眼力
「まあね。とはいえ、タクト派閥に属していた連中は銃器を所持していた訳だし、戦争中もよく狙撃してきたからその辺りで来ると思うんだ。念のために俺が単独で自己主張するから、攻撃が来たら場所の特定をお願いするね」
「わかりましたですぞ! デストローイ!」
「元康くんは手加減してね。捕まえて仲間の居場所を吐かせるんだから」
「もちろんですぞ。俺の槍が唸りますな」
きっと豚が多いですからな。
沢山捕まえて豚王の番にしてやりますぞ。
「どう考えても白状させる前に殺しそう……本当にお願いするからね」
「もちろんですぞ」
「不安だけど……ラーサさん、お願いするね」
「アタイに無茶ぶりするんじゃないよ!」
何をパンダにお願いしているのですかな?
俺さえいれば万事解決ですぞ!
どこから来ますかな?
すぐに動ける様に周囲を確認しておきましょう。
「えーっと……ユキちゃんもコウも頼りにならなそうだし、サクラちゃんじゃ無理だよなぁ……まあ、ここは相手が悪かったって事にしよう」
「ユキが頼りになりませんの?」
「じゃあユキちゃん、元康くんがこれから暴れるのを止められるかい?」
「どうして止めねばなりませんの?」
「……ラーサさん、お願い」
「この中でアンタ以外じゃアタイしか止められそうにないって期待はわかるんだけどねぇ……ここは現実を見るべきだよ」
何やらお義父さんが深い溜息をしながら先行して飛行機から降りるべく、扉を潜って片手を上げつつスマイルをしながら階段を降りて行きます。
若干引きつっている様な気もしますが、緊張しているのでしょうな。
なんて感じで階段を降り切る三段前くらいでしたかな?
キラッとお義父さんの眉間目掛けて一際大きい弾丸が飛んできました。
あれは……昔、ミリタリー知識の詳しい豚が俺に熱弁していたアンチマテリアルライフルと呼ばれる銃の弾丸によく似ている様に見えました。
少なくとも今までタクトの配下連中が持っていた銃器の弾より一回り大きいのは間違いないですぞ。
その弾丸は凄い速度で飛んで来てお義父さんの眉間にぶつかり……ゴインと音を立てて跳ね落ちました。
「いったー……さすがにちょっと痛かった!」
ちなみにお義父さんは戦争終了後に少しの時間を使ってLv上げをしてそれなりに上昇しておりますぞ。
俺は波打つ空気の動きを凝視していたので、どこから発射されたのかしっかりと目で追っていました。
しかし……物凄い遠くから発射していますな。
少なくとも1キロ以上は離れているのがわかりますぞ。
それでお義父さんの眉間に命中させたとしたら樹に匹敵する程のスナイパーって事になりますな!
もしもこのスナイパーが使った銃器が俺の知る類の代物でしたら最大射程は4500メートルだとか聞いた覚えがあります。
さすがに最大射程で射抜いたら威力が落ちると思うので2キロ程度だとは思いますがな。
Lvや魔法の影響もあるので更に遠くから攻撃した可能性もありますぞ。
元康アイを駆使しても把握には時間が掛ります。
しかも連続で撃って来る確率も高いので迅速に相手を殲滅する必要がありますな。
エイミングランサーやグングニルを放つのも良いですがロックオンするには獲物を見つけないと話になりません。
「お義父さん! 大丈夫ですかな!?」
「うん、ちょっと痛かっただけだよ。しかし……こんな物まで用意してるとか、手荒い歓迎だね」
「敵襲! 敵襲だ! シルドフリーデン、シルトヴェルトの意向に背く逆賊を捕え制裁を与えるのだ!」
「もう撤退も視野に入れて行動している可能性が高い。こんな遠距離から攻撃してくるんだから」
お義父さんは混乱するギャラリーの方に目を向けます。
ああ、そこから来ると思っていたのですな。
「どちらにしても敵のいる方向はわかりましたな。豚だった場合の見分けが俺には付き辛いのと距離があって誤射したら危険なので、これを使いますぞ」
「これ?」
俺は意識を集中して魔法を唱えますぞ。
この魔法ならば弾丸の軌道を完全に辿る事の出来る……レーザースコープの役目も出来ますな。
『我、愛の狩人が天に命じ、地に命じ、理を切除し、繋げ、膿みを吐き出させよう。龍脈の力よ。我が魔力と勇者の力と共に力を成せ、力の根源足る愛の狩人が命ずる。森羅万象を今一度読み解き、全てを射抜く眼光を熱線として放て!』
「リベレイション・ファイアアイ!」
力を込めて俺は魔法で目から極太のビームを放ってやりますぞ!
