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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
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秘密の戦士

 さて、俺はコロシアムで優勝しました。

 つまり、これでフィロリアル様が増えますぞ。

 やりましたな!


 なんて考えながらコロシアムの受付で賞金の金袋を受け取っていると、少し離れた後ろの方で豚に囲まれた……なんでしたかな?

 一回戦の雑魚っぽい奴が俯いている様ですぞ。


「くそ……なんなんだアイツ! このコロシアムには卑怯なデバフが掛ってるに違いない」

「「「ブブブヒ! ブヒブヒ!」」」

「じゃなきゃ俺が負けるはずない。くそ、ここで勝たなきゃあの子を救えないってのに。ばれない様に力を抜き過ぎた!」


 完全に負け犬の遠吠えですな。

 知った事では無いですぞ。

 豚共から距離を取る様に俺は会場を後にしますぞ。


「ブ!」


 ん? 何やら豚が俺を指差した様な気がしましたが、相手にする必要は無いでしょうな。

 しかし、付いて来られても面倒ですぞ。

 なので俺は人ごみの中を進みながらクローキングランスを使ってマスクを取りますぞ。

 汗で汚れてしまったのでしっかりと洗わなければいけません。


 フィロリアルマスクは秘密の戦士。

 正体を知られてはいけないのですぞ。


 とは言え……帰るには少し早い時間ですな。

 ゼルトブルのギルドに立ち寄る事にしますぞ。

 今回の大会優勝でどれくらいゼルトブル内での信用を稼いだのかチェックしてお義父さんに報告すべきですからな。

 ゼルトブルは冒険者や商人を含めて色々と信用等の要素があるのですぞ。

 いい加減俺の成績ならばクラスアップの斡旋くらいは簡単に出来ると思うのですがな。


 なんて思ってゼルトブルのギルド内を物色しますぞ。

 ん? メルロマルクの文字で『至急連絡を求む』との記事が掲示板に張り付けられていますな。


 冒険者マイン、連絡求む。


 だそうですぞ。

 HAHAHA!

 赤豚などこの世におりませんぞ!

 どこの誰だか知りませんが永遠に連絡を求めるのですな!


 などと思いつつギルド内で俺の稼いだ信用を確認してから、その日は家路に就きました。

 その日は泥酔したお姉さんのお姉さんがお義父さんに絡み、何故か俺が晩酌を付き合わされて酔い潰れさせられました。

 これでも俺は槍の解放で酔い耐性(小、中、大、特大)を持っているのに敵わないのですぞ。


「うぐ……もう限界ですぞ」


 ドサっと俺は目を閉じても世界が七色に回り、光り輝く世界の中で空飛ぶフィーロたんを目で追いますぞ。


『『モトヤスー! あはははー』』

「フィーロたんが一杯ですぞー……」

「お? 元康が酔い潰れた……黙らせるにはサディナを嗾けて潰せば早そうだな」

「あんまりモトヤスちゃんをお姉さんの相手にしちゃダメよー。お姉さん面白くないものー」

「まあ、元康は逃げ足も速いからな……今回はフィーロをネタに強引に飲ませた訳だし」


 く……どれだけ強くなっても俺はお姉さんのお姉さんやお義父さんにお酒では手も足も出ないのですぞ。

 何時か、お義父さん達と最後まで飲み交わしたいですな。

 こうしてその日は目の前で踊るフィーロたんを見ながら、俺の意識は沈んで行ったのですぞ。



 それから二、三日は闇のコロシアムで飛び入り選手……コロシアム荒らし対策として御呼ばれしたのですぞ。


「ゲ! フィロリアルマスク! またてめぇか!」

「それはこちらの台詞ですな」


 何でもセブン……ボールだったかドラゴンオールだったかが多額の賞金目当てに強引な手法で闇のコロシアムに参加して場を荒らそうとしているそうですぞ。

 なので用心棒として呼ばれた形ですな。

 勝利すると特別報酬がもらえますし、お義父さんの立ち場も向上するので参加しない手は無いですぞ。


 それで今回出てきたセブンボールは闇のコロシアム準決勝まで進出していた様ですな。

 仲間の豚も引き連れておりますぞ。

 二対二の試合形式ですが、俺は一人で出場しています。

 こやつ等など俺一人で十分ですからな


「連日出てきやがって! だが今回はそうはいかねえぞ!」


 最初の頃と違って冷静さが無いですな。

 戦いは冷静と情熱を同時に併せ持つ事が大事なのですぞ?


