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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
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滅却不可

『ブブブー!』

「国民よ立ち上がれ……ねー。誰が転ばせたんだか……ガエリオンちゃんの苦労も知らずによく言うもんだ」

「本当、そうなの……いい加減、ガエリオンも腹立たしいから一気に仕留めてやるのも視野に入れるなの」

「飛んで火に入る夏の虫ですぞ! ここで俺が持てる限りの最強の魔法を放って城ごと滅却処分をしてやりますぞ!」


 そんな悠長な事をしている暇など俺が与えると思っているのですかな?

 バカにするのもいい加減にしろですぞ。


「槍の勇者、珍しく気が合うなの」


 という所で、クズの足元にフィロリアル様のお姿が見えますぞ。

 ぐったりしておりますが……シルドフリーデンで待機して頂いているフィロリアル様ですかな!?

 これは……まさか……フィロリアル様まで人質に!?


「勇者様方、それはどうかご勘弁をお願い申し上げます! 我が国の首脳陣は元より、勇者様方からお預かりしているフィロリアルも人質に取られている状況で……勇者様方を呼び出す為に捕えた者達を悪魔の使徒として殺害する事を警告しております」

「どこまでも卑怯な連中ですぞ」


 これでは建物ごと焼き払う事ができませんぞ。


「準備は万全……って所か。つまり俺達が乗り込むまでこの演説をやめるつもりはないし……彼等の理屈では世界中の怪しげなフィロリアルは俺達を倒すまで暴れるのをやめない。用意周到な事で……フォーブレイ方面がどうなっているか不安だ」

「きっとあっちも大騒ぎなのは間違いないなの」

「ったく、面倒だねぇ……ん?」


 うんざりした様子のパンダが何かに気付いたのか、何度も鼻を嗅いでいます。


「ねー……ナオフミー」


 それはサクラちゃんも同じだった様でお義父さんに声を掛けました。


「ラーサさん、サクラちゃん、どうしたの?」

「えっとねー……メルちゃんの匂いがするー」

「こっちも反応があるねぇ……近いみたいだよ」


 お義父さんがサクラちゃんの言葉を聞いて、嫌そうに眉を寄せつつ城の方に目を向けました。

 つまりあっちに婚約者達がいる、と。


「……あの城内にメルロマルクの王女とフォウルくんって子がいる?」

「一緒に女王もいそうだねぇ……こりゃあ勇者達にとって都合の悪い者を集めて盤石な要塞と化しているって事じゃないかい?」

「うぐっ……あやつ等……」


 自分の子供を! 婚約者まで人質にするとは呆れ果てたですぞ!

 どうしようもないクズですが、家族に向ける愛情だけは評価していたのですがな。

 それも所詮はこの程度だったという事でしょう。


 ……どうすればいいのですかな?

 確かに忌まわしいと思う婚約者ではありますが、フィーロたんとサクラちゃんの親友であるのは変わらないのですぞ。

 怪我でもしようものならフィーロたんとサクラちゃんが悲しみます。

 下手な事は出来ませんぞ。

 あいつ等を惨たらしく殺すのは間違いないですが、まずは婚約者達の救出を優先すべきでしょうな。


「英知の賢王がその本領を発揮したという事じゃないかい?」

「オルトクレイ王……貴方はそこまで堕ちたというのですか……」


 エクレアが嘆くような、震えた声で言いました。


「で? どうするんだい?」

「うーん……下手に人質奪還を優先しようものなら裏をかかれそうだし……かといって話で聞いた英知の賢王が本気で潰しに来ているなら読まれているだろうし……みんなは何かない?」

「俺が正面から乗り込んでクズと豚を皆殺しにしてきますぞ!」

「うん。元康くんはそうだね……ただ、下手をすると元康くんの大事な者達が死にかねないから、出来る限り注意したいんだ」


 くっ……お義父さんの言う事はもっともなのですぞ。

 これまでの事を思うに、確実にフィロリアル様を人質にしてくるでしょう。

 そうなったら安易な行動は取れなくなってしまいますぞ。


「人質諸共皆殺しなんて真似をしたら、それこそ相手の思う壺だろうね……冷酷な魔王って風聞したいんだから代表が死んでも勇者信仰に傷が付きかねない……」

「一箇所に集まって呼び出しに応じる必要はないなの。相手の望む者達であるなおふみと槍の勇者が代表として奴等の所に赴いて、その間に別働隊が力を合わせて人質を救出……というのはどうなの?」

