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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
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成敗

「シルドフリーデンの代表様に美味しい所を持っていかれちまったねぇ」

「王者の風格がありましたね。手段は邪悪その物でしたが……」

「私達に力を貸してくれているガエリオン殿が、人とは異なる存在であるという事を……改めて認識せねばならないと私は感じた」

「真面目な騎士様は認められないかい?」

「本音で言えばそうだ。だが……相手はそれ以上に邪悪だったのだ。キタムラ殿の気持ちを汲み、私は見なかった事にする。人の上の立つモノとは、時にこれくらいの邪悪さを持たねば……ならないのだろう。そう学んだのだ」


 などとパンダ達が言っていますぞ。


「さあ、槍の勇者。いつものアレをやれなの」

「そうですな。考えてみれば……このタクトにはやっていませんでしたな」


 もしも知っていたら自慢なんぞしなかったでしょうし、対抗策があると言っているでしょう。

 だから、このタクトにも無様に叫ばせてやりますぞ。


「愛の狩人が命ずる。聖武器よ。眷属器よ。愛の狩人の呼び声に応じ、愚かなる力の束縛を解き、目覚めるのですぞ!」


 タクトの手に宿っていた剣が光り輝きますぞ。

 これは前にも見た光景ですな。


 そしてライバル。

 お前のツメも対象にしていたのですが反応が無いですぞ!


「な、なんだ!? 何が起こっているんだ! ぐ……力が抜けていく! な、何をしやがった!」


 タクトの手から七星武器が離れて俺達の周りを漂いますな。

 剣の聖武器は空高く、壁を突き抜けて飛んでいきました。


 おお……クズの言う通り、錬は生きているのですな。

 最初からタクトが出てきたらこれをやればよかったとは思いましたが、フィロリアル様の卵を破壊される事を飲み込めるだけの度胸を……俺は持てなかったので、結局は出来なかったでしょう。


「え? キャ!?」


 ここでタクトが持っていた武器の一つがゾウに向かって飛んで行きましたぞ!?

 ゾウの手には……投擲具の七星武器が収まっておりました。


「これは……ふむ……」


 パッとゾウは投擲具の七星武器を鉄球に変えてボールみたいに軽く上に跳ねあげておりました。

 岩石投げ等をしていた所から見て……確かに使い手としては十分でしょうな。


「わー……エルメロすごーい! 投げて投げてー!」

「わかりました」


 ポイッとコウのお願いを聞いてゾウが鉄球を投げるとブンと飛んで行きましたぞ。

 それをコウは走って追いかけておりました。


「七星武器がおもちゃにされてる……」

「エルメロ、威厳の為にその遊びはここでは程々にしておきな」

「そうですね……盾の勇者様、失礼しました」


 などとのどかな状況は任せて、お義父さんはタクトを見つめますぞ。


「まったく……確かに君の作戦は効果的だったよ。こっちも対処するのが大変だった……出てこなければ、まだ生き残れたかもしれないのに……バカだよ、君は。激しく同情する」


 お義父さんがそんな優しい言葉をタクトに告げますぞ。


「ああぁあああああああああ! うぜぇえええええええええええええ! お前等薄っぺらいんだよぉおおおおおお!」

「気に食わない事があると相手は薄っぺらい、か?」

「イキリ盾野郎! 悪党にはな、何やってもいいんだ! 悪はみんなで成敗する。それが世の中ってもんだろ!」

「ああ、そうだね。悪は皆で成敗する。だから君は裁かれるんだ」

「ちげーだろ! 俺が平和な世界にするからお前らイキリザコを全員、俺がこの世から駆逐してやる! 一人残らず駆逐してやる! テメーらみたいなイキリ野郎共をな! そもそもお前らさえこの世界に来なければ、俺が世界を平和に出来たんだ! てめえさえいなければさァッ! 俺は幸せに人生を謳歌できたんだよッ! お前達さえいなければ…ッ!!!」