 おや? 俺に能力低下の魔法が掛っていますな。

 ですが、この程度であれば問題ないですぞ。


「どこからでも掛ってくるのですぞ。いい加減、お前の攻撃は見飽きてきましたからな」

「ブブブウ!」


 メイドコスの気色悪い豚とタッグを組んでいる様ですな。

 こんな奴を何匹連れていても俺には勝てませんぞ。


「ブブ!」


 メイドコス豚とドラゴンオールが勝負開始の鐘の音に合わせて飛びかかってきました。

 いつもより少し動きが良いですな。

 おそらく援護魔法が掛かっているのでしょう。


「また馬鹿の一つ覚えの突撃ですかな」

「それはどうかな? 今回は毎回やらかしている卑劣な弱体化魔法が効くとは思うなよ。今度はお前が――」


 何やらぶつぶつと能力低下の魔法の事を呟いていますが、掛かっているのは俺の方ですぞ。

 だからと言って騒ぐ必要はないですぞ。

 俺は手慣れた調子でメイドコス豚とセブンドラゴンの背後に……。


「また背後に回り込もうとしたって無駄だ!」


 どうやら読まれている様なので途中で動きを変えますぞ。

 一周して表に立ち、槍でホームランしてやります。


「ブヒ!?」

「うぐあああああ――」


 そうして壁にぶつかる直前の愚かな連中に向かって魔法をすかさず詠唱してやりますぞ。

 ああ、勇者とばれない様に細工はしっかりとしなくてはいけませんな。


「ドライファ・ラピッドファイア」


 かなり弱い、火の弾丸が何十発も撃ち出される魔法を放ってやります。

 本来は俺の趣味では無い威力が低めな攻撃ですぞ。


「その程度の魔法、即座に対応して……」

「ですから遅すぎますな」

「何!? 魔法より前に――」


 火の弾速が遅くて欠伸が出ますな。

 詠唱もばれない範囲で短縮していますぞ。

 俺はそんな遅い弾速を追い越して、連日懲りずに暴れようとしているアホを制裁しますぞ。


「ぐあああああああ!」

「ブウウウウウウ!」


 ドスッと肩をそれぞれ二度ほど突いてから俺は横に飛びのきました。

 連中が呻いたのと同時に俺の放った魔法が追撃してきますぞ。


「な――」

「ブヒィイイ!?」


 ドラゴン豚メイドチームに俺の放ったドライファ・ラピッドファイアが命中し、炎上爆発したので背を向けて決めポーズですな。

 槍を構えて荒ぶるフィロリアル様のポーズを取りますぞ。


「クエエエエエェェェェーですぞ!」


 フッ……決まりましたな。


「「「おおおおおおおおおおおおおおおお!」」」


 闇のコロシアム会場で拍手喝采が起こりました。

 同時にドサッと音がして豚メイドボールチームが倒れておりますな。

 完全に意識がありませんぞ。


 ところでコイツの選手名はなんでしたかな? 完全にうろ覚えですぞ。

 いい加減覚えるべきでしょうか。

 明日会ったら覚えておきましょう。


「勝者ぁああああああああああああああ! フィロリアルマァアアアアアアアアアアアアアスクウウウウウウウウウウウウ!」

「おおおおおおー!」

「クエーですぞ!」


 この瞬間、俺はヒーローになりました。

 アイツ等がどれだけ悪さをしていたのか、観客席の反応で一発ですな。


 そんな感じで今日も俺は賞金を稼ぎ、お義父さんの地位は向上したのですぞ。

 ちなみにお義父さんはここ数週間で立ち所に有名になった謎の商人として、ゼルトブルでは一目置かれる様になっていました。


 俺のコロシアムでの成績だけではなく、フィロリアル様を使った運搬やバイオプラントによる食糧流通、更に魔物商とアクセサリー作りで有名な商人との提携、傭兵達への医療福祉などにも干渉して手広く、それでありながら素早くのし上がって来ているのだとか。

 お姉さんのお姉さんによる沈没船のサルベージも一発当てる良い兆しが見えているのだとか。

 龍刻の砂時計へのクラスアップフリーパス斡旋までもうすぐ手が届くほどなんだそうですぞ。


 これがまだゼルトブルに来て一カ月も経ってない範囲でやり遂げるとは……お義父さんは素晴らしいですな。

 なんて思いながら一泊の遠征行商をフィーロたんの引く馬車で出かけていたお義父さんを俺は出迎えますぞ。


「フィーロたん! お義父さん! お帰りなさいですぞ! おや?」


 帰った来たフィーロたんの頭に見覚えのある、可愛らしい冠羽が生えておられます。

 おおぉぉおおおお……これはつまり、あれですな?


