宝物庫
「そうだね。試してみる価値はありそうだ」
「ああ、しかし……先ほどの碑文の破壊痕に伝説の武器の発見となるとますます怪しくなるな……なんでこんな場所にこんな量が隠されているんだ……? おお、凄いスキルを内包しているっぽいぞ」
錬が呟きながら無造作に捨て置かれている豪華な装飾の施された剣を持って呟きます。
俺も拾って確認しますぞ。
基礎スペックが今まで見つけた槍とは一線を越えた物ばかりですぞ。
おお……魔槍ルーンやガ・ジャルグ等、ゲーム内でも強力と言われた槍やギカンティックランスというある一定の攻撃力を持っていると能力ボーナスが発生する槍もありますぞ。
ここに転がっている物だけでも随分と強いのではないですかな?
内包されたスキルも相応に強力な物ですな。
……まあ、重複している物もあるようですが。
「凄いな。今まで使っていた武器よりも基礎の段階ならほとんど上だ」
「これを土台に更に強化したらどうなる事やら……銃器まで転がっていますし」
樹に至ってはライフルですかな? クロスボウですかな?
わかり辛い不思議な武器や短銃の一つを持って言いました。
「短銃ルドガ……兄弟銃があるはずなんですけど、短銃モイラという銃です。探してみてくれませんか?」
「なんかあるの?」
「ゲーム時代、揃えたらチートって言われる最上級レアの銃なんですよ。二つ揃えると一つになってどんなボスでさえも楽勝に勝てるって言われてました。出現率が低すぎて、持っていたらチートを使っていると言われる位のレアなんですよ。銃は最強にはなれませんが、この武器があれば別です。まあゲーム時代の話ですが……あ、アルテミス発見……これも希少なレアですよ!」
樹が我を忘れて物色をしております。
マシンガントークでしたな。
目がキラキラしていますぞ。
錬も同様ですな。
「あ、なんか豪華な剣が台座に刺さってるね。これってもしかしてかの有名な聖剣とかなのかな?」
おお、確かに台座に刺さっていますな。
王道ファンタジーなどで王様や勇者が抜く剣に似ていますぞ。
しかし……まるで伝説の武器を台座ごと持ってきたみたいな、下品な状態ですな。
「台座ごとくり抜いて持って行ったみたいですな」
「そうだね……風情もクソも無い感じだね。誰がこんな事をしたんだろう……」
錬が徐にその剣を引き抜こうとしましたが、抜けない様ですぞ。
お前は選ばれた存在ではないという事ですな!
ですがコピーは作動したのか剣を変えておりました。
振り被ると風が発しました。
どうやら風を纏う剣みたいですぞ。
「これは凄いな」
「とんだ宝物庫ですよ……モイラが見つかりません。ガエリオンさん、他を探しましょう」
「任せてなの!」
「待って待って、寄り道するのも良いけど、調べていかないと」
「わかってますって。尚文さんは何か良い盾は見つかりましたか?」
お義父さんの方は……っと見ると凄く豪華な盾を持っていますぞ。
最初の世界のお義父さんもそれなりに強力な盾を使っておりましたが、それに劣らない性能を宿しているのは一目で分かります。
「えっとアイギスにイージス……あ、なんか光の盾とかもあるみたい。属性盾の強力な奴も揃ってるね。スキルは……ディフェンスリンク?」
お義父さんがスキル名を唱えると、俺達に何やら光の帯みたいな物がお義父さんから出て繋がりますぞ。
これはどういう効果ですかな?
「どんな効果があるかわからないけど……試してみると良さそうだね」
「ですな。効果も期待できると思いますぞ」
「しかし……コピーできるからこそ使える武器ばかりだぞ。クロ達に使える武器は無さそうだ」
「刃を潰してあるみたいですからね。本当は壊したかったという意思が伝わってきますし、魔法的加護も呪いや何かしらの効果が武器自体を弱らせている様に見受けられますね」
「その事なんだけどさ……錬が良いかな」
「なんだ?」
お義父さんが盾を何やら鞘が集まったみたいな盾に変えますぞ。
随分と変わった形状の盾ですな。
穴だらけと言うよりも石造りの鞘みたいな盾……ですかな?
