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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 槍の勇者のやり直し
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闇聖勇者の冒険記

「ユキちゃん、服を着て!」


 全裸のユキちゃんにお義父さんが急いでマントを外して羽織らせますぞ。

 サクラちゃんの方も薄着を着ております。

 婚約者が似合う服装を見繕ったのでしょうか。

 ずれない様に注意していますぞ。


「まったく……元康くんもアッサリ流したらダメだよ」

「そうですな。ユキちゃんの裸体を何処の馬の骨に見られるかわかった物ではありません。ユキちゃんも気を付けるのですぞ」

「わかりましたわ!」


 などという感じで錬と樹達が戻ってくるのを俺達は待っていました。


「ブブー!」


 キールが元気よく走って来てお姉さん達に声を掛けますぞ。

 やる気は見せていますな。


「キールくんも強くなれた?」

「ブヒ!」


 お姉さんの友人の言葉にキールは頷きます。

 当然ですぞ。

 なんせクロちゃんが一緒にいたのですからな。


「錬、樹、そっちの経過はどうだった?」

「どうと言われてもな……強化方法の実践をするのに苦労したくらいだが……」

「数が多くて困りましたが、実践して行く内に呆れるくらいの攻撃力が出ましてね」

「なんて言うか……縛りプレイをした方が良いんじゃないかと思えてきたくらいだったぞ」


 若干、錬が面白く無さそうな顔をして応じます。

 樹も同様の様ですぞ。


「こう……初盤で最強装備を得てしまったと言いますか。不正なツールで倍率を上げたプレイをしているみたいでしたね」

「活性化の影響もあってLvの上がりも早いからな、腕前もクソも無い」

「矢を放ったら魔物が消し飛んでしまった時は、やり過ぎてる気がしましたよ」

「正しい強化方法を習得したらこんな物ですぞ」


 ここの魔物はLvの割に経験値が多いですからな。

 12の強化を実践した勇者の前では雑魚も同然、その点で言えばお義父さんが一番、強化を実感出来ない立場に居る様な物ですぞ。


「挙句の果てにコウさんが僕の所へ来てみんなの育成をすると同時に魔物を蹴散らして行くんです」

「こっちはクロが同じ事をして行ったぞ。魔物を貪っていたな」

「ブブブブ! ブヒ!」


 キールが胸を張っておりますぞ。

 錬が若干嫌そうな顔付きでキールの頭に手を置きます。


「そうだな。魔物相手にお前等は少しは戦えていたな。だが、本当はこんな楽じゃないぞ? 訓練をすべきだ」

「ブブー!」

「そうだね。元康くんの話じゃこれだけ強くても苦戦する相手が出てくる訳だし」

「なんて言いますか、一つの強化方法しかしていなかったらどれだけ無謀な事なのかと、それを盲目的に信じていたという僕が愚かにしか見えなくなります」

「ブブブ!」

「へー……錬は後半、みんなに合わせて加減してたんだ?」

「十分な強さは得られたと思ってな。攻撃力に物を言わせたのではなく弱い武器で接戦をしてみたんだ」

「僕もやりましたよ。まあ試験的な感じですけどね。強い武器で雑魚を倒すのも嫌いじゃないですから」

「ゲーマーにいるね。気持ちはわかるよ」


 なんて話をしているとコウとクロちゃんも光を放って天使の姿になりました。

 やはりタイミングを合わせようとしていた様ですぞ。

 事前に準備していた婚約者がマントを羽織らせました。


「ねえねえ! 魔物を倒しにいかないのー? コウ楽しかったー」


 コウは樹に絡むように近づいて意見しますぞ。


「ユキさんとサクラさんだと言われてにわかに信じがたいと思いましたが目の前で変身した挙句、喋ると信じるしかありませんね」


 樹が脱力した様に呟きます。


「ねえねえねえ、カワスミはなんで魔物相手に全然力を込めないのー?」


 おや、この問答は聞き覚えがありますぞ。


「込めても結果に差が出ないからですよ。毎回全力を出す必要もないですからね」

「じゃあなんでコウに戦わせない様に指示してたの? なんでなんで――」


 と、見覚えのある詰問タイムへと発展して行きます。


「コ、コウ? その辺で止めて上げてね」


 お義父さんが注意すると首を傾げていますぞ。


「えー……?」


 ですが辞める気配がありません。

 樹はお義父さんか俺に任せたいとばかりにずっと見てきますぞ。


「そういえば樹は手加減して誰かがピンチになるのを待つという悪癖を最初の世界でフィーロたんに指摘された事がありましたな」

「ここで僕に追い打ちをしないでください。その最初の世界の僕は良く知りませんが、今は戦闘を実感したいからです」

「とはいえ樹、気を付けるのですぞ」

「くっ……わかりました」

「なんでなんでー?」


 という所でお義父さんがコウに近寄ります。


「なんでコウはそんなに気になるの?」

「えっとーカワスミの事を知りたいから」

「なんでコウは樹の事を知りたいの?」

「えー……っとカワスミと仲良くなりたいからー」

「なんで仲良くなりたいの?」

「うー……ダメなのー?」


 コウが困った様に考え始めましたぞ。


「ダメじゃないよ。だけどなんで?」


 おお、お義父さんのなんでカウンターですな!

