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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
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フィロリアルブーム

「あいつが何をしても俺達ではね退けますぞ。出てきた所を潰せば良いだけですからな」

「ガエリオンも奴が本気で動いた際の脅威を完全に把握はしていないなの。だけど、それでも数あるワイルドなおふみの世界でのやり取りから予防線は必要だと思うなの」

「えっと、ガエリオンちゃん、なんかメルロマルクの件と関係があるの?」

「そうなの。このハクコ兄妹にクズを会わせれば間違いなく勝利確定するなの。意気消沈するなの」


 ライバルが俺も知っている事を我が事の様に言いました。

 別に敢えて言わなかったのではないですぞ!

 忘れていただけですからな!

 本当ですぞ!


「なんで?」

「だってあの兄妹、クズの妹の子供なの。特に妹の方は病でボロボロだけど薬で治せばクズの妹と生き写しの外見らしいなの」

「え!?」

「槍の勇者……前になおふみ達に注意されていた案件なの。確保くらいはしておけなの」

「先程のやり取りを忘れていたのですかな? 配下には出来ませんぞ!」


 国の事情だから無理なのですぞ。

 本当、シルトヴェルトは面倒でしょうがないですな。


「そこはパンダと縁があるからとか名目を立てて助けた後、パンダの配下にするなりすれば、なおふみが関わらなきゃどうにかなるんじゃないなの?」


 ライバルの問いにシュサク種の代表がしばし考え込みますぞ。


「確かに……あの英知の賢王の縁者であるハクコが事実であるのなら使う手はないわけではないですが……いろんな意味で危険ではありますね。それは確かな話なのですか?」


 やはり難しいのですぞ。

 タイミングを考えねばいけません。


「間違いないなの。現にその件で英知の賢王はなおふみへの矛を収める程度には大人しくなったなの」


 ライバルはここで虎兄妹に関する親の話などで最初の世界で仕入れたらしい話を語りました。

 クズの妹が行方知れずになった後、ハクコ種の長の子供らしい奴と半ば駆け落ちした結果、虎兄妹が生まれた、などの話ですな。


「しっかりと治療すれば交渉の切り札としても使えるなの。国の代表としてお前はどう思うなの?」


 ライバルがシュサク種の代表に問いかけますぞ。


「……盾の勇者様への接近は抑え、ラーサズサが私的に関係がある程度ならばどうにか……メルロマルクに貸しも作れますし、あの英知の賢王を抑えられるのは大きいでしょう。もちろん十分に注意する必要はありますが」

「勝手に決められちゃ困るんだけどねぇ」

「パンダ、今のままだとそいつらはじり貧なの。ここで槍の勇者が治療を施せば今後の問題は解決するなの。お前からしたら悪い話じゃないと思うけど、どうなの?」


 ライバルの言葉にパンダも若干考えますぞ。

 まあイグドラシル薬剤を何度も購入するのは大変ですからな。

 あるいは単純に金銭的な計算をしているかもしれません。


「……本当に治るのかい? イグドラシル薬剤を使っても治らないって話だよ?」

「確信を持って言えるなの。どこに居るのかも話で聞いているから間違いないなの」

「……ま、この件でこれ以上アタイが金を出さずに済むって言うなら別に文句はないよ。とはいえ、面倒をみるのが厄介だとしか思わないけどねぇ」

「ちなみにお前の祖父が会いたがっている奴の居場所もわかっているなの。ぶっちゃけると気持ち悪いくらいガエリオンも合致してて不気味に感じているなの」


 ライバルのセリフにパンダが寄り眉を寄せますぞ。


「この際、助けて勧誘すると良いなの」

「爺さんの宿敵に会わせてどうするってんだい。殺し合いでも始めるんじゃないのかい?」

「もちろん恩を売って今後に備えるのと親孝行に一役買うなの。仲が悪いなら共倒れも狙えるなの」

「いや、さすがにそれはどうなの? 一応話をしてみる程度で良いんじゃない?」


 お義父さんがライバルを注意する隣でパンダがより深く考え込みましたな。

 くくく……ついにライバルがボロを出し始めました。

 このままお義父さんから失望されろですぞ。


「……」

「ラーサさん?」


 そんなにあのパンダ老人の稽古が嫌なのですかな?


「ちなみに槍の勇者も基礎をそいつから教わったらしいなの」

「俺の努力ですぞ!」


 気の使い方はお義父さん達から教わったようなものですぞ!

