愛の捕食者
座っているドラゴンは何か食べております。
色は赤、造形は完全に西洋のドラゴン。
ライバルの親よりも所々丸く、それでありながら二周りは大きそうな外見……そんな、ドラゴンが玉座に座って待っていましたぞ。
「え? お迎えって……?」
「なおふみ達が迎えに来るのをガエリオン待っていたなの!」
「あの、元康さん? あのドラゴン……ガエリオンというのは一人称ですか? が、仰ってますけど」
「奴は違いますぞ」
「だが、俺達の事を知っているみたいな口調だぞ?」
「違いますぞ。俺達が勧誘しなくちゃいけない奴ではありません。味方面してとんでもない事を仕出かす、俺の敵の一匹ですぞ」
なんでここにいるのですかな?
脂汗が止まりません。
きっとこれは幻覚に違いありませんぞ。
「あの……貴方は元康くんの敵だって話ですが、どうなんですか?」
お義父さんが一歩踏み出しましたが、行ってはいけません。
俺はお義父さんの手を握って守る様に前に出ますぞ。
「元康くん?」
「奴に耳を傾けてはいけませんぞ」
「あらー?」
「む……既にシャチ女がいるなの? ちょっとこっちが時間かけ過ぎたなの、でもガエリオンは諦めないなの」
おそらくライバル(推定)がお姉さんのお姉さんを見て言いました。
そうですぞ! ここにはお姉さんのお姉さんが居たのでしたな。
「何故お前がここにいるのですかな?」
「なのなのなの……槍の勇者はやっぱり単純過ぎるなの」
「確かに」
「否定出来ませんね」
錬と樹が同意しています。
お前等はどっちの味方なのですかな?
するとライバル(推定)が口元を手で隠す様にしてくすくすと笑い始めましたのですぞ。
「ガエリオンがなんで槍の勇者の前で話をしたかわからないなの? もしもループした時、ガエリオンは行動を先読みしてベストな状況で出会えるために教えたなの」
「なん、ですと!?」
「そう、なおふみは身近な所で大きくなった子は恋愛対象にならないなの。分析していればわかるなの。だから仮にループした時、ガエリオンが大人になるまでは顔を合わせない様にする必要があったなの」
「あの、元康くん? 何の話をしてるのか聞いていい?」
お義父さんが俺に尋ねていますが、こればかりは説明する訳にはいきません。
元より、俺は汗が止まりません。
バカな……ライバルがお義父さんに出会うのを未然に防いだはずだというのに、その計画自体が既にライバルに先読みされていたという事ですかな?
「次の質問ですぞ! お前の親と助手は何処へ行ったのですかな」
「ゲフ、ちょっと待つなの。食事中にやって来たからガエリオン、お手入れが必要なの」
そう言いながらライバルは顔を手で何度も拭っている様に見えますな。
何がお手入れですぞ。
お前みたいな野蛮なドラゴンが上品ぶるなど、百年早いですぞ。
「今の台詞と返事から察すると……」
「食べ――」
錬と樹が戦慄しましたぞ。
どうやら親を含めて助手まで手に掛けたのですかな!?
するとライバルは手を横に振りますぞ。
「違うなの。お姉ちゃんとお父さんはガエリオンが平和的にここから退去してもらっただけで山奥の制圧した縄張りにいるなの」
心外だとばかりに頬を膨らませてプンプンと怒っていますが、信じられませんな。
「今頃、のん気に平和な時間を過ごしているなの」
きっと親を含めて助手は奴の胃袋ですぞ。
「それよりもガエリオンの成り上がりをちゃんと尋ねて欲しいなの」
「成り上がり?」
「ふん! 聞きたくもありませんな!」
「とは言いつつ、ガエリオンは今までの経緯をちゃんと話してやるなの。じゃなきゃ槍の勇者を絶望させられないなの」
「聞きたくありませんぞ!」
俺はライバルに向けて槍を向けますぞ。
するとお義父さん達が不思議そうな顔をしました。
何故、みんな奴を敵と認識しないのですかな?
おかしいですぞ!
「元康くん?」
「まずはガエリオンがどうやってこの周回で成り上がったかなの。槍の勇者がガエリオンの宿った卵をポイっと捨てた後の事なの」
「あー……そういえば槍の勇者様がキールくん達を買い取った所の商人さんの所でフィロリアルとは違う卵を購入してました」
ここに来てお姉さんの友人からの裏付けですと!?
