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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
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ドライブモード

 ジャストフィットですな。

 これぞフィロリアルマスクと言った感じですぞ。

 そうしてお義父さんの方を見ると……。


「何が『よし』だ」

「ごしゅじんさま! アレ、フィーロの羽、槍の人から取り返して!」


 おお、フィーロたんが興奮して俺を指差しておりますぞ!

 どうですかな、フィーロたん!

 俄然やる気が出てきますな!


「ぶー! ごしゅじんさまー!」

「別に没収しても良いが……取ったら取ったでもっと酷くなるとは思わないか?」

「うー……」


 おや? お義父さんがフィーロたんを宥めておりますぞ。

 何かあったのですかな?

 お義父さんはフィーロたんの相手に夢中なので、お姉さんに顔を向けますぞ。

 ですがお姉さんもサッと顔を背けました。


「あの……なんでフィーロの羽を?」


 顔を背けつつお姉さんは聞いて来ました。


「アクセントですぞ! そして俺が愛の狩人である事の証明ですな」

「意味がわからん」

「あらーモトヤスちゃんは本当にフィロリアルとフィーロちゃんが好きなのねー」


 お姉さんのお姉さんが楽しげにしております。

 もちろんですぞ!

 フィーロたんとフィロリアル様の良さを話すとしたら、一夜では語りきれないですぞ。

 語るだけで一生が終わってしまう位でしょうな。


「じゃあ選手登録に行くか。元康、やり過ぎない程度に加減して金を稼ぐんだぞ」

「もちろんですぞー!」


 そんな訳で俺はゼルトブルではフィロリアルマスクとして活動する事になりました。

 Lvの特定なども行うとの事で、ある程度、調整してからコロシアムに行って選手登録をしたのですぞ。


 かなり賑やかなコロッセオですな。

 コロシアムは結構出入りをしていましたが闘技場への参加はあんまり経験がないのですぞ。


 そう言えば……戦いが終わった後のゼルトブルはフィーロたんやクー達、他にキールなんかのグッズを扱った商店街が出来ていたのを覚えていますぞ。

 元電気街、アイドルやアニメ等の総本山となっているあの場所みたいな空気を纏っておりました。


 きっとあれが世界が平和になった証なのでしょう。

 俺もフィーロたん親衛隊のメンバー01でしたからな。

 この世界でも是非とも作らなければいけません。


「えー選手名を」

「フィロリアルマスクですぞ」

「フィロリアルマスク様ですね……」


 ここでお義父さんが何やら手を口に当てて堪える様な声がしましたな。

 どうしたのでしょうか?


