莫大な金銭
そんな訳で早速フォーブレイの城内に入って謁見の申請をしますぞ。
時刻的にはそろそろ起きている時間でしょうな。
しっかりと調整しながら来ました。
午後に行かねばフォーブレイ王は間違いなく寝ていて待たされますからな。
召集した側であるフォーブレイも俺達の到着に若干の驚きを見せておりましたが、割とすぐに対応してくれてフォーブレイ王への謁見ができました。
「ぶふふふふ……よく来た、盾と槍の勇者。ワシがフォーブレイ王じゃ」
以前と同じく、けたたましいファンファーレが鳴り響きますぞ。
おお、まだ生きていたのですな。
相変わらず化け物の様な容姿ですな。
しかし、意外に有能なのですぞ。
辺りを見渡して、よく俺達の間に入ってタクトを擁護する大臣を探しますぞ。
……いませんな。
まあ、タクト騒動が既に沈静化しつつあるので処分済みということですかな?
お義父さんが俺の脇を小突いて聞いてきますぞ。
「何あれ? 人間? 獣人? 初めて見る人種と言うか……」
言葉に詰まった様子で俺に不安そうに尋ねてきますぞ。
なので昔言った通りに答えます。
「わかりませんな? ただ、代々勇者に選定された者は王族を娶るなり、入るなりして血筋に組み込まれるそうですぞ」
「つまり代々の四聖勇者や七星勇者の血筋が凝縮した家系がフォーブレイの王族な訳か。混ぜ方というか、いろんな物がいろんな反応している様にしか見えないなぁ」
ハハハ、さすがお義父さんですな。
大体そんな感じだと思いますぞ。
言うなれば人間、亜人、獣人などが混ざり過ぎて誕生した、究極の雑種……天然キメラ人間ですぞ。
なんて話をしているとフォーブレイ王は相変わらずの様子でユキちゃん達を見て舌なめずりをしております。
ユキちゃんやサクラちゃん、そしてコウは前にも似た様子で舌なめずりをしてますな。
あんなのを食べたらお腹を壊しますぞ?
「な、なんだいコイツ等? 妙な反応をしてるね」
「お前もパンダ化を解けば輪に混ざれるのではないですかな?」
「いやいや、そんな無意味な事してどうするの?」
ちなみにお義父さんは豚化したパンダの姿を確認済みですぞ。
俺は興味が無いので見ていませんがな。
「あの好色残虐王に気に入られてもねぇ……というか勘弁願いたいね」
なんて小声でのやり取りをしてから俺達は自己紹介をしますぞ。
まずは俺からですな!
「俺の名前は北村元康ですぞ! 愛の狩人ですぞ!」
「と……シルドフリーデンが起こした愚かな戦争を終わらせる事に多大な貢献をした槍の勇者様です」
シュサク種の代表が俺の後で何やら説明しましたぞ。
その方角を見るとなぜかお義父さんが親指を立てておりました。
「私、シルトヴェルト代表四種の一種、ヴァルナール……は既に自己紹介はしたことがありましたね。それでは盾の勇者様」
「盾の勇者として召喚された岩谷尚文と申します。他、サクラちゃん、ユキちゃん、コウ、ラーサズサさんです」
仲間として活動中の者を中心に紹介ですぞ。
それを見て、豚王も何故か機嫌が良さそうですな。
「ぶふふふふ……よくぞ数々の陰謀と戦いを撥ね退けて、見事フォーブレイにやって来た。盾と槍の勇者。えー……っと、わかっていると思うが、今回はタクト・アルサホルン・フォブレイが起こした陰謀と怨恨による戦争に関してだ」
「はい」
お義父さんは頷いておりますが、視線の先は豚王の部下が用意しているカンニングペーパーに釘付けですぞ。
本当に大丈夫なのかと怪訝な目をしております。
なので、俺はお義父さんに大丈夫だと頷いておきますぞ。
「まず確認しておかねばならない事は、盾と槍の勇者側からの意見であるのじゃ。此度の事件を初めから説明してもらっても良いか?」
「わ、わかりました。えー……」
お義父さんはどこから話すのかを整理してから説明する様ですぞ。
「メルロマルクで召喚されてから色々とあった後、俺達はシルトヴェルトに到着しました。そこで俺達はシルトヴェルトでの七星勇者であるツメの勇者との謁見をすることになりました」
「やっと到着した盾と槍の勇者に七星勇者が挨拶をする事は当然であるな」
「はい。そこで槍の勇者である元康くんは、ツメの勇者が偽者である事を見抜きました。するとツメの勇者に化けていた魔物は正体を現しました」
あれはビーストランスが勝手に反応したものですが……詳しく説明すると粗を突かれそうなので概要で説明しているのですな。
アヤツは間違いなくタクトの配下である狐ですぞ。
「魔物の討伐後、本物のツメの勇者はどこへ行ったのかと捜索を強めていた所、連携をして波に挑もうとタクトが外交と称してやってきました。今にして思えば子飼いにしていた自らの配下である魔物が殺された事を確認する為だったのでしょう」
「ふむ……」
「そうして魔物の死骸を確認したタクトは波が発生する直前に、俺達を待ち伏せして罠にかけようとしてきました。幸い、それを俺達は返り討ちにしてタクトを倒したのですが、その際にタクトの配下は揃って逃げ出し、復讐に戦争を起こした、というのが今回の騒動の顛末です」
「なるほど……確かに盾の勇者の話はシルトヴェルト側の証言と符合する。此度の原因はすべてタクト側にあるようで間違いない様じゃな」
この時、お義父さんは内心、本当にこの王は考えて返事をしているのか?
