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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
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再会

 再びこの世界が始まった訳ですが、これからどうすれば良いですかな?


「元康くん、もう少し詳しく説明してくれないとこっちも把握出来ないんだけど?」

「ああ、そうでしたな。とは言ってもこんな場所で話していても大丈夫なのですかな?」


 お義父さんは既に終わった戦場を見渡して、若干反省した様子で頷きました。


「え? まあ……確かに、そうだね」


 しかし……なんでしょうか。

 俺の認識では先ほどまで普段通り……鋭いお義父さんであったはずなのですが、いきなり優しげに声をかけるお義父さんになった感じですぞ。

 ギャップがすごいですな。


『ブー……』


 む! 赤豚の気配!

 これは赤豚の魂ですぞ!

 以前のループで感じた事があるのでわかりました。


 しかし、何故こんな所に赤豚の魂がいるのですかな?

 確かこの世界ではバーストランスで仕留めたのですぞ。

 ですがまだ俺がソウルイータースピアを使いこせる様になる前だったはず。

 だから赤豚の魂がいるという事ですな。


「そこですぞ!」

『ブヒ!?』


 ソウルイータースピアで辺りを漂う赤豚の魂を刺し貫いてやりました。

 これで赤豚の魂は完全に消滅したのですぞ。

 ふぅ……危ない所でしたな。

 これで亡霊赤豚になる可能性の芽は摘めました。


「どうしたの?」

「害虫を駆除したのですぞ」

「そうなんだ?」

「ですぞ。これで赤豚は復活しません」

「復活……? え? あの王女、爆発したのに復活するの?」


 お義父さんが赤豚のしぶとさに引いていますな。

 確かにアヤツは無駄に蘇ってきますからな。

 まさしく害虫ですぞ。


「なので魂を完全消滅させました」

「完全消滅……そんな事までしなきゃいけないあの王女も大概だけど、それが出来る元康くんも相変わらず凄いね」

「お褒めに与り光栄ですぞ!」


 優しいお義父さんは褒めるのが上手ですな。

 なんだか懐かしくなってきました。


「それでは帰還しましょう」


 そんな訳で俺達はその場を離れてシルトヴェルト城に帰還しました。




 シルトヴェルト城に帰還した後、お義父さんの指示で俺とお義父さんとでゆっくりと話す場所を設けてもらいました。


「とりあえずこんな感じで良いのかな? じゃあ元康くん、詳しく教えてくれる?」

「わかりました。樹が死んだ所為でこの周回からループした俺は、お義父さんの指示通りに行動したり色々とやった結果、ループを抜け出して最初の世界に戻り、波を起こした黒幕を倒したのですぞ」


 思い出すだけでも大冒険ですな。

 様々な記憶が昨日の事の様に思い出せますぞ。


「それがなんでまたこのループに?」

「わかりませんな。ですが心当たりはありますぞ」

「そうなの?」

「ですぞ。今回のループに戻る前にもフィーロたんに出会えた直後の時間にループしたのですぞ。その際に判明したのが、この真・龍刻の長針ですぞ」


 俺は真・龍刻の長針にしてお義父さんに見せました。

 この槍は謎ばかりで、どういう物なのか理解出来ていないのですぞ。


「条件変化でループ内の途中から遡行が出来る様になったって事なのかな?」

「真・龍刻の長針にもそのような名前の能力がありますな」

「それじゃあそれが今回の現象の理由かもしれないね」


 ですな。

 まだ謎は多いですが、この槍が原因なのは何となくわかりますぞ。


「まあ、どちらにしても元康くん。この場合は……そうだな……また会えて嬉しいよ、と答えるべきなのかな?」


 そう言いながらお義父さんは微笑んでくださいました。

 俺の脳内で前回のお義父さんがコイツは誰だ? とか指を向けておりますが、お義父さんですぞ、と答えておきましょう。


 お義父さんは俺の事を考えてこう言ってくれているのですぞ。

 俺が長いループの末にこの世界に戻ってきたなど、お義父さんが実感出来るはずもありません。

 ですがお義父さんは人の気持ちをわかる事の出来るお方ですからな。

 俺の気持ちを察してくれたのでしょう。


「お義父さん、俺も会いたかったですぞ!」


 俺は優しいお義父さんの助言に幾度となく助けられました。

 無かった事になった世界と言われ、胸を締め付けられる様な思いでしたが、また会えて嬉しいですぞ。

 感動ですぞ!

