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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
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四天王

「これは危険ですぞ! 魔王に世界が占領されてしまいますぞ!」

「興味ねーなの。ガエリオンは人を軽蔑する時はあるけど絶望はしてないなの」


 くそ! ライバルは俺を見てさえいないですぞ!

 お前はタダの旗頭のお飾りドラゴンなのではないのですかな!

 一体いつの間にそんな技能を得たのですかな!

 以前のループではなのなの言って遊んでいただけのはずですぞ!


「ふむ……メルロマルクの女王やメルティ王女の様な人物だったのだな。イワタニ殿と一緒に狩りに出ている時とは天と地ほどにも差を感じる」

「竜帝の経験を参照しているだけで全部が全部ガエリオンの経験って訳じゃないなの」

「そうかもしれないけど、結構凄いと思うよ?」

「ありがとうなの。それに国内で勢力を増し過ぎて人々に迷惑を掛けるほどに増えて、我が物顔で暴れるグリフィンの殲滅をした結果に感謝されて出来た配下共なの」


 グリフィン……そういえばタクトの配下に居ましたな。

 そいつ等が自分達の種族を優遇させていたという事でしょう。

 なんとも身内に甘い連中ですぞ。 


「そんな問題があったんだ?」

「なの……大方タクトがその辺りと関わっていたと思われるなの。仕留める際にそれっぽい事を言ってる奴等が混ざっていたから間違いないなの。タクトはもういないのに諦めが悪すぎるなの」

「そういやタクトの仲間に居たね、グリフィン」

「なんか先代の王も随分前に諸国の視察をしている最中にやられたとか言ってたなの。姫は槍の勇者に殺されたとかなの」


 これは俺の手柄なので、お義父さんにキラッと輝く歯を向けながら親指を立てました。

 お義父さんは慣れた様な反応ですぞ。


「……なんか聞いた覚えがあるね、元康くん」

「そうでしたかな?」

「うん。タクトのグリフィンを仕留める時に元康くん、言ってたよ。親と同じ所に送ってやりますぞ、みたいな事」

「そうでしたかな? ああ、この周回でしたかな? エクレアに渡したグリフィンエッジの大元ですぞ」


 何分色々とループしている手前、忘れている事も多いのですぞ。

 グリフィンを仕留めた周回など多過ぎて忘れていました。


「おい! なんて代物を私に渡すのだ!」


 エクレアが異議を申し立ててきました。

 何か問題がありましたかな?

 便利な道具を融資してやっただけですぞ。


「狙われるのは勘弁してほしいねぇ。ちょっと離れてくれないかい?」

「ラーサ殿、冗談にしては全く面白くないのだが!」

「大丈夫じゃないかい? アタイは責任は持たないけどね」

「まったく……」

「所詮グリフィンですぞ。フィロリアル様が居れば十分ですな」

「所詮グリフィンなの。ドラゴンが居れば十分なの」


 ……ほぼ俺とライバルが同時に言ったのですぞ。

 なんでお前とハモらないといけないのですかな!?


「似た者同士にしか見えないなぁ……やっぱりループすると似ちゃうのかな?」

「心外ですぞ」

「心外なの。調子に乗っている連中に身の程を教えて大人しくさせただけなの。これだけでシルドフリーデンの生活が僅かでも改善したなの」

「うーん……余計な騒動にならないと良いんだけど……と言うかタクト残党の行方を魔物が知って居たりしないの?」

「グリフィンの派閥とはもう途切れている様だったなの。いつ連絡が出来るかはわからないなの」

「そっか……」

「ブー」


 ちなみにフィロリアル様達も同行しておりますぞ。

 ここ最近、サクラちゃんが一際不機嫌ですな。

 それでもお義父さんと一緒に居られて楽しそうにしてはおります。

 うう……実に健気なサクラちゃんですぞ。


「サクラちゃんどうしたの?」

「なんかガエリオンがナオフミの護衛をするなら四天王に任命してやるってこの前言ってたー」


 おい、どういう事ですぞ!

 そんな話、初耳ですぞ!


「そうなの。ガエリオンがナオフミを任せる為にサクラには風の四天王に任命してやろうと思ったなの。ちょっとした祝福を施してやるなの、塩なの」

「サクラちゃんに何をするのですかな! 返答次第じゃ殺しますぞ!」

「別世界の技術でフィロリアルの力とも反発しないパワーアップをさせてやるだけなの。パワーアップサクラなの、槍の勇者も喜べなの」

「勝手にそんな真似をするなですぞ!」


 なんて事をしやがるのですかな!

 サクラちゃんが変な病気になったらどう責任を取るつもりですかな!


