表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
838/1285

並列分岐する世界

「どう、とは?」

「お義父さんはどうやら赤豚を消した所為でクズや他の連中に因縁を付けられる事を恐れているご様子。しかし、お義父さんが命じるのならば城と教会を吹き飛ばしてやりますぞ?」

「んな事出来る訳ねーだろ」


 疑り深いですな。

 では実際に力を見せてみれば良いのではないですかな?


「では俺の強さを直に見ていて欲しいですぞ」

「はぁ? さっき見ただろ。槍からビームが出るんだろ?」


 槍からビーム? ああ、ブリューナクの事ですか。

 これは演出の問題ですな。

 お義父さん直伝の強さの証明をしてみせますぞ。

 そうですな……少々離れた所に沼地があります。

 あの一帯をターゲットにしますかな。


『我、愛の狩人が天に命じ、地に命じ、理を切除し、繋げ、膿みを吐き出させよう。龍脈の力よ。我が魔力と勇者の力と共に力を成せ、力の根源足る愛の狩人が命ずる。森羅万象を今一度読み解き、偽りの太陽を生み出せ!』

「リベレイション・プロミネンスⅩ!」


 魔法を完成させて出来あがった炎の玉を目標目掛けて投げつけますぞ。

 俺が投げた魔法の玉は一直線に目標まで飛んで行き、花火の様に弾け……第二の太陽として沼地を焼き尽くしました。

 熱風がそこそこ来ますが距離が離れていますから大丈夫でしょう。


「……」


 お姉さんが唖然とした表情で俺の唱えたプロミネンスの炎を見ております。

 この時点では、これだけの力を持っている人物はいませんからな。

 タクトすら余裕で仕留められますぞ。

 それこそ一行位で死ぬ存在ですからな。あの偽勇者は。


 おや? フィーロたんの瞳に俺の炎が映り、キラキラして見えますぞ。

 君の瞳に乾杯、ですな。

 俺の燃える様な想い、届けですぞ。


「どうですかな? 俺の強さは」


 絶句するお義父さんが沼地だった焼け野原を見てから俺に視線を戻しました。


「何ならこれをメルロマルク城に放って来ますぞ。一瞬で消し飛ばせるでしょうな」


 この国の終焉ですぞ。

 ついでに三勇教会も火の海にしてやり、神の怒りを知らしめてやるのも良いですな。

 もちろんお義父さんが望めば、ですが。

 などと考えていると、お義父さんは俺の方を向いて背伸びした様な、胸を張った態度で聞いてきますぞ。


「……やめろ。また俺の所為になるだろ!」


 おお、お義父さんはどうやらメルロマルクで起こる悪い事の責任を全て取らされると警戒しているご様子。

 まあ連中の事ですから、そういう事にする可能性は高いでしょうな。


「元康」

「なんですかな?」

「お前はこの世界がゲームと同じだとか言っていたよな? 強化方法とかはどうなんだ? それでやった事で間違いないんだろ?」

「なんだその事ですかな? そんな事は当然教えますぞ。とはいえ、この頃の俺は思いこみの所為で自らの強化に制限を施していましたがな」


 俺はお義父さんに武器の強化方法を順序を持って教えました。

 これが真実である事を証明出来れば、お義父さんならば多少は信じてくれるはずですぞ。


「まずは四聖の強化方法ですな」

「まず? と言う事は他にもあるのか?」

「ありますぞ」

「嘘くせー」

「心から信じないと出来ないのですぞ?」

「じゃあ無理だろ」


 おや? 信用してくれないのですかな?

 俺が不思議そうに眺めているとお義父さんは再度溜め息を吐きました。


「はぁ……お前は今まで信用される様な事をしてきたか? むしろ敵だろ。ちょっと前にブスブス槍を突き刺してきたヤリチン野郎だろうが」


 ああ、そうでしたな。

 時期的に決闘をしてから、そんなに日は経っていないはず。

 ですがここで引き下がる訳にはいきませんぞ。

 優しいお義父さんや最初の世界のお義父さんの話を参考に、今のお義父さんを説得する台詞を言ってみれば通じるかもしれません。


「どうせ失うものはないのではないですかな? 信じて損をする物ではないと、未来のお義父さんはそう思って試したそうですぞ」

「くそ……俺の思考を読み取る様な台詞を言うのをやめろ」


 渋々と言った様子でお義父さんは盾を弄り始めましたな。

 どうやら俺は当りを引いた様ですぞ。

 それからお義父さんは額に手を当てて嘆くように俯きました。


「あの、ナオフミ様?」

「グア?」

「ウェポンコピーはわからんが、ドロップを確認した。ついでに強化も出来た」

「そんな……じゃあ……」

「間違いはないのかも知れんが……」

「間違っていて欲しかったです」


 ははは! これが真実ですぞ!

