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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 槍の勇者のやり直し
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滅びに抗う人々の為に

「なおふみは覚えがあるはずなの。そこのシャチ女と海へ狩りに行った時、陸地よりも経験値が多いって話なの」

「うん。なんで多いのか首を傾げていたけど……まさか……」

「そうなの。コイツが手を伸ばせられるのは大陸までなの。だから海は手が伸ばせずにいた場所なの。槍の勇者の武器をサルベージしたと言うのはきっと海だったからなの」


 なんと、そんな秘密がこんな所で明らかになるのですかな?

 そういえば最初の世界で、お姉さんのお姉さんだけLvが上がるのが早いとお義父さんが驚いていました。

 この世界でもお姉さんのお姉さんに同行した者は上がるのが早かった様な気がしますな。


「つまりアイツを倒すことで、活性化所か、世界中で手に入る経験値が増えるはずなの」

「……波に人々が抗えない様にする為に、そこまで徹底しているとは思いもよりませんでした」

「黒幕がどんな奴なのか詳しくは知らないが、悪魔を生産し、邪魔をし続けるお前を倒さない理由が無い!」

「滅びに抗うこの世界の人々の為、僕達は貴方を倒させてもらいます!」


 何故、樹が仕切っている様な口調なのですかな?

 それはお義父さんの仕事ですぞ!


