コンバートフォルダ
「それで……元康くんの話だとループするって条件の樹が死亡した後、元康くんがこのループに戻って来て続いている、って感じなんだけど」
更にお義父さんはライバルにシルドフリーデンでタクトの残党を処分する為にはお義父さんがドラゴンを使役しないといけないとの話をしました。
これで現在の状況を全て話しましたな。
「なるほど……大体事情は把握したなの」
「元康くんの話だとループが再発生して二回目らしいけどね」
「一回目はドラゴンに近付きもしなかったって事なの」
「当然ですぞ」
「相変わらず槍の勇者はバカなの……」
「なんだと、ですぞ!」
相変わらず喧嘩腰のドラゴンですな。
お前など一突きであの世に送ってやる事も出来るのですぞ!
「それは否定できない……」
「だねぇ」
「間違いない……無論、これでキタムラ殿自身は真面目に取り組んでいるのだとは思うのだが……」
パンダとエクレアが揃って同意しますぞ。
お前等は誰の味方ですかな!?
「話はわかったなの。なおふみのお願いなら喜んでお手伝いするなの」
「それは助かるよ」
「ただ……ガエリオン、これからLvを上げてしっかりと成長しきるまではなおふみに見てもらうのはちょっとイヤなの」
「え? なんで?」
「だってそうするとなおふみはガエリオンを子供として見るなの」
「ふはははは! ついに馬脚を現しましたな! コイツはどこまでも肉食ですぞ。お義父さん! 気を付けるのですぞ」
お義父さんに露骨な性的アピールをし始めました。
それは逆効果ですぞ!
するとライバルは俺を憐れむ様な眼で見てからお義父さんに見返しますぞ。
「馴染む最初の体だけど、これでもガエリオンは無数のループと長くワイルドなおふみの世界で生きているなの。そんなガエリオンを子供扱いされるのはドラゴンとしてはプライドが傷付くなの」
む……物は言い様ですぞ!
そもそもお前は先ほど、記憶の更新をあまりしていなかったと言っていたはずですぞ!
矛盾していますぞ!
お前の最終更新はいつ頃なのですかな!?
ラフーになったと……そんな記憶ありましたかな?
なんとなくぼんやりとですが、それっぽいシルエットが見えますが、俺の記憶違いのはずですぞ。
「お前はチョコレート姿が長かったはずですぞ!」
「あー懐かしいなの。あのボディは楽だったなの」
「えーっと、なんとなくガエリオンちゃんの年齢が高いのはわかったよ」
「なの」
絶対嘘ですぞ!
騙されてはいけませんぞ!
「まあ、そうだよね。ループしていて記憶がある訳だし、見た目と精神の年齢が違うのは当然か」
「例外はあるのだろうと私は思うが……」
エクレアが何やらお義父さんの意見に対して例外を持ち出していますぞ。
「……気にしないであげた方が良いよ。あれ位強い精神をしてないと何度も同じ時間を繰り返すのはつらいだろうしさ」
「そ、そうか……」
お義父さんとエクレアが何やら理解し合っていますな。
くっ……何故かライバルの株が上昇しています。
俺の方が沢山ループしているので長く生きているのですぞ。
だから俺の方が精神的に強いはずですぞ!
「ドラゴンは不老みたいな存在ですぞ! いつまでもガキですぞ、お義父さん!」
「うん、そうだね……とは言ってもね、ガエリオンちゃん。君を育てられる人って一応俺になるんじゃない? 元康くんやサクラちゃん達は嫌がるだろうし、来るべき戦いに備えてラーサさん達と同じ位、強くなってもらいたいから、一緒に上げたいんだけど?」
HAHAHA。
早くも計画が破綻しましたな。
だからドラゴンは無能なのですぞ!
「……しょうがないなの。でも子供扱いはしないで欲しいなの」
「わかったよ。じゃあガエリオンさんが良いのかな? なんか違和感あるけど」
「ちゃんの方が良いなの! 年寄り扱いはイヤなの」
「子供扱いはイヤで年寄りもイヤか……難しい注文だなぁ」
「それがドラゴンなの!」
激しく面倒な精神構造をしていると思いますぞ。
それに比べればフィロリアル様達は永遠の純粋さを持っておられますぞ!
