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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
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地響きの女王

「どうした? もうやめてしまうのか?」

「そりゃあ慣れられちまったら意味なんて無いからね。これからはもう少し応用を使ったもので行くよ!」

「ふむ……」


 そう言ってパンダは後転するとその場に竹が出現し、それに体重を掛ける事でしなって飛び上がり、エクレアに向けて飛びかかりますぞ。

 まるで大砲ですな。

 パンダが丸くて巨漢だからこそ出来る攻撃ですぞ。


「さらに……あらよ! っと」


 パンダの声と共にエクレアの死角から何本も竹が飛び出しますぞ。

 動きを封じるつもりですな。


「仕組みは同じなのにこうも変幻自在に竹が出現し、攻撃、妨害、補佐……その全てを担っているのか。素直に感服する」


 エクレアは剣を持つ手に力を加え竹を軸に転がりつつ飛びかかってくるパンダのツメの盾にしましたな。

 バキバキとパンダの振りおろしたツメが自ら魔法で作り出した竹を粉砕しました。

 かなりの威力がある攻撃ですぞ。


 ですがエクレアには僅かに届きませんでしたな。

 エクレアはそこから魔法を剣に込め、勢いよく突き出しました。


「アンタも戦闘スタイル自体は地味だけど、しっかりと対処してくるねぇ。ここで竹を利用出来るとは思いもしなかったよ」


 ガツッとパンダはエクレアの突きを竹を何本か盾にしつつツメで掴み、エクレアはパンダのツメを光魔法で弾を出して弾きました。

 そして徐に足払いまでしますが、エクレアは見越して足を上げて避けつつ、パンダの軸足へ逆に蹴りを放ってますぞ。

 パンダも即座に避けました。


 状況は拮抗していますな。

 バッと軽く距離を取ってから双方構えを解いて体に着いた埃を払いました。


「実力がある事は理解した。傭兵の戦い、しかと見せてもらったぞ」

「騎士様の高貴な戦いってのは不器用にしか見えないねぇ。けど、しっかりとあたいの攻めを受け流したんじゃ腕は確かな様だね」

「ふ……悪いが礼節は重んじるべきものだと私は思っているぞ。死角から攻めを好むのは傭兵だからであろうな」

「エクレアー、パンダの攻撃に怒ったりしないのですかな?」


 どうやら勝負は一区切りついてやめた様ですぞ。

 なので質問ですな。


「……実力不足を卑劣な手で誤魔化す様な手口でもあるだろう。だが、ラーサズサ殿の場合は自身に有利な状況を常に意識した長年の経験を元にした動きに感じた。これが傭兵としての生き残る為の術なのだろう」

「そりゃ回復魔法でも治らない様な怪我をする訳にはいかないからねぇ。その為ならどんな手でも使うに決まってるじゃないのさ」

「正々堂々と言いながらこれを行ったら私も不快に思っただろうな。他にLvによるごり押しで実力以上に見せ、未熟さを誤魔化したりするのも私は嫌いだ。何より、時と場合によって言ってる事が異なるなら怒るだろう」


 それはあれですな。

 タが最初に付いてトで終わる奴の事でしょうな。

 ちなみに最初の世界のループでお義父さんが錬にやられた攻撃らしいですぞ。

 錬が暗い顔で懺悔している事があったので覚えていました。


「それは決闘で騎士道を説きながら、追いつめられるとルール違反をした挙句、傭兵話を持ち出す様な奴かい?」

「ああ! だが、ラーサズサ殿はしっかりと傭兵としての戦いと宣言していたではないか。なので私も不快には思わない」


 これはアレですな。

 調子に乗っている錬などの動きが近いでしょう。

 あの時期の錬は妙に相手の裏をかこうとしていましたからな。


 しっかりとした強さを持っている者からすれば、妙な動きをするから何か仕出かそうとしているのがわかるのですぞ。

 そういう奴は追い詰められると力技やスキルを放ったりしてどうにかしようとするでしょうな。

 きっとスキル禁止の勝負でも負けそうになったら迷わず使うと思いますぞ。


「正々堂々なんて言って無いにも関わらず、騎士道を持ち上げる騎士様が多いけどねぇ」

「私をどこの領地出身の騎士だと思っている?」


 エクレアはメルロマルクでも亜人獣人と友好を築こうとした貴族の家の出ですな。

 なるほど、亜人の戦闘方法などもある程度は知っていたという事ですな。


「人間の判断基準だけで測れば思わぬ攻撃を食らう位の経験はしているつもりだ。これで私が接近出来ない様に遠くから魔法を撃ち続けて逃げ回る様な真似をするのだったら、私も穏やかではなかったが……そうなったらこちらも応戦するだけだ」

