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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 槍の勇者のやり直し
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忘れ形見

「外は危険じゃ。ワシが迎えに来るまでここに隠れていて欲しい……フォウルと言ったか、妹を……何に代えても守るのじゃ」

「あ、ああ!」


 ハクコ兄妹のいる部屋の扉を厳重に氷の魔法で施錠して、クズは塔から出て倉庫に向かい……女王から聞いた武器の強化方法を信じられる範囲で実践すると同時に、スキルと魔法を放って城内の三勇教派の兵士共を仕留めて周ったそうですぞ。

 ここでクズは女王と顔合わせをしたそうですな。


「私を排斥しようとした者達の処分、誠に感謝しますよ……英知の賢王」

「ああ、当然の事じゃな……ワシが塔から出ても罰は無いのか?」


 クズの問いに女王は微笑を浮かべて首を横に振りました。


「何を今更。私は常に国の事を考えております。英知の賢王、貴方が何を成さねばならないか、既に御理解していると見てよろしいですか?」

「……そうじゃな。ワシの目が曇っていたのは間違いない。勇者等を理解する気も無い。和解をする気も無い。じゃが……しなくてはいけない事は思い出した。行ってこよう」


 そして、クズは女王にその場を預け、門を開けようとしている兵士を仕留めた後、城門の上に乗って広場で悠々と、革命が成功すると確信を持ってコピー武器を片手に佇む教皇と目で見つめ合った様ですな。


「これはこれは英知の賢王。強さは健在の様ですね」


 物腰柔らかに教皇はクズに声を掛けたそうですぞ。


「先に聞く……幽閉されたワシを解放しようとしたのはお主達か?」

「ええ、なんでも悪しきハクコに世話をされると言う拷問を受けていたと聞きます。心中……お察ししますよ。どうでしたか? 私達の真心は」

「……」


 クズは悟らせないかのように僅かに微笑を浮かべたそうですぞ。


「さあ、私達と共に貴方を幽閉し、国を荒らす偽者の三勇者と盾の悪魔を擁護する悪しき女王を打倒致しましょう。その為の準備は整っているのですから!」

「……そうじゃな。こんなくだらない争いはすぐに鎮めるべきじゃな」


 クズは魔法とスキルの準備をしますぞ。


「マジックプリズムⅩ」


 クズが戦場で敵を射抜く前に放たれる大きな、カッティングされた宝石のような物体を空に投げつけますぞ。

 俺も見た事がありますが、キラキラと、七色に輝く綺麗な宝石のようなモノですな。


「ドライファ・シャインレイⅩ!」


 そしてクズはその宝石に向けて高密度の光の魔法を射出しました。

 広場の上空でプリズムに魔法が命中しました。

 クズの放った魔法はプリズムの中に吸い込まれ……即座に乱反射して広場、果てはメルロマルク城下町に居る、目視内に存在する女王排斥を謳う者全てに飛んでいったそうですぞ。


「な――」


 思いも寄らぬ高威力の攻撃に教皇はコピー武器で応戦しようとしましたが、既に遅く、コピー武器は即座に破壊され、魔法に貫かれて絶命したそうですぞ。

 その直後辺りに俺達が到着したとの事。

 クズの口ぶりからだともう少し俺達は早く来るとでも思っていたのですかな?



「という事があった様です」

「なるほど……」

「俺達の事を許した訳じゃないけど、国の暴走を止める事に協力してくれたと」

「ええ……これも全て勇者様方のお陰です」


 女王はすこぶる機嫌が良い様ですぞ。

 確かに最初の世界以外でクズがまともに戦った事はないですからな。

 もしかすると凄くレアなケースなのかもしれません。


「後の処理はお任せください。邪教を潰す大義名分を得た今、勇者様方のする事を煩わせる事はありませんので」

「それなら良いけど……」

「すぐに、三勇教の排斥運動は鎮圧されるでしょう。英知の賢王、果ては四聖勇者によって今回の出来事が抑えられた事によって」


 こうして三勇教は非合法な研究、身勝手な行動、世界が滅びに向かっているのに無益な戦争へと駆り立てようとしたと言う悪しき行動が明るみになって潰される事になったのですぞ。