本来ならⅩまで力を上げて放つのですがお義父さんが加減をしろと言ったのでタダのリベレイションを放つ事で加減しますぞ。
ちなみに複数形のアル・リベレイション・ファイアアイだと拡散ビームになりますな。
もちろん……俺が顔を振ればそのまま薙ぎ払う事も出来ますぞ!
フハハハハハハハ!
「元康ビィイイイイイインム!」
ピー! っと俺の熱い視線は一直線にお義父さんの眉間へと伸びてきた弾道をそのままなぞって飛んで行きます。
その途中で再度射撃音がしましたが、放たれた弾丸は蒸発した様ですな!
カッと俺の熱い視線が飛んで行った先で燃え上がり始めました。
「あそこですぞ!」
ファイアアイを放ち終えた俺は火柱の上がる箇所を指差して係の者達に指示を出しますぞ。
「は……ハッ!」
唖然としていた亜人達は俺の言葉を聞いてから急いでその場へと駆け出し始めました。
「えー……っと、元康くん……なんか凄く奇妙な攻撃を放った様に見えたんだけど……」
「おや? 俺のファイアアイは初めてででしたかな? 俺のオリジナル魔法ですぞ!」
「いや、そんな事を聞きたい訳じゃなくて……元康ビームって……色々とツッコミ所が……」
「色々と凄いねぇ……戦場でも鬼神の様な強さだったけど間近で見ると凄いもんだね。こんな攻撃をしていたのかい?」
「あの時はこんな事してなかったよ!」
まあ、この世界は最初の頃のループですからな。
俺も未熟だったのですぞ。
ですが、今は違います。
「俺も成長したのですぞ!」
「これを成長で片付けてはいけない気がするんだけどなぁ……」
おっと、逆賊やタクト派閥の連中には報いを受けさせないといけませんな。
居場所の特定は済んだのでさっそく向かいますぞ。
「ではユキちゃん、颯爽と目的の敵を捕縛しに行きますぞ!」
「わかりましたわ!」
俺の呼び声に答えてユキちゃんがフィロリアル姿になりました。
ドライブモードになるのも良かったのですがタイヤが調達出来そうにないですからな。
今度はドライブモード用の槍の開発をするか考えましょう。
タイヤが横に付いた槍ですぞ。
ウェポンコピーをすればいつでも出来る様になりますな。
上手く使えばカーモード等も出来る様になるかもしれませんぞ!
なんて思いつつユキちゃんの背に乗り素早く目的地に向かって駆け出しました。
見晴らしの良い飛行場を抜け、金網を飛び越えて燃え盛る建物の屋上へ素早く急行しました。
そしてそこでそれらしき豚に目星を付けますぞ。
ただ、他にも何名かいますな。
面倒なので殺さない程度にエイミングランサーしますかな。
この場に居たのが罪ですぞ。
みんな磔になれですぞ!
「エイミングランサー!」
「ブヒィイイイ!?」
「ギャアアアアア!」
ロックオンした連中に向かって俺は槍を投げてエイミングランサーで行動不能にしてやります。
お? 予想よりも動きの良い豚がおりました。
おそらくコイツでしょうな。
「パラライズランスⅩですぞ!」
「ブ!? ブヒ――!?」
サクッと豚を刺して麻痺にしてやりました。
無様に転がっていますな。
そのまま工場に運ばれていけですぞ。
「ではサクッと引き渡しをしましょう。ユキちゃん、お義父さんの下に早く帰りますぞ」
「はいですわ!」
やがて役人達が駆けつけてきたので一番疑わしい奴を引き渡してから俺達はお義父さんの方に戻りました。
お義父さんは狙撃犯の第二部隊等を警戒しつつ、飛行場の建物内へ移動しておりましたぞ。
「元康くん、もう帰って来たの? 早いね」
「もちろんですぞ」
「早期解決ですわ」
ユキちゃんの言う通りですな。
で、お義父さん達が建物の奥へと行こうとした所でパンダが制止しますぞ。
「どうしたの?」
「いやね。何か妙な勘が働くのさね。微妙に薬臭いって言うのかね」
「俺達が来るから洗浄していたんじゃないの?」
「いや、これは嗅いだ覚えがある匂いでねぇ。爆発物の匂いがするんだよ」
どこまでも過激な奴等ですな。
ちなみに爆弾等の類は火を付けた者のLvにある程度影響をされますぞ。
もちろん素材等の品質等も関わりがありますがな。
粗悪品では高Lvでも脅威となりませんぞ。
まあ、爆発物なら魔法で抑える事等も出来るので俺達には造作もありません。
地雷など……赤豚と同様即座に爆殺してやりますぞ!
