悪魔竜
「改めて思いますけど、僕達の仲間は武器が偏り気味ですね」
「ツメが多いからな」
「フィロリアル達が思い思いに武器を使うとなるとねー……」
「ガエリオンは杖も使えるなの!」
ライバルがここで万能感を出す為に言いますぞ。
あざといですな!
仕留めますぞ!
「サクラちゃんは剣を使っておりますぞ! 錬など足元に及ばないのですぞ!」
「おい!」
「元康くん落ちついて! 張り合おうとして不和を招いてる!」
「んー? ガエリオンには勝てるー」
ぶんぶんとサクラちゃんが二刀流で素振りをしますぞ。
「アレが俺よりも上だと言う気か! チャンバラだぞ!」
「比べるまでもありませんな!」
俺にとって錬よりもサクラちゃんの方が上ですぞ。
「何ぃ!?」
「錬、落ちついて!」
「元康さんですよ!」
「く……」
「実際は錬の方が上なのは稽古とかしててわかってるでしょ」
お義父さんが錬を取り押さえますぞ。
フ……お前などエクレアに負ける程度の技術ですからな。
サクラちゃんを笑う事などさせませんぞ。
「なおふみはガエリオンにどんな武器を持って欲しいなのー? ガエリオン、なおふみにお願いされたら絶対覚えるなのー」
「私も覚えたいです」
ライバルとお姉さんの友人が合わせて首を傾げながら言いますぞ。
お姉さんの友人は良いですがライバル、お前は黙っていろですぞ!
「二人とも今のままで大丈夫だからね」
なんて感じに出てくる無数の悪魔共を仕留めながらの雑談をしていると十字路の所でライバルやフィロリアル様が揃って左を向きました。
「どうしたの?」
騒ぐ錬を宥めていたお義父さんと樹がフィロリアル様達の異変に気づきます。
「あっちになんかザワっとした何かがあると思うー」
「なの……魔力の流れを感じるなの……龍脈の乱れも一緒に感じるなの。しかもこれは結界を壊す時にも感じた力なの」
「じゃああっちに結界を生成している何者かが居るのかな? ゲーム風で言うなら宝物庫回りをするのが良いんだけどー……」
「でもあっちにしか宝の気配はしないなの」
ライバルの言葉にお義父さんが考え込みますぞ。
「余り物を俺達が行った方の宝物庫に入れていたとか?」
「どうなんでしょう? どちらにしてもここの十字路は左に行くのが良いのかもしれませんね」
「どうですかな? ライバルの勘が鈍っているのかもしれませんぞ」
「どっちにしてもボスとかがいるなら倒してからでも良い様な気が……」
うーんとお義父さんは悩むように腕を組みます。
「何をそんなに悩んでいるんですか?」
「ゲーム風で言うならクリアすると二度と入れないタイプのダンジョンとかあるじゃない? ここが壊れない様に保っているのがこの先に居るボスとかだったら討伐後に崩落しそうだと思ってさ」
すると樹は理解を示したように頷きますぞ。
俺も理解したいですぞ。
「だけどゲームみたいに考え過ぎかとも思うんだけどね……」
「どちらにしてもガエリオンさんの言葉を信じるなら行くしかないですよ」
「まあ、そうなるか。出来る限り宝物庫を回れる様にして行けば良いかな」
「そうだな。こう……ゲーマーの血が騒ぐな」
「ここの黒幕とかが居たら何者なのかを調べておきたいですね」
などという感じで俺達はライバルやフィロリアル様の指示する方角へと足を向けたのですぞ。
割とその後も悪魔の出現頻度は高かったですな。
ですが今の俺達にとっては雑魚も同然ですぞ。
新スキルのお陰でお義父さん達も余裕で対処できております。
そんなこんなで道なりに、ライバルやフィロリアル様の勘を頼りに進んでいます。
ああ、お義父さんが手書きでマッピングしてくださっていますぞ。
こういう時に、細かな仕事をしてくださるのがお義父さんです。
割と良く出来た地図が出来ています。
主治医も一緒に書き込んでいる様子ですぞ。
「だいぶ近いなの。この先に力場があると思うなの」
「つまりボス戦ですか?」
「わからないなの……ただ……うん。やっぱり竜帝の気配がする気がするなの」
「ドラゴンがいるの?」
「うーん」
お義父さんの問いにライバルが首を傾げますぞ。
はっきりしろ、ですぞ!