やはりドラゴンよりもフィロリアル様の方が素晴らしい存在ですな。
「で、ガエリオンちゃんに聞くけど、限界突破の方法とか覚えてる?」
「もちろん覚えているなの。記憶として保存しているから最低限の核石と勇者の武器さえあれば出来るなの」
「それは助かるよ。じゃあこれからよろしくね、ガエリオンちゃん」
不服ですが、こうしてライバルが正式に加入しました。
これから馬車馬の様に働いてお義父さんに貢献しろですぞ。
「当然なの。シルドフリーデンがなおふみ達を受け入れる様にがんばるなの! 別世界で魔王とも呼ばれていた竜帝の核石も集めて力を付けていたから、他にもいろんな物や魔法を知っているなの。統治も出来るパワーアップガエリオンなの!」
などとライバルは騒いでいますぞ。
本当に喧しい奴ですな。
「頼もしいね。ところで話は大分纏まってきた訳だけど……その、君を無理矢理連れ出しちゃったけど、君のお姉さんは……」
「ああ、大丈夫なの。余裕がある時に里帰りをするなの。家族を支えるのは当然なの。ガエリオン、派遣ドラゴンなの」
「派遣……なんか色々と知っているんだろうけど……」
お義父さんがそんなライバルの自爆を見て呆れておりますな。
ふふふ……その様子ではお義父さんの心を射止める事など夢のまた夢ですぞ。
もっと無様に墓穴を掘れですぞ。
「そうだ、ライバル」
「なの? 槍の勇者、どうしたなの?」
「お前のループする機能を解析、追い出してエターナルフィーロたんのコンバートフォルダにするから手伝えですぞ」
「……何を言っているなの?」
ライバルはキョトンとした表情を浮かべました。
何を呆けているのですぞ。
早くフィーロたんを! コンバート! しろ! ですぞ!
「元康くんは相変わらず説明が下手くそだなぁ……」
「だねぇ」
「そうだな」
「ええ」
だからお前等三騎士共は錬や樹みたいに息を合わせて同意をするなですぞ!
ともかく、早くフィーロたんの記憶をエターナルしろですぞ。
「えっとね、この世界だと元康くんの目当てのフィロリアルはサクラちゃんになっちゃったでしょ? だけど元康くんは諦めきれないから、ガエリオンちゃんみたいにサクラちゃんにフィーロって子の記憶を思い出させると言うのかな? そんな事をしたいんだ」
「つまりガエリオンを追い出してフィーロと? そんな事をしたらフィーロが壊れると思うなの」
「フィーロたんはガラスの様な神々しい透明な存在ですからな。ですが俺は諦めませんぞ。ライバル、お前はいい加減槍から出て行って、そのスペースをフィーロたんに譲れですぞ」
「槍の勇者……ガエリオンがループに便乗出来るのは核石に意識と記憶を内包出来る生態をしている不死性を持っているからなの。フィロリアルにそんな生態は無いなの」
真顔でライバルが哀れみの視線を俺に向けてきますぞ。
なんですかな?
ふざけた事を言うなですぞ!
「永遠の寿命を持つフィロリアルの女王はいるけど、そっちも系統が違うから無理なの。諦めろなの」
くっ……つまりフィーロたんエターナル計画は失敗という事ですかな?
では、俺は何の為にライバルを蘇らせたのですかな?
いえ、まだ諦めるのは早いですぞ!
「俺は諦めませんぞ! お前のスペースを利用してエターナルフィーロたん計画をするのですぞ! だからお前の記憶を槍の中から消してフィーロたんフォルダを作るのですぞ!」
ドラゴン風情に出来たのですからな。
フィロリアル様の神聖にして頑強な力を持ってすれば必ずや実現出来るはずですぞ。
フィーロたん、フォーエヴァーーーですぞ!
「これって目の前でお前を殺す宣言してる様な……」
「気にしなくて良いなの。槍の勇者は相変わらずなの。ともかく、無理な物は無理なの。ガエリオン流では無理だから別の手段を模索した方が良いなの」
「出来ないとは言わないんだね」
「同情なの。フィーロはツメの勇者になって居たから、どこかで誤作動しているらしい龍刻シリーズの武器でもどこかのループで持たせれば良いんじゃない、なの?」
ライバルが何故か俺に同情の眼を向けていますぞ!
そんな目を向けてお義父さんのポイントを得ようとしても無意味ですぞ!
これは俺の野望なのですからな!
