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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 槍の勇者のやり直し
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酒倉

「あらー。勇者ちゃん達おかえりなさい」


 うつらうつらと眠そうにしているお姉さんとお姉さんのお姉さん、そして若干興奮気味のお姉さんの友人が待っていましたぞ。

 キールやその他は既に就寝中ですかな?


「ほら、ラフタリアちゃんにリファナちゃん。勇者ちゃん達が帰って来たから寝ましょうね」

「はーい」

「お帰りなさいなおふみ様。お仕事はどうでした?」

「元康くんががんばってくれたお陰でフォーブレイの悪人は揃って捕まえる事が出来たよ」


 お義父さんの説明に俺は胸を張りますぞ。

 悪人という表現をしたのは、子供でもわかりやすい様に、ですな。


「色々と教えて欲しいです」

「え……うーん。リファナちゃんがもう少し大人になったらで良いかな? その代わりに俺の知るおとぎ話とか話すからさ」


 困った様な顔を一瞬したお義父さんですが、すぐに取り繕う様にお姉さんの友人の話題を逸らしました。


「アレを小さな子に教えるのかと思ったが、やっぱり言わないんだな」

「言えないですよね」

「むしろ連れて行かなくて正解だっただろ」

「サクラちゃん知ってるー?」


 お姉さんの友人はサクラちゃんに向かって首を傾げながら尋ねますぞ。


「えっとねー凄い豚さんがねー」

「サクラちゃん、お願いだから詳細を言わないようにね」

「んー? わかったー」


 サクラちゃんはお姉さんの友人に諭す様に微笑みかけております。

 それから。


「えっとねー七星武器っていう武器をズルして集めて一人占めしてた人をねーモトヤスが指摘したら暴れ出したんだよ。で、みんなで取り押さえたらバーってドラゴンが出て来て――」


 サクラちゃんがお姉さんの友人に説明しております。

 お姉さんの友人はウンウンと何度も頷いておりますぞ。

 この説明ならノンフィクションですが、冒険譚みたいに楽しめるでしょうな。


「後でキールくん達にも教えないとね」

「うん……」

「ほら、そろそろラフタリアちゃんもリファナちゃんも寝ましょうねー」


 お姉さんのお姉さんがそんなお姉さんたちを諭す様に寝る事を勧めますぞ。

 お義父さんも同意の様ですな。

 屋敷の寝室にお姉さんたちを連れていき、寝かしつけに行った様ですぞ。

 俺達も寝る準備をします。

 ま、その前にとばかりにお姉さんのお姉さんが屋敷の酒蔵から酒を持ってきた様ですな。


「さて勇者のみんな、お姉さんとお酒を飲まないかしらー?」

「錬と樹は未成年だよ」


 事前にお姉さんのお姉さんは酒豪でお義父さんクラスで無いと酔いつぶされると教えておきましたので錬も樹も素直に寝る選択を選ぶ様ですぞ。


「あ、ああ。そうだな。先に寝かせてもらおう。クロも興奮してないで寝ろ」

「そうですね。明日も忙しくなります。早めに休ませて貰いましょう。コウさんも早く寝てください。僕の髪は良いですから」

「「はーい!」」


 と言ってクロちゃんとコウは屋敷から出て庭にフィロリアル形態で座り込んで舟を漕ぎ始めましたぞ。


「ユキちゃんも早く寝るのですぞ。夜更かしは美容と健康の大敵、ユキちゃん達の羽毛が汚れるのは嫌ですぞ」

「わかりましたわ。このユキ、美容に気を使って早く眠りますわー」


 そう言ってユキちゃんは颯爽と俺に宛がわれた部屋へと小走りで入って行きましたぞ。


「あらー? 少しくらい良いじゃないのー」

「ここはお義父さんがお姉さんのお姉さんのお相手をしますぞ」

「まあ……別に良いけどさ。あんまり遅くまでは無理だよ? サクラちゃん、念の為にラフタリアちゃんをお願いするね」

「わかったー」


 お義父さんの指示を受けてサクラちゃんはお姉さんが寝ている寝室へと行きますぞ。

 きっと何があっても守ってくれますな。


「あら?」

「ラフタリアちゃんはね。深く眠ると悪夢で叫ぶみたいなんだ。だから誰かが見てあげないと」

「そうなの? じゃあお姉さんが後でお相手するわ」

「お願いできます? 毎晩俺とサクラちゃんとリファナちゃんで世話していたんですけど、サディナさんも手伝ってくれるなら嬉しいです」


 お義父さんは寝室の方へ視線を向けます。


「……他の子も似た様なトラウマがあるんでしょうね。あんまり飲んではいられないか」

「あらー」


 そう言いながらお姉さんのお姉さんはお義父さんへ酒を注いだコップを渡します。

 もちろん、俺にも配られますぞ。

 軽く飲みますが、やはり度がとても強いですな。何杯も飲んでいられる物では無いでしょう。


「とっておきの酒が無いか探してきますぞ」


 お義父さんもお姉さんのお姉さんと長酒をしている余裕は無いでしょう。

 ならばすぐにお姉さんのお姉さんが満足できる物を持っていけば良いでしょう。

 アレですな。

 という訳で俺は屋敷の酒蔵に行き、あの実を取ってきましたぞ。


「ラフタリアちゃんやリファナちゃん、キールちゃんを保護してくれて感謝しきれないわー」

「え、ええ……みんなとても良い子達です。奴隷になる理由なんて無いですよ」

「で、盾の勇者……ナオフミちゃんで良いかしら? は、あの子達に何をしたいのかしらー? お姉さんそこが気になるわ」

「気になるって言っても、昼間言った通りの願いしかないですよ。聞いた限りだとこの国には不穏分子がいるけど、ラフタリアちゃんは村を復興させたい。その不穏分子は俺と共通の敵だし……俺も助けてもらったからその分助けてあげたいと思う」


