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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
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ヒーロー登場

 なんてやり取りをしている最中にお義父さんが盾を構えて俺にぶつかってきました。

 ガツンと良い音がしますぞ。

 俺は加減しながらお義父さん相手に槍を振いますぞ。


「これを受けて立っていられますかな? 流星槍!」


 流星槍をお義父さんに向けて放ちますぞ。

 加減しておりますが、あの頃の俺の攻撃より多少は攻撃力がある一撃ですぞ。

 お義父さんは盾を前にして防御しております。

 星がぶつかっても軽く火花が散るだけでお義父さんは何とも無いとばかりに星を弾き飛ばしましたな。

 ちょっと機嫌が良さそうに見えますぞ。


 そうして最初の世界になぞりつつ、やや異なる戦いをしていきました。

 フィーロたんが魔法の竜巻を出したりしましたな。最初の世界より低いのはやはり大きなフィロリアル様の祝福を受けていなかったからでしょうか。


「ブヒィイイイイイイイイイ!」


 と言う声と共にそっちの方角に目を向けると……赤豚の隣に居た豚がお姉さんに攻撃されておりましたぞ。

 おや? 確か怠け豚だったはずですが、怠け豚は少し距離があってお姉さんの攻撃を受けておりません。

 何故ですかな?


「ハイド・ミラージュ」


 お姉さんが姿を消しますぞ。


「ブブブブ! ブブブ!」


 赤豚が何やら喚いております。

 お? お姉さんを炙りだすつもりですな。魔法を読み込んで、妨害ですぞ。


『力の根源たる愛の狩人が命ずる。森羅万象を今一度読み解き、幻覚を薙ぎ払う風を消せ』

「アンチ・ウィンドフラッシャー」


 小声での詠唱ですぞ。


「ブ、ブヒ!?」


 赤豚が婚約者の方を忌々しそうに睨みましたな。

 犯人は俺ですぞー!


「え? あ……アンチ・ウィンドフラッシャー」


 随分と時間差がありながらも婚約者が合わせて魔法を完成させたふりをしましたな。


「余所見なんてしている暇があるのか? ああ、それとそこの王女は随分と魔法が下手くそみたいだなぁ!」


 と、お義父さんが分かっていらっしゃるのに俺と赤豚を煽ってきましたぞ。

 なんてやり取りをしていると怠け豚がどんどん戦いの場から離れて行きますぞ。

 もしかしたら気付いて逃げを考えているのかもしれませんな。

 と言う所で陽炎が赤豚近くに出ますぞ。


「ブヒ!」


 赤豚が見切ったとばかりに攻撃しましたな。

 ですが、それはお姉さんの罠ですぞ。


「えー……まさかメルティちゃんの妨害がここまで上手く行くと思わず、罠を掛けていたのですが、良いでしょう」


 お姉さんも反応に困るとばかりに幻影に踊らされて隙だらけの赤豚に攻撃しました。

 赤豚がグインと振り返ってお姉さんと鍔迫り合いになりました。

 く……援護攻撃で赤豚を仕留めたくなるのを堪えますぞ。

 と言うか……怠け豚、お前のポジションだと赤豚の援護が出来るのに黙って見てますな。


「ブブブヒブッブ!」

「勝手に人を小石扱いするなんて……哀れな方ですね」


 お姉さんのテンションも低めですぞ? 何故ですかな?