「場合によっちゃやるけどね。それが通じる相手かどうかくらいは判断するさね」

「ふ……あまり卑下する物じゃないぞ?」

「騎士様の戦いは好きじゃないってだけさね」


 なんて感じでエクレアとパンダは憎まれ口を言い合っていました。


「じゃあエルメロ。次はあんたの番だよ」

「……正直、無闇な戦いは好みじゃないのですけどね」

「だから、アンタは最近、盾の勇者を意識して良い子ちゃんぶってんじゃないって言ってんの」


 パンダが呆れ返った様子で注意していますぞ。

 本来は野蛮と言う事なのですかな?


「はぁ……しょうがないわね」


 ゾウは重い腰を上げてパンダと交代でエクレアと勝負すべく前に立ちますぞ。


「ラーサとの戦闘で疲れたんじゃないですか?」

「心配は無用だ」

「なら行くけど……今回は素手で行く」


 ゾウはエクレア相手に加減する気なのですかな?


「普段は何を?」

「私の戦いを見ればわかるかと」

「そうか……では、見させて頂く」


 エクレアは腰を落としていつでも戦える構えを取りますぞ。


「ゾウはどんな戦い方をするなの?」

「二つ名が地響きの女王って言うんだから、その辺りと関わりがあるんじゃない?」

「そうさね。竹林なんて出すあたいが言えた義理じゃないけど、正直エルメロと組んで戦うのは面倒だから、あんまり好きじゃないんだけどねぇ」


 パンダが気だるそうに座り込んで言いますぞ。

 ……随分と俺達の後方で休んでいますな。


「では……勝負……」

「開始!」


 ゾウの返事と共にエクレアがゾウに向かって駆け寄りますぞ。

 素早く側面に入りこんで攻撃をするつもりですな。

 ですがゾウは腕を振りまわしてエクレアの方を振り向きつつ、力強く地面を踏みしめますぞ。

 ドシンと、先ほどよりも数倍の音を立てて、辺りに地響きが起こりました。

 ぐらぐらとゾウを中心に揺れが発生し、傍観している俺達の所まで振動が来ております。


「おっと――」


 エクレアが揺れに対して体勢が崩れかけていますぞ。

 もちろん即座に立て直しますが、ゾウが完全に正面を向いてしまい、側面からの攻撃は出来ませんでした。


「はあ!」


 そうしてゾウがエクレア目掛けて足を振り上げて突撃しますぞ。


「くっ!」


 動き自体はそこまで速くはありませんが巨漢故に大きく避けねば当たってしまいますぞ。


「まだまだ!」


 ゾウは方向を即座に変えて再突撃をしますぞ。

 ドシンドシンと地面が揺れ続けていますぞ。

 その揺れに因って、エクレアは走り辛そうにしております。


「ま、これで大体わかって来たんじゃない? エルメロはね、基本的に魔法で地響きを大きく起こしながら相手を追い詰めて行く戦法で戦う。かなり攻めを意識した戦いをするのさ」

「凄い揺れてるね」

「土系の魔法で出来ると思いますぞ?」

「エルメロはそれを高頻度で起こせるんだよ。確か使っている魔法はファスト・アースサーチって言う軽い衝撃を起こす魔法だよ」

「ファストですかな?」


 初級魔法ですぞ。

 その割には随分と効果が大きい気がしますな。


「足を媒体に周囲を僅かに振動させる弱い魔法なんだけどね。エルメロが使うとああなるのさ」


 重量級のゾウが使う事で地響きを起こして周囲の者の動きを阻害出来るのですな。


「それって本来は何に使う魔法なの?」

「地中に隠れている魔物とかを見つけるのに役立つのさ。副次効果で周囲に埋まっている物がわかる魔法なんでね」

「ダウジングが本来の用途なんだ? それをあんな感じに使うなんて凄いと言えば凄いなぁ」

「ガエリオンなら平気な相手なの」


 ライバルが小さな羽を見せる様にして言いますぞ。

 それはお前が飛べるからではないですかな?