 随分と長い恨み節ですな。

 吐き気が限界突破してますぞ。


「とてもそうは思えないな……だって、シルドフリーデンの人達の生活を見て、君が幸せにしていたとは思えない。君が吸い上げた所為で……みんな不幸だったよ。ある意味平等だけど自由の意味を履き違えてる。君とネリシェンって人の所為でね。君は自分の幸せの為に他者を踏みにじり過ぎだ」

「俺には仲間が沢山いるんだ! こんな酷い事を平気でするお前らは元の世界でも、いじめられてるんだろうな。俺はこの世界を大切にしてる。愛している! お前ら俺の事をもっと敬え! 敬えってんだ! イキリクソ野郎!」


 タクトがお義父さんの言葉を聞かずに子供の様に喚き散らしていますぞ!

 お義父さんはタクトの返事に深いため息を漏らしますぞ。


「元康くん、もう彼を楽にしてあげた方が良いんじゃないかな?」

「お義父さん、申し訳ありませんがそれは出来ない提案ですぞ……」


 俺は我慢できませんな。

 フィロリアル様達をあのような姿にしたのは元より、フィロリアル生産者の牧場を襲撃したのもコヤツでしょう。


「当初の予定通り、惨たらしく苦しみぬかせてから報いを受けさせねば、俺が我慢できません! そう、どのループに行っても絶対に苦しませて殺しますからな!」

「あーあ……ガエリオンがせめてもの慈悲としてここまで苦しめても、槍の勇者は見逃すなんてしてくれないなの」

「やっぱりガエリオンちゃんなりの優しさだったんだね」

「なの……じゃなきゃこれからのタクトが哀れ過ぎるなの。これだけ嬲れば許すかと思ったけど無理だったなの。槍の勇者は正直、一度こうと決めたら曲げない一直線な所があるから、同情してしまったなの。けど……タクトには不要だったみたいなの」


 何を同情しているのですかな?

 フィロリアル様の卵を星の数ほど砕いたタクトには今後、必ず惨たらしく、星の数ほど苦しめてから殺すのですぞ。

 ブリューナクで即死などもうさせてやりませんぞ。


「な、何をする気だ! イキってやがるが、お前ら曲がりなりにも勇者だろ! ホントに人間か!? 人間ならこんなことしねえだろ! イキリ野郎!」

「俺は愛の狩人ですぞ!」

「あー……うん、槍の勇者を人間だと思っちゃダメなの。人間なら耐えられない事を平然としてるから間違いねえなの」

「ガエリオンちゃん、さすがにそれは言っちゃダメだよ」


 タクトは武器が全て奪われ、豚共が命乞いの投降をしようとする中でも敵意を見せて拳を振り上げて来ますぞ。

 ははは、無様ですな。

 もっと醜態を晒せですぞ!