と疑問に思ったのを俺に教えてくれました。
理由としてお義父さんが言ったことをそのまま反芻したからだそうですぞ。
確かに、シルトヴェルトが言った事と符合しているだけでは証拠になりませんな。
これは、あれですな。
実は既に答えが決まっている話の場という奴でしょう。
「この件で色々とこちらも既に動いてはいる。タクトの息の掛かった勢力の者達を追跡調査して権力の凍結を行っている最中じゃ。奴等はあまりにも過激に動き回っているのでな」
タクト派閥の者達の目的は一つですぞ。
なんでも思い通りにさせてくれたタクトを仕留めた俺達への復讐でしょうな。
実に愚かな連中ですぞ。
そんな無駄な事をする者達など、俺が全て滅ぼしてやります。
「幸いにして情報をリークしている者達もいる様なのでな。大体の特定はできると判断しているそうじゃ」
これはあれですな。
風向きが悪くなるとコロッと態度を変える赤豚と同じ種類の豚がいるのでしょう。
豚は所詮豚ですが行動の差くらい俺もわかりますぞ。
中には怠け豚やストーカー豚の様な、役に立つ豚も居ますがな。
「それでシルドフリーデンの代表をしていた奴はどうなったのですかな?」
俺が尋ねるとフォーブレイ王は眉を寄せました。
確かそんな奴が居たはずですぞ。
タクトと結託していて、シルドフリーデンを操っていたのでしたな。
「戦争に敗北し、嘘偽りを申して戦争を起こした事が明るみになるなり、膨大な金銭や魔術的価値の高い品々を持ってどこかへと逃亡したとの話じゃ。継続して追跡しておる」
「膨大な金銭……大丈夫なんでしょうか?」
「そこはワシも懸念しておる。えっーと……国家予算並みだそうでな」
「馬脚を現すなり逃げるとはどうしようもないですな」
「間違いはない。とはいえ、かの者を頭にしたシルドフリーデンの処遇は既にシルトヴェルトに一任しているはずだが?」
「ええ、現在は我が国シルトヴェルトが奴等に降伏勧告をし、奴等も受理するのが決定しています」
シュサク種がフォーブレイ王の証言に同意しました。
まあシルドフリーデンはこれでおしまいですな。
「ただ……問題は、元シルドフリーデンの代表を含めた、逃げ回っている勢力と、秘密裏にタクトと手を結んでいる勢力だ。これは継続して炙り出す他ないと判断している」
「でしょうね」
本当にどうしようもない連中ばかりですな。
これは完全に俺のミスでしょう。
タクト勢力をあの時に皆殺しにしなかったのが痛手ですぞ……。
「此度の無益な争いの所為で弓の勇者の命が失われた事も非常に重い。なのでフォーブレイとシルトヴェルト両国からタクト一派の残党には賞金を課す事が決定した」
お? これは俗にいう所の全国指名手配という奴ですな。
なんだかんだ言って、この世界でここまで指名手配されるのは珍しいのではないですかな?
お義父さんの婚約者誘拐騒動の時だってメルロマルク近辺まででした。
赤豚は確か……一応世界規模で賞金がかかったのでしたかな?