 お義父さんは酒の入ったコップを見つめながらお姉さんのお姉さんに応えていました。

 お姉さんのお姉さんは静かにお義父さんを見つめています。

 若干笑っている様に見えるのは気の所為では無いでしょうな。

 馬鹿にした様な笑みにも見えますぞ。

 ですが、続く言葉にお姉さんのお姉さんの笑みは変わりました。


「……いや、これは俺の自己満足かな。ただ嫌だから目の前で可哀想な子達を助けたいと動いただけ……今日だって敵の事情は知らずに倒した……」


 だけど、とお義父さんはお姉さんのお姉さんに答えます。


「時々思い出すんですよ。鞭で打たれて悲鳴を上げるラフタリアちゃんと凄く衰弱して死にそうになっていたリファナちゃん……人ってこんなに残酷になれるんだって……だからこそ、あんなに良い子なみんなが、幸せになって欲しいって」


 お義父さんは遠い目をしております。


「サディナさんの気持ちはわかります。この国では無い、何処かへ行った方が安全だって気持ち……だけど、ラフタリアちゃんは村を復興させたいと願っているし、キールくんや他の奴隷も同じ思いを抱いている」

「……そうね。ラフタリアちゃん達は凄く頑固に言い張るわね」

「たぶん、それだけ村での生活が幸せだったんだと思います。波で死んだと言われる領主の方が治める地が、亜人を差別するはずのメルロマルクで、子供達でさえも良い場所だったと。そこをがんばって復興させたいと言うのなら出来るだけ力を貸したいと思ってます」


 若干自嘲するかのようにお義父さんはお姉さんのお姉さんに答えます。


「……俺は召喚される前には平和な国にいました。遊ぶ事が好きだった。けど、あんなにも周りの事を思って張りつめた顔をするラフタリアちゃんを見て……あんな辛い笑顔をしない様にしてあげたい。ただ、そのエゴを叶えるため……ではダメですか?」

「……いいえ。ナオフミちゃんがそうしたいのなら、ラフタリアちゃんもリファナちゃんもキールちゃんも他の子達もみんな喜んでくれると思うわ」


 そこでお姉さんのお姉さんは酒をぐびぐびと飲みました。


「なんだかしんみりしちゃってるわね。もっと陽気に飲みましょうよー。じゃあナオフミちゃん。お姉さんと飲み比べとかしないかしら?」

「あんまり深酒は好きじゃないんですけどー……」


 と言う所で俺はタイミングを見計らい、ルコルの実と水の入った樽を持って行きましたぞ。


「そう言うと思って持ってきましたぞ。お姉さんのお姉さんはこちらですな」


 俺はお姉さんのお姉さんの前に水樽を降ろし、蓋を外してルコルの実を一個落とします。

 で、ルコルの房の方はお義父さんの前に置きました。


「さ、お義父さん。どうぞですぞ」

「え? うん。ありがとう」

「え?」


 樽をかき混ぜていたお姉さんのお姉さんがルコルの房から実を取って頬張るお義父さんを唖然とした表情で見ています。


「うわぁ……凄くフルーティで味わい深いね。この実……癖になりそう」


 と、お義父さんがバクバクとルコルの実を食べ始めました。


「う……」


 と、お姉さんのお姉さんが口元を押さえますぞ。


「ナオフミちゃん、大丈夫なの?」

「何が?」


 お義父さんが首を傾げますぞ。


「説明が遅れましたな。お義父さんはどんだけ酒を飲んでも酔わない体質なのですぞ」

「そんな事を言ってたね」

「あらー?」


 そう言ってお姉さんのお姉さんはお義父さんが頬張るルコルの実を軽く摘まんで舐めますぞ。

 そんな事をしたらさすがのお姉さんのお姉さんも酔ってしまうのではないですかな?


「う……ナオフミちゃん凄いわねー」


 お姉さんのお姉さんの目つきが若干ゆるく、そして熱くなった様な気がします。

 前回のお姉さんのお姉さんの目つきに近づきましたな。


「お姉さんと楽しい事をして行きましょうね」

「いや、そろそろ……行った方が良いと思う」


 お義父さんが立ち上がると寝室から悲鳴が轟き、直ぐに止みましたぞ。

 サクラちゃんが添い寝をしてくれているのですな。


「ラフタリアちゃんが悲鳴をあげちゃったか……」

「そういえばこの前、お姉さんはおねしょしたそうですな」

「黙っていてあげようね」


 ドラウキューア山脈に滞在している時にお姉さんはおねしょをしたそうですぞ。

 お義父さんが困った様子のお姉さんと井戸の前でシーツを洗っていたのを覚えています。

 それに気付いた俺に、みんなには内緒にしてあげてね? と言われていますぞ。


「夜泣きで苦しんでいる子がラフタリアちゃん以外にもいるかもしれない。念の為に見回りをしてから俺は寝るよ。元康くんもゆっくり休んで」

「じゃあお姉さんも手伝うかしらね。えっと、まだショックを引き摺ってる子は――」


 と、お姉さんのお姉さんとお義父さんは話しあって行きました。

 俺はお姉さんのお姉さんとお義父さんが飲んでいたコップと樽を片付けたあと、お義父さんの言いつけ通り、部屋に戻って眠りました。

 ユキちゃんが引っ付いて来たので優しく撫でて上げましたぞ。

 フィーロたんと楽しいデートをする夢を見る事が出来ました。



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