自動浮遊剣
「そういえば……」
すると樹が火炎放射器みたいな武器に形状を変化させて背中に背負った燃料タンクのような物を見せます。
「なんですかな? それは」
「魔法放射器という銃器に該当する変わり種の武器なんですけど、このタンクに魔力の宿った武器を入れると弾が撃てる物らしいです」
「うん。それをどうするの? 杖とかから魔力を取って発射する感じ?」
「そうなんですけど……尚文さんの自動研磨みたいに自動魔力供給って技能があるみたいなんです。本来は奪った魔力の回復をする物みたいなんですけど……」
お義父さんがポンと手を合わせます。
「上手く使えば杖の失われた魔力を供給出来るかもしれないね!」
「そういう事です。入れてみてください」
樹の指示で落ちている強力な杖……魔杖アポカリプスという杖を樹の背中にあるタンクに入れますぞ。
ゴポっと音を立てて杖がタンク内で浮かび上がり、中の液体を紫に染めます。
「……初期残弾0ですね。あ、少しずつ残弾が回復していきますよ」
「満タンになったら取り出して見て確認かな」
「ええ」
「随分と戦力増強が出来そうだが……研磨と補充が終わるまで待機?」
「最低限の強化はしておくから付いていけない範囲じゃないよ。探索を続行しよう」
お義父さんと樹が揃って提案し、俺と錬は頷きますぞ。
「ラトさんは……鞭辺りを使ってもらおうかな。鞭って研磨カテゴリー? 魔力カテゴリー?」
「まあ……良いけどね」
「あ、鞭が入りそうなスロット発見」
スポッとお義父さんは最上級研石の盾に鞭を入れました。
主治医がお義父さんを見ながら呆れている様ですな。
お前の身に余る凄い武器なのですぞ。
「リファナちゃんはツメかな?」
「何でも大丈夫です!」
「短剣とか早さを生かした武器が良いだろうし、待っててね」
「はーい!」
「あらー」
「サディナさんは元康くんと同じく槍だね」
「わかってるわ。しかし……振りまわすには重そうね」
「大丈夫でしょ。十分にLvを上げてるし、資質の向上もしてたじゃないか」
「まあねー」
そんなこんなで俺達は次の宝物庫を目指して移動を開始しましたぞ。
その道中で新たに出たスキルの試し打ちを行います。
出現した名ありの悪魔目掛けて錬が最初にスキルを放ちますぞ。
「フラガラッハⅩ!」
すると錬の前に浮遊する剣が出現し、相手に向かって飛んで行きました。
そして勝手に斬りかかっているようですぞ。
「浮遊剣?」
「俺はフロート系の剣は好かないのだが……」
ですが勝手に攻撃する剣は悪魔相手に随分と攻撃的な動きを繰り返しております。
「最初の世界の錬は浮遊剣のスキルを使うと棒立ちになっていましたな」
「そうなの? じゃあ今の錬はもっと強いって事?」
「いや……アレは勝手に出現した剣が戦っているんだが……」
呆気に取られた様に錬が自動で悪魔を切り刻む剣を指差して答えました。
「あー……なるほど。フラガラッハだもんね」
などとお義父さんが納得しています。
やがて錬を追う様に樹がスキルを放ちました。
「タスラムⅩ!」
ボンと爆発音を立てて石っぽい巨大な魔法弾が悪魔にぶつかって行きました。
おお……壁に穴が出来ましたな。
「俺もやりますぞ! ブリュー――」
「新スキルを使おうよ」
おっと、癖で使いそうになりましたな。
ブリューナクは便利なのですぞ。
「エンドレスランサーⅩ!」
試しに出たスキルを放ちますぞ。
お? ググッと槍が前方に回転しながら突撃して行きました。
目の前の悪魔共をミンチに……塵も残さず消し飛ばしましたな。
凄いですな。予備動作の割には使い辛そうですが。
ブリューナクの汎用性には劣りそうですぞ。
ですが……上手く使えば良い火力になりそうですな。
「尚文さんのディフェンスリンクがどんなスキルなのかわかりませんね」
「名前から察するに防御力を合わせるとかそういうスキルくらいしか想像がな」
「ゲーム上では……って死んでる職業なんだっけ?」
「ああ」
むざむざ攻撃を受ける必要はありませんからな。
怪我をしたくないので、試すのが難しいというのが俺達の考えですぞ。
なので、安全そうな場所に移動してからお姉さん達が実験と称して勝負をして調べました。
やはりディフェンスリンクは、対象が受けた攻撃をお義父さんが肩代わりするものでした。
この肩代わりはお義父さんの防御力を適応したものみたいですぞ。
実質、お義父さんの防御力を俺達が共有する事になりますな。
これは非常に便利なスキルですぞ。
ま、無駄に受ける気はありませんが。
お義父さんに怪我などさせられませんぞ。
「しかし……錬や樹の新スキルに元康くんが放とうとして間違えたブリューナク……なんでルーの武器って共通項があるのか……」
「ルー?」
錬が首を傾げていますぞ。
知らないのですかな?
