番外編 先だし槍の勇者
先だし槍の勇者
先の展開をちょっとだけ切り張り(想定)
闇聖勇者<ダークブレイブ>隊
「キールは何処に行ったんだ? アイツ、今日は朝から見てないんだが……」
お義父さんが食堂でお姉さんに尋ねますぞ。
「あの……先ほどから食堂の隅で剣の勇者とブラックサンダーさんと一緒に料理が出来るのを待っているのか待機してます」
「元康とフィロリアル共じゃないんだから……」
なんてお義父さんがため息をすると、居場所を特定されたからか、錬とブラックサンダー、そしてキールがシュバッと隠蔽状態を解いて姿を現し、ポーズを取りますぞ。
「前世の因果が、再び俺達を巡り合わせたようだな……」
相変わらず錬はブラックサンダーと楽しげな遊びをしている様ですぞ。
右目を左手で肘を妙な角度にして覆い、俺達を流し眼で見ております。
「フィロリアルマスク4号見参だぜ!」
キールも謎のポーズをとっておりますぞ。
俺の着けているマスクに似た物を着けておりますぞ。
「フハハハ! 漆黒の双牙参上!」
ブラックサンダーも錬の後ろで左目を隠して決めポーズをとっておりますぞ。
「闇の剣士<シャドウセイント>!」
「「「我ら! 闇聖勇者<ダークブレイブ>隊」」」
ボーンと背後に少しばかり爆発が起こりましたな。
「……はぁ。コイツ等は……飯が食いたいなら素直に言えば良いだろ……勝手に住み着きやがって。本気でヤバいな、コイツ等……」
「キールくんまで混ざり始めましたね……」
「完全にマスコット枠だな。つーか、出待ちするとか、暇なのか……?」
ここで俺も参加すべきですな!
ジュワ!
「フィロリアルマスク参上ですぞ! クエーーー! ですぞ!」
「元康も便乗して悪ふざけしやがって……ったく、謎の正義戦隊連中は疲れる……」
「ハッハッハ! フィロリアルレンジャーですぞ!」
「フ……違うな。俺達は闇聖勇者<ダークブレイブ>隊だ」
「4号が混じっているのにな」
お義父さんのツッコミですぞ。
「フィロリアルマスク2号と3号がいないのがまだマシか……リーシアは2号と3号の動向を聞かねばならんな」
「お義父さんも参加しませんかな? お姉さんもどうですぞ?」
「そのノリは嫌です」
「誰かー……フィーロ呼んで来い。せめて元康だけでも黙らせろ」
ヒィ!? フィーロたんが来るのですかな!?
★
フラグブレイカー樹
樹が学園の寮長豚に案内されて行きますぞ。
「転移スキルは所持しているので別に寮に住み込まなくても良いのですが……」
「ブーブーブブブブ、ブブブヒ」
何やら豚に説明されている様ですな。
樹はため息交じりに自室に宛がわれた部屋の前に来ましたぞ。
それからおもむろに、扉に手を掛け……何故かミリタリー好きな豚がやっていた扉に耳を当てた動作の後、豚に樹は尋ねますな。
「この部屋は僕の部屋になるはずで、誰も中に居ないはずですよね?」
「ブ、ブウ……ブブブ」
「そうですか……と言う事は」
持っていた弓を銃器……グレネードガンに変えて扉を急いで開けた後にぶっ放しましたぞ。
「パラライズスモークショット!」
バシュッと樹が弾を発射すると同時に扉を閉めました。
ブシューっと室内で煙が吹き出す音が響きました。
「ブヒィイイイイイイイイイイイイ!?」
という豚の鳴き声が響き渡り、やがて静かになりましたぞ。
「ブ、ブヒ……?」
「嫌な予感がしたので念のためやっておいて正解でしたね」
扉が開かれ煙が晴れると、そこにはシャワー上がりらしき全裸の豚が倒れておりましたぞ。
「ブ……ブブヒ? ブブブ……」
樹は見ない様にしております。
寮長豚が室内に入り、全裸の豚にタオルを掛けますぞ。
「大方随分前から空き部屋だったから更衣室代わりに利用していたとかではないのですか?」
「ブ……ブブブブ……ブブ……」
寮長豚が倒れている豚に麻痺を治療する魔法を施しますぞ。