「無難っちゃ無難だけど、それが良さそうだねぇ……んじゃ、役割を決めようじゃないか。注意を引く勇者とシルドフリーデンの代表ドラゴンは鉄板でいくのが良さそうだね」

「人質を救出したら一斉に鎮圧を計ればどうにか……なるかなぁ……むしろ元康くんは隠れるのが上手だから、潜入して人質の救出をするのも手なんだけど……」

「ブブブブヒー! ブブブヒー!」


 豚が拡声器を使って何やら鳴いておりますぞ。

 訳がわかりませんな。


「さっき元康くんと俺はばっちり目撃されているもんね。名指しで呼び出されているから下手に元康くんが潜伏しようものなら警戒されかねないか……ご丁寧にガエリオンちゃんまで呼んでいるし」


 くうっ……婚約者達を俺が潜伏して助けるのは封殺されているような物という事ですぞ。

 クズの奴め。敵だとここまで面倒なのですな。

 必ずや報いを受けさせますぞ!


「そうだねぇ……エルメロ、アンタはここから建物内を把握出来るかい?」

「ちょっと難しいわね……」

「じゃあ脱出経路の確保は出来るかい?」


 パンダの言葉にゾウは頷きますぞ。

 何をするのですかな?


「コウさんは私と一緒に作戦に参加してほしいのですが、いいですか?」

「うん。わかったー」

「些か槍の勇者様風ですが、ラーサ、アンタがやり遂げればどこだって出来るよ。竹でも生やせばね」

「決まったね」


 何やらパンダとゾウにしかわからない手立てがあるみたいですぞ。


「騎士様とあたいと部下、サクラは忍び足でお姫様方の救出。その間に勇者様方とドラゴン様はテロリストと英知の賢王の注意を引いておく……ってのが無難な所かねぇ」

「うん。ユキちゃんは元康くんをお願い」

「わかりましたわ」

「しょうがねえなの」

「それではそうですな……潜入組には俺が魔法で強力な隠蔽状態を作って隠れられるようにしますぞ。それでもばれる時はばれるので十分に注意するのですぞ」

「うむ……イワタニ殿、キタムラ殿、必ずや期待に応えてみせる」


 そんな訳で俺達は豚共に見えないようにテントの中に一旦入り、パンダ達潜入組に強力な隠蔽魔法を施したのですぞ。

 これで豚共はまず見つけられないと思いますな。

 生半可な魔法では解除等出来ませんぞ。


「では……俺達は乗り込むとしようか。何が出てくるかわからないから、注意は怠らないでね」

「場合によっては先制攻撃で仕留めるのですぞ」


 面倒な豚共とクズを仕留める戦いの幕開けですぞ!

 という訳でタクト残党の代表とクズに会う為に俺達は行動を開始したのですぞ。




 呼び出しに応じる形で俺達はシルドフリーデンの城の中へと入っていきます。

 城内は所々に瓦礫が散乱しております。

 激しい戦いがあったようですぞ。


「元康くん、わかっているね?」

「もちろんですぞ」


 出来る限りゆっくりと、相手の呼び出しに王者の風格を持った歩調で歩いて時間を稼ぐのですぞ。

 サクラちゃんを筆頭とした潜入組が人質の救出のために動いているのですからな。

 人質さえいなければ、こんな奴等すぐに血祭りにあげてやりますぞ。


『ブブブー!』


 城内放送とばかりに所々に設置された拡声器から豚の鳴き声が聞こえてきますな。


「下品な呼び出しなの。ま……下手に女共が襲いかかってこないのは警戒とみるべきか……なの」

「罠に誘き寄せようっていうのは一発でわかるね。ガエリオンちゃんとユキちゃんも十分に警戒してね」

「はいですわ」

「今回ばかりは元康くんも作戦に合わせてよ?」

「わかっていますぞ」


 正直、面倒なのと豚とクズへの殺意でこの建物ごと爆散させたくてしょうがないですぞ。

 一刻も早く豚を殺処分する事ばかりが脳裏に過るのですぞ。

 なんて殺意を堪えながら俺達はゆっくりと大きな決議場の様な会議室にまでやってきましたぞ。

 扉を開けて中に入ると、タクト残党の豚共とクズが上座で待ち構えていましたな。

 部屋の所々にも豚が控えております。

 万全の態勢と言った様子ですぞ。

 タクト残党がまだこんなにもいたのですな。


「来たな、盾! 槍!」


 クズが殺意が籠った目でこちらを睨みながら言いました。

 俺は反射的にクズを殺意の篭った表情で睨みますぞ。

 こんな下劣な作戦を行なった以上、絶対にじわじわと苦しめて殺してやりますぞ!