 で、俺はお義父さんに顔を向けて戦いを継続しますぞ。

 ですが何時まで経っても教皇が不意打ちをしてきません。

 ああ……おそらく消耗している様に見せないと出てこないつもりなのでしょうな。

 大体の見当は付いているのですが……確実性と赤豚の焦りと言う状態をお義父さんに贈呈する為に押される演出をしましょう。


「尚文と俺が双方ぶつかって追い詰められていないといけないのですぞ。スキルを使った攻防で消耗した風に装えですぞ」


 小声でお義父さんに指示を出します。


「大風車!」


 竜巻を起こしてお義父さんを閉じ込めます。

 かなり加減しているので痛くもかゆくも無いでしょう。


「ぐううううう……」


 ですが、お義父さんは俺の指示に従い、のけ反りましたな。

 そうして竜巻が消えた後に俺は追撃とばかりに槍を引いて突きだす構えをとりますぞ。


「憤怒の盾を使うのですぞ。反撃で俺を焼けですぞ。」

「なんで盾の名を知っているか後で聞くぞ……」


 お義父さんが赤豚を見ながら頷き、憤怒の盾にしてくださいました。

 ガツンと槍がお義父さんの盾にぶつかりました。


「うおおおおおおおおおおおおおおお!」


 と、お義父さんは憤怒の盾から炎を撒き散らして俺を焼き焦がそうとしてきました。

 今の俺からしたらそよ風と呼べるほどの炎ですな。さすがはお義父さん、しっかりと憤怒の盾も一部強化しているようですぞ。


「うわぁあああああああああああああああ!」


 と、俺は自ら吹き飛ばされた演出をしますぞ。


「ブブブブッブヒ!?」


 お義父さんの憤怒の炎は赤豚近くまで広がりかけましたな。


「おっと!」


 ですが、お姉さんを心配して抑え込んだ様ですぞ。

 赤豚が何やら俺に心配する様な声を上げていますが、形勢が不利なのを察して足が反対側へと向きかけておりますぞ。

 怠け豚は既に赤豚達より更に奥に引いております。

 そこでは教皇が放つ裁きからフィーロたんが助けるための蹴りを入れるのに時間が掛りますぞ?


「まだ……だ!」


 と、追い詰められながらも立ち上がる勇者を装いますぞ。


「何が……まだだ。満身創痍じゃねえか! 諦めやがれ!」


 お義父さんも合わせて肩で息をしている演技をしますぞ。


「俺は……俺はここで負けるわけには行かないのですぞ。ここで負けたら婚約者も、おね――ラフタリアちゃんやフィーロたんも盾の悪魔の物になってしまうのですぞ」


 確かこんな台詞だったと思いますぞ。


「婚約者って……心の底からいらねえよ!」


 おや? お義父さんが何か勘違いしている様に見えますな。

 視線の先が赤豚ですぞ。

 死ぬ気で勘弁してほしいですな!


「絶対に、助けるのですぞ」

「……まだやるのか?」


 お義父さんが心底面倒だって顔をしております。

 茶番なのは同意ですぞ。

 良いから出てくるのですぞ、教皇!


「まだだ……まだ俺は負けられないのですぞぉおおおおおおお!」


 と、言った所で拍手の音が聞こえました。

 やぁあああっと出てきましたな。

 疲れましたな。


「いやぁ……さすがは槍、とても強い意志ですね。良い足止めでしたよ」


 ピリピリと大規模な儀式魔法の気配が立ち込めてきましたな。

 では、こっちも対処するとしますかな。

 俺はスッと肩で息を切らした演技をやめて魔法を唱えますぞ。

 そうしないと被害が出ますからな。

 まあ、お義父さんならきっと耐えれる程度でしょうが。


『我、愛の狩人が天に命じ、地に命じ、理を切除し、繋げ、膿みを吐き出させよう。龍脈の力よ。我が魔力と勇者の力と共に力を成せ、力の根源足る愛の狩人が命ずる。森羅万象を今一度読み解き、魔たる力を吸収し力と成せ!』

「アル・リベレイション・アブソーブⅩ!」


 降り注ぐ裁きの光が俺の槍の先に吸い込まれて行きますぞ。


「ブ、ブブヒブブブ!」


 赤豚が何やら興奮してピョンピョン跳ねておりますが、何を喜んでいるのでしょうかな?

 ああ、きっと俺を煽てる台詞でも言っているのでしょう。

 さて……誰かは知っていますが尋ねるとしますかな?


「突然なんですかな! お前は!」


 そう台詞の主である教皇に向かって殺気を放ちながら俺は槍を向けますぞ。


「な――『裁き』を吸い込んだ!? いえ……」


 教皇が絶句しつつ、気色の悪い笑顔で冷や汗を流しながらこちらに語ってきますぞ。


「あいつか?」


 お義父さんがここで演技をやめて俺に尋ねてきますが、今は場に合わせて欲しいのですぞ!


「……」


 おい、名乗れですぞ!

 なに沈黙しているのですかな?


「お前は何者ですぞ!」


 しょうがないので名乗らせますぞ!


「こ、これはこれは、自己紹介が遅れましたね。私は三勇教会の教皇です」

「教皇……ね」


 お義父さんが最初の世界とは異なる、何やら疲れた様な声音で言いましたぞ。


「元康が無効化させたが、随分と威力のありそうな攻撃をこの国の王女がいる所で撃つとか……何を考えているんだ?」


 教皇が偉そうに両手を上げた後、揉み手をするように手を合わせますぞ。


「神のごとき力を持つ槍の勇者様の加護のある者達ならば私共の攻撃など、受ける事がないと確信を持って攻撃したまで」


 よくもまあ口が回りますな。


「さあ……槍の勇者様、力を合わせて国の土台を揺るがす盾の悪魔を共に倒しましょう」

「ブブヒー! ブブブ! ブブ!」


 赤豚がここぞとばかりに何やら鳴き喚き、お義父さん達が不快な顔をしております。

 どうせ碌な事を言っていないのは一目でわかりますな。

 そもそも俺の記憶と随分と違う事を言ってますぞ。

 なんでここで教皇が手の平を返そうとしているのですかな?