どうやら世界が誇る魔術学園であるのは間違いない様ですぞ。さすがはお義父さんに色々と力を貸していた魔法屋が入学していた学園ですな。
寮長豚も回復魔法完備の様ですぞ。
「ブブ、ブブブヒ! ブブブ!」
「いえ……そんな家柄と成績自慢をされましてもね。こっちは四聖勇者の弓の勇者なのでそれよりも遥かに格上ですよ」
「ブ、ブヒ? ブブブ! ブブヒーブヒー!」
何やら豚があっけにとられた顔をしたように見えましたが即座に我に返り、樹を指差して叫んでおります。
このノリ……なんとなく覚えておりますぞ。
おそらく、謎の勝負をしろと言い渡されているのだと思いますぞ。
「ブブブ……ブヒ! ブーブー!」
ここで寮長豚が大きな声で全裸豚に怒鳴りつけました。
「まずは学園の一室を無断使用した件を学園内の代表に報告してからではないですか? 後、勝負をしたからと言って、貴方の罪状は無かった事になりませんよ。そもそも僕に姦計をしようとしたと疑われる事になるのでこのまま部屋を出た方が貴方の将来的に良いと思いますね」
寮長豚に怒鳴られ、樹にバッサリと切り捨てられ、全裸豚は更に顔を赤くさせて喚き始めましたぞ。
その騒動を聞いて、学園長が文字通り飛ぶ勢いできましたな。
「一体何をしているんだ! 君は……この方を誰だと心得ている! 世界を波から救った四聖勇者の弓の勇者様だぞ!」
「ブ、ブヒィイイイ!?」
学園長に怒鳴られてさすがの全裸だった豚も事態の重さに気付いた様ですぞ。
「君は優等生だと思っていたけれど……残念だ。君が騒ぐ退学に関してだが、それは君にしなければならない。親御さんを悲しませるような真似はやめるんだ」
「まあまあ学園長……彼女も悪質だとは思いますが、将来を断っては可哀想です……僕に接近しないのなら不問にしますから、どうか慈悲を与えて上げてください」
「弓の勇者様がそう仰るのでしたら……弓の勇者様に感謝するんだな。早く出て行きたまえ」
「ブ、ブヒイイイ!」
権力が通じず、悔しげな声を上げながら豚は部屋を出て行きましたぞ。
「来ていただいた直後にこのような出来事に巻き込んでしまい。誠に申し訳ありません」
「気にしないでください。予感はしていたので……」
そう言いながら、樹は部屋のベランダの方に行き……徐にグレネードガンにしていた弓をハンドガンに変えて――。
「ブヒ――」
パァンっと落ちてきた豚の眉間を打ち抜き、手すりに引っかからない様に弾き飛ばしました。
撃たれた豚がプカァ……っと地面にたたきつけられる直前に浮かんでから着地しましたぞ。
風を纏った装備だったみたいですな。
「そのお約束をへし折る……後はどこからきますかね?」
「ず、随分と弓の勇者様は用意周到なご様子ですね」
「ヒントをこれでもかとばらまいた方が居たのでね……とにかく、僕はこれから部屋で休みますね」
「はい……どうぞごゆっくり……」
っと言った様子で学園長と寮長豚は部屋から出て行きましたぞ。
「さて……何処かに隠れているのはわかりますから出て来て下さい」
「チッ! お膳立てしたのに、つまんねえ展開なの。なのなの!」
俺と一緒に居るライバルが舌打ちをしましたぞ。
「樹……フラグを潰したら面白くないじゃないか……」
お義父さんがここで樹に抗議しましたぞ。
「やっぱり隠れていましたか……別に良いんですよ。僕にそんなお約束はいりません。まったく……やはりガエリオンさんが無駄に推したのには理由があったんですね」
「樹……お約束は守った方が良いですぞ。豚ですがな」
俺にもこの様な騒動は日常茶飯事でしたぞ!
豚なのでやりたいとも思えませんがな!
「いい加減、この前きた未来のロボットモドキからして僕をからかうのをやめてください。ガエリオンさん!」
「ガエリオンは誘導してないなの」
「樹、ラフえもんに失礼じゃないか……」