 そんな訳で、俺達はしばし再会を分かち合いました。


「とりあえず、俺的にはこの世界が無かった事にならなくなってよかったと言える訳だけど……」


 お義父さんが戦場のあった方角に顔を向けますぞ。

 結局、樹は治療の甲斐もなく死亡が確認されました。

 まあ、所詮樹ですからな。

 下手をしたら死んでしまうのはしょうがないですぞ。


「戦争も一応は収束はしたらしいけど、この先どうなる事やら……」


 えーっと、確かこの世界ではタクトの周りにいた豚共が、タクトを殺された恨みである事ない事でっち上げて戦争を始めたのでしたな。

 ワラワラと無駄に湧いてくる残党を蹴散らした覚えがありますぞ。

 結果、便乗した三勇教とクズが出てきて返り討ちにしたのまでは覚えておりますぞ。


「シルドフリーデン軍には甚大な被害を出したし、後はシルトヴェルト軍で対処は可能だろうって話だけど、それが問題じゃない。タクトの残党はさすがに俺達じゃないと難しいし」

「そうですな」


 正直に言うと今回のループでは今までのループ知識はあまり役に立たなそうですぞ。

 何分、起こる出来事に違いがありますからな。

 霊亀などの復活時期などは固定でしょうが、他は当てになりません。

 まあ、どちらにしても俺は諦めませんぞ。


「波も勇者が欠けると襲来周期が増すんだよね?」

「そうですな。ですが、ただ悲観する事だけではありませんぞ。前回の周回で来るべき時の波さえ乗り越えられれば終わるのが判明しておりますからな」

「波の黒幕は?」

「現れずに終わりました。既に最初の世界のお義父さんが討伐したからではないですかな?」


 黒幕赤豚もいないようですぞ。

 がんばればどうにかなるのが前回の周回でわかっております。

 この情報は良い情報のはずですぞ。


「じゃあ、それまでがんばれば良いんだ。なら希望はあるね。目の前の問題を解決していこう」


 こうして波に関する問題は目標が定まったのですぞ。

 という所で思い出しました!


「そうですぞ! フィーロたん!」

「ああ、元康くんの想い人だよね。この世界でも会う方法がわかったの?」

「はいですぞ! お義父さん、なんとフィーロたんはサクラちゃんだったのですぞ!」

「え? そうなの? 全然外見が違う様な気がするけど」


 確かにフィーロたんとサクラちゃんは外見が違いますな。

 外見だけでなく性格まで違うので、もはや別人と言っても良いでしょう。


「そうですな……今までのループを辿ると俺も半信半疑ではありましたが、確かにフィーロたんになったのですぞ」

「なんか概要というか説明にもなっていない事を元康くんが言っている気がするけど、何かしらの条件を満たすとサクラちゃんがフィーロって子になる感じかな?」

「間違いありませんぞ」

「うーん……」


 お義父さんが若干困った表情をしております。


「じゃあ元康くんはフィーロちゃんであるサクラちゃんとこれから仲良くするんだね」


 おや?

 お義父さんの返答に俺のフィーロたんへの愛センサーが疑問符を浮かべますぞ。

 俺はフィーロたんが一番であって同一人物のサクラちゃんをフィーロたんとして認識できますかな?

 ハ……ハハ……否ですぞ。


「サクラちゃんはサクラちゃん。フィーロたんはフィーロたんですぞ!」


 サクラちゃんはフィーロたんにあらず、ですな。


「うん、言うと思ったよ……」


 お義父さんが呆れるように呟きました。

 ですが、事実フィーロたんとサクラちゃんは別の人格を持った別々の存在ですぞ。


 サクラちゃんはおっとりはしていますが、優しい子ですぞ。

 その柔らかな羽は筆舌しがたい程に魅力的なのです。

 何より様々な世界でお義父さんを支えてくれたフィロリアル様でもありますぞ。


 フィーロたんはあまりの神々しさに、咄嗟には俺の貧弱な知能では語る文字が浮かんでこない程に魅力が溢れていますな。

 もちろん黙っている事など出来ないので、フィーロたんの素晴らしさを日々脳内に焼付け、いつかは語り出して行く予定ですぞ。

 前回のフィーロたんとの輝かしい思い出は掛け替えの無い記憶ですな。

 未だ羽根の色から透き通る青い瞳、声音……背景すら鮮やかな色のまま思い出せますぞ。


 おや?

 フィーロたんの傍にいる不機嫌な顔をしたお義父さんが言いました。


『じゃあどうするんだよ!』

「じゃあどうするの?」


 おおう……前回のお義父さんと今回のお義父さんに同じ事を言われてしまいました。

 なので脳髄に焼き付いているフィーロたんとの大事な記憶を仕舞って、意識を話に向けますぞ。


「どう、とは?」

「だって元康くんからするとサクラちゃんはフィーロって子じゃないんでしょ? となるとこの周回ではフィーロって子には――」


 そう呟くお義父さんの声に俺は絶句し、その先が耳に入りません。

 今まではどこかにフィーロたんがいるという希望をもって行動しておりました。

 ですがフィーロたんはサクラちゃん。

 つまりこの世界ではフィーロたんに絶対に会えないのですぞ。

 ど、ど、どうすれば良いのですかな!?