あの場合は女王が個人的に賞金を課しただけなのでフォーブレイ指名での重犯罪とは規模が違いますぞ。
「勢力に属していると思われる者を擁護をした者には厳罰を、決定的な情報や残党を捕縛した者には大量の賞金を与える」
匿っている事が明るみになった瞬間、一族郎党厳罰に課すくらい重い罪になる様ですぞ。
これでタクト派閥の連中は表舞台には出てこれませんな。
出て来た時は裁きを受ける時だけですぞ。
「フォーブレイ王の判断、シルトヴェルトと盾の勇者と槍の勇者……揃って感謝いたします」
「良い。こちらもとんだ厄介な勇者を名乗る者を抱え込んでしまったものだ。逸早く残党の捕縛を願うばかりじゃ……ブフフフフ」
これはあれですな。
豚王が豚王である所以である、豚を貪ろうと舌なめずりをしているのでしょう。
そんな訳で豚王の指示もあってフォーブレイどころか世界中でタクト派閥が指名手配される事になったのですぞ。
「後は……そうじゃな。四聖勇者の二人には世界各地の波を鎮める任を命ずる。継続して活動してほしい。フォーブレイも勇者達の活動を援助する」
「あ、はい」
これはやっていかねばならない問題ですからな。
とはいえ、俺とお義父さんとフィロリアル様達さえいればできない問題ではないはずですぞ。
そんな訳で俺達はタクトの残党処理と波への参加を願われたのですぞ。
「他に何かあるか? ブフフフ」
「そうですね……」
お義父さんは俺の方を見たかと思うと頷いてから豚王を見ますぞ。
「えー……槍の勇者である元康くんは、所持する特別な槍から未来で起こる可能性のある出来事を見る事が出来るんです」
何度もループしているというのを安易に信じてもらうのは難しいので、まずは足掛かりとお義父さんは後におっしゃいました。
事実、俺はこれまでのループ経験から未来予知の様な事が出来ますぞ。
「ほう……槍の勇者にはそのような力が?」
「はい。タクトが子飼いにしていた魔物を見抜いたのもその力が関わっています」
「ふむ……」
今がチャンスですな。
ここで俺は一歩前に出ますぞ。
「未来とは無数に枝分かれした世界を見る様なものですぞ。例えば歩み方一つでフォーブレイがタクトに支配されてしまった世界もありましたな」
「その様な事が?」
「心当たりは十分にあると思いますぞ? これだけの罪状のあるタクトが馬脚を現さずに勢力を増していたら、どうなっていましたかな?」
「可能性はゼロではないが今更であるともいえるぞ。ブフフフ」
「否定はしませんな」
未来の事を信じてもらうのはとても難しい事ですぞ。
様々な要因を利用しなければ錬や樹を味方に出来ないのと同じですな。
「ですが……その力によって俺はメルロマルクから脱出する際に助けてもらいました」
ここでお義父さんが一押ししますぞ。
さすがお義父さんですな。
この世界では、俺はお義父さんを助ける為に必死でした。
数ある世界の中でも、かなりギリギリ間に合ったのですからな。
「我等の配下の者も槍の勇者様にはその様な力があるとの証言をしております。嘘と切り捨てるのは愚行とシルトヴェルトは判断しています」
「ブフフフ……では何か未来の事を教えてもらえると良いのだがな」
うーん……豚王が関わる良さそうな未来の情報などありましたかな?
タクトに処分されるかもしれない未来くらいしか印象にないですぞ。
豚共を餌として与える程度しかないですな。
「……どうやらタクトの様な存在はこの世界に無数にいるとの話なんです」
返答に悩んでいるとお義父さんがそう説明しましたぞ。
「第二第三のタクトがこの世界にいると?」
「はい。波の黒幕によってこの世界に派遣された刺客が潜伏しているとの話……その者達は七星武器などを奪う力を所持するそうで……」
「確かにそれが事実ならば相当な脅威となりえるが……」
「王様? タクトと同じような特徴ですよ? わかりますよね?」
豚王の好みを察したお義父さんが思わせぶりな言い回しをしますぞ。
「何なら世界規模で七星勇者を招集すれば良いんですよ。しっかりと所持者である事を証明出来れば俺達の証明にもなりますし、第二のタクトから色々と絞れますよ?」
お義父さんの返事に豚王の眼が光りました。
これは豚を得られると踏みましたな。
「ブフフフ。良いだろう。では既に選定された七星勇者は一度フォーブレイに召集するとしよう。無視をしたものは世界の平和を脅かす悪と断じ、高額の賞金を課す。世界規模で七星勇者を洗い出すのだ」
「この時期に特に何も事が起こっていない事を前提にするなら……この辺りに投擲具の七星武器を持った奴が潜伏しているのではないですかな?」
俺は地図を出しながら言っておきます。
これまでのループ経験通りであれば、その可能性はありますぞ。
「その辺りで台頭しつつある冒険者が黒ですぞ」
正式な名前が曖昧なのでそう答えておきましょう。
確かコーラとかそんな名前だったはずですが……忘れましたな。
「では確かめさせるとしよう」
豚王が手を上げるとフォーブレイの隠密部隊が姿を現しますぞ。
「証拠を掴んでくるのだ」
「「「は!」」」
そういって消えていきました。
「槍の勇者の予言が正しい事を期待しておる。ではこれにて失礼する……ブフフフフ」
こんな感じで豚王との謁見は終わりました。
話はスムーズに済んだ気がしますが、お義父さんは疲れた顔をしておりますぞ。




