抑制機能
そこからは迅速に事態を抑える事は出来たのですぞ。
元々シルトヴェルトは戦闘力の高い民族の多い国。
腕に覚えのある者が無数にいますからな。
ですがそんな腕に覚えのある者でもかなり押されていたのは事実だったようなのですぞ。
どうにか城下町の騒ぎの鎮圧は出来たといった所でみんな疲れを顔に見せつつ状況の整理を行う事になりました。
ちなみに城の方の被害は軽微でしたな。
元々俺が配置していたフィロリアル様達が防衛に参加していたのは元より、代表四種や限界突破のクラスアップを施していた者達で対処出来ていたんだとか。
被害確認のためにお義父さん達と一緒に城内に入って状況を尋ねますぞ。
状況が状況なので、シルトヴェルトの代表も集まってきております。
戦いこそが誉れな将軍が多いので歪なフィロリアル様達の鎮圧は進んでいるとの話ですな。
問題は……ユキちゃん達やエクレア達の様な猛者以外との戦闘で暴れているフィロリアル様の死傷は避けられないとの話ですぞ。
ううっ……針のムシロですぞ。
どうしてこんな状況に……いてもたってもいられませんが、お義父さんが俺を捕まえているので動けないのですぞ。
「俺達の拠点だったからこそ軽微で済んだって所だけど……」
「しかし、フィロリアルは温和な種族。野生のフィロリアルが暴走したとは考え難いかと思います」
ここで戦闘態勢の獣人化状態のシュサク種の代表とゲンム種の翁が言いました。
特に育てた覚えのない代表四種もそこそこ戦えたらしいですぞ。
「正直に述べますと、おそらくこのフィロリアル達は少なく見積もってLvは100以上あります。それほどまでに機敏に動き回り、強靭な攻撃をしております」
「捕縛したフィロリアルの体には魔物紋も刻まれているようですな。勇者様方のフィロリアル達によって動きを抑え込んでいないフィロリアル達以外で調査を行うと自壊してフィロリアル諸共死んで証拠隠滅をされるようですが……」
「なっ! なんですと!?」
つまりフィロリアル様をユキちゃん達以外が捕縛して調べようとすると死んでしまうという事なのですかな!?
ならより一層俺は止めねば……いや、止めたらフィロリアル様が!?
ううっ……頭から煙が出てしまいそうですぞ。
「元康くんしっかり! えっと、あんまり刺激するような事は出来る限り元康くんの耳に入らないようにお願い」
「わ、わかりました」
「ですが……城と城下町の被害はどうにか沈静化しつつありますが、世界各地でこのような騒動が起こっている現状……勇者様方にどうするべきかご意見を伺うのが良いかと判断している状況です」
ゲンム種の翁が俺達に聞いてきます。
……考えないようにしておりましたが、世界中であのフィロリアル様が暴れまわっているという話ですぞ。
な、何故こんな事に……。
「とにかく、捕縛は出来たし調べる事も出来ているんだよね? どうなっているの?」
「それが……どうもシルトヴェルトでフィロリアルに詳しい者に調べさせた所、勇者様が育てたフィロリアルとも、普通のフィロリアルとも異なる成長をした奇妙なフィロリアルだと……所有者に関しても、存在はわかっているのですが、解析自体終わっておりません」
「ねえ、ナオフミ」
サクラちゃんが不安そうな顔でお義父さんに尋ねますぞ。
「なんだい?」
「メルちゃん達の方は大丈夫なのかな? サクラ心配……」
「世界中で起こっているんだ。メルロマルクの方は大丈夫なのか?」
「全世界での情報網がかなり錯綜……いえ、通信類が相当マヒしておりまして、断言はできませんが、おそらくは……」
「くっ……急いで確認に行くのが良いとは思うけど……」
世界各地でフィロリアル様の暴走が起こっているのですぞ。
一体どうしたら……。
「こりゃあ間違いなく黒幕がいるのは誰の目にも明らかなの」
帰ってきたライバルが言いました。
「明らかにフィロリアルに対して悪意のある者が関わっているのは間違いないなの」
ライバルは俺を見ながら更に続けます。
悪意ある者、ですかな?