「ナオフミ様?」

「いや、アッサリと復唱する受付が凄いなと思ってな」

「まあ……この方の事をそこまで知らないから言えるのかと思いますよ」

「そうだな。この名前だけなら何も無いか……」


 その後、ある程度審査をすると選手登録が終わりました。


「ではお義父さん! 俺の雄姿を見てくださいですぞ」

「忙しいから二戦目までしか見ないぞ」

「それで十分ですぞ!」


 お義父さんは忙しい方ですからな。

 フィーロたんや世界の平和のために日夜がんばっておられるのですぞ。


 初戦から出て来る相手など雑魚も良い所だったので適度に加減しながら槍で軽くのしてやりました。

 語るまでもないですぞ。

 順調に階級を上げて賞金をお義父さんに持ち帰りました。



 町はずれにある俺達の基地で俺は賞金を持ってお義父さんやフィロリアル様達に手を振りますぞ。


「やりましたですぞ、お義父さん! 楽勝でしたな!」

「二戦目辺りまでは見ていたから知っている」

「フィーロたん! どうでしたかな?」


 フィーロたんに尋ねるとプイッと視線を逸らされてしまいました。

 つれないですな。

 そんな所も可愛らしいですぞ。


「恥ずかしがり屋さんですな!」

「ぶー!」


 おお、フィーロたんの威嚇ですな。

 とても可愛らしいですぞ。

 なので俺も両手を合わせて求愛の威嚇をしますぞ。


「ぶーですぞ」

「……」


 フィーロたんは答えてくれませんな。


「フィーロたーん! 俺が稼いだ賞金で今日は御馳走をしますぞ!」

「やー!」


 おお! フィーロたんが走り出して行ってしまいますぞ。


「待ってほしいですぞー!」


 おお! ここ最近のフィーロたんはお義父さんの強化の影響を受けて、かなり素早く動ける様になって来ている様ですぞ。

 俺から高速で距離を取っております。


「フィーロはやーい。ラフー、コウも足が速い方が良い?」

「どちらかと言うと、コウさんには乗り心地が良くなって欲しいです」

「うーん?」


 お姉さんとコウが楽しげに話をしておりますな。

 ちなみにルナちゃんもいらっしゃるのですが、フィロリアル様の雛達の世話に夢中でこちらを見ておりませんぞ。

 可愛い物好きのルナちゃんらしいですな。

 ただ、俺の知るルナちゃんよりもテンションが低いのが懸念材料でしょうか。

 っと、それよりもフィーロたんとのデートですな。


「お義父さん! この賞金でフィーロたんに御馳走を与えても良いですかな?」

「本人は嫌がっているが?」

「ははは、御冗談を!」

「……はあ」


 おや? お義父さんが何やらお疲れのご様子ですぞ。

 こんな時こそ豪華な料理が必要なのではないですかな?

 身体の資本はご飯ですぞ。


「ぶー!」

「ではフィーロたん! お義父さんを元気にする為に買い出しに行きましょう!」

「やー!」


 おお、フィーロたん、ちょっと見ない間に強くなられましたな。

 中々に俊足ですぞ。

 このLv帯のフィロリアル様の中でも速い方なのではないですかな?

 きっと俺の見ていない所でも研鑽を積んでいるのでしょう。


「お義父さん、フィーロたんがとても素早いですぞ」

「フィーロが少しでも速くなりたいと言うからな。資質向上で出来る限り早くなる様に能力特化をさせている」

「そうなのですかな!?」

「ああどっかのいつでも飛びかかって来る狩人から逃げられる様にする為だそうだ」


 つまりそれは……俺とどこまでもランデヴーしたいと言う事の現れですな!

 うぉおおおおお、盛り上がって参りました!

 スーパーハイテンションですな!


「では俺もがんばりますぞ」

「これ以上何をがんばるんだ、お前は! と言うかがんばるな!」

「ははは! フィーロたん待ってほしいですぞー!」

「やー!」


 おお、フィーロたんが風の様に走って行ってしまいますぞ。

 全力で走れば追いつけるかもしれませんが、フィーロたんですからな。

 まだまだ力を隠しているはずですぞ。


 ならばしょうがありません。

 拠点にある壁に立てかけてあったフィロリアル様達の馬車の予備車輪を取り出し、俺はスキルで槍をもう一本出して槍を携帯用の短槍にしますぞ。

 所謂二槍流という奴ですな。


「トランスフォーム、ですぞ!」


 フィロリアル様達と峠で遊ぶ時の為に考えていたとっておきをここで披露する事になるとは思いもしませんでしたが、フィーロたんとのデートをする為にはやらねばなりませんな。

 予備の車輪の軸に槍を通し、手で前輪、足を後輪の軸を掴んでうつぶせの体勢になります。

 それからスキル、スパイラルスピアという槍を高速回転させて突くスキルを応用して、車輪を高速回転させますぞ。


「な、なに!?」


 フィーロたんが遠くで俺を見ております。

 見ていて欲しいですぞ! 俺のへん姿(けい)を!


「元康、ドライブモード!」


 シャキーンッ! ですぞ。

 さながらバイクの様な状態になりました。

 俺のスキルと気、魔力がフル稼働している状態ですぞ。


「うわ……」


 お義父さんが何やら変わった声を出していますな。

 しかし、今はフィーロたんに俺の雄姿を見せる時ですぞ。

 当然、お義父さんにも披露します。

 俺はそのままアクセルとばかりに車輪を地に付けて走り出しました!


「ブルンブルンですぞー!」


 素早く車輪を回転させ、フィーロたんに追随して行きますぞ。


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!? 来るなぁあああああああああああああ!」


 フィーロたんがそんな俺から背を向けて走りはじめました。

 凄く速いですぞ。

 今までで一番速いのではないですかな?