「どうしたら途中からサクラちゃんをフィーロたんにできるのですかな!?」

「……すぐに別世界へ遡行すると考えない元康くんの諦めない心は立派だと思うなぁ」


 何やらお義父さんは遠い目をしておりますが、そんな目をしている暇はないのですぞ。

 むむむ……これは当面の課題になりえる大き過ぎる問題ですぞ。

 一体どうしたらサクラちゃんをフィーロたんにできるのでしょう。


「イワタニ殿、キタムラ殿……話をしている所、申し訳ない。少しこちらの話を聞いてもらってもいいか?」


 なんて悩んでいるとエクレアがやってきました。

 前回、お姉さんと話をしている程度で全然接点のなかったエクレアが当然のように俺達に声を掛けております。

 まあこの世界では長い事、旅を共にしたのもあるとは思いますがな。


「エクレールさん」

「今は如何にしてサクラちゃんをフィーロたんに育て上げるかの会議中ですぞ」


 世界を救うのと同じ位、大事な話の最中ですからな。

 エクレアの話はまた今度ですぞ。


「む……? キタムラ殿は何を言っているのだ?」

「あー……元康くんのことは気にしないで。それで何の話?」

「ああ、とりあえず報告と、シルトヴェルトの者達やメルロマルクの者達との会議の通達事項に関してだ」


 そう言ってエクレアはシルトヴェルトの重鎮達を呼んで話を始めました。

 待ってくれですぞ!

 フィーロたんとサクラちゃんの命題はどうなるのですかな?


「まず弓の勇者殿に関してなのだが、回復魔法や治療、蘇生処置の甲斐もなく……死亡が確認された。この件の責任は彼の仲間をしていた者が全責任を負うだろう。愚かにも程がある蛮行だ」


 勝ち馬を乗り換える為とはいえ、燻製も愚かな真似をしましたな。

 しかも目撃証言はバッチリですからな。言い逃れは不可能ですぞ。


「メルロマルクも責任追及は免れないであろうな」

「うん……」

「この件の影響はおそらく奴の実家にも及ぶ事になるだろう。それが現段階での弓の勇者殺害に関する報告だ……」


 自業自得ですな。

 とはいえ、樹にトドメを刺すとは、俺だって驚きの蛮行でした。

 話では強い者の味方しかしないと聞いていましたが、まさに正義の味方でしたな。

 奴等からすれば、強い=正義なのですからな。


「次に戦争に関してだが、此度の戦争での不審な点が無数に見つかり、フォーブレイを始めとした各国が強制介入……するよりも早くキタムラ殿のお陰でシルドフリーデン軍は戦争継続困難により戦勝国はシルトヴェルトだと判断された」

「完全勝利ですな」


 まあタクトの私物化していた国など、昔の俺でも余裕ですぞ。

 今の俺ならもっと楽々と成敗してやれるでしょうな。


「相手の切り札と呼べるタクト由来の兵器は元より、数に物を言わせた部隊もあのざまではな……ただ、シルドフリーデン本国では諦めの悪い者達が第二波を予定しているであろうから、各国による呼びかけがなされて注意はしている。これ以上、恥の上塗りにならない事を祈るばかりだ」

「現状は大体わかったよ」

「後は責任の所在に関してだが、虚偽報告で戦争を起こし、敗戦したシルドフリーデンの賠償責任の請求等はシルトヴェルトに全権を委ねる事となった」


 勝ったら当然の権利ですぞ。

 正しい事を言っていても困った事になるのに、嘘ばかり吐いたシルドフリーデンはもっと困った事になるでしょうな。

 これで俺達の財布が潤いますぞ。


「ただし、この戦争に便乗したメルロマルク軍を騙る者達はメルロマルクが捕縛した。シルトヴェルトの幹部達もメルロマルクの要請と協力を聞き入れて、責任は無いと判断された様だ」

「やや無茶があるけど、一応偽メルロマルク軍の鎮圧に出てくれたから文句も言えない感じなのかな?」

「ああ、水際で止める事が出来たと喜ぶしかない、との事だ。むしろメルロマルクの者が弓の勇者を殺害した件の方に問題がありそうなのだがな……どちらにしても問題は山積みとなるだろう」


 エクレアはそういった後、一息ついて答えますぞ。


「とりあえず報告は以上だ。後は勝ったシルトヴェルトがする事と言ったら戦勝会であろうな。まずは勝利を喜ぶ、そこからだ」


 と区切りました。

 ふむ……ループしてきたばかりですが、色々と難しい状況ですな。

 大分昔の事なので他人事の様に聞こえる部分もあり、今一実感が薄いですぞ。


「では私は英知の賢王を騙る偽者を輸送する任務に入る。また機会があったら会おう」


 そういってエクレアは出ていきました。


セブンオールのヒロインの数 超たくさん

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