盾の勇者の感想【上】
「という感じでこの世界に戻って来て、お義父さんと共に赤豚女神を仕留めた、という事なのですぞ。お義父さん! どうでしたかな? 俺の雄姿は」
「……それを言って俺がお前を褒めると思っているのか?」
まったく……毎日毎日! 晩飯時になるとぺらぺらと語りやがって!
お前は吟遊詩人にでもなったつもりかってんだ!
すっげー長い旅路を物語形式で毎晩毎晩語り始める。
始まりはいつだったか忘れたが一年は過ぎたんじゃないか?
本当、冗談抜きでいい加減にしてくれ。
「……」
ラフタリアが無言の威圧で元康を睨んでいる。
俺でもちょっと怖い。
しかし、その権利がラフタリアにはあると思う。
あれ以来どうも元康に関して、俺と意見が合致すると思っていたが、こんなのがあったならわかる気がする。
嫌がらせの次元を超えて、完全に精神攻撃だぞ。
「おー! 槍の兄ちゃん大変な旅だったんだなー!」
キールが感心したような態度で興奮気味に言ってるが意味わかってるのか?
どこに褒める箇所があるのかはともかく、事実かどうかでさえ怪しいと疑ってもらいたいもんだ。
つーかラフタリアが来るのがあんなに遅かったのにはそう言った理由があったのか、と俺はラフタリアに同情する。
実際どれくらい虚言が混じっているのか疑わしいもんだ。
何せ、村で該当する出来事が起こると知ってますぞ!
とかこれは――とか後だしをかましまくっていたからな。
ちなみにフィーロはこの話を最初から聞いてない。
アイツは元康には近寄らないからな。
元康が来た時点でメルティの所に逃げるか、どこかに隠れるのが通例だ。
「なあなあ、槍の兄ちゃん。話の中に出てきたフィロリアルのみんなはこの世界で出会えたのか?」
「もちろんですぞ」
最後の最後になって元康はキールの質問に答える。
それまでは秘密ですぞ! とか言って誤魔化していたからなぁ。
「まずはユキちゃんですな」
元康がループ時によく使役していたフィロリアルがどうなっているのかと元康は補足を始める。
ユキと呼ばれたフィロリアルはどうなっているかと言うと、前に俺と元康が育てたフィロリアルでレースをした時に元康が育てていたサラブレットの……母親だそうだ。
村のフィロリアルに負けた後、元康の下でクイーン化して村に居たフィロリアルとくっ付いて子供を産んだって訳だな。
元康も後で気づいたらしい。
で、コウと呼ばれたフィロリアルはやはり元康の配下として孵化、なんか知らんがラフ種と相思相愛になって仲良くしている。
ラフ種との交配種二号の父親だったかな?
ラトが現在研究中だ。
サクラってのはフィーロになったんだったか?
「しかしサクラって奴か……身長高めで大人しくて補佐をする奴なら神の力を使ってフィーロと交換するのはどうだろうか?」
ぶっちゃけ性格面で言えばフィーロの上位互換な気がしてくる。
何が悲しくてああも自己主張の激しいピーチク喋る鳥の面倒を見なきゃならない。
「その理屈だと、ナオフミ様を交換という意見も出てきますよ」
う……ラフタリアも痛い所を突いてくる。
元康の所為で俺もヴィッチとクズの陰謀に巻き込まれずに済むと随分と善人っぽくなるっぽいからな。
良いか悪いかで言えば、そっちの俺の方が良いだろう。
……多数決的な意味で。
「兄ちゃんあんまり変わらなくね?」
「うん。なんか丸くなってきてそんなに差が無いと思う」
「なんだと、お前等!」
「口だけは乱暴だけどね」
「あはは……」
何か完全に舐められてる気がするぞコラ!
「まあ……あの時の戦いから随分と経ちますし、ナオフミ様も丸くなったと言いますか……」
「むう……」
付け焼刃だったとでも言う気か?
そう見えているのはお前等が慣れただけなんじゃないのか?
「尚文様の本来の優しさは不変の物なのですわ!」
「それもどうなんだ?」
アトラもここぞとばかりに便乗してくる。
ポイント稼ぎだろうか?