「――騙されてはいけません!」


 ここで高らかに謎の声が聞こえてきました。

 おや? この声は聞き覚えがありますな。


「今度はなんだ?」


 お義父さん達は声の方に視線を向けました。

 するとそこには……。


「あれはなんだ!?」

「空飛ぶ……フィーロちゃん?」

「えー? フィーロここにいるよ?」

「という事は空飛ぶフィロリアル!?」


 婚約者がここで声の主を指差して興奮気味に言いますぞ。

 そうですな。

 そこにはフレオンちゃんが空から今、まさに舞い降りた所ですぞ。


「ぶ、ぶぇえええ……」


 おや?

 フレオンちゃんの背中にストーカー豚が必死にしがみついていますぞ。


「自らの野望の為、世界の危機だと言うのに勇者同士の連携の邪魔をし、あまつさえ善行を積み立てていた勇者に全ての罪をかぶせてこの世から抹消し、思い通りに世界を支配しようとするその邪悪な考え! この……フィロリアルマスク2号は三勇教の行動をズビシっと見聞きしておりましたよ! 経緯も調べ済みです!」


 フレオンちゃんがフィロリアル姿で顔にマスクを付けて着地をすると同時に決めポーズですぞ。

 キラッ☆

 ユキちゃん達とアイドル活動をしていた頃が思い出されますな。


「ええ……そうです。メルロマルクの各地で神鳥の聖人と呼ばれていた覆面の聖人である尚文さんによって、国民の信頼が傾きそうだと知るなり、各地で罪を重ね、それを全て神鳥の聖人にして盾の勇者である尚文さんの所為にして評判を落とそうとする。その行動……このパーフェクト・ジャスティスが断じて見過ごすわけにはいきません」


 そこにフレオンちゃんの背中から降りた……フィロリアルの仮面を付けた樹が感情の籠らない声で言いました。

 更にフレオンちゃんに合わせた様に弓を構えるポーズをしております。

 上に弓を向けているポーズで流し目ですぞ。


 ところで……ハイドが抜けていますな。

 樹、うっかりさんですぞ。

 ああ、今は覆面なのでパーフェクト・ジャスティスですな。


「ジャスティスさん! フィロリアルマスク3号って打ち合わせたじゃないですか!」

「ええ、ですからパーフェクト・ジャスティスことフィロリアルマスクV3です」

「ぶ、ぶぇえええ……ぶえぶえ、ぶぇええええ!」


 ストーカー豚が何か鳴いておりますが……なんて言っているのでしょうな?

 やがてフレオンちゃんは天使姿になり、樹と合わせてポーズを取りました。

 後ろでボーンと爆発音がしましたな。


 ふと、お義父さんの方を見ると、宇宙が背景の猫の画像みたいな顔をしていますぞ。

 婚約者は目がキラキラしております。

 それからサッと、俺が渡したフレオンちゃんの羽根を見て、俺とフレオンちゃんを交互に見ておりますぞ。

 おお、気付きましたかな?

 さすがは婚約者、頭の回転が違いますな。


「ブブヒ! ブブブ! ブブヒー!」


 赤豚が何か喚いていていますが、どうしますかな?

 本当、何を言っているのでしょうな。


「だから言っているではありませんか。正義のヒーローは悪には屈しません! 冒険者マインさん、貴方の悪逆非道の行いも、いずれ成敗されるのですよ! 神鳥の聖人に手出しはさせませんよ!」


 おお、どうやら赤豚が横から入ったフレオンちゃんに何か言っていたみたいですな。


「僕達は各地で尚文さんを騙る悪を倒して回り、その背後にいる者達の正体を聞き出しています。三勇教会の教皇、言い逃れが出来るとは思わない事です……」


 マスクを付けた樹ことパーフェクト・ジャスティスが教皇を指差して宣言しました。


「ちゃちゃっちゃー!」


 そこでバックミュージックとばかりにフレオンちゃんが歌を奏で始めました。

 おお、素敵な歌ですな。

 ヒーローが好きという事で俺が覚えていた戦隊物の歌を独自にアレンジした様な歌声が響きますぞ。


「あ……ああぁ……ううう……」


 それに合わせて樹がのけ反る様な、恍惚とする様な、奇妙な声を漏らしております。

 きっと感動しているのでしょう。

 樹は音楽が得意ですからな!


「さ……さあ! ここに正義を示す時! 真実が明らかになります!」


 やがて樹がまるで薬をキメたかの様に眼光を鋭くして教皇に弓を向けました。


「おい……洗脳の盾は無いが、洗脳の歌はあるんじゃないのか?」


 お義父さんが婚約者を小突いて尋ねておりますぞ。


剣……43%

弓……97%→100%

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