「そもそもどうしてループを再開しているか解明するべきだと思うなの」
「確かにそうなんだけど……ガエリオンちゃんはわかる?」
「もう少し力を付けないと槍に干渉出来ないなの。あくまで今のガエリオンは記憶だけ継承した状態なの」
「そっか。じゃあ色々とやる為にもこれからがんばっていかないとね」
「また騒がしい事になったのだな」
「どんどん賑やかになっていくねぇ」
「よろしくお願いします」
各々がライバルに声を掛けました。
そんなライバルはパンダに言いました。
「そう言えば着飾りパンダなの。この世界だとどう言った経緯でなおふみと一緒にいるなの?」
「あ!? 誰が着飾りだって!?」
パンダが青筋を浮かべてライバルに怒鳴りますぞ。
「ワイルドなおふみの世界ではササちゃんと呼ばれていた着飾りパンダくらいしかガエリオンも覚えてないなの」
その名を呼ばれてパンダは前にも似た様に毛を逆立てますぞ。
「だからその名はなんなんだってんだ!?」
「ぷ……ササとは。確かにそう呼べる」
「エルメロ! あんたなぁああああ!」
パンダがライバルを見てからゾウを指差しました。
ササちゃんと呼んでいたのはお姉さんのお姉さんですぞ。
「知らないなの。あ、でも隣にいる女騎士は良く剣の勇者と一緒に居たなの」
「私か? まあ、ループと言う現象ではそう言った縁もあるかもしれん。やはり貴方はキタムラ殿と同じく繰り返している者なのだな」
「なのなの。色々と気色悪いと思う所はあるかもしれないけど、これからよろしくなの」
「その様な事で嫌う訳がない。こちらこそよろしく頼む」
「じゃあ自己紹介も程々に、これからどうするかを煮詰めて行くとしようか」
なんて感じで時間は過ぎて行ったのですぞ。
とりあえずシルトヴェルトに一旦帰還したお義父さん達はLv上げを行う事にしました。
俺はその間に各地を周ってドラゴン退治ですな。
ライバルの能力上げは元より限界突破の力を上げる為ですぞ。
潜伏しているタクト派閥をより迅速に仕留められる様、精鋭を作り出すのが目的となりました。
「さて……方針が決まったのは良いとして、これからの連携を踏まえて多少組み手をする方向でよろしいか?」
エクレアがパンダとゾウにそう尋ねました。
「何分、キタムラ殿やフィロリアル達の助力を受けずにイワタニ殿と共にLv上げをして行かねばならない。その為にはどんな事が出来るかを共有する必要があると私は考えている」
「一理はあるけど手の内を見せるって所が若干怖いかねぇ。友好派閥で実績もあるとはいえ、メルロマルクの騎士だろ?」
「む?」
パンダの差別的な発言にエクレアが疑問符を浮かべました。
エクレアの事ですからな。特に含みもなく、情報共有を求めたのだと思いますぞ。
「ラーサさん、エクレールさんはそんな人じゃないよ。凄く真面目な人だから」
「はいはい。お堅い騎士で軍人様って事かい? どちらにしても人間となるとねぇ一部の連中以外じゃ凡庸だからお手並み拝見だね」
「ああ、それでは手合わせをしようではないか。楽しみにしていたのだ」
お前等はどこの戦闘民族ですかな?
と、最初の世界のお義父さんなら言いそうですな。
エクレアは元より、老婆の弟子にはこんな奴が多かったですぞ。
「吠え面かくんじゃないよ?」
エクレアが剣を抜き、パンダがツメを立てて構えました。
「じゃあ、城の訓練場で勝負と行こうじゃないか」
「ラーサ!」
「エルメロ、アンタもやるんだよ! それともあたい達は盾の勇者に群がるだけの女なのかい? ここいらで力って奴を見せなきゃねぇ」
ほほう、パンダの割には良い事を言いますな。
お義父さんに寄生するのではなく、貢献したいとは……パンダに対する認識を改めてやりましょう。
「……そうね。理屈はわかった。けど、何もこんな所でしなくても良いんじゃない?」
「これからだからじゃないのさ。そもそも盾の勇者にはあたい達がどれくらいの強さを持っているのかすらわかって無いと思うね。精々そこいらの奴等よりは強いんだろうなって感覚だろうさ」
パンダはお義父さんの方を一度見てからゾウに注意しますぞ。
「あたいは正直、どうでも良いとは思ってるけどね。あんたはどうなんだい? らしくない猫を被ってさ。騎士ごっこがそんなにやりたかったのかい?」
「わ、私は……」
「どちらにしても私は良い機会だと思う。どんな動きが出来るのかをイワタニ殿達にも見てもらえば良いだけの事だ。貴殿とも後ほど手合わせを願いたい」
これから波との戦いがあるのだから、とエクレアは続けました。
それから、息を合わせるかの様に、パンダと共に訓練場の方へと歩き出しましたな。




