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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
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策略

 メルロマルクの城にポータルで移動すると……。


「グエエぇエエエエェエエぇエー!」


 シルトヴェルトで見たのと同様のフィロリアル様が、メルロマルクの城と城下町で現在進行形で暴れまわっていました。

 城は元より、城下町の方でも煙が上がっております。

 もちろんメルロマルク方面に派遣された俺達が育てたフィロリアル様が兵士と共に鎮圧に対応しておりますが、手数が足りずに困っている様ですぞ。


「グアグアグアー!」


 大きなフィロリアル様の配下であるフィロリアル様が集って城下町の方になだれ込んでいる様で、現在激戦の真っ最中なのですぞ!


「くっ……こっちでもフィロリアルが暴れまわっているのか!」

「こりゃあ相当だねぇ。どうするんだい?」

「コウ、エルメロさん、ユキちゃん、シルトヴェルトのみんなは城下町の鎮圧をお願い! 俺とサクラちゃん、元康くんは城の方へ! ラーサさんとエクレールさんも一緒に来て」

「承知しましたわ! コウ! エルメロ様を連れて鎮圧に行きますわよ!」

「わかったー! エルメロ! がんばろう!」

「はい!」


 コウはゾウの股下に潜りこむとフィロリアル姿に変化してユキちゃんと共にシルトヴェルトの者達を連れて城下町の方へと駆けだして行きます。


「女王陛下!」


 俺達の方はエクレアが先頭になってメルロマルクの城へと走り出しました。


「行こう!」

「うん! メルちゃーん!」


 城内に強引に入ってきたフィロリアル様がいらっしゃるのか、城の中で兵士達が倒れております。


「こりゃあ随分と派手に暴れてるねぇ……」

「けど、ちょっと妙な状況なの」


 ライバルがここで眉を寄せながら兵士達を見ますぞ。


「ガエリオンちゃん、何かあるの?」

「ガエリオンの読みだと、クズ……英知の賢王がこの作戦の指揮をしているんだと思っていたなの」

「うん」

「その英知の賢王が自国の、大切な家族がいる城にまでフィロリアル共を嗾けるなの?」

「……言われてみれば確かにそうだけど……裏切った妻と娘を家族として見てないんじゃないの?」

「いや……ガエリオンが知っている最初の世界の英知の賢王と話をした限り、例え何があっても家族に危害を与える事を良しとしない性格なの。それは例えなおふみに媚を売る女王を目の前にしても、なの」

「まあ……その世界だとそうなのかもしれないけど、この世界だと元康くんがあの王女を目の前で殺しているし……」


 ライバルは納得しかねると言った表情をしておりますぞ。


「ガエリオンも又聞き程度だけど、女王をタクトと王女に殺された際には処罰を下したけれど、それでも擁護出来ない限度を超えているから裁いたって話なの……率先して危機に陥れる様な事をする性格をしていないなの」

「つまりこの作戦は英知の賢王の知らない範囲で行われているって事?」

「それはわからないなの。どっちにしても城内で暴れているフィロリアル共を抑え込むのが先なの」


 俺達は急いで玉座の間にまで向かいました。

 するとそこには激戦の爪痕が刻まれておりました。

 メルロマルクに派遣した護衛をしていたフィロリアル様方がその場で倒れております。


「あ……あああ……フィロリアル様……」


 俺は倒れたフィロリアル様に駆け寄り、容体を確認しましたが……既に息はなく……。


「あああぁあああああ……!」

「これは……酷い……」

「女王陛下! どこにいらっしゃるのだ! 陛下ぁあああああ!」


 エクレアがもぬけの殻となっている玉座の間で女王を呼びますぞ。

 ですが返事はありません。

 女王や婚約者の安否は気になりますが、そんな事よりフィロリアル様ですぞ。


 ああ……この子は、ナイトくんですぞ。

 ルナちゃんの様な夜の闇の様な藍色だったのでナイトと……騎士を兼ねてそんな名前にした男の子なのですぞ。

 その子が……こんな見るも無残な姿になるだなんて……。


「誰かいないのか!?」

「うぐ……」


 ここで扉の影から傷だらけのフィロリアル様に守られた兵士が倒れこんできました。


「お前は! 大丈夫か!?」

「大丈夫!?」


 お義父さんとエクレアが駆け寄り、フィロリアル様と兵士に回復魔法を施しますぞ。


「はぁ……はぁ……勇者様方、ありがとうございます。私はこの子によって守ってもらい、辛うじて……」

「うう……いたかったー……動けなかったからこの人しか守れなかったー……」

「守れただけで十分なのですぞ!」


 おお……誰か一人だけでも助けられたのなら十分なのですぞ。


「女王陛下は!?」

「それが……奇妙なフィロリアルを連れ謎の軍団が城に乗り込み、強靭な力で守りを突破し……玉座の間にまで乗り込んできたかと思うと警備の者を薙ぎ払って強引に女王陛下とメルティ様、そして勇者様方に預けられた客人達を連れ去り……」