「上手く馴染めば髪の色を金に、瞳の色を青に塗り替えられるかもしれないなの。槍の勇者がそうなって欲しいと思っていたけど、違うなの?」

「くっ……」


 サクラちゃんを外的要因でフィーロたんに近づけようとしているって事なのですかな!?

 ライバルめ! 何が目的ですかな!

 そもそも根本から間違っていますぞ。


「サクラちゃんは……サクラちゃんなのですぞ!」

「槍の勇者もかなり面倒な性分なの……」

「そうは言っても根は良い人なんだからさ」

「もちろんなの。ここで肯定する様な奴ならガッカリだったなの」


 何がガッカリですかな。

 ガッカリはお前等ドラゴンの特徴ですぞ。


「しょうがないから今のまま加護は不活性にしておくなの」

「ちょっと待てですぞ! 既に施しているのですかな!?」

「魔法式を組んでいる段階で火種を仕込んでいるだけなの」

「絶対に殺しますぞ!」

「えーっと……なんかフィーロって子にはガエリオンちゃんが居れば出来そうで怖いね」

「実験になりかねないから了承が無いならしないなの」


 当然ですぞ。

 ドラゴンなんぞ信頼出来ませんからな。


「あの……」


 そこでドラゴン推進をした議員がかなり眉を寄せつつライバルに書類を見せますな。


「はぁ……」


 ライバルもその書類を見て溜息をしながら出されたお茶を飲みましたな。


「何? 何かあったの?」

「いや、議会に来るけどガエリオン達を新たなドラゴンとして認めないって勢力から難問を叩きつけられているなの。その経過報告を見て、想像通りの結果が出て呆れているだけなの」

「それってどんな難問なのかな?」

「シルドフリーデンの一部にある貧困地域の問題なの。この問題は遥か過去、シルドフリーデンが出来た頃辺りから続いている問題でもあるなの……かなり面倒な話でもあるなの」

「シルドフリーデンでの難題って言うとアレかねぇ……」


 パンダが心当たりがある様に眉を寄せて呟きますぞ。

 こやつが知っているという事はそんなに有名な話なのですかな?


「ラーサさんも知ってるの? そんなに有名な話?」

「ゼルトブルじゃその辺りをビジネスにしてる商人が居たりするからねぇ。メルロマルクにも明るい方の話題は行く時があるんじゃないかい?」


 パンダがエクレアに目を向けて思わせぶりに小首を傾げますぞ。

 残念!

 エクレアの政治能力は下位ですぞ!

 期待するだけ無駄ですな。


「む?」

「アタイからしたらまずは底の空いた穴を塞がないと水は注げないと思うんだけどね。しかし、あの植物の種があっても出来なかったのかい?」

「出来たら来ないなの」

「そうかい。どうしようもないねぇ……」


 何やらライバルとパンダは呆れ果てていますな。


「ねえ、どんな話なの? 教えてくれない?」

「じゃあ答え合わせをしようかねぇ……波で飢饉と干ばつが起こる前から、飢饉で困っている地域や国ってのはあるんだよ」

「うん。このバイオプラントを正しく運用出来れば飢饉は解決する見込みがあるんでしょ? それはシルトヴェルトでもメルロマルクでも話をしたらわかったね」


 お義父さんも心当たりがあると言った様子で答えますぞ。

 そうですな。

 この世界は波の影響で四季や天候が滅茶苦茶な所があって、飢饉や干ばつ等いろんな災害が頻発するのですぞ。

 それも最後の波を乗り越えるまでの辛抱ですがな。

 何よりバイオプラントを食料にする事で簡単に改善出来る問題ですぞ。


 残念ながら名声はライバルに取られてしまいましたが、お義父さんよりお褒めの言葉を頂きました。

 ありがたき幸せ! ですぞ。


「ただねー……政治が腐敗している国ってのは相応に上が腐りきっていてね、明日の食事もままならないのに年貢を取って、他国に食料提供を呼びかけるのさ。貧困だからって文明人気取りでね」

「こういう世界だと攻めこんでくださいって言ってるようなものじゃない?」

「攻めこむ口実にもしやすいんだよ。食い物が無いから戦争だってね」

「うーん……」

「過去の勇者が広めた概念にある、平和ってのはそれだけ維持するのは大変なのさ。で、特に自国内でもその貧困問題のある地域に餌やりをしているのが、そこそこ強国だったシルドフリーデンなんだけどね。色々と呼びかけていたのさ。貧しさに飢える者達を世界で救おうって」


 一見良い話に聞こえますが、何やら不穏な気配がしますな。

 俺も日本で似た様な話を聞いた覚えがありますぞ。


「それって良い事なんじゃないの? 諸外国、それも大国が善意で動いている訳だし」

「ある程度はね。道の整備とか人々が学べる環境作りとか、改善出来る所は改善出来る。けど、世の中にはどうしようもない連中って言うのはいるんだよ。その地の貴族は大抵、送られて来る物資の一部を懐に収めてから配るのさ」