「これはこれは……オルトクレイ王とでも言うべきか……いや、メルロマルクの名誉のために偽物の英知の賢王と呼んだ方がいいのかな?」


 お義父さんがスイッチが入った様子で挑発気味に答えますぞ。


「いささか手荒過ぎる歓迎と俺達は感じている所ですが……」

「ブブブー!」


 豚は黙れですぞ!

 そう、殺意を込めて睨んだ所で俺は絶句しますぞ。

 この豚共……映像とは恰好が異なりますな。


 衣服、急所からどこまで無数に膨らみ……いえ、卵を数珠つなぎに張り合わせた装備を着用しております。

 しかも各々どこでも出せるように卵を所持しているのですぞ。


 アレは……!?

 全てフィロリアル様の卵ですぞ!


「可能性として視野に入れていたけど、まさか本当にやってくるとは思わなかったなの……」

「これは……あまりにも卑劣ですわ。元康様の弱点をここまで的確に突いてくるとは、正々堂々相手なさい!」


 ライバルは呆れ、ユキちゃんは糾弾していますぞ。


「卑怯ですぞ! これでは手が出せないですぞ!」


 ……クズは全てを殺さんとする殺意の籠った眼光で一分ほど黙り込んで睨んでおりました。

 やがてゆっくりと口を開きました。


「ふん! この日が来るのをどれだけ待ちわびた事か! 邪悪な魔王共め」

「魔王……ね。これは凄い。世界中でフィロリアル達を暴れさせ、世界の危機よりも自らの野望を優先してシルトヴェルトに攻め入った過激派は言う事が違う」


 クズはお義父さんに言い返されて頬がぴくぴくと痙攣し、怒りを抑え込むように拳をワナワナとふるわせております。


 そんな事より、豚共を始め、クズの体中に付けられたフィロリアル様の卵はどういう事ですかな!?

 アレではエイミングランサーでさえも下手に当てると卵が砕けてしまいます。

 三勇教のフィロリアル様の卵人質作戦なんか目じゃない程、分厚い防壁ですぞ!


 やがてワナワナと震える体を抑え込みながらクズはゆっくりと答えますぞ。


「別に救いなど求めてなどおらぬ! ワシの望みは亡きマルティの無念を晴らし、貴様等に惨たらしい末路と盾と槍の勇者などというくだらない伝承に終止符を打つ事のみ!」

「で? それでする事は、自分の家族を攫って……フィロリアルの卵を盾にして一網打尽か?」

「わざわざ手の内を貴様等に教える義理は無い!」

「それが通じるとでも?」


 冷酷な表情を浮かべるお義父さんが冷や汗を流しているのがわかりますぞ。

 悟られないようにお義父さんはクズに言い返しますな。


「ブブブ! ブブー! ブブブ!」


 タクト残党の代表豚が何やら言っておりますな。


「ふん! 槍……この卵が惜しいのなら、この場で盾を殺し、お前も自害しろ。これは……警告ではない。命令だ!」

「なんですと!?」

「命令に逆らうと言うなら……見せしめだ」

「「「ブブブー!」」」


 タクト残党の豚共は一斉に懐やポケットからフィロリアル様の卵を出し、地面に向けて――。


「や、やめろぉおおおおおおおおおおおおお!」


 バリンと一斉に音を立ててフィロリアル様方の卵が砕け散り、中身が周囲に飛び散りました。


「貴様ぁあああああああああああああああああああ!」


 ここまでどす黒い感情が溢れ出て来るのはタクトに最初にやられた時以来ですぞ!


「絶対に許しませんぞ!」

「おっと、ワシ達を攻撃して、この卵共が無事だなんて思えるのか?」

「くうううう……」


 周囲には無数のフィロリアル様の卵があるのですぞ。


「用意周到すぎるなの……槍の勇者の為にここまでやるとは感嘆するなの。これが英知の賢王なの……?」

「優雅さの欠片もありませんが、元康様を傷つけるのにこれほどの事はありませんわ……」


 どこまでも下劣な奴ですぞ、英知の賢王!

 お前は絶対に惨たらしく殺してやりますぞ!

 ですが俺の忠誠心の為、フィロリアル様を……お義父さんを……うぐ……。


「ふはははははは……実に無様だ! もっと苦しむがいい!」


 それから更にクズは俺が悶え苦しむさまを見て笑い続けていました。


「ははははははは」


 随分と長く笑っていますぞ!

 そこまで赤豚如きを殺した事を根に持っているのですかな!

 奴は世界の害悪! 殺したとしても何の罪も無い善行なのですぞ!


「……?」

「……なの?」


 その様子にお義父さんとライバルが首を傾げました。


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