運命共同体を見守る
「お前等の言っている事は本当に正しいと、正義だと言えるのか?」
「どういう事だ?」
「第二王女はこの通り、怪我一つ無く生きている」
お義父さんが婚約者を守りきるとばかりに盾を持って構えております。
凄く頼もしいお姿ですな。
「槍の勇者様。盾の勇者様は無実です。むしろわたしの命を守ってくれています。それに貴方は私に預けた羽の持ち主の一人を教えてくださっております。フィーロちゃんの事を伝えようとしてくださっていたのですよね?」
「ブヒ?」
赤豚が俺を見ますぞ。
う……婚約者の機嫌をよくさせるために渡した羽根がここで関係してくるのですかな?
「ああ、彼女はフィロリアルが好きだって聞いたからさ。拾ったフィーロちゃんの羽根をね」
ここは誤魔化せですぞ。
お義父さんが俺を射抜くような目で見てきました。
憶測ですが、お義父さんは俺を女には手を出さない男だと思ってくださっているのは間違いないですぞ。
「どうか信じてください。此度の騒動は大きな陰謀が隠されています」
「しかし、メルティ王女はその男に連れ回されているではないか!」
燻製、お前はいい加減にするのですぞ。
どこまで樹の台詞をなぞれば気がすむのですかな?
「それこそ、私の命を守ってもらう為に、わたしからお願いしています」
「世迷言を……」
ただ、この辺りの反応はさすがに樹とは異なりますな。
「不自然ではありませんか。盾の勇者様がわたしを誘拐する事に何の得があるのですか?」
「所詮は幼き第二王女……盾の悪魔に騙されているのだ」
燻製の方が反応が邪悪ですな。
心根が腐っているのが遠目でもわかりますぞ。
「槍の勇者様、メルロマルク国が盾の勇者様だけ扱いがおかしいと考えませんでしたか?」
「そうですな」
知っているから素直に頷きますぞ。
この程度なら……大丈夫なはず、大きく大局が揺らぐ事は無いはずですな。
「母上が仰っていました。今は人と人とが手を取り合い、一致団結して災いを退ける時だと……勇者様方にこの様な不必要な時間の浪費をさせる余裕はこの世界には無いのです。どうか、皆の者、槍の勇者様の様に武器をお納めください」
まあ、最初から俺は話をしたいって態度でいるので婚約者は周囲に呼び掛けるように言いましたな。
「わかったか? これは陰謀だ。これから俺の知る限りの真相を話す。元康、戦うか否かはそれからでも良いだろう?」
ここで和解は……俺が力を出せば出来るのはわかっていますが、そうもいかないのですぞ。
「ブブヒーブブブブッブブブ!」
赤豚が勝手に喋り出したのでその場の流れに合わせますぞ。
「ブブブヒ! ブブッブ! ブヒブヒ!」
状況と流れ的に洗脳の事を言っているのでしょう。
ただでさえ醜い顔が更に醜くなっているからわかりますぞ。
「姉上!?」
洗脳の力自体はありましたな。
三勇教が研究した代物に確かに存在はしました。
樹が良い様に利用されたのですぞ。
むしろ、そんな力があるのがわかっているからこそ、こんな荒唐無稽な話に信憑性があるのですな。
「洗脳の盾、という邪悪な力を持った盾の話か。眉唾だったんだが……」
ここは誰が言ったか曖昧ですが合わせますぞ。
「ブブブブヒ! ブブ!」
いや、なんて言っているか全然わかりませんな。
赤豚が必死に俺に両手を広げて説明しておりますが、嘘で便乗しているのは一目でわかりますぞ。
「聞いた話じゃ、おと――尚文も色々と各地を回って俺や樹、錬の起こした問題の後処理をしていたっぽいしなぁ……」
俺が調べた範囲の話で赤豚に言い返しますぞ。
すると赤豚は小さく舌打ちしたのがわかりましたな。
昔の俺は見過ごしていたでしょう。
「ブブ! ブヒヒヒ! ブブウウ……ブヒ」
完全に流れが変わって何を言っているのかわかりませんぞ。
赤豚が何やら情に訴える様に俺に縋りついて、お義父さんと婚約者を指差しております。
「槍の勇者様! 姉上の話を信じてはいけません」
婚約者! 信じるとかそれ以前に何を言っているのか全くわからないのですぞ!
くう……誰か豚語を解読してほしいのですぞ!
こういった時に教えてくれたお義父さんやユキちゃん、他のフィロリアル様達が愛おしくてしょうがありません。
もしくはお姉さんでもいいから教えてください。
この豚は何を言ったのですかな?