「アノカタの為にココデ使命を果たせず、セカイのオワリを見届ける前に果てる訳にはイカナイ。チョウドイイ、シセイのユウシャドモ!」


 エクスペリエンス……面倒ですな。

 システム経験値が赤い光を放って俺達に向けて幾重にも魔法陣……魔法を詠唱している様ですぞ。

 しかも悪魔共がこちらに向かって集まって来ているみたいですな。


「ココデ朽ち果てろ! セカイのオワリを見せてクレル。コード・バロール始動!」


 言い終わると同時に、辺りの魔法陣から一斉に極太の魔法の光が放たれましたぞ。

 それと同時にバキンと嫌な音が脳裏に響いた気がしましたぞ。

 目視出来る限りでは様々な属性を纏って居て、属性防御等をしていたらどれかの反属性で大ダメージを受けていたでしょう。


「流星盾Ⅹ!」


 お義父さんがお決まりの流星盾を展開させました。

 そのお陰で結界内にいる俺達はダメージを受ける事は有りません。

 ですが……見た感じ、この魔法一つでも相当の火力があるでしょうな。


「うわ! 眩しいですね」


 目を凝らしながら俺達は周りを確認しますぞ。


「く……耐えられない範囲じゃないけどいつまで撃ち続けるんだろう」

「あ、魔法で見やすくします」


 お姉さんが杖を握って魔法を唱えましたぞ。


「アル・ドライファ・ダークアイズ」


 すると明るすぎて見づらかった状況がある程度見えてきました。

 完全にテレビ等の光の調整みたいな魔法ですな。

 で、お義父さんがシステム経験値の攻撃から俺達を守ってくださっておりますが……いつまでも撃ってきますな。

 休む暇は無いかの如く、光線が俺達に放たれ続けております。


「永続攻撃ですか、厄介ですね……」

「止まる……訳無いか。それよりも今、波が発生する音がしなかったか?」

「うん、間違いないよ。波が発生したはず……四聖は世界の要なんだっけ?」

「なの! もしも波が発生している時に四聖の勇者が全滅したら世界の終りなの!」


 つまり、この機械は俺達を潰しに来ていると。

 なんとも……雑魚が抵抗しますな。


「つまりここで僕達を殺すことで世界を滅ぼそうとしている、という事ですね」

「波の前に飛ばなかったのはここの地場の影響か、システムエクスペリエンスの所為かはわからないけど、俺達を殺して目的を完遂しようとしている」

「ですがどうするんですか? 敵はずっと攻撃してますよ。ずっと僕のターンとばかりに……尚文さんの結界が無かったらどうなっていた事か」

「普通のゲームだったら攻撃出来る隙があるんだが……」

「よくよく考えたら、出来るならずーっと攻撃するよね……」


 お義父さんの言葉に錬と樹が悔しげに呻きますぞ。


「反撃タイミング? 何を言っているのですかな? 錬と樹は」


 俺の言葉に錬と樹は俺を見ますぞ。

 フィロリアル様は目を輝かせて攻撃のチャンスがある事を喜んでおられる様子。

 ライバルは諦めないとばかりにシステム経験値を睨んでおります。

 お姉さん達も負けじと力を練っているのはわかっておりますぞ。

 そう……ここで諦めるなんて選択はありません。

 前に進むだけですな。


「こういう時にする事は一つしかありませんな! 全てをぶち抜く……更に先へ行くのですぞ!」


 お義父さんの流星盾から槍の穂先を出して、力を込めてシステム経験値目掛けてスキルを放つだけですぞ。


「ブリューナクⅩですぞおおおおおお!」


 カッと俺の槍から飛び出した光がシステム経験値が放つ光を押し返して行きます。


「結局はそうなりますか……そうですね。先ほど、コード・バロールという攻撃を仕掛けた様ですから、因縁というのはつくづく付きまとう様ですよ。錬さんもわかっていますね? ルーという神様が倒した相手の名です」

「わかった!」


 錬と樹も俺に合わせてスキルを放ちますぞ。


「フラガラッハⅩ!」

「タスラムⅩ!」


 錬の出現させた剣は放たれる光の雨の中を突き抜けて、周りに集まり、魔法で援護する悪魔共を切り刻み、樹の放ったスキルが俺のブリューナクと合わさってシステム経験値目掛けて飛んで行きます。

 見た所ダメージはありますな。

 このまま行きますぞ!


「ムダダ。ソレよりモ、これを見よ」


 おやおや、命乞いですかな?

 そんな事をしなくても必ず殺してやりますぞ?


「あれは……」


 お義父さん達がシステム経験値が見せようとしている物……ホログラフィーの様な映像が見えます。

 そこには上空から撮影したと思わしき地図が映っていました。

 ……この地形、覚えがありますな。


「あれは俺達の村じゃないか?」


 錬の言葉にお義父さんと樹が頷きますぞ。

 確かにお義父さんの村が映っております。

 この村がどうしたというのですかな?


「ケイケンチの流れカラ脅威度ノ高イ者が集マル地は捕捉してイル。ココニ波を発生さセタ」

「ちょっと待ってください。今、あの村にはキールさん達しかいないんですよ?」

「ああ……さっさとコイツを片付けて駆けつけるしかない!」


 なんと、俺達がいない間に村を滅ぼそうというのですかな。

 ……あそこにはフィロリアル様達もいるのですぞ?

 この機械、ぶっ飛ばしてやりますぞ!


「ユウシャがいなければ有象無象ニ過ぎナイ」


 地図上に映る俺達の村周辺に赤黒いマークが浮かびました。

 これは波ですかな?

 くっ……早くこやつを倒さないといけませんぞ!


