献上
「では勇者様方はフォーブレイの方へ一度謁見を、その間に私と騎士エクレール様が復興の準備を致します。謁見に関しては母上が同行するとの事で一度城にお戻り頂く事になります」
「フォーブレイの王様に会えば良いだけなんだね?」
「はい。フォーブレイ王の前で勇者様方がやり遂げたい事を話せばおわかりになるはず。もちろん、任務は命じられるとは思いますが……」
「前回は割と自由に行動出来ましたな。あまり縛ってくる人物ではないですぞ」
前回の周回ではフォーブレイ王が命じた任務など、波に挑んで欲しいと言う程度でしたな。
後は豚の献上くらいですが、タクトの取り巻きを献上すれば問題はないでしょう。
「ではあの豚王の下に行き……深夜辺りにはフォーブレイの厄介事も終わらせられると思いますぞ。そうしたらここに戻って来るので良いのではないですかな?」
俺は太陽を確認して時間を見ます。
そろそろ起きている時間では無いですかな?
「豚王!? え? フォーブレイの王様だよね?」
「……アレを豚と呼ぶのは……」
おや? 婚約者が視線を外しながら呟きますぞ。
お義父さん達は何故かゴクリと息を飲みますぞ。
ああ、そうそう……タクト、お前は前回のサクラちゃんを怪我させた恨みは覚えていますからな。
絶対に地獄を見せるのは変わりませんぞ。
「そこはかとなく不吉な予感がします。僕達はラフタリアさんやサディナさん達と留守番をしたいのですが……」
「ダメですぞ。錬と樹は豚王の好みらしいですからな」
「留守番だ! 俺達は絶対に行かないぞ!」
「ええ! 行きたくありません!」
チッ! 錬と樹が駄々をこね始めましたぞ。
何がそんなに嫌なのですかな!?
「ですが行かないでいると情勢が徐々に悪くなりますぞ。なーに、錬も樹もはっきりと断れば何も問題がありませんぞ。少なくとも前回の錬と樹は無事でしたな」
「どういう説明?」
お義父さんが呆れた様に髪を掻きながら言いました。
「はあ……異世界に来て個性的な奴等に振りまわされている気がする」
「色々と精神的に疲れてきますね」
「夢の異世界だと思っていたんだが、召喚されてから碌な事がないな」
「……腐った世界ですよね。もっとゲームっぽい世界が良かったとワガママを言いたくなります」
「まあまあ……じゃあラフタリアちゃん達はここで待ってて、明日の朝には村へ下見に行こうね」
「はい」
「あらー」
お姉さんのお姉さんが気楽な様子でお姉さんを後ろから抱き締めて仰いますぞ。
「お姉さんのお姉さん。今晩はお義父さんと仲良く飲み交わすのを勧めますぞ。そうすればきっと俺達を信用する事が出来ますぞ」
「あら? お姉さんは信じてるわよ?」
と、軽い調子でお姉さんのお姉さんはお姉さんを抱きしめて仰いました。
お義父さんが困った様にお姉さんのお姉さんを見ております。
後に聞いた話では何でも完全に信用はしていないとの事ですぞ。
「じゃあすぐに用事を片付けて来るからね」
「あのー」
そこでお姉さんの友人が手を上げました。
「付いて行きたいです」
「そんな重要な用事じゃないですぞ」
「だそうだけど、リファナちゃん」
「それでも……一緒じゃダメですか?」
お姉さんの友人は好奇心が旺盛なご様子ですな。
「え……」
そこでお姉さんが友人の手を握ります。
「うーん。リファナちゃん」
「はい。なんでしょうか? なおふみ様」
「ラフタリアちゃんの事が俺も心配だから、サディナさんと一緒に見ていてくれないかな?」
お姉さんの友人はお姉さんを見つめます。
「そうですね……ですが、なおふみ様も無茶はしないでくださいね」
「わかってるよ。じゃあ任せたよ、リファナちゃん」
「任されました」
お姉さんの友人がお姉さんと手を繋いで手を振りました。
お義父さんも保父の顔で応じますぞ。
「じゃあ改めて出発だね。元康くん、早く行って用事を片付けて行こう!」
「はいですぞ!」
という事で俺達はメルロマルクの女王に会いに行ってサッサとフォーブレイに行きました。
予測通りに豚王は起きている時間に行き、女王の顔で謁見の許可と証明をしました。
後は前回と殆ど変わりなくタクトとその取り巻きを処分しましたな。
ああ、お義父さんと婚約者との因縁が無いのが、違いと言えば違いですかな?