「ぶー……槍の人みたいでイヤー」

「いい加減、我慢しろと言っているだろ。元康は未来のお前を参考にあのマスクを改造したんだろうからこう言う事もありえただろ」

「ぶー」

「ブー」


 怠け豚、フィーロたんに合わせて鳴くなですぞ。

 お前とフィーロたんでは宇宙と地にも差があるのですからな。

 そこの所を弁えろですぞ。


「はぁ……世の中不思議がいっぱいで大変ですよね」

「そうだな。ああ、元康か」


 俺はフィーロたんを凝視しますが、フィーロたんは何故かローブを深く被って顔を隠してしまいました。

 恥かしがっている姿は可愛らしいですが、もっとお姿を見せて欲しいですぞ。


「先ほどフィーロたんの頭に見覚えのある物がありましたな」

「ああ……昨日、町から町の間で野宿してな。フィーロに積荷を見張らせて一旦帰っても良かったがたまには良いかと思っていたら……」


 お義父さんはそう言いながら大きなフィロリアル様に遭遇したとの話を俺にしてくださいました。

 やはり大きなフィロリアル様と出会った様ですな。


「おお、大きなフィロリアル様に会ったのですな! 俺も会いたかったですぞ」

「フィロリアル狂いのお前の方が適任なんじゃないのか?」

「そうですなー。ただ、大きなフィロリアル様は気が付くといつの間にかいなくなってしまうのですぞ」

「お前の事だから何か問題でも起こすんだろうよ」

「前のループの時はお義父さんが何故か俺を羽交い締めにしたりした様な気がしますぞ」

「そうか……お前が居なくて良かったな」


 おや?

 それはどう言う意味でしょう。

 疑問符を浮かべているとお義父さんは俺を無視して言いました。


「まあ、どちらにしてもフィーロの能力の底上げが更に掛ったから良いとするか」

「今度こそ槍の人から逃げ切ってみせるもん!」

「ではフィーロたん! 今日もデートですかな!? お義父さん! 俺のタイヤはいつ完成するのですかな!?」

「タイヤ!?」


 フィーロたんがお義父さんの方に顔を向けました。

 そうですぞ。

 お義父さんにドライブモード用のタイヤの開発をねだっていたのですぞ。

 新開発のタイヤが完成した暁にはセカンドモードをお見せして差し上げましょう。

 きっと喜ぶでしょうな。


「それはお前が勝手に開発している物だろ」

「フィーロも大変ですね」

「うー……フィーロもっと出かけたい」

「では俺と一緒に行きますかな?」

「ぶー! 来るなー!」


 おお、フィーロたんの足が更に早くなってきておりますな。

 俺もますます精進をしなくてはいけませんぞ。


「日も暮れて来ているんだぞ? 遊ぶのも大概にしておけ……そろそろ飯の準備をしなくちゃな」

「手伝います」

「助かる。奴隷達で料理をやりたがる連中が下準備はしてるな。さっさと作るか」


 なんて感じで、楽しい夕飯時の出来事でしたな。



 そのままその日は終わると思っていたのですが、夜の事ですぞ。

 夜中にフィロリアル様達のお住まいにお邪魔させてもらおうかと出かける直前、お義父さん達の住んでいる家に何やら魔物商の配下らしき者達がやってきました。


「なんだ?」


 お義父さんが応答していますな。

 まあ俺が口を出しても逆効果でしょう。

 こう言った商売などの流れは全てお義父さんに任せているので、俺は休んでいるのが良いでしょうな。

 そう思って話が終わるまで待っていると、お義父さんは出かける準備を始めました。


「どうしたのですかな?」

「ああ、良いニュースと悪いニュースがあってな」


 良いニュースと悪いニュースですかな?

 こんな深夜に何があったのですかな?


「悪いニュースはこれからゼルトブルの闇の商人ギルド内で会議があるんだと」

「こんな時間に会議ですか?」


 お姉さんがお義父さんに尋ねますぞ。

 眠らない都市であるゼルトブルと言えど、確かに会議をする様な時間ではありませんな。

 まあ、だからこそ悪いニュースなのかもしれませんが。


「ああ、緊急でな。何があるのか知らんがな」

「良いニュースは何なのですかな?」

「その会議の場でおそらく俺が闇の商人ギルド内で一定の立ち場に任命されるって話だ。これで龍刻の砂時計の使用がフリーになるだろう」


 おお! ついにお義父さんが認められる時が来たのですな!

 これからはフィロリアル様達もLv上限を気にせずに狩りに行く事が出来ますな。


「あらーナオフミちゃん大出世ね。物凄いスピードじゃないの?」

「まあな……とりあえず、サディナ。お前は人を見る目がありそうだから付いてこい。ラフタリアはエレナと一緒に元康とフィーロ、村の連中を見張っていてくれ」

「物凄く大変な仕事を命じられています! エレナさんはいつも寝てるじゃないですか! 絶対に何もしてくれませんよ!」


 そうですな。

 怠け豚はいつも怠けている奴ですぞ。

 その点、俺やフィーロたんは働き者なので任せて欲しいですぞ。


「大丈夫だ。奴隷紋で指示しておく。帰ってくるまで寝るのを禁止にさせるから我慢してくれ。良い子にしていたら土産を買って来てやる」

「私は子供じゃありません!」

「わかったわかった。じゃあ、元康」


 ビッと何故かお義父さんは俺を指差していますぞ。


「大人しく、俺が帰ってくるまでフィーロを追いかけ回したりフィーロの部屋に侵入したりせず、じっとしていろ。わかったな?」

「はいですぞ!」


 お義父さんの命令は絶対ですからな。

 この元康、何がなんでも守って見せますぞ。


「……本当にわかっているのか? まあ、良いか」


 そんな訳でお義父さんはお姉さんのお姉さんを連れて出かけて行きました。


セブンオールのヒロイン -1

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