とんだ後方からの射撃が来ましたぞ!
お義父さん達が俺を半眼で見ております。
違うのですぞ! これも全てお義父さんの為ですぞ。
あそこでライバルが孵って育てようものならお義父さんは童貞を奪われていたのですぞ!
「それをドサクサに紛れて捨てた……その卵の中の方ですか?」
樹の問いにライバルは頷きましたぞ。
「捨てる事は予定通りだから許してあげるなのー」
「お義父さんから好印象を得るためのポイント稼ぎですな! そうはいきませんぞ!」
「とりあえず元康くん、落ちついてね。話を聞いてからにしようか」
ガシッとお義父さんが俺の肩を掴みますぞ。
振りほどく事は出来なくは無いでしょうが、お義父さんには逆らえませんぞ。
「なのー。小川を流れてどんぶらこっこと流れたガエリオンは卵から出て手頃な食べ物を取りながら成長して行ったなの。機会はすぐに来て急成長、どうしてかわかるなの?」
ライバルが挑発的に俺に視線を送ります。
俺にお前の行動などわかる訳ないですぞ。
というか、わかりたくもないですぞ。
「わかる訳ありませんな! そんなくだらないこと」
「くだらなくはないなの。何せガエリオンのLvを急上昇させたのは……槍の勇者、お前なの」
「なん、ですと!?」
ライバルはククク……と笑い始めました。
「やっぱり気付いてなかったなの。槍の勇者……槍の勇者はフィロリアル達を育てる時に自身に入る経験値が減っている事に気付かなかったなの」
「どういう事ですかな!?」
ぐぬぬ……きっと果てしなく不吉な事を言ってますぞ!
「槍の勇者はわからないなの? 槍を経由してループに便乗したガエリオンが、ただそれだけだと思うなの? 最初の世界とやらのお父さんが似た様な事をフィロリアルとなおふみを経由したって話を自分で話して忘れたなの?」
ハッ!?
そういえば前回の事でお義父さん達に最初の世界での出来事を話しましたな。
ライバルの親がいる理由、噂で聞いたフィーロたんの苦痛の出来事。
絶対に注意しなくてはいけないと言う問題ですぞ。
確か……ライバルの親はお義父さんの盾とフィーロたんの体に寄生し、生きながらえて復活したのですぞ。
その時にフィーロたんから大量の経験値を奪ったと聞きました。
まさかそれに近い事をしていたのですかな?
……そう言えばお義父さんは別口でも経験値が漏れ出して誰かに与えていたとか言っていた様な気がしますぞ。
「そうなの。ガエリオンは槍の勇者が稼いだ経験値の一部をもらってすぐに強くなったなの。後は簡単だったなの。メルロマルク近隣の竜帝と片っ端から勝負して竜帝の欠片をもらって行ったなの、なのなのなの!」
バカな!
俺が稼いだ経験値がライバルに流れていた、ですと!?
「まあ、少し危なかった時期はあったけど、槍の勇者の槍の中にあるカース……ラストドラゴンとなって力を少しだけ借りて余裕で戦えたなの」
チッチッチとライバルが答えますぞ。
うざいですぞ!
「槍の勇者が愛の狩人と自称する通り、ガエリオンは愛の捕食者なの! だから槍の勇者の呪いの槍とはとても体が馴染んだなの。飲みこまれる前に抑えて帰したけど、十分な成果は出たなの。槍の勇者の愛は単純なの……でも……何でも無いなの!」
く……フィーロたんに使用を禁止されているラストエンヴィースピアの力を利用……しただと!?
お義父さんはラースドラゴンというライバルの親に奪われた憤怒の化身と戦ったらしいですぞ。
俺の場合はラストドラゴンとでも言うのですかな……?
「えっと、確か竜帝はドラゴン同士で竜帝の欠片を奪い合って欠片を一つにする為に行動し、集まる毎に強くなるんだっけ?」
「なの!」
「元康からまた聞きで聞いた話から推測すると……そいつは元康に匹敵する強さを持った化け物と言う事か!」
「ふふん。強さならなおふみ達に後れを取る事は無いなの」
「とんでもない化け物が出てきたぞ!」
「僕達で勝てるんですか?」
「いやいや、雰囲気的に戦うとは違う気がするんだけど?」
「戦いは避けられませんぞ!」
そうですぞ!
俺は槍をライバルに向けますぞ。