「しかし……最初から最後まで聞いていましたが、まったく面白くありませんでしたわ。私が全然活躍してませんし尚文様の心を射止めるシナリオがありませんわ。なのでリテイクを要求しますわ」
リテイクなんていらん。
そうしてアトラはフォウルの方を咎めるように目を閉じているが、けど見つめる。
コイツは目を閉じても気で周りを把握できるからな。
精霊化しているから、それすらも超越しているんだったか?
「アトラ?」
「コレも全てお兄様の所為ですわ。お兄様が尚文様と関係を持とうとするから私との出会いが発生しなかったのですわ」
「ち、ちが! 俺の所為じゃ……いや、だが……兄貴は……」
「何言葉に詰まってんだ! というか顔を赤くするな気色悪い!」
フォウルは相変わらず修業が足りないのか、血迷った思考をする時がある。
また山籠りしてこい。
「アトラ、お前は扱い的にまだマシだろ……」
「尚文様、それは違いますわ」
「……一応聞いてやる。どう違うんだ?」
「私と尚文様が恋に落ちるのは、この世界だけなのですわ」
いや……恋に落ちたつもりは無いが……。
「それにラフタリアさんは状況によっては尚文様を裏切る、ここがポイントですわ」
「何を勝手な事を言っているんですか!」
さすがのラフタリアもアトラの物言いに不満の声を上げている。
裏切るも何も、状況的にしょうがないとは思う。
それに裏切る、というよりは報告しようとして俺が勘違いした、みたいな表現だった。
というか、それを言い出したら、お前は完全にクズの面倒を見る孫だろ。
「そう……最初の一回で偶々尚文様と友好を深めたからと言って調子に乗らないでほしいですわ」
「アトラさん……あなたという人は……」
アトラの言動に呆れているラフタリア。
ちなみに別に珍しい光景ではない。
偶にこんな会話をやっているので、もう慣れた。
まあ、そもそもループ中、元康が不自然な位ラフタリアを無視するしな。
元康の中でラフタリアはどんだけ頑丈なんだよ。
病気云々の会話を聞いていただろうに。
「ともかく、この世界は唯一無二! 特別という事ですわ。その様な有象無象、風の噂程度に聞き流すのが妥当ですわ」
「まとめてきたな……」
よくもまあ、もしもの可能性をそんな簡単に切り捨てられるな。
ラフタリアからすれば親友と天秤だった訳だし、そんな簡単な話でも無いだろう。
よし、アトラの話は適当に聞き流す事にしよう。
ん? サディナが元康に近付いていく。
また碌でもない事を言う気か?
「はぁ……モトヤスちゃん、お姉さんがナオフミちゃんと関係を持つパートをもう一度聞かせてほしいわ」
「わかりましたぞ!」
「何頼んでんだ!」
サディナは何か乙女の表情をして元康におぞましい周回の話を何度かリクエストする事がある。
本当、やめてくれ。
「ナオフミちゃん」
サディナは俺の肩に右手を乗せ、左手で自分の腹部をさする。
「お姉さんのお腹がナオフミちゃんの子供を孕みたいとキュンキュン言ってるわ」
「気色の悪い事を言うんじゃない!」
バシッと俺の肩に乗せた手を弾いて距離を取る。
……最近、どうもサディナのアタックが強くなってきてる気がする。
やばい傾向だ。
「いやーん! お姉さんナオフミちゃんとの楽しい時間が待ち遠しくておかしくなっちゃいそうー」
「安心しろ。今のままでも十分お前はおかしい」
「えっと……確かに、お話を聞く限りだとサディナさんが盾の勇者様と関係を持っている事が多いですね」
イミアも何か恥ずかしそうにしながら同意してる。
お前は自己主張全然しないけど、元康の話じゃいるよな。
キールと一緒じゃなかったみたいだけどさ。
うーん……ラフタリアとアトラ辺りは……まあ良いとして。妥協してやるがサディナはなー……イミアの後とか約束させれば時間稼ぎは出来るかも知れん。
「イミアちゃんもナオフミちゃんと楽しい時間をしましょうよ。恋せよ乙女なのよー時間は有限。ささ、お姉さんと一緒にナオフミちゃんを落としましょ」
「え、あ、その……」
……先回りされた気がする。
危機回避能力、作動するしかないな。




