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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
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 狙いは山奥、どんな事があろうとも生き残れるだけの強さを短時間でフレオンちゃんに与えるのですぞ。

 そう! 魔界大地のフレオンちゃんも、そう言ったマップでカンストまで上げて育てたのですからな!


「エイミングランサーⅩ! ブリューナクⅩ! グングニルⅩ! リベレイション・ファイアストームⅩ! リベレイション・プロミネンスⅩ! ハハハ! 弱い! 弱過ぎるぞぉおお!」

「ピヨオオオオオオオオ!」


 フレオンちゃんがとても楽しげな声を上げて俺の狩りに合わせて鳴いて下さっておりましたぞ!

 はははー!

 今まで沢山のフィロリアル様を育てて参りましたが、その中でも一際心が躍りますぞ!

 それは俺の初めてのフィロリアル様であるフレオンちゃんと再会できたからに他ならないからかもしれませんなぁあああ!


「どんどん行きますぞぉおおお! フレオンちゃーん!」

「ピヨオオオ!」


 と、日が暮れても俺達はLv上げをして行ったのですぞ。

 徹底したフレオンちゃんの強化ですぞ!

 赤豚なんぞに殺されてなるものか、ですからな!

 なんて調子でフレオンちゃんのLvを限界まで上げては資質向上を施して行きました。

 フレオンちゃんは急速に育ち始め、倒した魔物の肉を食べてどんどん成長してきております。


「グア! グアグア!」


 クイーンになるにはまだ時間は必要ですが、もう人を乗せられるほどには成長していますぞ。

 食べる度に体が大きくなっていっていますな。

 ただ……本当にフレオンちゃんが虚弱なフィロリアル様である可能性を懸念して確認は怠りませんぞ。


 ……いや、確かに見た事の無い種類と香りですぞ。

 骨格や香り、羽毛などから見てフィロリアル様なのは確実ですが、俺の知らない品種ですな。

 俺は現存する全てのフィロリアル様の品種を見分けられるはずなのですが……おかしいですな。


 などと思っていると……フレオンちゃんはその姿で羽ばたきを始めました。

 フワッとフレオンちゃんは大きくなられても羽ばたく事で、浮かんでおります。

 最初の世界でお義父さんに改造されたフィーロたんの様に……空を飛んでいるのではないのですかな?


「フレオンちゃん、空を飛べるのですかな?」

「グアー!」


 出来るとばかりにフレオンちゃんはパタパタと空中を縦横無尽に飛んでおります。

 何と……フレオンちゃんは生まれつき空を飛べるフィロリアル様だったのですな!

 凄いですぞ……。

 フィーロたんの再来ですぞ。

 さすがはフレオンちゃん。


「ともかく、フレオンちゃんの下地は大分整ってきましたな……」


 まずは遠隔で赤豚に殺されない様に結界を張って魔物紋の命令が届かない様にせねばなりません。

 残り時間も少ないのですぞ。


「フレオンちゃん、少々窮屈でしょうがこの山奥で少し待っていてくれませんかな?」

「グア? グアグア!」


 わかったとばかりにフレオンちゃんが頷いて下さりました。

 お利口さんですな。


「ではリベレイション・フレイムフロアー! ですぞ!」


 敵と定めた相手を焼きつくす魔法ではありますが、魔法領域を生成する意味で魔物紋のジャミングにも使えますぞ。

 こうして炎の結界を作り、フレオンちゃんを保護して俺はメルロマルクの城に戻りました。

 おおフレオンちゃん、別れるのが名残惜しいですな。




 城に戻ると赤豚が庭で俺を見つけて声を掛けてきました。


「ブブブー! ブブ!」

「ちょっと出かけていたのですぞ……」

「ブブ?」

「ああ、少し疲れているんだ。もう休ませて欲しい」


 あまり会話をするとボロが出ますからな。

 赤豚は適当に相手をしても問題は無いですぞ。何せ赤豚にとって俺はただ、頷いているだけの男ですからな。

 元から会話等成立していないのですぞ。


「あ! 槍の勇者様」


 そこにフィロリアルの管理をしている兵士が声を掛けてきました。


「ご一緒に出かけたフィロリアルは?」


 キョロキョロと兵士と赤豚がフレオンちゃんを探しております。

 お前ら何ぞにフレオンちゃんの居場所など教えるはずもないですぞ!

 とは言いたいのですが、言ったら面倒なのですぞ。


「いきなり暴れて走り去って行った。魔物紋でどうにかしようとしたんだが……どうも上手く機能しなくてさ」


 と、言った所で赤豚も魔物紋を使って何かしている様でしたぞ。

 ふ……既にジャミングはしてありますからフレオンちゃんの居場所の探知や魔物紋の発動などさせませんぞ!


