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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
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セブンオール

「お前等、フィロリアルの乗り心地が悪いのは見てればわかる。だが、行商をする上で避けて通れる問題じゃないぞ」

「うお――そうだけどよー……兄ちゃん」


 お義父さんの喝を受けてキールを含めた村の者達が抗議しますぞ。

 キールはルナちゃんから埋もれない様に抵抗しながら抗議とは……中々にしぶといですな。


「ラフタリアもだぞ。ここで逃げたって何にも解決しないのはわかってるだろ?」

「そうですけど……」

「兄ちゃんやサディナ姉ちゃん、それと槍の兄ちゃんの稼ぎでどうにかなるんじゃねえの? つーかそんなに金掛るのか?」


 キールに尋ねられてお義父さんは溜息をしますぞ。

 やれやれ、そんな事を言っているのですかな?

 キールもまだまだ子供ですな。


「まずお前等の食費、フィロリアル共の食費、それとお前等の装備代、ゼルトブルでの生活費、後々のクラスアップ代。俺の動かしている資産、その他諸々で割と火の車だ。はっきり言って俺達の稼ぎだけじゃいつ破綻するかわからん」


 これはキール達には理解出来るか非常に怪しい案件ではないのですかな?

 お義父さんにしては珍しい言い回しだと思いますぞ。


「後な。何でも俺達に依存するのは良くない。それ位はお前らだってわかってんだろ? 村に戻っても俺達の稼ぎで楽をするつもりなのか? これは村を復興させる為の予行練習だと思え」

「う……」


 村の者達が揃って黙り込みました。

 そうですな。これはお義父さんが常に言っていた事だと思いますぞ。

 依存しない様に自立を促すのですな。


 確かに俺は数多のループを、最初の世界でお義父さんが救った世界を経験しているので、客観的に考えてかなり強いですぞ。

 ですが、俺一人で世界を救える程、この世界は甘くないのですぞ。

 何よりお義父さんは盾の勇者。

 仲間が居なくては始まりません。


「先に言っておくがゼルトブルのコロシアムで稼ぐだけの生き方をする奴を自立したとは認めないからな。そんな生活はどこかで破綻するのはわかり切っている」

「戦うだけ、壊すだけじゃ碌な事にならないってナオフミちゃんは言ってるのよー。大変だろうけど、みんながんばりましょうね」


 さすがお義父さん、良い事を言いますな。

 確かに殺す事、壊す事しか出来ない者には相応の末路が訪れるモノですぞ。

 波という争いの時代を生きるキール達には難しい話かもしれませんが、やがて来る平和の時代になった時、困る事になるんですぞ。

 平和な時代になったら何かを作り出せる様な、そんな者にならなければいけないという事ですな。


「……」


 おや? 何故かみんなが俺の方を見ている様な気がしますが、きっと気の所為ですな。

 俺は愛の狩人ですぞ。

 フィーロたんのハートを得るために日々がんばっているのですぞ。

 俺は確かに敵対する者に容赦をしませんが、それも全て平和の為、みんなを守る為。

 そんな俺も平和な世界では毎日の様にフィーロたんのライブで応援を繰り返し、そのライブに参加する為にあくせくと働いたものですぞ。

 現時点では想像も出来ない未来だと思いますが、平和になったらそんな幸せな世界が待っているのです。

 そんな世界になった時、殺す事しか出来ないなんて状況を作ってはいけないのですぞ。


「ちぇー……」

「まあ強めの酔い止めを処方してやるからそれで馴れろ。エレナは馬車に乗り慣れているのかあんまり酔わないみたいだし、どうにかなるらしい」

「ブー……」


 怠け豚……この程度の事で何を勝ち誇ったつもりになっているのですかな!

 フィロリアル様の数奇な乗り心地を酔えないのは誇る事ではないのですぞ!


「キールくん、大丈夫。ルナがキールくんが何でも出来るように手伝うから」

「ルナ……ちゃんの所為で今、物理的に手も足も出ねーよ! ちょ――ルナちゃん、俺をどこに連れて行く気だ!?」


 ノシノシとルナちゃんがキールを羽毛で包んで連れて行きますぞ。


「誰か! 助けてぇえええ! わんわん!」


 キールが何やら喚いていますが、ルナちゃんのがんばりを無下にする気ですかな?

 ルナちゃんはお前を特別に強くしてくれるはずですぞ。

 俺も特別なレッスンをフィーロたんから受けたいですぞぉおおおおお!


「はあ……元康の次はガキ共の世話か。俺は何の為に異世界に来たんだろうな」


 などとお義父さんが溜息交じりに呟きつつその日の商談に行くそうですぞ。

 最初の世界同様、お義父さんらしいですな。

 お義父さんを見習って俺もがんばりますぞー!


「ラフタリアはエレナとフィーロを連れて行商に行って来い。元康はいつも通りコロシアムで大人しくしていろ」

「お任せあれですぞ!」


 今日も俺の槍でコロシアムをフィロリアル様色に染め上げてやりますぞ。

 なんせコロシアムでの俺はフィロリアルマスク!