「先手を取られたって事なの……なるほど、英知の賢王も女王が弱点だってわかったから先に連れ去ったって事なの」

「どこまでも用意周到な……これが英知の賢王の策略か……」


 俺の心の底からどす黒い感情が湧き上がっておりますぞ!

 あのクズ!

 お義父さんを苦しめ続けるだけに飽き足らず、フィロリアル様方にこのようなむごい仕打ちをしたのですかな!

 最初の世界で心を入れ替えたので大目に見てやっておりましたが、容赦などしませんぞ!


「メルちゃん!」


 サクラちゃんが婚約者を探して匂いを辿っていきますぞ!


「どこまでも後手後手に回ってる……復讐に燃えるオルトクレイには元康くんとガエリオンちゃんの秘策が通じないって事か。オルトクレイ王が来たんだよね?」

「いえ……王はおりませんでした。ローブを羽織った怪しげな者が指揮をしていたのはわかるのですが……その配下と思わしき女達が恐ろしく強く……その中でも特に……アレはアオタツ種の女だったかと思います。あの者が……化け物のように強靭な力を持っており、勇者様方がお連れになったハクコの者と戦いをして……その最中に王女と来賓の方が人質に取られ……女王とハクコの者はやむなく……」

「フィロリアル達を倒すなんて……いや、数が多いからサクラちゃん達ほどの強化は出来ずにいたんだっけ……多勢に無勢なら……」


 確かに俺が育てたフィロリアル様方は十分な強さを兼ね備えております。

 しっかりと育ててはおりましたが、資質向上を限界まで行うと途方も無い時間が掛りますからな……強化が不十分だったというのは否定できません。

 ですがタクト残党程度なら問題なく処理できるくらいには強くさせていたはずなのですぞ!


「アオタツ種……きっとネリシェンなの。タクト残党の筆頭なの」

「そうだろうね。元康くんやガエリオンちゃんの話だと獣人化を超えて獣化して青龍になれるらしいし、復讐のために牙を研いで力を身につけても不思議じゃない」

「あの豚ぁああああああああ! 許しませんぞ!」


 この世界ではシルドフリーデンの代表豚がどこまで俺達の脚を引っ張るのですかな!

 もはや絶対に許しませんぞ!

 生け捕りにして鱗を一枚一枚剥いでからこの世の地獄を味わわせてやりますぞ!

 フィロリアル様を殺した罪、万死に値しますぞ!


「どっちにしても後を追わないと……サクラちゃん、メルティちゃんの匂い、わかるかな? それとラーサさんも」


 一応、虎男はパンダの配下と言う名義で奴隷登録をされているのですぞ。

 なのでパンダは奴隷項目を確認しますな。


「……ダメだね。妨害でもされているのか、居場所がわからないよ」

「メルちゃん……」


 サクラちゃんが匂いを頼りに通路を出てテラスの方へと行きますぞ。

 ですがサクラちゃんはテラスまで来た所で振り返って首を横に振りました。


「ここで匂いが消えてるー……」

「飛んで連れ去った……って事なのかな?」

「それなら匂いが空に漂うはずなの」


 ライバルも鼻を鳴らしますが首を傾げております。


「いきなり消えた感じがするなの……これは、勇者の転移で連れ去ったと見た方が良いかもしれないなの」

「オルトクレイの使えない杖が出て来て……転移で連れ去った? いや、行方知れずの七聖武器の所持者をどこからか連れてきた?」

「あるかもしれないなの……転生者は女好きなの。きっとタクト残党の女に良いように説明されて協力している可能性はあるなの」

「く……どこまでも厄介な……」


 タクト残党が秘密裏に七聖武器を隠し持っていた転生者共とコンタクトを取ったということですと、激しく厄介極まりない状況なのですぞ!