で、タクトの取り巻きを豚王に献上して帰って来ると、もう夜も大分更けていましたな。
「想像したよりも凄いのが出て来たじゃないか!」
「ええ! 何ですかあの化け物は! 完全に古いゲームのラスボスとかですよ!」
「アレが味方と言うのがより一層悲しくなるね」
メルロマルクに戻って来たら錬と樹が俺に抗議し、お義父さんも呆れ気味に答えます。
大体前回と同じ反応ですぞ。
「それでは勇者の皆さま、この度のフォーブレイ来訪と意志表明、誠にありがとうございました」
「ううん、こっちこそ謁見の斡旋、ありがとうございました」
「後は定期的にフォーブレイの方へ出かけては各地の波に挑んで行けば良い訳だよね?」
「そうなりますな」
「元康くんからポータルをもらって、それぞれ自由に移動できるようにしないとね」
「ああ……しかし、タクトという奴はLv340くらいある癖に弱かったな」
「元康さんだけが規格外という訳では無いそうですけどね。元康さんの話を聞いていなかったらホイホイと夜会に招かれていたと思いますよ」
「そうだね……突然元康くんが『お前の企みは全てお見通しですぞ! 七星武器を二つ隠し持っているのは知っていますからな!』とか言いながら剥奪した時は驚いたよ」
タクトには遠慮をする必要は全くありませんからな。
豚王に取り入って後宮で奴を罠に掛けた時、先制攻撃で武器を剥奪してやりました。
話し合いなど無意味ですからな。
自身が追い詰められているのを理解するなり襲いかかって来たのが証拠ですぞ。
挙句、前回は言わなかった。
『俺が世界唯一の史上最強の勇者になるんだぁああああ!』
とか言いながら騒いだのは笑いがこみあげてきましたな。
最強はお義父さんですぞ。
異論は認めません。
「何か色々と外交の弱みも掴んだみたいだし、フォーブレイの内部争いとかで俺達も自由に行動する許可を得られたもんね」
「ホント……元康さんがループしているのは事実なんでしょう」
「ここまで的確に当てたら否定のしようがない。だが……なんで元康なのかとも言いたくなる時は確かにある」
「わからなくもないけど……色々と俺達の助けになっているんだから今は良いんじゃないの?」
「まあ……そうだな」
「ええ、そこは否定しませんよ。僕達が大きなミスをしない様に教えてくれている訳ですしね」
という事でフォーブレイの問題、タクトに関しては解決しましたぞ。
タクトのドラゴンは既に処分致しました。
大きな核石は厳重に管理する様に俺が取り出しましたぞ。
汚らわしいですが、再生などされたら厄介ですからな。
「じゃあ……ラフタリアちゃんが心配だから会いに行こうか」
「わかりましたぞ!」
そんな感じで女王と別れた俺達はお姉さん達が宿泊している領地へと向かいました。
「と言うか眠いんだがな」
「もう少ししたら寝れば良いよ。後少しの辛抱だって」
眠そうにしている錬と樹をお義父さんが励ましました。
ちなみにユキちゃん達は自己主張しませんが同行していますぞ。
タクトのドラゴンを倒した時はフィロリアルのみんな大興奮でしたぞ。
前回は夜も更けていたので先に寝ていてもらいましたからな。
ああ、サクラちゃんはおっとりとした態度でお義父さんを守る様に前に出ていましたな。
クロちゃんは俺がタクトのドラゴンを仕留める時に竜殺し<ドラゴンキラー>と大興奮で叫んでおりました。
ユキちゃんは誇らしいとばかりに俺を褒めたたえ、コウはドラゴンへの敵意に唸っていました。
まあそれも勝利してしまえば素晴らしい思い出ですな。
「しかし、メルロマルクと比べて随分と大きな城だったね」
「城下町の専門店には銃器も取り扱ってますぞ。樹は後々銃器しか使ってませんでしたな」
「事が事だったんで後回しにしましたが、そうなるとコピーしに行くべきなんでしょうね。ポータルは取りましたから後で行きましょう」
「ですな」
なんて感じにフォーブレイでの出来事と今後の方針を話している間にお姉さん達を宿泊させている屋敷に到着しましたぞ。