 これを受けると大抵のフィロリアル様は沈黙してしまいますぞ。


「なんで元康さんが我が事の様に尚文さんを見ているのか理解できません」


 樹の指摘は無視しますぞ。


「あのねコウ。俺がコウにした事はコウが樹にした事なんだ。だから気になるんだろうけど、聞き方も考えようね?」

「うーん。わかったー後ねーカワスミのモジャモジャが凄く気になるー」


 理解した様にコウは頷きましたぞ。

 コウは毎回それですな。

 今回こそ、お義父さんに怒られない様にしますぞー!


「気になるモジャモジャ……」


 お義父さんの視線が樹の下腹部へと移動しようとした瞬間!


「何処を見ようとしているんですか! 髪ですよきっと!」

「いや、外見の割に毛深いのかなって……」


 そこに、今度はお姉さんとお姉さんの友人が近寄ります。


「貴方がコウちゃん?」

「うん!」

「私はリファナで、こっちはラフタリアちゃん。わかる?」

「うん! 大きくなる前に撫でてくれたから覚えてるー! また撫でてー」

「良いよ。あ、だけど今、姿を変えるともらった布が破けちゃうから後でね」

「はーい!」


 おや? コウはお姉さん達と仲が良いのですかな?

 てっきり樹にしか興味が無いと思っていました。


「コウはナオフミ様達の方へ何度も行きたがったのですわ。サクラがいるから我慢してと話し合いました」

「なるほどですぞ」


 後はクロちゃんですな。

 パッと見は女の子に見える髪型をしたがったのがクロちゃんです。

 髪の色も黒く……なんと言いますかクールな印象を受けますぞ。

 錬と一緒だと何故か映えますな。


「れんー」

「なんだ?」


 錬がクロちゃんに尋ねられて答えますぞ。


「あのね。クロねーれんの攻撃を見て思ったのー」

「ん? 何か俺の動きに問題があるのか? それなら改善するが」


 錬が他人から言われた問題点を直そうとしています。

 ふむふむ、錬も少しは成長していますな。


「えっとねーカッコいい攻撃名を付けようよー」

「……は?」

「ブブ! ブブブヒ!」


 そこにキールも便乗して何やら言いました。


「じゃあクロのキックはー漆黒の爪牙で、キールくんの突きは咆哮の一突」

「ブヒ! ブブブ!」


 キールが興奮してピョンピョンと跳ねました。

 どういう会話ですかな?


「で、クロの背にれんが乗って一緒に強い攻撃をするの。これからクロとれんの楽しい戦いの戦闘記録……闇聖勇者<ダークブレイブ>冒険記<クロニクル>が幕開けするの。で、クロは黒い稲妻<ブラックサンダー>って異名を得て――」

「ま、待て待て! 一体何の話をしているんだ!?」

「えー? れんとクロのこれからの冒険記<クロニクル>ー」

「ブブブ! ブブブー!」

「やめろ! カッコよくない! 何が闇聖勇者<ダークブレイブ>だ!」

「じゃあ闇の剣士<シャドウセイント>が良い?」


 錬が悶絶する様にクロちゃんの口に手を当てます。

 聖……セイントはどこから出てきたのですかな?

 後、闇はシャドウではなく、ダークなのでは?


「なんでそんな二つ名を付けたがる!」

「えっとねー。クロが寝てる時に、れんが素振りしながら「闇の剣士とかカッコいいな」って言ってたからー」

「―――!? 聞いてたのか!」


 おお、錬も恥ずかしい台詞を呟いたりしていたのですな。

 いや、クールを気取る奴ですから、そうやって心の中の理想の自分をイメージし続けていたのでしょう。

 前回の周回では鳴りを潜めていましたが、別れてLv上げをしていた時に呟いてしまったと言う所ですな。


「よ! 闇の剣士!」


 お義父さんが便乗して二つ名で錬を呼びます。


「シャドウセイントー」


 お姉さんの友人も合わせていますぞ。


「黙れ!」


 お義父さんとお姉さんの友人が楽しげに錬にじゃれていますぞ。


「尚文、お前な……」

「ごめんごめん。いや、ネタ的に言った方が美味しいと思ってさ。冗談にすれば傷も浅いだろうしね。まあクロちゃんも程々にね。君の好きな事は錬には辛い思い出になりそうだからさ」

「えー? じゃあ、なおには付けて良い? いつとかにも」


 クロちゃんの呼び方は、お義父さんは「なお」で樹は「いつ」ですな。

 俺は「もと」で錬は「れん」ですか……錬だけ名前をちゃんと呼んでもらって少し悔しいですぞ。

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