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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
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脳内選択肢

「ほう……」

「ただねー……あたいは人種混合のゼルトブルでの生活もそれなりにあるから言わせてもらうと、亜人や人間視点だと厳しいんじゃないかい?」

「まあ、そうですな」


 性格だけでも俺は嫌いなタイプですぞ。

 半分豚みたいに見えますからな。

 鼻の形状も似ていますし……おっと、これはゾウに失礼ですぞ。

 訂正しましょう。


「あれは本心から他者を愛した事がない者ですわ……今の相手より地位や稼ぎが多い者がいたらすぐに乗り換えると思いますわ」

「申し訳ないが私もそう思う」


 ユキちゃんの言葉にエクレアが同意しました。

 確かにそういう輩はこの世界に多いですからな。

 フォーブレイの人間や亜人に多いイメージでしたが、シルトヴェルトにもああいうのがいるのですな。


「その点で言えばエルメロ殿もイワタニ殿にそこまで期待はしていないように見える。あくまで騎士として仕えているのだろう。むしろ想像が出来ないのだが……」

「一時的に体を小さくするって薬や魔法がない訳じゃないけど、効果時間が短いのと術者が少ないからねぇ……」

「サイズだけではなくな……?」

「エクレア、お義父さんは外見で人を選ぶ方ではないですぞ! お義父さんなら大丈夫ですぞ!」


 何せフィーロたんのお義父さんですぞ。

 お姉さんのお姉さんとも恋仲になって、パンダともいろいろとやっていたみたいですからな。

 見た目がどうだとか、そういう下衆な人では無いのですぞ!


「キタムラ殿の言い方が激しく気になるが……ここは踏み込まない方が良い気がする」

「盾の勇者ってのも大変だって話さね」

「そういえばお義父さんが前にシルトヴェルトの獣人達とのスローライフとか楽しそうだよね、と仰っていましたな」


 何々の森とか言っていた気がしますぞ。

 森は多いと思いますが何かあるのですかな?


「緩やかな生活を求めるのは理解できる。私達が警護する事でイワタニ殿に安らぎが訪れるようにせねばならないのだがな……」

「あたいの実家で妙にリラックスしていたのはそのスローライフっぽいからじゃないさね?」

「うむ……その点で言えばラーサ殿はポイントが高いな。イワタニ殿が楽しげだったぞ。がんばるのだ」

「あのな……あたいじゃなくてエルメロをだな。例えば新しい領地で、似たようにしてやればポイントも高いんじゃないかい?」

「みんな何の話をしてるの?」


 お義父さんがコウを背負ったゾウと一緒に近づいてきますぞ。


「お義父さんがゾウと――」

「ああ、随分と暴れたねぇ! って話さね」

「うむ!」


 なぜかパンダとエクレアに遮られてしまいました。


「そうですわ」


 しかもユキちゃんまで加わっております。

 お義父さんがゾウと恋を育む話をしてはいけないのですかな?


「あー……うん、そうだね。なんていうか……プハント家の人達にも色々と迷惑だけを掛けちゃった気もするよ」


 お義父さんがお疲れの顔を見せますぞ。


「良いんじゃないかい? エルメロへの報償として家に来たってのに失礼千万な言動を繰り返したんだ。盾の勇者を侮辱したって事で、切り捨てられたって文句は言えないよ」

「本当……事前にもっと説明していたらよかったと痛感した次第です……」


 ゾウが小さな声でお義父さんに謝罪しますぞ。


「大丈夫だよ。どっちにしても避けては通れない事だったと俺も思うし……むしろ早めに処理できてよかったんじゃないかな。ジワリジワリとエルメロさんに干渉して行ってエルメロさんが疲れ果てて倒れた後に後釜に据えられたりされた方が困ったから」

「盾の勇者様……」


 ゾウが嬉しそうにお義父さんに答えます。


「エルメロー何かするんだよね?」

「あ、そうでしたね。じゃあ準備をしてきます」

「うん」


 と言う訳でゾウはコウと一緒に屋敷の中へと歩いて行きました。

 やがてゾウは出発の準備を終えましたな。

 大きな荷物を持ち、親しい使用人などとも話を通した様ですぞ。

 屋敷の外へネズミ獣人達が出て行くのが見えました。


「彼等は?」

「私の育ての親であるレイニー様に仕えていた者達です。後は屋敷で働いている奴隷達の一部が同行したいと言っている所でしょうか」

「そ、そっか」


 お義父さんが奴隷と聞いて若干引いております。

 ここはシルトヴェルトですからな。

 本来は人間の立場は低いのですぞ。


「城に連れていく?」

「彼らも準備がありますし……代表としてこのミールが同行して後の手続きをしてくれる事になりました」


 ゾウはそう言って俺に事情を説明してくれたネズミ獣人をお義父さんに紹介しますぞ。


「この度は、エルメロ様への多大な恩赦とレイニー様に関する件の解決をしてくださり、誠にありがとうございます。盾の勇者様、私共はその大きな懐の広さに感銘を受け、我等一族末代まで忠義を尽くす所存です!」