「ガエリオンからしてもあのフィロリアル達は歪……奇妙すぎるなの。生体改造でもしないとあんな事にはならねぇなの」
「そういえばタクト残党にラトさんのライバルが紛れていて、行方不明って話があったような……」
「ああ、そういえばそうだったの。可能性は高いと思うなの。もしも盗まれた竜帝の欠片から限界突破のクラスアップ方法が判明して、フィロリアルに奇妙な生体改造を行ったとしたら、ありえる話なの……」
「そういえば元康くんが買い付けに行った際にフィロリアル牧場が襲撃を受けて廃墟となっていたって話だったよね? 他にも世界中でフィロリアルが品薄だって話だったし、もしかすると……」
「なのぉ……フィロリアルのアイドル活動人気が原因だって簡単に片付けたって事なの」
……こんな所でそれ等が繋がっていくというのですかな?
つまりタクト残党は俺への嫌がらせをする為だけに世界中のフィロリアル様の卵を集めてこんな真似を仕出かし始めたと?
なんて奴等ですかな!
性格がひん曲がっているにも程がありますぞ!
「だけど、なんでフィロリアルを……」
「正直、ガエリオンもやっちゃいけない一線だとは思うなの……槍の勇者への嫌がらせにしたって限度を超えたら手の施しようがないなの」
「間違いない……闇のギルドや死の商人の多いゼルトブルであってもそこまではしちゃいけないって考えるってのにねぇ」
「おそらくこれだけで終わるとは思えない……何かしらの手を使って俺達を排除しようとしているんだと思うけど……」
くっ……タクト残党め!
卑怯な手ばかり思い付いて来る奴等ですぞ!
「フィロリアルを貶めて、槍の勇者を……果てはなおふみ達が悪いと世論に流布するのが目的と見て間違いないなの」
「だろうね……世界各地で謎のフィロリアル達が町村含めて多大な被害を及ぼす。盾と槍の勇者が育てたフィロリアルは普通のフィロリアルとは異なる成長をするらしい。この謎のフィロリアルはそのフィロリアルで勇者達が世界を我が手にする為に魔王となって反旗を翻した、とかね」
くっ……陰謀の好きな奴等がやってきそうな手ですぞ。
お義父さんの推理は当っているでしょうな。
「ここで何かしらの作戦でなおふみと槍の勇者を倒し、世界中のフィロリアル達は連鎖的に活動を止めて死んでいったら……人々はどう思うなの?」
「間違いなさそうだ。結果、フィロリアルは魔王の僕として人々に忌み嫌われる存在となり、駆逐されて絶滅……元康くんの言っていた話と合致する」
お義父さんとライバルの話に俺の腹の底からグツグツと煮えたぎる怒りの感情が湧き起こってきますぞ。
「なんていうか……相手を貶める為に大々的なプレゼンテーションを行うこの行為……かの発明王とかを連想するね。まさにタクト残党らしい手段と言っていいかもしれない」
このような蛮行!
絶対に許し難いですぞ!
「絶対に許しませんぞ! あの虫けらの豚共! じわじわと嬲り殺しにしてやりますぞ!」
奴等をじわじわと嬲り殺しに……豚王に献上しつつ生きたまま解体ショーを施してやりますぞ!
地獄の業火に焼かれる豚共の断末魔が散って逝ったフィロリアル様への手向けですな!
「元康くん抑えて! どこか行こうとしてるけど、どこに行こうとしてるの!」
居てもたっても居られずに走りだそうとした所をお義父さんに止められてしまいました。
くうっ……この苛立ちをどこに向ければいいのですかな!
「まあ、あいつ等の事だからなおふみや槍の勇者を倒せる算段でも取っているって所だと思うなの。ノコノコ出てきた所を仕留めてやればいいけれど、かなりしぶとい状況なの」
「なんと命知らずな者達だ……自ら断頭台に上がっていくような物だぞ」
「ええ……手段を問わないにしても、この手は間違いなく悪手だと思います」
パンダ達もタクト残党の非道な行いを批難していますぞ。
そうですぞ!
フィロリアル様達は天使なのですぞ!
その天使達をこのような見るも無残な姿に辱めるなど絶対に許し難いのですぞ。
「ナオフミー……サクラ、メルちゃん、心配……」
「うん、そうだね。どっちにしてもまずは世界各地で問題を起こしているフィロリアル達の問題を解決しないと」
という所で伝令兵が俺たちの下へと駆けてきました。
「勇者様方! 大変です! 英知の賢王を騙る者がシルドフリーデンの首都、及び首脳陣のいる議事堂を占拠し、全世界に盾と槍の勇者様方を名指しで呼び出しております」
「この状況で!?」
「タイミングが的確なの……」
こんな所でクズが顔を出すのですかな?
