経験値収集装置
「うんーなんかー……ドラゴンっぽいけど違う。ツギハギ合わせー」
「らしいけどガエリオンちゃん、どう?」
お義父さんがライバルに尋ねるとライバルも首を傾げております。
「なのー? ガエリオンにはドラゴンにも見えるなの。でも……確かに何か違和感はあるなの」
「どっちにしても戦うしかないんじゃないかしら? じゃないと帰れないんでしょ?」
お姉さんのお姉さんがお義父さんから貰った槍を持って構えますぞ。
「ラトさんは何かわかる?」
「そうね……妙な繋ぎの部分があるのは確かよ。ホラ、胸と腰の間の辺り」
主治医が指差した所を俺は凝視します。
……よくわかりませんな。
これが専門家の知識という奴なのでしょう。
「面倒ですからぶち抜きますぞ!」
「ちょっと元康くん!?」
俺はドンと面倒なので力を溜めてブリューナクをぶっ放してやりますぞ。
「ブリューナクⅩ!」
跡形も残らないでしょう。
「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」
敵の発音が可笑しいですな。
笑いそうになりながらもブリューナクを発射しました。
すると敵は巨大な魔法陣を空中に出現させて俺のブリューナクを受け止めますぞ。
そして膨大な黒く光る魔法を放った様です。
俺と撃ち合いをする気ですかな?
「笑止ですぞ! その程度で俺の攻撃は止まりませんぞ!」
「出来れば連携の観念から止まって欲しかったけどなー」
「言ってる暇は――」
樹が構える前に俺は更に力を込めて一歩踏み出します。
俺のブリューナクを押し返そうとしていた様ですが、最初から俺に押し負けていますぞ。
余裕で魔法陣にまで押し切って、魔法陣は粉々に砕け散りましたぞ。
敵……仮に悪魔竜としておきますかな。悪魔竜の全身をぶち抜いてやりました。
ハハ! 雑魚ですぞ。
「一瞬で戦闘終了ですか」
「今まで修業はしてもボスクラスは全部一撃だぞ」
「本当に強くなる意味あるのか疑問に思いますね」
錬と樹が呆れ気味に答えますぞ。
何か文句があるのですかな?
「まあ……それでも元康くんが勝てなかった相手がいるらしいから上には上がいるんだね」
「ガエリオンは耐えきって見せるなの。軟弱なドラゴンなの」
「圧勝ですな」
俺は勝利とばかりに槍を掲げますぞ。
これならまだライバルの方が歯応えがありますぞ。
「これだけ強力な一撃を耐えきると言い張るガエリオンさんもどうなんでしょうね」
「尚文なら耐えきれるか?」
「ガエリオンがなおふみを攻略する時に槍の勇者を倒して見せるなの!」
「負けませんぞ」
「最大の敵は味方ですか。がんばってくださいね」
「もうここまで役に立ったんなら尚文も相手をしてやれば良いだろうに……興味があるみたいな事を言っていただろ」
「なのー」
「あのねー……緊張感が無くなるから止めてね」
なんて感じに話をしているとキラキラと悪魔竜を倒した所で何かが浮かんで光っておりますぞ。
「なの? 竜帝の……欠片なの」
ライバルが魔法でそれを引き寄せますぞ。
飛んできた欠片をライバルは確認します。
何やら紫色に光っていますな。
「悪魔の力に汚染されているなの……これは摂取し辛いなの……」
「浄化とか出来ないの?」
「出来ると思うなの。ガエリオンがどうにかしてみるなの」
ライバルは言いながらお姉さんを手招きしますぞ。
「手伝ってほしいなの。光の魔法と闇の魔法をガエリオンと一緒に唱えるなの」
そう言いながらライバルはお姉さんの手を握りました。
お姉さんは何度も頷いて魔法を唱える様に目を瞑りますぞ。
「そういえばラフタリアちゃんは光と闇の魔法が使えるんだっけ」
「なの、闇も上手く使えば浄化の役に立つなの」
「がんばります」
「ラフタリアちゃんファイトー」
お姉さんのお姉さんと友人が応援しておりますぞ。
やがて欠片が僅かに光った後、ライバルはそれを摂取しました。
「んー……まだ浄化が少し足りないけど、ある程度は……な、なの!?」
ライバルが目を大きく見開きましたぞ。
「何かわかったの?」
「波の正体は神を僭称する者が起こす人災なの。他にも時代の節目とかに出てくる転生者も先兵と言う事実がわかったなの」
「それはもう推測で判断出来る範囲だね。でも正解って事かな?」
「他にもここの歴史とか、悪魔の目的とか欠片に封じられている知識にあったなの!」
「それは気になりますね。ここはどういう目的で作られた歴史があるんですか?」
「元々は外で聞いた亜人と人間の平等の国……四聖の勇者が作った国みたいなの。先住民が開拓して作った場所なのは他の活性化地と変わらないなの」
「やっぱりそうなんだ? だけどなんでここだけ国みたいになってるの?」
「それは立地が良かったのが原因なの。元々は豊かな土地だったなの。だけど勇者の死後に産まれた天才が世界平和の為に、楽して経験値を集められる装置の開発をしていたみたいなの。そのお陰でこの国は強力な兵士が簡単に作り出せる土壌が出来ていたみたいなの」
ほう……そんな事が出来たのですかな?