「そんな事はない」


 そう言ったのはお義父さんでした。


「あそこにはみんながいる。近くの街にはメルティちゃんやエクレールさんだっている。メルロマルク城だって遠くない」


 言われて見れば村の者達は俺達がLv上げを手伝ったり、上限突破などをしているので戦闘能力はかなり高いですぞ。

 近場には婚約者やエクレアもいるので、戦力的に悪く無い布陣と言えますな。


「最初の波の時は体制が出来てなかったけど、今は女王やクズさんだっている」


 ふむ、確かにあの二人ならば自国に波が発生した時点で必要な対応をするはずですぞ。

 聞けば聞く程、システム経験値が愚かに見えてきますな。


「みんな、こんな日の為に備えていたんだ。簡単にはやられない」

「……そうだな。なんでもかんでもお前等の思う通りに行くと思ったら大間違いだ!」

「ええ、少なくとも僕達が敵を倒して駆けつけるまでは持ってくれるはずです」

「むしろ俺達無しでも波を倒しちゃったりしてね」


 その可能性は高いですな。

 なんせフィロリアル様達もいるのですぞ。

 波程度の雑魚、簡単に倒してくれるはずですな。


「だから大丈夫。俺は、みんなを信じる!」

「キールくん達がいるからあっちは大丈夫! ね、ラフタリアちゃん?」

「うん、今度は前みたいに……ならない」

「そうねー、お姉さんも今のキールちゃん達なら大丈夫だと思うわよ」

「私が作った魔物もいるのよ? 負けるはずないわ」


 などと、お姉さん達がお義父さんの言葉に賛同していますぞ。

 そうですぞ。この最強の布陣で負けるはずが無いのですぞ!


「じゃあ続きなの! なのおおおおおおおおおおお!」


 お義父さんの結界内に人型形態でいるライバルが光を纏ってから光るツメを両手に出現させて振りかぶりますぞ。


「原初の竜帝の記憶に存在する神殺しのツメなの!」


 振りかぶったあのツメの軌跡……フィーロたんが遊びで放っていた0のツメを思い出しますぞ。

 まさか、その技が効く相手なのですかな?


「私達も負ける訳にはいきませんわ!」


 ユキちゃん達フィロリアル様が援護とばかりに合唱魔法を詠唱し始めました。


「コウもがんばるーリファナーラフタリア見ててー」

「サクラ接近戦したかったけど出られそうにないから魔法を手伝うー」

「黙示録<カタストロフィ>を回避するために暗黒救世主<ダークメシア>のクロとレンが世界を救うー」


 フィロリアル様は思い思いに合唱して行きます。


「合唱魔法・神鳥!」


 四人のフィロリアル様が唱えた合唱魔法により、火の鳥が作り出され、俺と樹の放ったスキルに纏わりついて力となりますぞ。


「お姉さん達も負けずにがんばるわよー」

「うん。ラフタリアちゃん」

「がんばる。リファナちゃんも一緒に行こう」

「はぁ……私も手伝うわ」


 主治医も一緒になってお姉さんのお姉さんが主体となって魔法を発動させました。


「合唱魔法・聖印」


 バシンと俺達の足場に何やら印が出現しましたぞ。


「どんな効果があるの?」

「わからないわねー……ただ、この場に適した魔法だと思うわよ」


 俺の放つブリューナクが更に太くなっていきました。

 俺達の足場にある印から力が流れて俺達のスキルに力を与えている様ですぞ。

 スキルの威力増加魔法ですかな?


「行きますぞー! うおおおおおおおおおおフィーロたあああああああああああああああ――」


 ドシンと一歩踏み出してブリューナクを最大出力でぶちかましてやります。

 槍全体から光の波動が噴出し、システムエクスペリエンスを貫きますぞ。

 そう……前回の波から出てきた転生者らしき連中を吹き飛ばした時と同じ力ですぞ。


「バ――バカナ!? バロールが打ち砕かれた!? 世界中の龍脈のチカラガココニ集まってイルんだゾ。オマエ等シセイのユウシャ共は……セカイをアイテにしてもマケナイと言う気カ!?」

「世界ですかな? それはフィーロたんですぞ」


 そう、世界というのはフィーロたんに集約するのですぞ。

 俺の守る世界はフィーロたん。

 その周りに存在する空気と大地など世界では無いのですぞ。

 なんというか、あった方が良い、程度の物ですな。


「元康くんの言い分だと余計拗れるから」

「世界の源……要は四聖勇者なの、むしろお前が世界の意志に抗っているなの!」


 ライバルの言葉とほぼ同時に、俺のブリューナクがシステム経験値の作り出した魔法陣をぶち抜きました。

 それでも守るかのような強固な防壁がシステム経験値を守っておりますぞ。

 しかも他の角度からも光線は出ているので、お義父さんの結界を出る事は出来そうに有りません。


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