ですがよりによって亜人嫌いのクズがシルドフリーデンとは……そんな場所を占拠しているとはおかしな話ですぞ。
ほほう……つまりクズがこの作戦を思いついたという事ですかな?
あやつは最初の世界でお義父さんの配下になったから許していましたが、どうやら俺の敵だった様ですな。
「どっちにしても英知の賢王がいるかもしれないって状況なんだよね。なら……元康くんとガエリオンちゃんが用意した策を行った方がいいとは思うけど……その子達は今どこに?」
「兄の方をしっかりとLvを上げて稽古をつけさせて育てた後、メルロマルクで女王の所に兄妹共々預けているなの。女王はいつでも王が帰ってきてもいいように、出来る限りの擁護をしているなの」
「じゃあどっちにしてもメルロマルクに報告に行くべきか」
「メルロマルクに英知の賢王がいるって触れ込みになっているから話をするのに丁度良いなの。早めに出発するなの」
「うん。ただ、出発前に俺達でやっておかないといけない事があるでしょ。元康くん、俺達で世界各国に育てたフィロリアル達を送ろう。正しいフィロリアルがみんなを守ろうと駆けまわっているってこっちも動かないと、いや……ユキちゃん達が各国に……」
「その心配は無用ですわ」
ユキちゃんがここで頭の毛を揺らしながら答えますぞ。
「各地で暴れるフィロリアルの問題に関して、現在フィロリアル女王であるフィトリア様が世界中のフィロリアルに鎮圧を命じているそうですわ」
「そんな事が出来るの?」
「出来ても不思議じゃないなの。あの女王はお気楽バカだけど、フィロリアルって生き物に関してだけは責任感があるなの」
ライバルがここで大きなフィロリアル様をバカにし始めました。
「最終手段として世界中の全フィロリアルの一斉停止も視野に入れて鎮圧を行うと明言しておりますわ。全てはタイミングですわね」
「……伝承に存在します。フィロリアルが神聖な存在と言われる由縁として、悪事に手を染めるフィロリアルが世界に溢れた時……フィロリアル達は活動不能に陥る、と……」
ここでシュサク種の代表がゲンム種の翁と一緒に説明します。
「いや、そんな話があるの?」
「過去の歴史に……魔王の配下として育てられたフィロリアル達は一匹残らず神鳥の力によって抑え込まれたと……勇者様方の育てたフィロリアル達が動きを封じた事を思えば納得できる事かと」
「なんと! まさにフィロリアル様は天使たる証ですな!」
だからこそフィロリアル様は悪用されないのですぞ!
まさに正しき存在!
それがフィロリアル様なのですぞ!
「邪悪な者がフィロリアル様を意のままに操り世界征服なんぞしようとしても、思い通りにならないのですな! 天使様万歳ですぞー! フィロリアル様フォーエバーですぞー!」
少しだけ怒りが晴れたような気がしますな。
「では事が解決したらフィロリアル様方を捕縛し、魔王の加護とばかりの邪悪な改造の枷から外した後に俺達の仲間として今度こそ育て上げますぞ! 世界中にいるという事は! フィロリアル様の国が作れますな!」
最初の世界の規模を超えたフィロリアル様を確保できますぞ!
世界中のフィロリアル様! どうかご無事で!
この問題は俺達が絶対に解決して見せますぞ!
「食費とかどうするんだろう……バイオプラントでどうにか出来るかなぁ……」
「邪悪な者の手先として世界征服が出来ないって言うのは……あたいからすると信じ難いねぇ……アレを見ると世界征服出来そうじゃないかい?」
「ラーサ、しっ! 命が惜しかったら黙ってた方がいいわよ」
「うむ……あの無数にいるフィロリアルが更に増えるなんて事になる前にフィロリアルの女王に相談しなくてはいかん」
パンダ達が何か言っておりますが、俺はこの野望を叶えて見せますぞ!
「と、とにかく! 英知の賢王を抑えるためにもメルロマルクに寄って行こう。メルロマルクで騒動が起きてないとは断言できないんだから!」
「ですな! フィーロたんを巡るライバルではありますが、婚約者に何かあったら俺がフィーロたんに顔向けできませんぞ」
「同盟関係国なんだし、ある程度兵力を送って助力したらいいんじゃないかい?」
「そうだね。シルトヴェルトの猛者達も協力してもらおう。ラーサさんも部下を連れて来て」
「あいよ」
という訳で俺達はシルドフリーデンへと行く前にメルロマルクの方にポータルで移動したのですぞ。




