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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
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ゾウの背に乗る小鳥

 う~ん、どこでしたかな?

 ああ、確かタクトの妹豚がそんな名前だったかと思いますぞ。


「タクトの妹でしたかな?」

「はい。世界の敵と認定された事を不服に思い、潜伏していた所から抜け出して暴れていた様です。その場に遭遇し、正面からの戦闘の末、私が捕縛をしました。経緯はこちらに……」


 そう言いながらゾウがスクロールを差し出しますぞ。

 まだこのループでのお義父さんは文字の読み書きが達者ではないので、近くの者達に朗読してもらっています。


 状況を掻い摘んで整理すると、タクトの妹豚が潜伏場所から抜け出して、タクトを悪く言う者達を暴力で制裁を加え、暴れていた所にこのゾウは遭遇し、戦闘に突入。

 そして捕縛する事が出来たみたいですが、妹豚以外の者は取り逃したみたいですな。

 ですが、仲間に助けを求める妹豚をタクトの残党は『妹だからって調子に乗っているからそうなるのよ』と吐き捨てて見捨てたそうですぞ。


「要するにタクトの妹を囮に使って逃げたって事?」

「その様です」


 聞くだけで反吐が出ますな。


 そうしてパンダと同じ様に半傭兵業をしていたゾウは賞金目当てに妹豚をフォーブレイへ連行すると、大物を捕えた功績で急遽、母国であるシルトヴェルトで表彰される事になったそうですぞ。

 元々名義上は騎士である事が理由だとかなんとか。


 タクトの妹は豚王のハーレムに連行され、情報を引き出す事に利用されるとの話ですな。

 その妹豚が暴露した潜伏先は既にもぬけのからだったとか。

 今の所重要な情報は出て来ていないみたいですな。


「なるほど……おめでとう」


 お義父さんが納得したように褒めますぞ。

 それに続き、シュサク種の代表とゲンム種の翁が前に出て宣言しました。


「世界の敵、タクト派閥、潜伏していたタクトの親族を捕らえた功績を我等が国シルトヴェルトは非常に高く評価している。よってエルメロ=プハントには盾の勇者様の守護騎士に任命する」

「えええ!?」


 ここでお義父さんが露骨に嫌そうな顔をしながら声を上げています。

 守護騎士という事はパンダと同じく、お義父さんの配下になるという事ですぞ。

 盾の勇者であるお義父さんからお褒めの言葉を受けるだけではないのですかな?


「ちょっと待って。なんで!?」

「活躍に対する報酬は必要不可欠でございます。それに彼女はラーサズサに匹敵する強さと広い顔を持つ元自由騎士。盾の勇者様の守護騎士がラーサズサだけでは負担も多いかと思います故」

「だからって……」


 お義父さんがゾウに視線を向けるとゾウ獣人はかなり緊張しているのか、両手を合わせてゴネゴネしていますな。

 デカイ図体の割に反応は控え目ですぞ。


「何を照れてるんだい? いつもの勝ち気はどこに行った?」

「う、うるさい! いえ、すみません!」


 パンダの挑発にゾウは言い返しつつ訂正していますな。

 ああ、付け焼刃ですか。

 知り合いがいると不便ですな。


「まあ……俺の護衛をずっとラーサさんにさせるのは負担だと思うけど、元康くんやサクラちゃん達もいるしなぁ」

「槍の勇者様とその配下のフィロリアル達がいらっしゃるのは理解しています。ですが、シルトヴェルトが代表して守らねばならないのもまた事実……士気の高揚の為にも、どうか受け入れて頂けると嬉しく思います」


 そんな話を聞いてお義父さんはまたも溜息を吐きました。


「……わかったよ。ラーサさんにも色々と調べてもらおうと思っていたし、これからの事を考えると人手が多い方が良いよね。だけど、ゾウか……風呂でマンモスに襲われそうになった記憶が……」

「あ、おそらく従姉妹です。節度の無い親戚で申し訳ありません……」


 ゾウが絞り出す様に言いました。

 マンモスの親戚がゾウなのですかな?