 真実の愛なのですぞ!

 フィーロたんフォーラブですぞ!


「それでお義父さん、メルロマルクを滅ぼしますかな?」

「……さっきからそればっかりだが、お前が滅ぼしたいだけなんじゃないのか?」

「別になんとも思っていませんぞ。害悪である赤豚は消しましたし、精々三勇教が鬱陶しい位ですな」


 問題ばかり起こす国ですからな。

 今の内に勇者の強さを見せ付けて消し飛ばし、残った廃墟にお義父さんの国を作るのも手ですぞ。

 最初の世界の様に。


「シルトヴェルトに行ってメルロマルクを攻め滅ぼせなんて提案をするのも手なんだろうが……」

「穏便な手ですな」

「どこが穏便なんだよ」


 戦争という交渉の余地を残している時点で十分に穏便ですぞ。

 いえ、そこまでは言いませんがな。

 あまりに過激な事を言って、これ以上警戒されては困りますからな。


「まあ、勇者と言うのは総じて神として崇める部分もあるので、沢山の縁談が来て、お義父さんは困っていましたな」

「うえ……種馬扱いになるのかよ」


 と言う所でお姉さんがお義父さんを見つめておりますぞ。

 しばらくお義父さんとお姉さんが見つめあっておりましたが、やがてお義父さんが深く溜息を漏らしましたぞ。


「生憎と却下だ。とはいえ、第二のラフタリアを出さない為にも、波を解決して日本に帰るにしても、勇者の務めを果たさねばならんしな……」


 おお、さすがお義父さん。

 実に慈悲深いですぞ!

 これだけの事を受けて戦う覚悟があるなんて、勇者の鑑ですぞ。

 生ある限り尽くす覚悟が無尽蔵に湧いてきますな。


「で、波はどうやったら解決するんだ?」

「それなのですが、既に解決しているはずなのですぞ」

「何? どう言う事だ?」

「最初の世界で既に波を起こした首謀者である神を僭称する奴を仕留めたはずなのですぞ。俺の微かな記憶にも間違いなくお義父さん達が仕留めて、世界に平和が訪れた事を覚えております」


 そもそも俺はどうしてループしているのですかな?

 最初の世界のお姉さんが迎えに来て、帰還したはずですが?

 そこの所もよくわからないですぞ。


「前にもループをしていたのですが、それはこの槍……とは異なる龍刻の長針という槍が作りだした並行世界との話でしたな」


 俺は前にもループした事がある事を大雑把に説明しました。

 詳しく説明すると時間が掛るとお義父さんが概要だけを聞いたのですぞ。


「ループ……ね。で、元康はループしていた事があって、そのループから抜け出して最初の世界に戻って波の黒幕を仕留めて世界を平和にしたと……」

「そのはずですぞ」

「波とは人災だったんですか?」

「そうですぞ」

「うーむ……」


 お義父さんが困った様に眉を寄せて考え込みました。

 これは以前のループと同じく、助言がもらえるのではないですかな?


「ありえる可能性は複数ある。一つ目は何かしらの理由で元康の槍が誤作動を起こして再度そのループ世界に迷い込んだ」

「ですが、今までは召喚直後に巻き戻りましたが?」

「誤作動だからな……途中で止まった可能性は否定できない。だが、その槍がバージョンアップしているんだったか?」

「ですな。真・龍刻の長針ですぞ」

「となると誤作動の可能性は低いか……並列分岐する世界という効果も気になる」


 ぶつぶつと考え込んでいたお義父さんが顔を上げて再度俺に言いますぞ。


「次に最初の世界とやらが平和になった後に何かしらの事件が起こって滅び、止む無くループが発生したとか」

「そうなのですかな?」

「俺が知る訳無いだろ。とはいえ、あるだろ? 些かオタクっぽい発想だが、好評の内に終わったアニメの続編を無理矢理作る為に、平和になった世界で新たな戦乱が! って奴が」


 生憎と俺はその手の話は少々疎いのですが、ありえるかもしれませんな。

 なんだかんだで人々が争うのは歴史の常ですからな。

 しかし、そんな未来は嫌ですぞ。

 仮にそれが事実であったなら必ず防がなくてはいけません。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