もはや勘で答えますぞ。
お義父さんに肩入れし過ぎているからこそ、予想外に赤豚が俺に縋りついたのです。
つまり、ここはお義父さんにとって都合が悪い方向で答えればいいのですな。
「ありえるのかもしれないな」
「元康……この下半身野郎が……」
お義父さんが忌々しそうに小さく呟きました。
くう……昔の俺は確かにそうでしたな。
ですが違うのですぞ。
むしろお義父さん。
いえ、ライバルにその身を捧げてしまったお義父さんをあの時、攻略しておけばその後の後悔も無かったのかもしれません。
つまりお義父さんを狙うのが良いのでしょうかな?
最初の世界のお義父さんと、ライバルにその身を捧げてしまったお義父さんが揃って手を振って、『それは無い』と仰っているような気がしますが、俺はそれくらいお義父さんを想ってますぞ!
「ブブブブヒ! ブヒヒヒ! ブブブブブブブブブ――……」
と、赤豚が長く能弁を垂れた直後、お義父さんが声を大きく言いましたぞ。
「んな力あるかボケ!」
あるにはあるのですぞ。
「盾の勇者様はそんな力があるの?」
少なくともお義父さんは持っておりませんぞ。
と、言えない歯がゆさ……辛抱ですぞ。もう少し辛抱し、赤豚とクズの権力が失墜するまでは辛抱なのですぞ。
「お前にはあるように見えるのか?」
「うーん……無いと思う」
「そこは即答して欲しかった」
なんとなく婚約者の反応が子供っぽいですな。
そう思いながら黙って見ているとお義父さんが言いますぞ。
「事と次第によっては第二王女はお前達に渡してもいい」
「え!?」
これは間違いなく悪手ではありますな。
ただ……まあ、俺の実力を持って赤豚の魔の手から婚約者を守る事はやろうと思えば容易くはありますな。
「ふん……話を聞こうではないか」
燻製、そろそろお前の口を引き裂いてやっても良いですかな?
お前は自身の立場をしっかりと理解しろですぞ! 勇者面も大概にしてほしいですな。
「まず前提として洗脳の力なんて物はない。そこから――」
「話にならん!」
「うるせえ! お前には言ってねぇ! くそ! 錬と樹はいないのか!」
「所用でいませんぞ」
「むしろお前ら……錬と樹を役に立たないから殺したんじゃないだろうな?」
うお! お義父さん、ここでカウンターを放って来るのですかな?
さすがはお義父さんですぞ。
「失礼な! お前ごときにイツキ様が出るまでもないだけだ!」
「ブブブー!」
赤豚と燻製が合わせて騒ぎますぞ。
気の合う間柄、ぴったりな関係ですぞ。一緒に処分してやりますかな?
「……こりゃあ預けられる相手じゃねえな」
お義父さんは燻製と赤豚、そして俺を見て何度も頷きましたぞ。
「フィーロ、イヤだろうが荷車を放棄して、コイツ等から逃げろ!」
「はーい!」
お義父さん達はフィロリアルクイーン姿のフィーロたんの背に乗り、走り出しましたぞ。
「じゃあな」
「あ、待つのですぞ!」
お義父さん達は一目散とばかりにフィーロたんに乗って走り去って行きます。
追いかけますぞ!