「手荒い歓迎が過ぎるなぁ……さすがはタクトのホームって事なのかな」
「どうなんだろうねぇ……?」
などと言いながらパンダは近くの鉢植えを避けると……ありましたな。
パッと見で分かる爆弾と起爆装置がありますぞ。
「魔法で消し飛ばしますかな?」
「ちょっと待ちな。これは……ふむふむ、こうだね」
パンダがツメを使ってサクサクと爆弾を解体して行きますぞ。
大きい手をしている割に器用ですな。
そしてアッサリと爆弾を解除しました。
「傭兵界隈で見た覚えのある品だね」
「手慣れてるね」
「傭兵だからねぇ。この手の品ってのもいろんな国に売って金にするもんさ。武器、錬金術……なんでも多少は齧ってると価値がわかって金になるんだよ。売れる所もね」
パンダの知られざる才能ですぞ。
キールと一緒に売り子をする……客寄せパンダだけが仕事では無いって事なのですかな?
もしや、最初の世界のお義父さんがこのパンダを起用していたのはこういった能力も関わっているのかもしれません。
「遠隔操作で爆発したりしそうだね」
「そうさね。だから奥に行くのは勧められないねぇ。魔力発信型だろうから辺りの魔力場を変えればある程度、撤去するのは簡単だけど」
「ならこれですな! リベレイション・シールファイアフィールドⅤ!」
カッと俺は辺りに軽い魔力場を展開しますぞ。
本来は一定の魔法属性を抑え込む魔法を展開するのですぞ。
術者が強いとあまり効果は無いですが、十分に強化をしているので並みの魔法であれば発動を大きく抑え込めます。
難点はフィロリアル様の縄張りやドラゴンの縄張りを放つような魔法よりも数段以上下の魔法なので、対抗手段にはなりえませんがな。
俺の得意な魔法では無いのですが、ある程度の効果はあるはずですぞ。
「これで信号受信は出来ないはずですぞ」
「……受信できないと爆発する類の物もあるんだけどねぇ……」
「げ!」
「それを早く言えですぞ」
「槍の勇者、アンタが勝手に使ったんじゃないか! 幸いその手の物は仕掛けられてなかったみたいだけどねぇ」
「もしくは元康くんの魔法で抑え込んでるとか?」
「それもあるかもねぇ。ともかくササッと見つけて撤去をした方が良いだろうね」
なんて感じでシルドフリーデンの職員等と総出で建物内の爆発物を解体したのですぞ。
建物の従業員達ですら、いつの間にこんなに仕掛けていたんだと驚いておりましたな。
タクト派閥の連中の行動力は目を見張る物がありますな。
きっと内通者がいるのでしょう。
その内通者を暴くのも今回捕えた狙撃豚から白状させれば良いだけですぞ。
なんて感じに俺達は手荒い歓迎を受けつつ、シルドフリーデンの城……首脳陣が集まる官邸へと用意された馬車で向かったのですぞ。
ああ、もちろん怪しげな物が仕込まれていないか入念にチェックしたので問題ないですぞ。
ちなみに車なんかもシルドフリーデンにはある様ですが、今回は足の速いユキちゃん達にお願いした形ですぞ。
発着場からそこそこ離れた首都っぽい町並みを俺達は進んで行きました。
「フォーブレイみたいに舗装された道があるんだよね。まあどこの国も石畳の道はあるんだけどさ」
「そうですな」
「一応文明の度合いは高いんじゃないかい? ここいらで傭兵をしている知り合いもいるよ」
「戦場であったりした?」
「今回は居なかったね。無駄に勘の良い奴等さ」
「へー……ちなみにこの国の傭兵ってどんな仕事するの?」
「そりゃ傭兵ってんだから用心棒が大半だね。後は臨時の衛兵が多いんじゃないかい?
厄介事はどこでも転がっているからね。強けりゃどこでも仕事に困りはしないのさ」
ふむふむ、傭兵というのも大変ですな。
とはいえ、戦いが商売なのですから強くて当たり前という事でしょう。
「力こそが正義の傭兵らしいね」
「まあ、名うての傭兵はここに来るくらいならフォーブレイかゼルトブルに行くけどね。そっちの方が稼げるからね」
「なんか……どこまでも一味足りない国って感じに聞こえるなぁ」
タクトとその一味の国ですからな。
当然の結果ですぞ。