「ネズミがちゅーぎですぞ、お義父さん」

「元康くん!」


 なんかお義父さんに怒られてしまいました。

 一言余計という奴ですな。

 良いギャグだと思ったのですが。


「槍の勇者様もこの度は感謝申し上げます」


 おや? 流されてしまいました。

 ネズミ獣人が俺にも礼を述べていますぞ。


「うん。これからエルメロさんも大変になると思うから色々とお願いするね」

「喜んで承る所存です」

「それじゃあ城へ帰ろうか」

「はい」

「では、プハント家の皆さん、失礼しました。さようなら」


 お義父さんは最低限の手当てを受け、運ばれて行ったマンモス達とは挨拶をせず、戦わずに傍観していたマンモス達に挨拶を終えてから城へと帰還したのでした。




 そんな帰還した後、ゾウの実家での事をお義父さんはシルトヴェルトの重鎮達に概要を説明し、今後の事を話をした様ですな。

 その結果、ゾウの家名が変更になり、領地も決まったとの話ですぞ。

 もちろん、レイニーとかいうゾウの育ての親の生前の領地を貰えたらしいですな。

 で、お義父さんはゾウと話がしたいとの事でゾウの部屋へ遊びに行きました。


 コウはその間に城のフィロリアル様にお話をしていましたな。

 おや?

 城のどこかから、ゾウの歌声が聞こえて来ますな。


「あーエルメロが歌ってるーコウ達も合わせて歌おー」

「うん」


 フィロリアル様も歌い始めますぞ。

 なんとも賑やかな城内ですな。


「一件落着ですな」

「キタムラ殿が振りまいたとも言える騒動でもあるのだが……気にしたら負けか。エルメロ殿もこれで迷いが振り切れ、大切な者達が過ごす領地を得た……私も負けていられないな」


 何やらエクレアが言ってますな。

 ですがエクレアの領地経営能力は程度が知れますぞ?


「大丈夫なのですかな? エクレア。お前にその辺りの能力が無いのは知っていますぞ」

「キタムラ殿……いや、言わなくて良い。私も色々と勉強せねばな!」


 どうやらエクレアもがんばろうと目標が出来た様ですぞ。

 尚、パンダはお義父さんと一緒にゾウの元へと出かけております。

 ちなみにお義父さんはゾウと長く会話をしていたあと夜遅くになって部屋に帰ったそうですぞ。

 きっとゾウやパンダと甘い時間を過ごしたのでしょう。

 これでライバルフラグはオフですぞ。


 なんて感じでゾウの実家での出来事は終わったのでした。






 ゾウの実家に行った翌日の夜ですぞ。

 ちなみにゾウの実家に帰った後のやり取りでライバルは特に何か文句は言いませんでした。

 俺に隙などありませんからな。当然ですぞ。


「ちょっとガエリオン、帰郷しておこうと思うなの」


 ライバルが夕食時に突然、そんな事を言いました。


「今度はガエリオンちゃんの家に行く流れ?」


 ややお義父さんが二度ある事は三度ある的な雰囲気でライバルに尋ねますぞ。

 こやつの実家に行って何か意味でもあるのですかな?

 ……考えてみればライバルの親が住んでいる洞窟にはどのループでも一回位しか行っていない気がしますぞ。

 何かあるのですかな?