「よくわからないなの。欠片がある様な気配の方が正しい気もするなの」
「で、宝物庫はどうなんだ?」
「今の所、最初の宝物庫以外じゃ倉庫みたいなのしか見つかって無いのは錬もわかってるね。何処に隠しているかわからないけど、この先にあるのは間違いなさそうだ」
「なの」
「何があろうと俺がぶち破って見せますぞ」
「ああ……うん。ゲームのパターンで推測するとボス討伐後の宝とかになるのかな?」
「まあ、十分強力な武器は手に入りましたから、クリア後入手不可とかでも良いですけどね」
樹の返答にお義父さんが我に返った様な顔をしてから若干苦笑いをして呟きます。
「幾ら異世界だと言ってもゲームじゃないよね……どうも忘れそうになって困るよ」
「そういえば……そうですね。最悪、女王やフォーブレイと協力して掘り出せば良いわけですし、とりあえず脱出の為の手段を模索しましょう」
「ああ、いい加減、飽きてきた所だ」
「何が出てくるにしてもササっと仕留めますぞ」
という事で俺達はライバルやフィロリアル様が感知した原因の場所へと足を運びましたぞ。
すると何やら禍々しい雲みたいな物が通路の先から流れて来ていました。
そのまま進むと大きな……吹き抜けの祭壇のような所に出ましたぞ。
まだ祭壇の先には道があるようですな。壁を見ると今までと様子が異なりますぞ。
どうも禍々しい色合いをしていて、歪に光っていて不気味さを強調しております。
そうですな。
前回の禍々しいメルロマルクの汚染された壁が更に浸食した様な脈動する壁となっております。
襲い来る悪魔を仕留めて吹き抜けの部屋に入りますぞ。
すると奥に大きな玉座がありました。そしてそこに何やらドラゴンっぽい生き物が座っております。
「ドラゴン?」
「なの……? どうもよくわからないなの」
ライバルもそうですがドラゴンは玉座が好きですな。
「どっちにしても行くしかないなの」
「わかった。みんな、いつでも戦えるように準備して」
「もちろんですぞ」
「しかしダンジョンの奥にドラゴンのボスとかベタですね」
「いいから行こうよ」
樹の指摘を流して俺達はドラゴンに近寄りますぞ。
「なの! ここにドラゴンがいるんて思わなかったなの」
ライバルが玉座に座る……ドラゴンにしてはゴツイ体格をしておりますな。
マッチョドラゴンですぞ。
竜人タイプですな。
「グウウウuuuuu……」
「ドラゴンゾンビみたいな声をしていますな」
「ちょっと違う気がするなの」
そうですかな?
俺にはよくわかりませんぞ。
「ガァアAAAAAAAA!」
立ち上がったドラゴンが口を開けて真っ黒なブレスを放とうとしていますぞ。
話し合いに応じる気はゼロの様ですな。
「あっちはやる気みたいなの!」
「じゃあこっちも応戦するしかないね」
「話し合いに応じる気は毛頭ないという事ですか」
「そのようだな。クロ! 行くぞ」
「うん! だけどアレは悪魔僭称竜帝<デビルズイミテーションドラゴン>と分析ー」
「よ、呼びづらい!」
俺は目の前のドラゴンを睨みますぞ。
すると名前が浮かんできましたな。
汚染されし堕竜――悪魔ドラク――クロウ――。
「上手く魔物名が見えませんな。バグってますぞ」
「ゲームじゃないんだから……とは思いますが……」
「えっとねーカワスミーあの敵ねー。ドラゴンとは違う気がする」
「そうなんですか?」
その問いにユキちゃんが頷きますぞ。
ドラゴンの情報をフィロリアル様が説明するとは、少し珍しいですな。
「ですわね。ドラゴンだったらそこの竜帝と同じように背筋がざわついて苛立ちを覚えますが、目の前の敵はドラゴンとは少し違う気がしますわ」