「俺は強いんだ! だから偉いんだよ! だから俺に従え! イキリ野郎! 絶対に許さないぞ! 一生このままッ! 負け犬のままでッ! 生きたくないッ!」


 よろよろと立ち上がったタクトが俺に向かって殴りかかってきましたが、サッと避けてやりますぞ。


「ああ……そこは安心するなの。生きる事はきっと出来ないなの」

「まずはその無駄にうるさい口を黙らせて生け捕りにしてやりますぞ! 魂までも苦しめですぞ! パラライズランスⅩ!」

「アガ――!?」


 ドスっと俺は力強くタクトに向かって槍を突き刺して黙らせてやりました。

 強化されたホムンクルスの体らしいですが、俺の本気の麻痺攻撃には抗えなかった様ですぞ。

 ビクンビクンとタクトは数度痙攣した後、しびれて動かなくなりましたな。


「さて、後は残党の完全な処理なの。フィロリアル共の手当てもしっかりとするなの」

「アナタに言われなくてもしますわ」

「メルちゃん、やっと終わったね」


 敵を全て倒した事を察したサクラちゃんが婚約者に声を掛けました。


「ええ……でも、父上は……」


 クズは女王の傍につきっきりですな。

 連行される際も悠然としていました。


「ブブブー!」

「ブブヒー!?」


 むしろ豚の方は激しく暴れておりますな。

 エクレア達は元より、ライバルが操っているゾンビ豚達が抑え込んでいる所を俺が戦闘不能にする為にパラライズランスで麻痺をさせていきました。

 こうしてクズではなく、タクト達を捕縛する事が出来たのですぞ。


 ちなみに、すぐにわかった事なのですが、タクトは俺とお義父さんが争い合っている状態を映像水晶で撮影、編集してシルドフリーデンやフォーブレイ等の各国に公開し、四聖勇者同士で争う腐った奴だと大々的に宣言して立場の復権を狙っていた様ですな。

 作戦中の俺達の耳には入っていませんでしたが、占拠した建物の放送に関してシルドフリーデンの者達は抗議の声を上げて石を城に向けて投げていたそうですぞ。


 曰く、


『シルトヴェルトとの戦争に負けたお陰で、平和で豊かな生活になっているんだ!』

『俺達はもう騙されないぞ!』

『前の大統領は責任を取って地獄に堕ちろ!』

『新たなる神竜様に続けー!』


 とかそう言った声が大きく、武器を持って俺達が鎮圧せねば乗り込んで行く所だったそうですぞ。

 ライバルにカリスマがあるとかおぞましい国になっていますな。

 早急にこの国をフィロリアル様一色にしないといけませんぞ。


「まあ……こんな所なの」


 パチンとライバルが指を鳴らすとゾンビとなっていた豚共が糸が切れたようにその場に倒れました。


「さて……」


 ライバルはそう言うと、皆から少し離れた所で俺の方を向いて何時でも掛ってこいとばかりに手招きしますぞ。


「ほら、槍の勇者。ガエリオンが命を以て責任を払う番なの。幾らでもガエリオンを殺せなの。お前の憂さが晴れるまで、生まれてこれなかったフィロリアル共の分だけガエリオンを殺せば良いなの」


 ライバルの奴、少々投げやりに聞こえる態度ですな。

 ですが、しっかりと責任を全うしようと一直線に俺を見てきますぞ。


「ガエリオンちゃん、今回の件はガエリオンちゃんだけの責任じゃ――」


 お義父さんがライバルの言い分に異議を申しております。


「元康様……今回の件、ユキにも罪がありますわ。罰するのならユキも罰してください」

「ユキちゃんまで何を言うのですかな?」

「元康様、私……非常に不服ではあるのですが、あのドラゴンの行った行為に関して、潔いと感じたのですわ。ですからフィロリアルの誇りの為、手を染めましたわ。罰は受ける覚悟は十分ありましてよ」


 胸を張り、自身でフィロリアル様達の卵を破壊した事に後悔は無いと言うユキちゃんに、俺はどんな顔をすべきでしょうか?