 最終的にある程度、話を聞いただけですな。


「悪人じゃないから話くらいなら聞くと思うなの。どうなの?」

「……わかったよ。好きにやりな」

「え? それで良いの!?」

「パンダぁああああ! ここで引くのですかな!」

「失敗してもアタイに損はなさそうだからねぇ。それとアタイをパンダと罵るのはやめてほしいもんだね」


 パンダが論点を掏り替えて来ました。

 今話している事とその話題は別の案件ですぞ。


「……本当、ガエリオン殿が来たお陰でキタムラ殿の話ではわからなかった事や解決方法など、色々と事前に手が打てるので非常に助かるものだな」

「確かに……」

「ええ」


 なぜかお義父さんを含めてその場にいる者達がそろってエクレアの言葉に頷きました。

 エクレア、それはどういう意味ですかな?

 俺が無能な様な言い分は不服ですぞ。


「俺は精一杯説明していますぞ!」

「うん。それはわかってるから。いつも感謝してるよ。元康くんが口下手で忘れやすいだけで、補完出来ない部分をガエリオンちゃんがしてくれているだけだよ」


 お義父さんがとても優しい口調で俺を諭すように言いました。

 ですが、それは要らぬ気遣いなのですぞ!

 今はその優しさが悔しいですぞ。

 ぐぬぬ……ライバルめぇえええええ!


「薬の効きが良くなる技能を所持したなおふみか槍の勇者が服用させれば両者ともに元気になるはずなの」

「イグドラシル薬剤は高額だけど……それくらいは手配できるかな? それとも材料を集めて作る感じかな?」

「それくらいならば用意できます。少々高額ですがしょうがありません。何より種族間の問題などを除外した個人的な心情で言えば、私も助けたいと思っておりますからね」


 シュサク種が保証しました。


「じゃあお願いするよ。今後の為の出費として……俺もがんばるから」

「勇者様方のお陰でシルトヴェルトの財源や食糧問題は改善しておりますので気になさらなくて良い次第です」

「助かります」

「じゃあ俺がラーサさんのお爺さんの宿敵の人を治療しに行って、元康くんはそのハクコ種の兄妹をお願いして良い?」

「もちろんですぞ! この元康、必ずや虎兄妹を救出してきますぞ」


 お義父さんの命令とあらば従うしかありませんな。

 ライバルの斡旋と言うのが不服ですがしょうがないですぞ。

 というわけで非常に不服ですが、俺は出張する形でゼルトブルの虎兄妹の居る魔物商の場所に向かいました。




 俺はゼルトブルの魔物商にライバルとシルトヴェルトの魔物商からの紹介状を渡しました。


「これはこれは……槍の勇者様。メルロマルクでは私共の甥が随分と贔屓にしてもらっていたとのお話、よくぞいらっしゃいました。ハイ」


 前回の周回でお義父さんがよくお世話になっていた魔物商ですな。

 この周回だと……ああ、そういえばシルトヴェルトから魔物商の所にあるフィロリアル様の卵を買い占めたのでしたな。


「お世話になりますぞ」

「そして……おやおや、これはかの有名な竹林の二つ名をお持ちの闘士であるラーサズサ様。最近はゼルトブルも寂しくなったものですよ」

「面白そうな奴はいるかい?」

「地響きの女王もおらず、ゼルトブルはあまり刺激が無いですな。またラーサズサ様が出てくることで活気づくと思いますです。ハイ」


 やはりパンダは何だかんだゼルトブルでもそれなりに有名なのですな。

 俺もフィロリアルマスクになれば大活躍出来ますが、今はアイドル活動に忙しいので、その内資金稼ぎに利用させてもらうか考える程度にしておきますぞ。


「とは言ってもねぇ……今のアタイがやっている仕事もあって、あんまり下手に出るわけにもねー……一応許可があればやるけど、それにしたって面白みがあるかって所だね」


 パンダは何だかんだお義父さんやライバルと一緒にLvや資質を相当上げたらしいですからな。

 気の習得をしていない所為でパンダ老人の技でやられていましたが、あの程度ならすぐに対処できるようになるはずですぞ。

 そんなパンダがコロシアムに出た場合、荒稼ぎが出来ると思いますぞ?

 基本的に負け知らずでしょうからな。


「最近頭角を現しているのはナディアと呼ばれる闘士でしょう。二つ名が付くのも時間の問題かと」


 おや? 錬は相変わらず潜伏中のようですな。

 樹じゃあるまいし、いつまでゼルトブルに雲隠れするつもりですかな?