「フィーロたーん! 待って欲しいですぞ」


 これからフィーロたんとの楽しいランデブーが始まるのですぞ。


「もう見てらんねぇよ……アイツはどこまで堕ちていくんだ……」


 あっという間に小さくなって行くお義父さんがそう呟いたのが聞こえた様な気がしますが、気の所為ですな。

 そんな訳で俺とフィーロたんの楽しいデートは半日ほど続いたのですぞ。


 ドライブをするには丁度良い、最高の空模様でした。

 使用した道は舗装こそされていますが、日本の様なコンクリートではないのでそれなりに凸凹していますぞ。

 ですが、俺のドライブモードの前には無力でしたな。


 途中、フィーロたんが道無き道に進んで行きましたが、問題ありません。

 俺はドリフトをしてフィーロたんの進行方向に付いて行きますぞ。

 このドライブモードであれば草原、荒野、山道、砂漠、雪原であろうと進んでいけます。

 がんばれば湖や海だって進めるかもしれませんぞ。


 やがてフィーロたんが疲れて休憩した頃……おお、もうゼルトブルから随分と離れたシルドフリーデン方面の道中ですな。

 この調子ならば三日もあればシルドフリーデンの首都に行ける位の位置ですぞ。

 おや? 空を見上げると飛行船が飛んでいますな。


「ぜぇ……ぜぇ……」

「フィーロたん、大丈夫ですかな? ここに俺が用意しておいた水筒がありますぞ」

「い、いらない……」


 つまり自分でなんとかするという事ですな。

 フィーロたんはなんでも自分で出来るという事でしょう。

 しっかりしていますな。


「では、君の瞳に乾杯……ですぞ」


 と言って、俺は自分の水筒の水を飲みました。

 やがてフィーロたんは来た道を帰り始めました。

 ここから帰るのは中々に面倒ではないですかな?

 俺はフィーロたんの隣を並走しながら言いました。


「フィーロたん、ポータルスピアで帰るのはどうですかな?」

「来るなぁあああああああ!」


 そんな感じで来た道を戻り、拠点に辿り着いた頃には夜になっておりました。


「うう……フィーロもうクタクタ。もっと早くならないとダメ……」


 家に帰るとフィーロたんは倒れるようにお義父さんの所へ向かいました。

 今日は沢山はしゃいだので疲れたのでしょう。


「やっと帰って来たか」


 俺がドライブモードを解除するのとほぼ同時にお義父さんが言いました。

 どうやら家のキッチンでお義父さんはお姉さん達と何やら作業をしている様ですぞ。


「おお! お義父さん! 今日はとても楽しいツーリングをフィーロたんと出来ました」

「アレをツーリングと言えるお前の神経を称賛するよ」

「近所で噂になってましたよ。ゼルトブルに出現した二輪車人間って……」

「モトヤスちゃんは毎日をエンジョイしているのねー、お姉さんも見習わないといけないわね」

「あんまり参考にしない方が良いと思います」


 などとお義父さん達は述べております。


「というか、フィーロがあれなのにお前は特に疲れとか無さそうだな」

「鍛えていますからな!」

「ああ……そう」


 単純にLvや能力向上を掛けているのも理由ですが、お姉さんの様に日々身体を鍛えているのですぞ。

 そもそもフィロリアル様達と遊ぶには体力が必要ですからな。

 つまりフィロリアル様達と付き合っているだけで健康になっていくのですぞ。


 これがフィロリアル様健康法ですぞ。

 フィロリアル様、最高ですな!

 やがてお義父さんは何かに気が付きました。


「フィーロのステータスが少し伸びてるな……これがLv以外の要素か」


 最初の世界のお姉さんが頻繁にやっていた奴ですな。

 確かに今日のフィーロたんは沢山走ったので体力や脚力などが上がっていても不思議は無いですぞ。


「あー……なんだ。フィーロ、明日は好きな物を好きなだけ食わせてやる」

「そうなの? なんでー?」

「まあ、心情の変化というか……気にするな。いいから食べたい物を考えておけ」

「わーい」


 やりましたな! フィーロたん。

 しかし、何故か知りませんが、お義父さんがフィーロたんに優しいですぞ。


「フォローが大変そうだな……」


 と、お義父さんが小声で言いました。

 元康イヤーは大事な言葉であればどんな小さな音でも拾うのですぞ!