「うわ……」


 お義父さんがドン引きしていますな。

 確かにドン引きしてしまう位、酷い話ですな。

 ライバルがここで溜息をしますぞ。


「ちなみにその貴族を更迭して権利を剥奪して、復興優先に変えてもダメだった覚えがあるなの」

「おや? 既にやっているのかい?」

「平和になったワイルドなおふみの世界でその辺りの問題を耳にしたから覚えていただけなの。補足すると、その貴族が一部懐に入れた後、その後に続く輸送班が更に懐に入れて、今度は道を縄張りにしている奴等が通行料として一部を懐に入れて、目的地に着くまで似た様なやり取りが続くなの」

「……ちょっと待って。それって目的地に着いた時にはどれくらいになってるわけ?」


 サッとライバルとパンダ、ドラゴン推進議員が顔を逸らしました。

 どうやら相当やばい事になっているみたいですな。


「本末転倒じゃないか……なら直接ガエリオンちゃんが出向いて食料を配った感じ?」

「一応はやったけど、後で没収されたんじゃないなの?」

「はい……あの辺りは面子こそが全てという前時代的な考えに加え、その考えから逸脱する行為を極端に敵視する傾向がありまして……しかも毒物や薬物技術等物騒な代物は妙に発展しております」


 シルトヴェルトやシルドフリーデンは力こそ全てな所がありますが、その地方は面子……プライドが大事という事ですな。

 面子を潰されたら卑劣な策略などで暗殺を企ててくるという事でしょう。

 そういう奴等は集落総出でリンチとかに来そうですな。

 愚かな連中はタクトと同じで考える事が似ているのでわかりますぞ。

 HAHAHA、そんな奴等返り討ちですな!


「ああそう……なら尚の事バイオプラントを植えて世話をさせれば良いんじゃない?」

「ガエリオンの記憶が確かなら、植えた翌日には伐採されて薪になって近くの市場で売られていたなの」

「はい。よくおわかりで……」


 逆に凄いですな。

 あの切っても切っても生えて来て面倒だとお義父さんが言う程の代物を根絶させるとは。

 俺の罪である、過去に配った村の様に渡したらバイオプラントが暴れる事も無かったかもしれませんな。


「待てばみんなが食べるのに困らずに済むのに目先の利益を優先するって……どうしようもないじゃないか……」

「難題過ぎるねぇ。幾らなんでも無理だとアタイは思うけどね」

「当然なの。確か守銭奴のタクトですらも触れずにいた地域の話なの」


 あのタクトすら金になる所を見出せなかった問題地域ですかな?

 ある意味凄いですな。

 社畜ドリンクで従わせ、命令に従わない者は秘密裏に消して回っていたタクト派閥が触れないとは相当ですぞ。


「ネリシェンの行動記録によりますと、数回は行った様ですが、頭がすげ変わっただけだった様ですね。大々的な一掃まではタクトも風聞の為に出来なかったと言う事かと思います。立地の旨味もありませんしね」


 諸外国や大国が食料支援をしているとの話でしたな。

 そんな場所を滅ぼせば周辺諸国からの糾弾は避けられないという事でしょう。

 箸にも棒にも乗らない土地を含めた困った場所なのですな。


「ワイルドなおふみがこの問題に対して何を悩んでいたのかと言うと、それだけじゃないなの」


 おや? 最初の世界でお義父さんが悩んでいましたかな?

 あの迷いなく決断するお義父さんにそんな所があるとは思えませんが?


「何か他にも理由が?」

「そんな事ありましたかな?」

「槍の勇者のフィロリアル以外はどうでも良い精神はどうかと思うなの……お前のフィーロがシルドフリーデンにツアーをした理由の一つにあった事なのに覚えていないなの?」

「そんな事はありませんぞ! 俺が覚えている限りフィーロたんライブツアーはしっかりと成功を収めました!」


 俺の脳裏にはフィーロたんの輝かしい姿が未だ色褪せることなく残っていますぞ。

 舞台の上でキラキラと輝くフィーロたんが愛らしく踊って謳っている姿ですぞ。

 シルドフリーデン?

 そんなのどうでも良いですな。


「フィーロしか見てなかったに決まってるなの」

「まあ……」

「だねぇ」

「うむ、間違いない。これでこそキタムラ殿だ」

「あまり話はよくわかりませんが、槍の勇者様の事でその件はわかります」


 気まずそうなお義父さんを始めとした三騎士共が揃って同意していますぞ。

 エクレアの納得顔に納得が行きませんな。

 そういう信頼は要りませんぞ。


 違うんですぞ!

 俺はフィーロたん一筋なだけなのですぞ!


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