 シルトヴェルトの種族は多彩なのでよくわかりませんが、そういう物なのでしょう。


「あーうん……気にしてないから……あんまり俺に期待しないでね。むしろ立場的に不安そうだけど、大丈夫?」

「はい。それだけの実績を築けたと判断されています」

「ああ、そうなんだ。それを承知の上なら、良いよ」


 半ば諦める様な言い方でお義父さんは玉座に浅く腰かけてやる気が減退した感じで答えました。

 逆にゾウはやる気に満ちた表情になりましたな。


「はい! これからよろしくお願いします。このエルメロ! 命を賭して盾の勇者様を守る所存です!」

「ほっほっほ、あまり肩に力を入れ過ぎない様にの。ラーサズサと同じ様に、自然体で盾の勇者様を守れば良い」


 ゲンム種の翁がゾウに注意しますぞ。

 これは……お義父さんの好みのタイプを徐々に把握してきている気配がありますな。

 なんとなくパンダと似通った属性をゾウから感じます。

 パンダやお姉さんのお姉さんとも違った、お義父さんを攻略する体制ですな。

 昔、ライバルが似た様な姑息な事をやっていたので覚えていますぞ。


「よろしくね」


 お義父さんの渇いた返事が非常に印象的な出来事でしたな。


「わー大きいー。サクラよりも大きいねー」


 サクラちゃんが陽気にゾウへと近づきますぞ。


「これからよろしくお願いします」

「よろしくー」


 サクラちゃんが挨拶をするとゾウは優しげに微笑みますぞ。


「肩車しますか?」

「えー? なにー?」

「これですよ」


 そう言いながらゾウは屈み、サクラちゃんを抱きかかえて鼻を器用に使いながら頭に載せました。

 サクラちゃんは視界が高くなって楽しいのか笑顔になりました。


「わーたかーい!」


 サクラちゃんがゾウの頭に手を置いて辺りを見渡しております。


「ジャンプするのとはまた違うー!」

「楽しそうー! コウも乗せてー!」

「はい。どうぞ」


 そうしてサクラちゃんとコウがはしゃぎはじめました。

 おお、サクラちゃんとコウを同時に乗せていますぞ。

 パンダ以上の重量級ですな。


 ふむ……これは良いゾウですな。

 少しだけ評価を上げてやりますぞ。


「はしたないですわ!」


 ユキちゃんが注意しますがサクラちゃん達は全く聞いておりませんぞ。

 まあユキちゃんの好みとは違う感じですな。


「子供好きなのかな?」

「そこは知らないねぇ。ポイント稼ぎじゃないのかい?」


 パンダの嫌味が耳に入って居ないのか、ゾウはサクラちゃん達を背に乗せてしばらく玉座の間を歩きまわっておりました。


「ゾウの背に乗る小鳥……なんちゃって」


 なんて言葉をお義父さんが漏らしているのが印象的な時間となりました。




 それからしばらくして宝物庫から頼んだ竜帝の核石が運び込まれて来ましたな。


「……あれ? こんなだったっけ?」


 お義父さんが俺の倒したタクトのドラゴンから採取された砕けている核石を確認します。


「違うのですかな?」

「うん。採取した時の形を覚えてるからわかるけど、砕け方が違うんだ。なんとなく色も違う気がしない?」


 言われて俺はドラゴンの核石を確認しますぞ。

 砕けた水晶の欠片の山にしか見えませんな。

 ですが……俺は高精度の鑑定を使用して竜帝の核石を確認しますぞ。


 イミテーションドラゴンハート


 竜帝の核石と書かれた物の名前部分がチラついた後、名前が変わりました。


「模造品ですぞ!」

「なんと!?」

「何!?」


 俺がそう告げると辺りの者が揃って核石に群がって調査を始めますぞ。 

 それから宝物庫に対して厳重な捜査が始まりました。

 高度な潜伏技術を使用した侵入者の痕跡が僅かに残されていたそうですぞ。

 犯行はおそらく俺達がシルドフリーデンへと行った頃だろうとの事ですな。


「まさか賊が……この警備の中を潜って侵入していただと!?」


 シルトヴェルトの者達は揃って驚きの声を上げております。

 亜人や獣人の国であるシルトヴェルト故に宝物庫の警備はかなり厳重ですぞ。

 隠蔽状態の者でも居場所を嗅ぎつける者がいる中での犯行に戦慄が走りました。


「元康くんが育てたフィロリアルも城に待機しているのに気付けないなんて……」


 俺の知る人物の中でこれほどの腕前を持つ者は数える位しかおりません。


 筆頭はお姉さんですぞ。

 元から幻影魔法の使い手であり、タクトのキツネ等にも非常に優位に立ちまわったとの話。

 次にお義父さんが大切にしていたお姉さんを元に作り出した生き物達ですぞ。

 奴等はお姉さんと同様の技術派ですからな。


 その次は……お姉さんの亡き友人ですな。

 あやつも隠れるのが非常に上手でフィロリアル様が発見出来ませんでした。

 しかし、このループでは既に亡くなっているはずですぞ。


 まさかお姉さん……タクト派閥にでも属したと言うのですかな!?


 いえ……冷静に考えろですぞ。

 クールになるのですぞ。

 俺を迎えに来たお姉さんが、こうしてループを再開した俺への試練を与えたと言うのはどうですかな?

 ドラゴンを使ったフィーロたんとのループの旅をさせる事が出来るか試しているのですぞ。


 ですが……それなら先に注意して来る気がします。

 お姉さんがそんな回りくどい事をするとも思えません。

 むしろフィーロたんを連れて来て欲しいですな。 

 何故俺をループさせているのか理解できませんぞ。


 それ以外……?