 恵まれない子供達の為に戦う正義の守護者ですぞ。


「ラフタリアお姉ちゃん! 早く行こう! 槍の人が来る前に!」

「ちょっとフィーロ、落ちついてください!」

「ブー……」


 フィーロたんは元気ですな。お姉さんが押されてますぞ。

 そんな二人にノロノロと怠け豚が付いて行きました。


「サディナは……昨日がんばったから自由行動。他のフィロリアルと奴隷共はまだLv上げの余地があるから狩りと乗り物酔い克服の訓練だ」

「あらーじゃあナオフミちゃんと飲み会をしたいわー」

「……日が落ちたら少し相手をしてやるからあんまり暴れるなよ」

「あーい」

「じゃあ、解散!」


 そんな訳で今日も俺はコロシアムで戦いですな。

 手加減するのがかなり面倒ですがお義父さんの命令なのでしょうがないですぞ。

 この鬱憤はコロシアムが終わった後の自由時間にポータルで狩りに出て発散するとしましょう。



 日課にしているクローキングランスで姿を隠し、フィロリアル様の羽で構築されたフィロリアルマスクを着用して、着替えは終了ですな。

 コロシアムで参加登録を済ませますぞ。

 まあ、既に参加の指名を受けていますし、到着した事を報告するだけですがな。


 何でも覆面選手と言うのは一定の需要があるそうですぞ。

 今回の大会は仮面コロシアムだそうで、賞金が多いのでお義父さんが選んでおりました。

 お義父さん曰く、今回は表と闇のコロシアムの合同で行われる見物試合なんだとか。

 ここで良い成績を収めると闇のコロシアムの方での参加を許可してもらえるとか。


 ちなみに闇のコロシアム自体は魔物商のコネなので出来るそうですが、後ろ盾がない者はこの手の試合でスポンサーなどに目を付けてもらうのだそうですぞ。

 俺はある意味、サクラですかな?

 サクラちゃんはフィーロたんらしいですがな!

 HAHAHA!


 コロシアムでは鉄仮面等の類を装着している者が多いですぞ。

 兜やマスクを付けないのは馬鹿がする事みたいな空気がありますな。

 まあ、豚なんかの類は見世物目的で付けていなかったり、獣人化する前提の選手は変身時に邪魔になるなどの理由で付けていない者もおります。


 お姉さんのお姉さんはこの手の防具を付けたりしているのを見ませんな。

 やはりあの流線型な体形だと付け辛いのが理由ですかな?

 まあ、お姉さんのお姉さんは俺でさえも目を見張る技巧を持っておりますし、技術面の成長、応用が化け物ですからな。

 あんまり悠長に構えていると俺でさえも遅れを取る位には凄腕な方なのですぞ。

 その様なお姉さんのお姉さんと他の未熟者を一緒にしては失礼ですな。


 お義父さんの注意でスキルの使用は厳禁。

 まあ技に見える範囲なら使用しても良いとの事でしたな。

 とはいえ、現状スキルを使用しなければいけない程の者と遭遇した事はありませんが。


 参加登録を済まして控室で待機しますぞ。

 それからしばし待った所で呼ばれました。


「ではー……フィロリアルマスク様」

「はい、ですぞ」


 案内員に連れられて今日も闘技場に出ますな。

 それだけで歓声が巻き起こりました。


「……フィロリアルを愛し、フィロリアルに成りきる孤高の鳥! フィロリアルマァアアアアアアアアアアアアアスクゥウウウウウウウ!」


 清々しい程のシャウトがコロシアムに響きますな。

 同時に響く鐘の音が聞こえてきますな。

 まあ俺はフィロリアル様に成りきる事は出来ませんが、愛の狩人としてしっかりと相手をしなくてはいけませんな。


 うおおおおおおですぞー!

 両手を上げて今日も勝利をみんなに見せつけるべく吠えますぞ。


「クエエエエエですぞー!」


 フィーロたんの鳴き声の真似ですぞ!

 観客は大いに盛り上がっておりますな。

 所詮俺程度では天使の美声の劣化版ですが、多少は効果があるという事ですな。


「ふん。一回戦の相手はお前か。悪いが敗退してもらうぜ」


 歓声が途絶える前に相手選手が控室から出て来て俺の前に立ちました。

 もう少し場の空気に合わせろですぞ。


 で……なんですかな?