「ケルト神話の神様だよ。錬は知らなかったんだ?」
「武器名が一人歩きしていても不思議じゃないですよ」
「ファンタジーは目を通すと楽しいですぞ」
「そういうのは好きだが……」
「日本と言っても認知度に違いがあるのかもしれないね」
「否定はできませんが錬さんの理解度も考えないといけませんよ」
相変わらず樹の命中が作動してますな。
一瞬、錬が眉を寄せましたが、もう慣れたのか聞き流してますぞ。
「で、フラガラッハというのはルーって神様の武器なのか?」
「うん。簡単に言うとオートで敵に斬りかかって回復不能の傷を負わせる武器なんだけどね」
「だから自動浮遊剣なのか」
「神話の武器って結構酷い設定の物がありますよね。回復不能とか……」
「間違って仲間を切ったら大変な事になりそうだね。とりあえずさっきの宝物庫で手に入った武器のスキルがケルト系なのかもしれないね。元康くんのブリューナクは何処で手に入ったの?」
「お姉さんのお姉さんが海でサルベージした槍をコピーして、それが成長した武器で出ましたな」
サンゴの槍みたいでした。
アレが成長してブリューナクに成りましたな。
「あらー? じゃあお姉さんは海を探せば良いのかしらー?」
「研磨が終われば良い武器が手に入るから待ってて」
「じゃあ、あの宝物庫にあった同型の武器に内包されていた訳じゃないのか……法則が分からないな」
「どういう原理なんでしょうね」
「さあ……」
「話を戻すぞ。樹のスキル、タスラムというのもそうなのか?」
錬がお義父さんを筆頭に俺達に聞きます。
「そうだね。こっちは弾の名前だけど……ちょっと説明が面倒だから省くよ。とりあえずルーの武器名のスキルが多かったのは事実だね。もしかしてあの馬車……アンヴェルとかだったのかな? 壊れてて使えそうになかったけど」
「あの馬車欲しかったー」
「ですわね」
「コウもー」
「クロもー」
フィロリアル様達が揃って言いましたぞ。
さすがフィロリアル様ですな。
そう言えばみんな馬車を興味津津に見ておりました。
なんて話をしながら探索を続けているとお義父さんの方からチーンとトーストが焼き上がる様な音が響きましたぞ。
「研磨完了したみたいだね。あ、魔法効果も回復したみたいだからみんな使ってくれるとありがたいね」
「あらー随分と凄い武器ねー」
お姉さんのお姉さんが魔槍ルーンを振りまわして言いますぞ。
「ツメとかはケルト系じゃないみたいだね。リファナちゃんやフィロリアルのみんなは受け取ってね」
「はーい」
どんどん装備が強化されて行くのはゲームの醍醐味ですな。
これで鬼に金棒ですぞ。
お姉さんも樹から魔力補給された杖をもらっております。
「凄い魔力……使いこなせるかわからない」
「必要ステータスも高めでしょうから。扱いには気を付けてくださいね」
ちなみにお姉さんの友人はツメ以外にも短剣を数本受け取っておりましたぞ。
サクラちゃんは二刀流なので剣を受け取りました。
ライバルもお義父さんから武器を受け取っております。