「見せる程の家じゃないし、既に見てるなの。それにお姉ちゃんに睨まれていると思うから来ない方が良いと思うなの」

「まあ……そうなんだけどね。前に言った通りの帰郷で良いのかな?」

「そうなるなの。ちょっと早いかとも思ったけど、一応見に行くついでにメルロマルクの女王と会議とかするから良いかと思ったなの」

「わかったよ。出発はいつにするの?」

「夕食を終えたらすぐに行くつもりなの。時は金なの」

「そんなに? 休まなくても良いのかな?」


 お義父さんが何やらライバルの事を心配しておりますが、前にコヤツは言っておりましたぞ。

 疲れを配下の魔物に肩代わりさせていると。

 とんでもないブラックなドラゴンですぞ。


「大丈夫なの! ついでにあっちで休むから問題ないなの」

「突然の来訪とかで驚かれたりしないかな……縄張りに侵入したドラゴンって感じで」


 するとライバルは若干馬鹿にするように鼻で笑いますぞ。


「お父さんなんて今のガエリオンからしたら雑魚なの。万が一にも負ける事はあり得ないなの」

「それもどうなんだと思うけど……」

「だねぇ。完全に馬鹿にしている流れだとあたいも思うよ」

「うむ」

「そ、そうですね」


 パンダとエクレア、ゾウがお義父さんの意見に同意しますぞ。

 HAHAHA、親を大事にしない不義理なドラゴンの評価など、こんなものですな。

 俺の様にお義父さんは大事にしなくてはいけませんぞ?


「どっちにしても大丈夫なの。気にせず送り出して良いなのー」

「ガエリオンちゃんも結構強引な所があるなー……まあ、メルロマルクに行くとサクラちゃんも喜ぶし良いか」

「んー? 明日メルちゃんに会えるのー?」


 ライバルが喋り出して黙っていたサクラちゃんが婚約者に会えると理解して楽しげにお義父さんに尋ねますぞ。


「そうだね。サクラちゃんは最近どう? メルティちゃんと一緒に居て楽しい?」

「うん。あのねー、メルちゃんと一緒にパーティーでね。お歌を歌ったり踊ったりするよ? 後は内緒でお出かけして噴水の前とかお酒を出す所で歌ったりしてね、みんな楽しそうにしてるー」


 おお……サクラちゃんはどうやら婚約者と一緒にメルロマルクでフィロリアル様の広報をしていらっしゃるようですぞ。

 夜会などで披露した際に好評だったらしいですな。

 フィーロたんと同じですな。

 婚約者がその役目を担うのは不服ですが、サクラちゃんが人気になるならオールオッケーですぞ。


 願わくば低迷気味のシルドフリーデンでの人気を上げたい所はありますな。

 やはりサクラちゃんもユキちゃんと同じ路線でレースに参加させることを考えねばなりません。

 まあ、俺の方は俺の方でシルドフリーデンでの広報が実を結びつつありますぞ。


 くくく……ライバルよ。

 こっちは既にお義父さんが協力済み。

 呑気に帰郷をしている間にシルドフリーデンは俺達の手に落ちるのですぞ。

 フハハハハハーーですぞ。


「よかったね。じゃあ、明日も会えるからどこかでサクラちゃんとメルティちゃんの音楽会をお願いしようかな」

「わかったー!」


 サクラちゃんが満面の笑顔で頷きました。

 おお、さすがはフィーロたんでもあるサクラちゃんなのですぞ。

 神々しい笑顔なのですぞー!


「サクラ達が歌うのは良いけれど、親善の為にユキ達も参加するのは良いかもしれませんわね」


 最近、ユキちゃんがフィロリアル様達の広報に関して学習してきている様ですぞ。

 徐々に俺が教えなくても色々とやってくださるようになって来ております。


 ちなみに大きなフィロリアル様から頂いたフィロリアル様達もユキちゃんのサポートとばかりに経営面で手伝ってくださる者がおりました。

 こちらは天使の姿になった際に大人姿のフィロリアル様になっている方が多いですな。

 今までに無い顔ぶれという事で新たな客層を掴んだとの話ですぞ。


 なんて感じで明日の方針が決まった後、食後ですぞ。


「それじゃあなおふみ、じゃあねなのー」


 ライバルがお義父さんのポータルスキルでメルロマルクに一足先に行ったのでした。

 俺達はそのまま就寝する事になりましたな。

 ふふふ、ライバルが近くに居ない……今日は良い夜ですぞ。


「ガエリオン居ないし、メルちゃんの所でお泊りしようかな? どうしようかな?」


 サクラちゃんが帰郷したライバルの事を考えながら言いました。

 おや? 俺の脳内に久しく出ていなかった選択肢が浮かんだ気がしますぞ。



  サクラちゃんを婚約者の所に行かせる。

 →サクラちゃんを婚約者の所には行かせない。



 話になりませんな。

 答えは『サクラちゃんを婚約者の所には行かせない』ですぞ!

 これでハッピーエンディング待ったなし、五秒前ですな!


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