにかフィーロたんに会えたのですな」

「何がどうしてフィーロに会えたのかを細かく聞きたい様な気もするが、聞いていたら朝になりそうだからいいとしよう。ラフタリア、お前に姉がいるのか?」


 このやり取りをお義父さん達はよくやりますな。

 まあそれだけ以前の俺が信用ならない奴だという事ですぞ。

 フィーロたんも言っていたではないですか。

 誠実になれ、と。


「えー……私が慕っていて姉と呼ぶとしたら……サディナ姉さんでしょうか? はい。血は繋がっていませんが、お父さんとお母さんと親しい関係から私の姉の様に接してくれた方です」

「今はゼルトブルにいらっしゃるでしょうな。お義父さん達をゼルトブルに送って休んでもらっていたので……酒場とかで大酒のみの女性と出会っていたらその方ですぞ」


 今までのループからして……。


「……もしかしてアイツか? ラフタリア達を宿に待機させて情報収集に行った際に知り合った、変な奴なら居たが」

「凄いですな。さすがお義父さんですぞ」


 特徴を言って連れて来て欲しいと言ったら連れてきたのを思い出されますぞ。

 お義父さんとお姉さんのお姉さんは不思議な縁がありますからな。


「サディナ姉さんがゼルトブルに……」

「今すぐお迎えに行きますかな?」

「もう夜も遅いし、色々とあって疲れたから後日にしてほしいもんだ。少し話をしたが、あの女は疲れるタイプだぞ」

「サディナ姉さんは不真面目な言動をする陽気な方ですが……」


 お義父さんがお疲れなご様子ですな。


「何より、明日はクラスアップが控えているんだ。早めに休みたい」


 おや?

 クラスアップ……そう言えば大きなフィロリアル様に出会えていませんぞ。


「クラスアップをするのは待って欲しいですな。出来れば大きなフィロリアル様に会ってからをお勧めしますぞ」


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