「……なるほど、あの奇妙なフィロリアル達がシルトヴェルトの猛者達でも苦戦する意味がわかったよ」


 お義父さんが納得したとばかりに頷きました。

 限界突破を施して、十分にLvを上げていたという事ですな。

 強化が中途半端だったとしても、それでも普通の兵士や騎士では脅威になるのは頷けますぞ。

 それだけフィロリアル様に秘められた力は強大なのですぞ。


「とりあえずメルロマルクの騒動はシルトヴェルトの人達に協力してもらって、一刻も早くシルドフリーデンに行こう。こっちの切り札を先に抑えられた状況だし、下手に手を出すわけにはいかないけれど、これ以上の損害を出すわけにはいかない」

「わかりましたぞ」

「どこまでも問題ばかり起こす連中だねぇ……気を引き締めていかなきゃいけない様だよ。何が起こっても良いようにしっかりと準備を整えていこうじゃないか」

「うん!」


 そんな訳で俺達は再合流をしてからシルドフリーデンに飛んだのですぞ。




 ポータルで俺達が出た所はシルドフリーデンの首脳陣のいる建物の庭に出ました。


「ブブブー!」


 転移するなり銃撃と魔法狙撃が飛んできました。


「流星盾!」


 お義父さんがゼルトブルでコピーして覚えた流星盾で結界を生成して飛んできた銃弾と魔法を受け切りますな。

 速攻でやり返してやりますぞ!

 フィロリアル様達の恨み!


「ブリュ――」


 ブリューナクを放とうとした直後、声がしました。


「ゆ、勇者様方! それと神竜様! お待ちください! 下手な反撃は危険です!」


 建物の外側の塀の所にシルドフリーデンの兵士達が建物を囲う様に陣形を組んで待機しているようですな。

 俺達を確認した兵士達が敬礼をしておりますぞ。


「元康くん、みんな! 行こう!」


 俺達は急いで相手の射程外だと思わしき建物の敷地の外まで逃げますぞ。

 それでも銃弾が飛んできていますな。


「状況はどうなっているなの?」

「現在、我が国シルドフリーデンの城内で英知の賢王を騙るテロリストと共に前代表ネリシェンが人質を盾にして立てこもっております。建物の周囲にはドラゴンとグリフィンが集っており我等は建物の中に入る事すら出来ず……」

「城の屋上に謎の設備を設置している所までは把握していますが……手に負える状況ではありません」


 また人質ですぞ!

 どこまでも卑怯な連中ですな!


「被害はどうなの?」

「英知の賢王を騙るテロリストとネリシェン……タクト残党が威嚇射撃だと大規模な儀式魔法を放ち……」


 と、兵士達が城の周囲を指差しますぞ。

 そこには瓦礫の山が出来ておりますな。


「これは酷い……ここも下手をすると危なそうだ」


 お義父さんが言葉を濁しておりますが俺からしたら大した量ではありませんぞ。


「儀式魔法が来たら無効化してやりますぞ」

「うん。元康くんは最大限注意して……で、各国で報告されているフィロリアルに関しては?」

「シルドフリーデンの各地で暴れているとの報告が来ております。その対処方法は盾と槍の勇者様を倒す事だともネリシェン一派は放送し続けている状況です」

「そりゃそうか……自分達が育てて放したなんて言えるはずもない。で、奴等の目的は?」

「先ほどから何度も勇者様方が魔王であり、世界を混沌に導く張本人であり、我らこそ正義の使者、英知の賢王の協力の下、魔王を誘き出す作戦の真っ最中だと演説とばかりに放送をしております。その経緯を長々と……」


 兵士の言葉通り、どこから街の通信設備らしい所のスピーカーから音声が聞こえてきておりますな。


『ブブブー! ブブブブ! ブブブ! ブブブブブブヒブヒブヒヒヒヒ!』

「亜人を嫌っている英知の賢王が我等と協力するほどの危機に世界は脅かされている。今は世界で争っている暇は無い……亜人獣人、人間分け隔てなく、権力者に取り入り、世界を我が手にする魔王。盾と槍の勇者を騙る者をこの世から抹消すべき……ね。よくもまあ能弁を垂れるもんだ」


 お義父さんはスイッチが入ったように鋭い目付きで城の方を睨みますぞ。

 その姿はいつかの世界でタクトのドラゴンからサクラちゃんを守ったお義父さんに酷似しています。


「で、その英知の賢王に関しては……ご丁寧に映像水晶で映像を出してまでの演説をしているね。もはや広報合戦って所か」


 どこから出したのかクズがキリッとした表情で何やら豚と共に城内の会議堂で鎮座していますぞ。

 これが証明であるとばかりですな。


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― 新着の感想 ―
[一言] うううナイト君、他のループでは幸せになってね
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