「とりあえず今は休んでいろ。何とかしておく」

「うん、わかったー」


 と、何故か優しいお義父さんが俺の方にやって来て言いました。


「お前は笑えない奴だな」

「それはどういう意味ですかな?」


 俺が笑えない?

 よくわかりませんが、それは当然ではないですかな?

 俺は誠実に生きるという誓いを立てているので、昔の様な軟派な言動は致しません。


「元康、割と本気で尋ねるが……フィーロの事が本当に好きなのか?」

「ハハハ、何を今更。俺は心の底からフィーロたんを慕っていますぞ!」

「それでアレなのか……しかし、随分と遠くまで出かけていたみたいだな」

「ですな。道中でフィーロたんが魔物を蹴り飛ばして経験値を稼いでいました」

「お前から逃げる為にわき目もふらずにぶつかって行ったの間違いじゃないのか?」


 確かに凄いスピードだったのでぶつかったという表現は間違いではないかもしれません。

 魔物共もフィーロたんの突撃によって軽く吹っ飛んでいましたからな。


「それでお義父さん。実はドライブモードには他にも出来る事があるのですぞ」

「……なんだ?」


 俺は親指を立てて誇らしげに宣言します。


「お義父さんを俺の背に乗せる事が出来るのですぞ!」


 ドライブモードでお義父さんを背に乗せてフィーロたんとのツーリング……楽しそうですな。

 是非ともやってみたいですぞ。


「馬鹿じゃないのか? 絶対に乗らねえよ。何が悲しくてそんな事をしなくちゃならん」


 おや? お義父さんに拒否されてしまいました。

 しょうがありませんな。お義父さんはフィーロたんの背に乗りたいのでしょう。

 ではお姉さんはどうですかな?

 お姉さんの方を見るとサッと顔を背けられてしまいました。

 代わりにお姉さんのお姉さんが言いました。


「あらー……じゃあお姉さんが海で尚文ちゃん達を背に乗せたらモトヤスちゃんはなんて呼ぶのかしら?」

「水上スキーモードであり、潜る場合はサブマリンモードですな!」


 お姉さんのお姉さんは中々の物ですからな。

 さすがの俺も海中でドライブモードは……やった事が無いのでわかりませんな。


「話に関わるんじゃない」

「あらあら。でもお姉さん、ナオフミちゃんなら乗せても良いわよーいろんな意味で」

「サディナ姉さん、あんまりふざけないでください」

「あらー」

「しかし……元康だと変態にしか思えないのに、フィーロに乗ったり、海でサディナの背に乗る場合はおかしく思えない様に見えるのは、実はおかしいのかもしれない……」

「ナオフミ様、しっかりしてください!」

「あ、ああ……この考えはやめるべきだな」


 などと話しているお義父さん達を眺めながら、俺は高揚した気分に浸りますぞ。


 今日は充実した一日でしたな。


 しかし……仮設で使っていた車輪がボロボロになってしまいました。

 気を併用して強化したり途中で修理したりしながら騙し騙し使っていたのですが……本格的にフィーロたんとのツーリング用のタイヤを作った方が良いかもしれません。

 後年、お義父さんがフィロリアル様達の馬車の研究もなさっておりましたので、その辺りを参考にして俺用のタイヤも開発するべきですな。


 で、お義父さんは俺とのデートでお疲れのフィーロたんをマッサージしておりました。

 羨ましいですぞ。

 俺もお手伝いをしたかったのですが、俺が近づくとフィーロたんが起きるとの事でやらせてもらえませんでした。


「毎日賑やかねー」

「賑やか過ぎます……これが後、どれくらい続くのでしょうか……」

「お義父さんの嫌疑が晴れるのもきっと時間の問題ですぞ。女王が帰るまでの辛抱ですな」


 そんな感じで日々は過ぎて行ったのですぞ。


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― 新着の感想 ―
ここの疾走感大好き 過去一笑ったけど、本当にもとやすとフィーロどっちも不憫笑
[一言] 某変身ヒーローみたいなことになっとる
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