「砥石の盾って言うんだけど、これの専用効果に自動研磨って言うのがあるんだ。これに差しこんでみれば……」
「なるほど! 使える武器に早変わりするかもしれないんだな!」
錬が徐に剣を何本もお義父さんの盾に差し込みますぞ。
まるでパーティー用の玩具、危機一髪みたいですな!
「ただの砥石の盾だと8時間もかかるみたいだけどね。最上級砥石の盾っていう覚醒させた奴だと3時間まで短縮できるみたいなんだ」
スコスコと俺達はお義父さんが見せた盾に落ちてる使えそうな武器を指し込んで行きます。
ツメ類はフィロリアル様が好んで使うので重点的に入れますぞ。
「みんなにはない? 砥石シリーズの武器」
「生憎と……僕の場合は専用効果が違いますね」
「樹の場合は仕方ないかな?」
まあ弓や銃ですからな。
どこに研ぐ場所があるのか、という感じですな。
俺も思い出しながら砥石の槍を探してみますぞ。
ありましたな。
ですが俺も樹と同じく効果が違いますぞ。
「俺のは……」
錬は何やら鞘っぽい武器に形状が変化しました。
二つ折りに出来て、仕込みが出来る様ですぞ。
「出来る様だが入れられる数が少ないな。多分一本が限界だ」
「研磨ですからね……」
「ちなみに樹や元康くんのはどんな効果があるの?」
「僕の場合、特定動作をすると鋭い矢が生成されるという物みたいですね」
「俺の場合は回避運動で攻撃力の補正が掛るみたいですぞ」
馬鹿には出来ませんが、一々武器を持ちかえる必要は無いと思いますぞ。
これが異世界に来たばかりなら、話は別だったのかもしれません。
「まあ……しょうがないか」
「それよりもどうしますか? これだけの武器があるという事は持ち替えも検討に入れるべきかと思うんですが……」
「優秀な物を持ち替えるのは良いけど、強化に必要な鉱石とか素材は揃ってる?」
俺達は揃って確認しますぞ。
確かに……全ての強化を出来るほどかと言われると怪しいですな。
優秀であればそれだけ強化に必要な鉱石類が希少な物になるのは常……過剰強化など以っての他と言わざるを得ませんな。
しかも錬の教えた強化方法の覚醒をさせるのにも途方も無い熟練ポイントを使いますぞ。
「難しいラインですね」
「化け物みたいに消費するぞ。とはいえ、それに応えられるほど強力な武器ばかりだがな」
「かと言って、ここに落ちている武器だけで強化させる武器を判断するのは怖いんじゃないかな?」
「……ですね。他に良い武器が見つかった時、手持ちの物資で強化出来なかったら目も当てられません」
「ボスっぽい奴が出てくるまでは保留しておくべきか」
「強化用の素材が転がっていないか、宝物庫周りをするのも良いですね」
「ですな!」
どうやら随分と強力な武器ばかり転がっている様ですぞ。
エメラルドオンライン時代、特化ステータスで雑魚武器でもちゃんと強化すれば良いという認識だったのを思い出します。
ここで手に入った武器と比べると、どれくらい差があるのか……未知数ですが、強化を試していると違うのが分かりますな。
「凄い……」
お姉さんが宝物庫の中を見渡しながら呟きます。
「キレー!」
「ですわね」
フィロリアル様も光物を見て大喜びですぞ。
「杖の類はー……あ、鎧が無いね」
「次を探せば良いんですよ」
「そうだね。杖とかはラフタリアちゃんに使って貰えば戦力アップかな?」
「品質の低下で機能不全しているようですよ?」
破壊不可ではありますが、品質の劣化は免れられなかったと言わんばかりに質は落ちていますからなぁ。
現在、お義父さんが研磨でどうにかしようとしていますが、杖は専門外の様ですぞ。
という所で樹が手を上げましたぞ。