 英知の賢王と敵対したという事実だけでも十分に威力があった様ですな。


 しかも各地の波の被害を目の当たりにした国民も理解を示した事がトドメとなりました。

 残党が出ないように女王に既に通達していますぞ。

 上手く立ち回れば三勇教の息の根は潰したも同然ですぞ。


 こんな感じに三勇教の問題は解決し、クズも世界平和のために活動する様になったとかですな。

 ま、翌日の謁見の時に俺達と睨み合いをしながらも勇者としての務めと割り切った台詞を吐いたのが印象的ですな。


「ワシは和解した訳ではないからな! 世界の為、ミレリアの為、更にはルシアの為じゃ!」

「俺達に危害を出さねば何をしても文句はありませんぞ」

「……ふん! ……ルシアの忘れ形見をワシに出会わせた事だけは礼を言おう。だが……勘違いはするな」


 そう言って去っていくクズの背中は不思議と大きく見えたのは、俺の目の錯覚ですな。

 お義父さんを軽く睨んだ後、特に何をする訳でもなく歩いて行きました。


「本当に和解はしない、謝罪もしない。けど、俺達と戦う気も無いって感じな目をしていたね」

「言葉通りだな」

「大丈夫なんですか?」


 心配する樹を女王は微笑を浮かべて答えますぞ。


「イワタニ様が許可して頂けるなら、一度機会を与えたいと考えています」

「そうだね。今まで反応しなかった伝説の武器が力を貸しているのなら、信じてみても良いかと」

「ありがとうございます。あの目つき、歩調、そして杖を持つ姿。杖が英知の賢王の手にある限り……波など恐怖でも何でもないでしょう」


 のろけ?

 のろけですかな?


「女王がクズの勇ましい姿に未だに惚れているのはわかった。何かしようものなら俺達が手を下せば良いだけだろ」

「で、あの王様は何処へ?」

「キタムラ様がお連れした兄妹の下へ行くのですよ。とても大切にしております」

「ハクコの妹に頼めば大抵思い通りに命令を出せると思いますぞ。で、赤豚の方は見に行っているのですかな?」


 きっと、妹の方に目移りしていますぞ。


「ええ、今朝も廃人となっている赤豚の下へやってきて声を掛けていました」


 おや? 俺の読みは外れましたぞ。

 まあ、良いですかな。

 そんなこんなで、その後のメルロマルクや各国の動きに関して言えば、クズはとても上手く立ち回っているようですな。

 最初の世界でもお義父さんが信頼していただけの手腕は持っている様ですぞ。



 なんて感じに三勇教は邪教としてメルロマルクから姿を消す事になったのですぞ。

 その後は……今日も俺達は村の開拓に従事していますぞ。

 勇者四人でやって行けばやれない事も無いですな。


 最近だと村の奴隷達の育成、果てはフィロリアル様の育成を重点的にやっておりますぞ。

 徐々に数を増やして行くフィロリアル様を見ていると心がなごみますな。

 主治医が持ってきた魔物も村で育成する事になりました。割とのびのびと育成できているのではないですかな?


 そういえばわかった事ですが、最初の世界よりも隣町の復興が早いですぞ。

 まあ、最初の世界でお義父さんが開拓をするようになるのは随分と後ですからな。

 いろんな人達が見限る前に、町に戻って来ているんだろうとお義父さんは仰っております。

 婚約者が忙しそうに俺達の村と隣町を行き来しているのが印象的ですな。


 というかサクラちゃんと遊んでいるか、お義父さん達の仕事の補佐をしているか隣町でエクレアの手伝いをしているかの印象しかありませんぞ。

 最初の世界よりも大変そうにしていますな。


「あははーリファナー! ラフタリアー!」


 コウが楽しげにお姉さんと友人達と追いかけっこをしております。

 お姉さんは最近、やっと張りつけた様な笑みをしなくなってきましたな。

 夜泣きもある程度しなくなってきているとの事ですぞ。

 色々とトラウマを抱えていたのですな。

 お義父さん達の甲斐甲斐しい世話によって村の奴隷達は未来へと歩き始めたのですな。

 前回よりも遥かに多い村の奴隷達に俺も達成感がありますぞ。


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