「大変だった。逃げられたと思ってこんな時間まで走って探してたんだよ。やっぱ魔物の世話は大変なんだな」

「魔物紋の命令でそこまで遠くに逃げるはずはないと思うのですけど……やはり槍の勇者様が良い物を食べさせろと仰った際に与えたキメラの干し肉が何らかの反応をしてしまったのかもしれないですね……」

「おや? フレオンちゃんにそんな物を与えていたのでしたかな?」

「はい。マルティ様からの提案でもありまして……魔力が豊富で餌に適しているとの判断から、研究に残していた物を与えろと……」


 これは……赤豚め! フレオンちゃんに妙な物を食わせて死なせる気だったのですな。

 ですが、確かキメラの肉を食べさせてもフィロリアル様は死にませんぞ。

 俺が無言で赤豚を見ると。


「ブブブ、ブブブヒブブ」


 なんとなく赤豚が言い訳をしている様な感じで鳴いておりますぞ。

 きっとこれで死んだ場合もとぼける気だったのですな。


「どちらにしても捜索隊を編成した方がよさそうですね。逃げられてしまった場所を教えてください」

「わかりましたぞ」


 俺はフレオンちゃんを逃がした場所とは全く異なる場所を兵士と赤豚に教えてやりましたぞ。

 精々必死に探すのですな!

 はっはっは!

 波は……明日ですぞ。

 フレオンちゃんがしっかりとクイーンになってくださるかが肝ですな。


「フレオンちゃん……早く見つかって欲しい」


 で、フレオンちゃんに逃げられて落ち込んでいる風を装いましたな。


「ブブブ……」


 赤豚が最初の世界でフレオンちゃんが亡くなって悲しんでいる俺にしたように慰めるように肩に手を置きますぞ。

 ですが、俺が赤豚を、気づかれない様に見ていると、かすかに笑っているのが分かりました。

 コイツは間違いなく黒なのですぞ。

 殺してやらねば収まりませんな。

 ただ……その前にフレオンちゃんの魔物紋の権利を外さねばなりませんな。


「ちょっと一人にしていて欲しいですぞ」


 落ち込んだ振りをして、赤豚を俺は部屋から追い出しました。

 やがて時間が過ぎ、夜も更けた頃に俺は密かに動き出したのですぞ。


 まずは赤豚の部屋ですな。

 そーっと隠蔽状態で赤豚の部屋をソウルイータースピアを使って壁抜けをして入りこみ、寝ている赤豚に……。


「追撃のスリープランスⅩ! 更にパラライズランスⅩ!」


 フレオンちゃんを解放しろですぞ!

 愚かにもお義父さんに同じ事を言った時の記憶が蘇りますな。

 あの時の俺は本当に愚かでしたからな。

 ですが、今回こそ間違っていないと確信して言えますぞ。


「ブ……ブウウウウ……プー……ブヒ――ヒ」


 サクッと赤豚を刺して睡眠を深くしますぞ。

 そうして麻痺をさせてから……赤豚の手元に槍の穂先を滑らせて血を流させます。

 赤豚から血を十分採取した後、怪しまれない様に回復魔法を施して傷跡を跡形もなく消しました。


 さて……これさえあれば後は容易いですな。

 俺は赤豚の血を入れた瓶を懐にしまい、その場を離脱しました。


 後はローブを羽織ってフレオンちゃんを回収し、赤豚が起き出す前に魔物商のテントにフレオンちゃんを連れて来訪ですぞ。


「いらっしゃいませ。当テントにどのような様でしょうか? ハイ」

「このフィロリアル様に登録されている主を一人、外して欲しいのですぞ。その主の血はこれですな」

「えー……盗品の所有者登録の解除は当店では受け付けて無いのですが……」


 サッと俺はローブから顔を出して頼みますぞ。


「金には糸目をつけませんぞ? もしくは出来る所を教えて欲しいですな」

「えー……槍の勇者様にどのような事情があって盗品と思わしき魔物の所有者登録解除を望んでおられるのでしょうか?」


 魔物商が困惑した様子で俺に答えますぞ。


「盗品ではないですぞ。これは俺のフィロリアル様、フレオンちゃんですぞ」

「はあ……この血の持ち主の了承があるのかわかりかねますが……槍の勇者様の願いとあらば無下には出来ませんです。ハイ」


 魔物商は困った顔をしつつも赤豚の血を使って、フレオンちゃんに施された所有者登録の解除をしてくださいました。

 きっと槍の勇者というブランドを期待してやってくれたのでしょう。

 新たなループを始めた時の世界のお義父さん曰く、気を付けないといけない商人は将来性を買ってくる奴、だそうですぞ。

 槍の勇者である俺とコネクションがあれば後々儲かると踏んでいる、という事ですな。


 ともあれ、これで赤豚は所持者から外れました!