経験値を集める機械があるなら、俺達も欲しいですぞ。
……?
おや? お義父さんが昔、キャッスルプラントを作った時にやっていた様な気がしますぞ。
「それがなんで滅んだのかわかる?」
「なの! ある日、天才が作った発明が暴走して悪魔を作り出し、脱出不可能な結界を作り出したみたいなの。しかも魔力汚染……マジカルハザードが起こって汚染された大地と魔力にここにいた生き物はあっという間に消し飛ばされたみたいなの」
うわぁ……っとお義父さんは風化した骨を見つめますぞ。
天才に頼った罰ですな。
この世界で天才は鬼門ですぞ。
碌な事にならないのはタクトを見れば一目で分かりますな。
「装置の暴走はわかったけど、じゃあ俺達はその装置を壊せばいいのかな?」
「結果的にはそうなの。だけどさっきの宝物庫に伝承の武器が沢山あった意味もわかったなの。アレは悪魔が集めた物なの」
「悪魔は確か人工的に作られた魔物なんでしたっけ? その悪魔がなんで集めているんですか? 魔界から侵略しているとか、世界を支配するためですか?」
樹の質問にライバルは首を振りますぞ。
「違うなの。悪魔には世界を支配するなんて考えは無いなの。奴等の目的は来るべき日に備えて四聖勇者を強化出来ない様に強力な武具をここに集めて手に渡らない様にするのが目的だったみたいなの」
「あー……ゲームとかだとあるよね。人の手に渡らない様に魔王側が優秀な武具を隠すって奴」
「刃が潰されていたのはそれが原因ですか」
「本当は壊したかったけど壊せないから隠していたなの」
「それも勇者共が乗り込んで来たら無意味って事だろ」
「かと言って……あんなにも何重に結界を張っていたら普通は入って来れないでしょ。伝承も潰されてるみたいだし、悪魔も今まで戦ってきた敵の中ではかなり強い方じゃない?」
「そうですね……言ってはなんですが四聖の強化だけじゃ四人でも苦戦はするかもしれませんよ」
「で、波とかにも参加せずに世界の裏側で暗躍してる……勇者達の強化を妨害している。伝説の武器は絶対に渡さないとばかりに」
「波に出て来ないというのが姑息ですね。下手に出てくれば根城が何処にあるのかと探りを入れられるのに……」
樹が忌々しいと呟きながら頷きます。
確かにそうですな。
これで悪魔が波側の敵だと思えば乗り込む事も視野に入りますぞ。
「波の亀裂とは別の場所から出てくるみたいだしね。怪しんで調べる事が無い様に動かずにいる……出て来ない事に意味があるんだ」
「良く良く考えればドロップ品やオーダーメイドだけで波に挑む様なものか。確かにこれだけ優秀な装備が使えないんじゃ厳しくなる」
「完全に敵の先兵ですね」
「後は、その天才の発明を悪用して悪魔を生み出しているみたいなの……そして未だにその発明は稼働を続けているなの」
「さながら不死者の大釜だね」
「ここを脱出する為にもそんなふざけた発明を壊さないといけない訳か」
「活性化地の経験値目当てで来ましたが、とんだ場所でしたね。完全に隠しダンジョンですよ」
なんと、こんな事があるのですな。
今までで来た覚えがありませんでしたが、行くしかないですぞ。