「ねえ元康くん、ここまでピンポイントだとタクト派閥が関わっている可能性があると思うんだけど、出来そうな相手に心当たりとか無い?」

「キツネは既に処分済みですからなぁ……」


 あやつが生きていれば真っ先に疑うのですが、この世界では既に処分済みですぞ。

 それ以外となると有象無象と言った感じですな。


「これだけ手がかりが無いとなると相応に訓練を受けた者である可能性が高い。各国の隠密部隊クラスの者か……」

「そう言えば……最初の世界で処刑された豚の中にフォーブレイの影所属の奴が居た気がしますぞ?」


 俺の言葉にピンと来たのか、お義父さんを初めとしたシルトヴェルトの者達が納得の表情をしました。

 アタリですかな?


「なるほど……高Lvの影がいるのならばありえなくはない」

「暗殺目当てや危険物、毒物を設置するのであるのなら我等も気付けるが、盾の勇者様達の留守中ともなると……くっ……勇者様方、申し訳ありません!」

「警備がザルなのも限度を知れですぞ! もっと隠蔽を暴ける者を配置するのですぞ」


 お前等の所為でフィーロたんエターナル計画が頓挫し掛けていますぞ。

 シルドフリーデンもシルトヴェルトも似た様な物ですな!

 無能の集まりですぞ。


「いや……気にしなくて良いよ。俺達の方を狙って来ると思ったのに、こんな真似をして来るとなると、より一層ドラゴンを早めに配置しないといけないのがわかるよ」


 お義父さんは事態の重さを理解した様に呟きました。

 確かに色々な面で後手になって来ている気がしますな。

 潜伏しているテロリスト共の厄介さを身に染みて理解した感じですぞ。


「奴等も竜帝を回収してシルドフリーデンの実権を握りたいという事ですかな?」

「いや、もうシルドフリーデンはシルトヴェルトの属国みたいなものだから、外部からドラゴンを持ってきてもどうにもならないんだ」

「そうなのですかな?」

「うん。タクト派閥の連中がドラゴンを大々的に掲げるなんて真似をするのは妙な話なんだよ。自分達がタクト派閥だと自ら証明しちゃう訳だし。もちろん潜伏はしやすくなるのかもしれないけど」

 

 となると別の理由があるという事ですな。

 タクトの事ですから、豚共に色々と話していた可能性はありますぞ。


「ありそうなのは……そうですな。あと数ヶ月後辺りに霊亀の封印が解かれるはずなのですぞ」

「霊亀?」

「そうですぞ。強力な守護獣だそうで、生き物の魂を集めて波から世界を守る結界を作り出す化け物ですぞ。その所為で世界中のほとんど……三分の二程犠牲が出た事がありますぞ」

「三分の二……尋常じゃない数だね……」


 そうですな。

 結果的にそれだけ命が犠牲になった事で世界を守る事は出来た訳ですがな。

 このループの次のループで手を焼いた連中ですぞ。


「そんなのもいるんだね。それはわかったけど……それとどんな関係があるの?」

「その守護獣は全部で四種。霊亀、鳳凰、麒麟、応竜となるのですが……タクトのドラゴンは応竜の封印に関わっていて、その応竜になる事が出来るのですぞ!」

「ええっ!? つまり盗まれた竜帝の核石で応竜が解き放たれるって事?」

「なんと……」


 その場にいたほとんどの者達が顔を青くさせていますな。

 まあ応竜が厄介な敵であると伝わったのは良い事でしょう。


「タクト派閥の残党がそれほどの力を持つ核石を所持している……勇者様達への復讐と、力による世界征服が同時に出来る。それほどの手立てがあの様な物の中にあるとは……」

「厄介な話だねぇ……逃げる準備でも始めるかね?」

「ラーサ!」


 ゾウがパンダを注意しますぞ。

 パンダは傭兵なのでどこまでも軽い感じがしますな。


「守護騎士ラーサズサ! 立場をわきまえろ!」

「わかってるけど、それくらいは言っても良いんじゃないのかい? 慈善事業だけで世の中は回らないし、上の者としても国民の事を考えなきゃダメなんじゃないのかい?」

「く……!」

「落ちついて。ラーサさんも本気じゃないよ。この人は避難の準備もしていた方が良いんじゃないかって言ってるだけなんだから」

「あんまり買いかぶられても困るけどねぇ。傭兵だったら既に手を引く事を考えてるってだけさ」

「確かに避難を視野に入れるのは重要です。ですが、ここにいるのは猛者達です。困難は打破するものなのでは?」


 パンダとゾウはそれぞれ意見が異なっていますな。

 同じ元傭兵でも差があるという事でしょう。

 俺的にはゾウの意見に賛成ですな。

 応竜が単体で出てきたらデストローイですぞ。


「我が国の総力を以って盗人を捕えよ! そして、もはや一国の問題を軽く超える問題である。ただちにフォーブレイにも報告するのだ!」


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