 完全に不安は除去出来ましたな。


「しかし……随分と立派な成長をしていらっしゃいますな」

「グアグア?」


 フレオンちゃんは着実に成長していらっしゃいますからな。


「自慢のフィロリアル様ですぞ」


 俺の読みでは明日の波が終わった頃にはフレオンちゃんはクイーン姿になっていらっしゃると思いますぞ。

 現に成長する素晴らしい音が俺の耳には届いております。


「良い血統のフィロリアルなのでしょう。良い物を拝見させて頂きましたです。ハイ。盾の勇者様のフィロリアルとよく似ておられる」

「ですな。では失礼しますぞ」

「いつでも当テントに来てくださいです。ハイ」


 と言った感じで、新たなフィロリアル様を欲しくはなりますが、今回ばかりはフレオンちゃんを優先して俺は魔物商のテントを後にしたのですぞ。

 これで最低限の憂いは取れましたな。


 とりあえず……フレオンちゃんがこのまま育っていくと……明日の昼から夜頃には天使の姿になれる程の成長をしているでしょう。


 ……赤豚達の証言が事実であるのか、ここで確かめるほかありませんな。

 本当にフレオンちゃんが変化に耐えられないか、一晩見守りますぞ。

 もちろん、手にした物資で薬を調合し、もしものときにはすぐに対処できるように……ですな!


 そうして俺は……一晩、フレオンちゃんに付きっきりで見守っていたのでした。




「クエクエ」


 朝日の中、フレオンちゃんは一段階大きくなった後、フィーロたんを始めとした無数のフィロリアル様達と同じくフィロリアルクイーンのお姿に成長いたしました。

 やはりそうだったのですぞ。


 赤豚ぁああああ!

 やはりお前がフレオンちゃんを殺したのですなぁああああ!


 パタパタとフレオンちゃんは楽しげに空を飛んでおります。

 そのお姿は最初の世界のフィーロたんを彷彿とさせる飛びっぷりですぞ。

 空飛ぶフィロリアル様はフィーロたん以外、見ておりませんから間違いありませんな。

 さて……赤豚達と他愛も無い会話……いえ、ここで殺しに行くのが良いかもしれませんぞ。


「フレオンちゃん。少し待っていて欲しいのですぞ」

「クエ!」


 フレオンちゃんに留守番を頼み、俺はポータルでメルロマルクの城へと戻ったのですぞ。




 メルロマルクの城に着きましたな。

 波の時間までに赤豚を血祭りに上げますかな?

 と、どう赤豚を処理すれば後腐れなく済むのかを考えますぞ。


 下手に動くとお義父さんに有らぬ罪が被りかねない危険な時期……錬や樹はどうでも良いですがお義父さんと……うう、フィーロたんとお姉さんには力を貸したい所存でもあります。

 激しく面倒なのですぞ。

 女王がこの時期にどこにいるのかわかれば一発なのですが、南西方面にいるだろうくらいしか判断できませんな。

 などと考えながら1時間程、城内や庭を散歩しておりました。


「だから……返しておくれと言っておるのじゃ」

「うるさい! まだわからないのか! これ以上難癖を付けて楯突くとその場で処分するぞ!」

「じゃが! ワシが命よりも大切にしているフィロリアルの卵なんじゃ! あの子が無ければワシは……」


 ん? フィロリアルの卵ですかな?

 城門の方で何やら番兵との口論が聞こえてきますぞ。


「何ですかな?」


 俺は会話をしている所に駆けより事情を尋ねますぞ。

 番兵は敬礼をしますな。

 一応、赤豚とクズのお気に入りと言う事でこの段階での俺の立場は高めですからな。


「ハッ! この老人が徴収したフィロリアルの卵を返せと抗議してきている次第であります!」

「なんと……そんな酷い事をしているのですかな? すぐに返すのですぞ!」


 フィロリアル様の卵を徴収……しかも当人から強引に奪ったのであるなら許せない蛮行ですぞ!

 タクトの様な奴ならば血祭りに上げねばなりませんな!


「えー……その件なのですが……」


 番兵は言葉を濁すように俺に耳打ちしますぞ。


「マルティ様の命令により槍の勇者様に贈呈されたフィロリアルが、この老人の証言する卵かと思います」

「なんと!」


 俺が欲したからなのですかな!?

 くうう……ここはどう切り抜けるのが良いでしょうか?

 いえ、フレオンちゃんに関してこの老人がとても詳しいと言うのは間違いない。是非とも話をせねばいけませんな!


「話はわかりました。老人、ちょっと俺とフィロリアルに関して話をするのですぞ」


 番兵には俺が説得するとばかりに流し眼と合図を送り、老人の背中を押してそのまま城門から出て城下町の方へと誘導しますぞ。


「ワシをどこに連れて行く気じゃ! 早く! 早くあの子を返しておくれ……」


 ああ、事情を説明しないといけないのは事実なのですぞ。

 俺は老人に耳打ちしますぞ。


「その卵は既に孵化させて俺が所持する状態になってしまっていますぞ。案内するので一緒に来てほしいのですぞ。ただし……少しばかり移動はしますがな、内緒にしないと危ないのですぞ」

「そう言って……」

「飛ぶ……フィロリアル様」


 俺の言葉に老人は黙りこみました。

 嘘を言っていないのがわかったのでしょうな。


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