 蝶マスクを付けたバンダナ野郎ですぞ。

 後付け程度の革鎧を着用しているのがわかりますな。

 あんまり馴染んでいないので一目でわかりますぞ。


 少々浮いた格好をしていますし、普段のコロシアム常連には居ない顔ぶれですな。

 実績も無しにいきなり参加するとは、何かしらの方法で無理を通したのでしょう。

 もしかしたら商人などにコネが効く人物かもしれませんな。


 まあ、ここは商人と傭兵の国ゼルトブル。

 お義父さん曰く、金さえ積めば大抵の無理が通る国なので疑問に思っても始まりませんぞ。

 俺はフィロリアルマスクとして、ステージに立つ全ての敵を葬るだけですぞ。


「しかし……フィロリアルマスクとか……孤児院に寄付でもしてんのか?」

「否定はしませんな」


 お義父さんの村の者達は波の被害を受けた孤児の様な者達で、俺達が保護している建物は確かに孤児院の様な物ですぞ。

 つまりは恵まれない者達の為に戦うのがフィロリアルマスクという事になりますな。


「ハッ……御涙頂戴に付き合う気は無い。こっちもやらなきゃいけないのでね」

「それはこっちの台詞ですな。お前には俺の出世の為に倒されてもらいますぞ」


 槍を構えますぞ。

 ところでこやつの選手名は何なのですかな?

 審判がカンニングペーパーを持っていますぞ。


「今は無名、後に全世界の者達が彼の活躍から目を離せない! 期待の新人! セブンオォオオオオオオオオールゥウウウウウウ!」


 この名乗り口上は新人によく付けられる物ですぞ。

 ふむ……一瞬で忘れそうですな。

 まあ、この手の台詞を吐く連中は腐るほど相手にしているので覚える必要も無いでしょう。

 今日も軽く倒してやりますぞ。


「「「ブブブー!」」」


 何やら相手選手の応援団らしき連中が応援席で喚いております。

 しかし、豚ばかりですな。

 最初から観客を付けている所を見るに少しはやるみたいですが、豚ばかりでは程度が知れますぞ。


「それではぁああああああああああああ! はじめぇええええええええ!」


 審判の声と同時に勝負開始の鐘の音が響き渡りますぞ。

 セブンオールだったかの得物は剣の様ですな。

 見た所、中々の業物の様に見受けられます。

 形状からしてドラゴン由来の剣だと思いますぞ。

 この国でも手に入れるのはそれなりに難しいかもしれませんな。


「じゃ、初戦だし……即座に倒れろ」


 セブンオールは腰を低く落として素早く俺に向かって突撃してきました。

 ふむ……中々の速度と踏み込みですな。

 今までコロシアムで戦った者の中では上から数える位の速度ですぞ。


「よっと」


 ですが、経験や動きを含めて何もかもが未熟ですぞ。

 あまりにも直線的な動きで、思わず呆れるほどですな。

 そこ等の魔物や盗賊ならともかく、そんな腕では俺に当てる事も出来ませんぞ。


「何!? 俺の動きに追いつい――」

「遅いですな」


 ガッと背後に回り込み、相手の革鎧の隙間に槍の石突きを差し込んで一回転気味に地面に叩きつけてやりますぞ。


「ふべ――!?」


 ああ、奴自身の加速も合わせてかなりの力で叩きつけてしまいましたな。

 ズシンと地響きを立てて相手選手が地面にめり込んでしまいました。

 うーん、感覚を信じるならまだ動けそうですな。

 手を抜き過ぎましたかな?

 念の為、もう一度叩き付けてやりました。


「ぐは――!?」


 サッと石突きを引き抜いて捨て置いてやりますぞ。

 ピクピクしていて動きがありませんな。

 実に無様な姿ですぞ。

 すぐに審判がやってきて相手選手の様子を確認し始めました。

 そして腕を交差させましたな。


「セブンオール戦闘継続不可能との判断により! 勝者! フィロリアルマァアアアアアスクウウウウウウウウウ!」


 ここですかさず勝利のポーズですぞ。

 荒ぶるフィロリアル様のポーズ!


「クエエエエェェェェェーですぞ!」

「うおおおおおおおおお!」


 フィロリアルマスクは最高ですぞ!

 まあ、まだ一回戦ですからな。

 こんな事もありますぞ。


「「「ブブブブー!? ブブ! ブブブブ!」」」


 何やらセブンオールだったかの応援団をしていた豚が喚いていますが、知りませんな。

 ここはコロシアム。

 勝者は栄光を手にし、敗者は落ちていくのですぞ。


 次の試合が控えているのでセブンオールは担架で運ばれて行きました。

 俺も控室に戻り休憩しますぞ。

 この時間が煩わしいですが、お金になるのでしょうがありません。


 しかも今回の試合で優勝したら御褒美にフィロリアル様を追加で購入して良いとお義父さんは仰っていました。

 俄然やる気が出ますな。

 ちなみにフィーロたんの羽をアクセサリーにした物を報酬にしてもらった時は張り切り過ぎてしまってお義父さんに怒られてしまいました。


 それからほどなくして次の試合が始まり、再度俺の出る試合が行われていきますぞ。

 かなり試合進行が早いですな。


 そんなこんなで、俺はアッサリと優勝しました。


「クエェェェェーですぞ!」

セブンオールのヒロインの数 -2

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セブンオールのヒロイン死んだか
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