「あ、槍の人」
「くっ! 元康の奴、滅茶苦茶早い!」
逃げるお義父さん達に俺は付いて行きますぞ。
「槍の人、付いてこないでー!」
フィーロたんが一瞬で振り返り、蹴りを繰り出そうとしてきますぞ。
そのお姿がある光景と重なりました。
「ヒィ、ヒィイイイイイイイイ!?」
紙一重で俺はフィーロたんの蹴りを避けますぞ。
ですが尻餅をついてしまいました。
「じゃあねー槍の人」
「あ、待ってほしいのですぞー」
と、俺は手を伸ばすのですが、フィーロたんはお義父さん達を乗せて走り去って行ってしまったのでした。
「ブブブヒー!」
赤豚達が俺の後を追いかけてきましたな。
今更遅いですぞ。
どちらにしてもコンタクト自体は出来ましたな。ただ……どっちにしてもお義父さんが北東の国境を越えないようにしなければいけませんな。
そうして俺とお義父さん達の追跡劇が続いたのですな。
実は近くに隠れているのを察しながら、俺は気付かないふりをしてお義父さん達の追跡を繰り返したのですぞ。
ただ……。
「……?」
お姉さんが遠くから俺を眉を寄せながら見ているのが、なんとなくわかるのが非常に嫌らしいですな。
勘が鋭い方ですぞ。
そうこうしている内に夜になりました。
夜になると赤豚は近くの宿で休みたがるので捜索は一旦休みに絶対になりますぞ。
なのでこのタイミングを使って俺はクローキングランスと隠蔽魔法を併用してお義父さん達の様子を確認します。
匂いで追いかければすぐですぞ。
フィーロたんとお義父さん、お姉さんの匂いを見つけて俺はそっと見守る事にしたのですぞ。
どうやらお義父さんは隠れて焚火をして話し合いをしている様ですぞ。
「中々厳しいだろうけど、ここは一気に突破するしかないと思う」
幾らお義父さんでも今の強さでは厳しいのではないかと思いますな。
「そうですね……このまま逃げ続けるくらいなら」
「うん……」
「メルちゃん!」
と言う所で吹き矢がお義父さん達の方に飛んできました。
フィーロたんがフィロリアルクイーン姿になって婚約者を包むように守りますぞ。
危ないですぞ。
咄嗟に吹き矢を弾いて軌道を逸らしますぞ。
「なんだ!?」
「ごしゅじんさま! 何か近くにいる!? これじゃない!」
「何!?」
「もう少し離れた所にいっぱいいる。近づかれるまで気付かなかった」
周囲に吹き矢が雨の様に飛んできました。
しょうがないですな。
声を出さない様にして大風車を放ちますぞ。
お義父さん達に当たらない様に竜巻が起こって潜んでいる連中を吹き飛ばしました。
「ブ、ブブ……?」
「あ、こっちにもいるー!」
ここで婚約者を守る様に出てきた豚がいました。
ついでに仕留めますかな?
とは思ったのですが、婚約者がどうもその豚に視線を向けて安堵しているようだったので保留にしますぞ。
「ブブブ!」
まだ刺客がまぎれている様ですな。
俺は一気に飛び上がり、周囲に潜む連中に当たりを付けますぞ。
飛び上がっている限りは大丈夫なはずですな。
「エイミングランサーⅩ!」
「「「ギャアアア――!?」」」
「ブ――!?」
雨の様にエイミングランサーで周囲に潜む連中を一掃してやりましたぞ。
さて、お義父さん達の安全は確保出来ましたな。
「これは……」
お義父さん達が周囲をキョロキョロとしております。
さすがに隠しきれませんな。
本来は手を差し出さずともどうにか出来たのかもしれませんが念の為としか言いようがないですぞ。
バっと俺は隠蔽状態を解除して姿を見せました。
「お前は――!」
お義父さんが一気に警戒態勢を強めましたぞ。
どうしたらお義父さんに信じてもらえるでしょうかな?
「争う気は無いのですぞ」
両手を上げて俺は敵意が無いと意思表示をして見せますぞ。
「信じられるか!」
お義父さんの警戒心が一際強いですな。
どうしたら信用してもらえるでしょうか。
またループし始めた頃の様に説明をしたら信じてもらえるでしょうか?
いえ、下手に説明し過ぎると俺の狙う展開に行けませんからなぁ……うう、非常に歯がゆいのですぞ。
「本当に何も仕込んでいませんぞ? 現にこうして敵を殲滅しましたからな」
「どうだか……」
「ブブブ!」
婚約者と親しげにしている豚が何やら言っておりますぞ。
「ええ……確かに国の暗殺部隊を槍の勇者様が殲滅したのは間違いないみたいよ」
「ナオフミ様、たぶんですが、槍の勇者も今回の事件に関しておかしいのはわかっているのではないでしょうか?」
お姉さんがここで俺に助け舟を出して下さいましたぞ。
「ラフタリア? お前まで何を言っているんだ?」
お義父さんが信じられないと言った顔をしてお姉さんに答えますぞ。
「実はですね……昼間の追跡劇なのですが、槍の勇者は私達が隠れている所がわかっている様な視線の動きをしていまして……」
「そう言えば言っていたな。元康、事実なのか?」
「勘が良いですな」
お姉さんの勘の良さはお義父さんに匹敵するほどありますぞ。
その所為で昔、悲劇があったのも事実ですぞ。
お姉さんの勘の良さで俺がお義父さんに援助しているのがばれた記憶が苦々しいですぞ。
「んー?」
ヒィイイ!? フィーロたん!
俺を見て蹴るポーズはやめて欲しいのですぞ!
「……お前、その口調はふざけているのか?」
「ふざけていませんぞ?」
「……」
「この前の波の辺りから様子がおかしいですよね。あえて選択を間違えている、みたいな……」
ギク……お姉さんの勘の良さに脱帽ですぞ。
剣……20%
弓……44%