 大方ゼルトブルの山奥で無駄なLv上げをしているという所でしょう。

 そろそろカルミラ島の活性化時期ですので、いずれ姿を現すかもしれませんな。

 錬の潜伏能力などその程度でしょう。


「ほー……いつか戦える時が来たら楽しみだね」

「ちなみにこのナディア。随分と酒豪だそうで、その件でもゼルトブルで人気になっておりますです。ハイ」

「酒豪ね。アタイに勝てる奴が……いや、世の中広いからいるだろうねぇ」


 何やらパンダが黙った後に訂正しました。

 それはお義父さんの事ですな!

 おや? なんとなくお姉さんのお姉さんが脳裏を過りますが、確か名前が違うので……きっと気のせいですな!


「それで今回はどのような用件で私共の所にいらっしゃったのでしょうか?」

「ここで厄介になっているハクコ種の兄妹がいるはずですぞ」

「そいつにちと用事でね。アンタもあいつらにどこから金が来ているのか位は把握してるんじゃないかい?」

「ああ、なるほど」

「求めているからって釣り上げをしたってこっちは引き下がったりはしないよ?」


 パンダがお義父さんに似た感じで何やら魔物商を脅しておりますな。


「妙な真似をしたらかの有名な槍の勇者が何をするかわからないねぇ」


 ……最初の世界のお義父さんみたいな交渉ですぞ。

 やはりこの辺りは共通の交渉術があると見ていいかもしれません。

 最初の世界のお義父さんもどちらかと言えば荒事に強い感じでしたからな。


「おお怖い。かの有名なラーサズサ様と槍の勇者様を相手に私共がそのような真似をするとお思いで?」


 当然、やると思いますぞ。

 最初の世界のお義父さんが言っていました。

 アイツ等は金の為なら何でもやる、と。


「どうだかね。そっちもゼルトブルで名を馳せてる時点で疑わしいもんさね」

「では今後の関係次第と言う事だと判断しますです。ハイ」

「それとフィロリアル様を売ってますかな?」

「槍の勇者……あんた、あれだけ居るのにまだ望むのかい?」

「当然ですぞ。最近、少しずつ貯蓄しているのは元より、ユキちゃん達のがんばりで収益が増えましたからな」


 思えば最近は盗賊の収穫をあまりしていませんな。

 盗賊は資源ですぞ。ドラゴンも資源ですぞ!

 シルドフリーデンの問題など、ドラゴン狩りをすればどうにかなるのではないですかな?

 今度お義父さんに相談してみるとしましょう。

 そんな事よりフィロリアル様ですぞ。


「まだまだ増やす予定ですぞ。定期的にニューフェイスを出す事で、フィロリアル様人気は爆発的に高まっていくのですからな」


 目指せ、お義父さんの言っていた大人数アイドルグループですぞ。


「大変申し訳ないのですが、フィロリアルは現在、槍の勇者様や盾の勇者様がシルドフリーデンを主体に各地で広めている影響か高騰しており、品切れが続出している次第で、すぐに提供するのは難しいです。ハイ」

「なんと……フィロリアル様ブームですな! それならしょうがないですぞ!」


 ここで買えなくても他の部分で、それこそこの周回では会えずにいたフィロリアル生産者の所に行くのが良いでしょうな。

 あそこなら確実に売っていますぞ。


「良いのかい? 槍の勇者には売らないってのを耳当たりの良い言葉で誤魔化しているって可能性もあるんだよ?」

「ああ、確かにあり得ますな。なぜフィロリアル様を売ってくれないのですかな?」

「アンタがメルロマルクで何かやらかした所為じゃないかい?」


 パンダは何を言っているのですかな?

 俺はメルロマルクの魔物商からフィロリアル様の卵を買い占めただけですぞ。


「とんでもない!」


 ゼルトブルの魔物商が滝のように汗を流しながら答えました。

 これは嘘を言っているということですかな?


「私、商売にはプライドを持っております。虚言でお客様を騙すのは好きでありますが、売るものを詐称するのは嫌でございますです。ハイ!」

「アタイが言うのはどうなんだとは思うけど、それもどうなんだい……? 相変わらずよくわからない連中だよ」

「結局、フィロリアル様は本当に売り切れって事ですかな?」

「槍の勇者様はフィロリアルに関しては金に糸目をつけないと話を聞いております。準備できなかった事が悔やまれる事態です。ハイ」

「こりゃ、本当みたいだね」


 パンダが悔しげにしている魔物商の言葉を信じたようですぞ。

 間違いはないみたいですな。


「しょうがないですな」

「そもそも槍の勇者、アンタも盾の勇者の許可なくフィロリアルを増やして良いのかい? また呆れられる事になるんじゃないのかい?」


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