「それを言ったらアタイ達もそうだねぇ」

「そうですね……」

「だが……あのままでは良い結末には至らなかった。私も間違っているとは思えない」


 パンダを含めたエクレア達も同意見なのですぞ。

 くっ……今回のクズを含めたタクトとの戦いで、俺はフィロリアル様の卵を人質にされて何も出来ませんでした。

 そこでライバルがあえて責任を取ると啖呵を切ったお陰で、事は上手く収束したのは……まぎれも無い事実ですぞ。

 その責任をライバルは取る気でいるのですな。 


「元康くん……確かに、元康くんにとって命よりも大切なフィロリアル達の卵だったのかもしれない。だけどさ……」

「お義父さん、言わなくて結構ですぞ」


 困った顔で俺をどうにか説得したいという顔をするお義父さんを宥めますぞ。

 わかっています。

 わかっているのですぞ。


「ライバル、今回だけですぞ。今回だけはお前の暴挙を……我慢してやるのですぞ」


 そうしないと俺はタクトに良い様に利用されてしまっていたのは否定し難い事実。

 ライバルの言い分に間違いは無いと俺も感じられましたからな。


 もしも。

 もしも本当に俺とお義父さんが敗れた場合、タクトはフィロリアル様を根絶したでしょう。

 タクト自身も言っていましたからな。


「全てはタクトの所為なのですぞ。そう言う事にしておいてやりますぞ! ですがお前がした罪は絶対に忘れるなですぞ!」


 フィロリアル様も魔物であり、その王を語る……例え偽りであろうとも、残されたフィロリアル様の為に行動したライバルは、フィロリアル様を守ったのですぞ。

 大きなフィロリアル様がいて、タクトがフィロリアル様の根絶が出来なかったとしても、フィロリアル様を思った行動なのは揺るがないのですからな。


 ドラゴンであるライバルがフィロリアル様相手にここまでの覚悟を見せたのですから、俺も相応の態度をしなくてはいけません。

 でなければユキちゃんやみんなに顔向けできませんぞ。


「お義父さん、これで良いのですな?」

「元康くん……うん。それが良いと思うよ。タクトの手段が酷かったんだ」


 この怨みは本当の敵であるタクトに向けられるべき事ですからな!

 タクトの奴を下手に逃すとこのような事を仕出かすのですな。

 これからは惨たらしく苦しめて殺してやりますぞ、タクト!

 と、俺は心に決めたのですぞ。


「なのでユキちゃんも気にしないで良いのですぞ。俺がしなければいけなかった事を、よく……やってくれましたな。つらい事を任せてしまって申し訳ないですぞ」

「元康様!」


 ユキちゃんが俺の言葉に嬉しそうに表情を変えて抱きついてきました。

 俺は優しくユキちゃんを抱き止め、悲しみを共有しますぞ。

 そうしてしばしの時を過ごした後、ユキちゃんを下ろしました。


「ガエリオンちゃんの魔法……すさまじかったね」

「なの! なおふみにも教えてあげるなの!」

「いやぁ……それはちょっと勘弁してほしいんだけどな」

「なおふみだときっと攻撃性能は無いなの、それでも勇者だから何かの役に……なの? ちょっと調整が必要っぽいなの。あっちの武器だと出来るっぽいのにこっちの勇者の武器って面倒な制約が多いなのー」


 何やらライバルがブツブツと計算をしている様ですぞ。

 すぐには調整出来ない様ですな。

 ここでライバルが何やら俺を舐めた目で見てきますな。


「槍の勇者。お前にも教えてやってもいいなの」

「必要ありませんぞ!」

「フィロリアル達の力が集まって魔法を紡げるのに嫌なの? なのなの!」


 くうう……甘美な誘惑をしてきますぞ!


「この魔王め! ですぞ!」

「なのなの! いつでも待っているなの!」

「とにかく、今は少しでもタクトの被害を受けたフィロリアル様達の保護を最優先にいくのですぞ! まだ各地でフィロリアル様達が暴れているという話ですからな! ユキちゃん! しっかりとやり遂げるのですぞ!」

「はいですわ! では行きますわよ! コウ、サクラ!」

「わかったー!」

「メルちゃん達を送ったら行くー」


 という訳でライバルの罪は不問とし、俺達はその後の騒動の鎮圧に動いたのですぞ。

 もちろんタクト残党の処理は順調に進んで行きました。

 シルドフリーデンの城もしっかりと解放出来ました。


 クズの証言もあって、潜伏していたタクト残党も捕縛出来ました。

 行方不明だった財産も大体が確保できたとの話ですな。

 やはり潜水艦などで輸送中だったそうですぞ。

 サメの如く、ライバルと俺が潜って捕縛する一幕がありました。


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