「まあ、ガエリオンちゃんはね」

「そりゃあ、風系の魔法が使える奴らならなんとも思わないだろうさ。少し浮かせれば良いだけだからねぇ」

「ゲーム風だと相性ってことでしょ。ラーサさんみたいにそれだけじゃないんだよね?」

「そりゃあね。ま、あたいは竹林を出したり竹に掴まって居ればどうとでもなるけどねぇ」

「地震の時は竹やぶに避難しろってあるけど……確かアレってガセだったような?」

「そうなのですかな?」


 俺もなんか聞いた様な覚えがありますぞ。


「まあねぇ。本気で土魔法を使われたりすると地面をひっくり返されて竹林と一緒に、なんて事もあるさね。根っこまではそこまで力強く無いのさ。だけど竹自体は揺れても平気だからその揺れも利用して飛び回れるのさ」


 ああ、つまりパンダは竹林で竹を使って縦横無尽に飛びまわりながらゾウに何か攻撃が出来るって事でしょう。

 中々臨機応変に戦えるみたいですな。


「あの騎士様がエルメロ相手にどう善戦するか楽しみさね」

「エルメロさんを相手にしているとエクレールさんの剣が爪楊枝みたいに見えちゃうね」


 なんて話をしていると、エクレアはゾウに向かって跳躍し、その突撃に合わせてゾウの体に乗る形で飛び越えますぞ。


「おっと」


 ですがそれをゾウは鼻を伸ばして掴みかかりますな。


「させるか!」


 エクレアが剣を振り、ゾウの鼻へと切りかかりますぞ。

 さっと僅かにゾウは引いた所為でエクレアは離脱しましたな。


「超重量級獣人種との戦闘は手こずるとの話を聞いたが……確かにこれは攻め辛い……捕えられていたら振りほどくのに苦労しそうだ」

「ふふふ……どうせめて来る?」


 ゾウの猫の皮が剥げたのか、高圧的な感じの顔をしていますぞ。

 あれですな。Sな匂いがありますな。


「正面から行くのは悪手。腕は元より鼻さえも武器として来るのは目に見えているのであろうな……手を三本持った相手と戦っている様なものだ」

「じゃあどうするのかしら?」

「こうするまで! 地響き程度で私を止められると思うな!」


 エクレアはゾウに正面から突撃し、ゾウが両手と鼻で叩きつけを行おうとした所を更に加速……からのスライディングしてゾウの股下を潜りぬけますぞ。

 そのまま足に向かって剣で切りつけました。


「あいた!? やったわね」

「まだだ!」


 そのままエクレアはゾウの背後を取って追撃に走ろうとしましたぞ。

 ですが驚くべき事が起こりましたな。

 ゾウの背後の地面からトゲが伸びて攻撃しようとしたエクレアへと反撃しますぞ。


「む!?」

「股下を潜る相手って多いのよ。ここまで判断良く、大胆に攻めて来る相手は久しぶりね!」


 ゾウは地面を踏みしめる度にエクレア目掛けてトゲが出続けますぞ。

 それをエクレアは巧みにバックステップやバク宙、バク転をしながら避けて回りますな。


「何度も経験済みの攻撃手段だったか」

「そりゃあね」

「確かに、安易な攻めは相手に攻撃のチャンスを与えるものだ」

「私を正攻法で倒したかったら、それこそ距離を取りながら魔法で消耗させる方が良いんじゃない?」

「確かにそれが手堅い方法なのだろう。だが、貴殿にその対処が出来ないとは思えない」

「へっ! よくわかってるじゃない」


 ゾウがエクレアの返事に正解だとばかりに答えますぞ。

 近距離だと動きを阻害しつつ戦車の如き突撃で仕留め、遠距離でも何かしらの手段に講じる。

 背後を取ったら魔法で死角を補う。

 同じくらいのLvとステータスだったら手古摺りそうですな。


 ですが何故ですかな?

 お姉さんのお姉さんは平然とゾウを銛で素早く一突きしそうなイメージが浮かんできますぞ。

 俺も同じ様に一気に畳み掛けて行くでしょうな。


「エルメロさん、口調が変わってるね」

「アレが地なのさ。傭兵なんてしているシルトヴェルトの放蕩騎士様だからね」

「本来はラーサさん寄りって感じ?」

「間違いはないね。とは言っても妙な所で騎士道精神があるみたいで面倒な奴さね」

「一体どんな人なんだろう?」

「歪んだ人生が見え隠れするなの」


 逃げ続けるエクレアに痺れを切らしたのか、ゾウは地面に手を置いて魔法で巨大な岩を引き抜いて投げますぞ。


「それが対抗手段か!」

「そうだよ。がんばって踊りなさい!」


 どうにか避けるエクレアですが、これではエクレアに勝利の目はあるのですかな?

 ゾウはドンドン魔法を使って岩を投げつつ、エクレアに休む暇を与えない様に地面から突起を出す魔法を繰り返しますぞ。

 余裕がある点と言えばゾウ自体の動きは緩慢な所でしょうかな?


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