先読み
「後は武器屋にでも行くと良いんじゃないか? 武器屋の親父が尚文の事を心配してたぞ」
「そうですね。あそこには随分と珍しい武器がありますから、行って損は無いでしょう」
そんな感じで俺達は武器屋に行って親父さんからお義父さんが盾をコピーさせてもらっていましたぞ。
「アンちゃん達も災難だったな。しかし驚いたぜ。女王が俺の店に来るんだからよ」
「十分に売りつけた感じ? 後で儲け分をくれ」
お義父さんが気さくな感じに武器屋の親父さんと話をしておりますぞ。
「売ってねえよ。つーかアンちゃん達も何か買ってけ。サービスくらいしてやるからよ」
「じゃあラフタリアちゃんとリファナちゃんに何か買って行こうか?」
「はい! コホ!」
お姉さんの友人が元気よく手を上げますが直後に咳をしていますぞ。
逆にお姉さんは張りつけた笑みのまま震えています。
「あー……大丈夫かそっちの子は」
「うーん……」
「な、何がですか?」
お姉さんが心外だとばかりに答えますぞ。
ですが声に脅えが入ってますな。
「ちょっとな」
「この国の闇は深いですね」
「……」
婚約者が静かに目を瞑って頷きました。
「予算はどんなもんなんだ? まあ、見た感じ初心者だろうから――」
とまあ、武器屋の親父さんはキールに刃物の使い方を教えた時と同じくお姉さんとその友人に短剣の使い方をレクチャーしていましたぞ。
お姉さんとその友人はお義父さんに武器と防具を購入してもらって若干興奮気味に見えますな。
とはいってもお姉さんの方は落ちつきなく瞳孔が開いているように見えますがな。
「ラフタリアちゃん」
「は、はい!?」
「料理をする時とかに使うとかでも良いからね?」
「はい。リファナちゃんは、大丈夫?」
「うん。ちょっと怖いけど、がんばりたい」
とまあ仲良しに見えますな。
仲が良いのは良い事ですぞ。
「じゃあ大分用事も済んだし、どうしようか?」
「まだフィロリアル様を購入してませんぞ!」
お義父さん達が既に帰宅ムードを匂わせていたので抗議します。
そうです。フィロリアル様を購入せねばなりません。
「ああ、そうだったね」
「買ってなかったか?」
「一つじゃダメなのですぞ」
クロちゃんが希少だから購入したまでですぞ。
「それにループしてからいつも買っているフィロリアル様とは違いますぞ」
魔物商の所にはフィーロたんはおりません。
それにお義父さんを守るフィロリアル様、サクラちゃんと会わせなければいけませんからな。
今回はお姉さん達も守ってくれると思いますぞ。
「じゃあ次は元康くんの仲間であるフィロリアルの購入かな? 行こうか」
「はいですぞ!」
俺はお義父さん達を連れてポータルでフィロリアル生産者の所へと移動しました。
「わぁ……大きなフィロリアル牧場……確かここは……とても有名な所です」
おお、婚約者もここが有名なのは知っているのですな。
後は普段通り、ユキちゃん、コウ、サクラちゃんの卵を購入いたしました。
「お義父さん、こっちがサクラちゃんの卵……お義父さんの護衛をしてくれるフィロリアル様ですぞ」
「じゃあ今日はある程度予定通りになるのかな?」
「ポータルのクールタイムが終わったらゼルトブルでお姉さんのお姉さんを探しますぞ」
「わかったよ。ただ、あまり夜遅くまでは飲んでいられないかな」
「目立たない様にしないといけませんしね」
「だな。早く強くなって自由に行動したいもんだ」
婚約者が牧場の柵に寄りかかってフィロリアル様に手を振ってますぞ。
「あの……もう少しフィロリアルを見ていて良いでしょうか?」
「クールタイムがあるらしいから良いと思うよ。あ、触れ合いコーナーみたいな所があるね。覗いて行こうか。ラフタリアちゃんやリファナちゃんも行こう」
「はい」
「牧場かー村にもあったね」
「うん!」
お義父さん達は思い思いにフィロリアル牧場の近くで寛いでいました。
そんなこんなで雑談しながらクールタイムが過ぎて出発の時間になりましたぞ。
「ではポータルスピアですぞ!」
転移する直前。
ポーンとポケットに隠していた卵を後ろ手に持って流れる小川に投げ捨てました。
ふ……大方ライバルが俺の槍を通じて卵に憑依したのでしょうがそうはいきませんぞ。
お前にお義父さんの童貞など渡す訳にはいきません。
ですが槍に寄生している手前、下手に殺しても別の卵に憑依とかしそうですからな。
ならば卵に憑依した後、その卵を無造作に捨てることでお前は憑依した後に俺達との接点を失うのですぞ。
後は出来る限り会わない事を祈るしかないですかな?
ハハハですぞ!
と、内心笑った直後。
『想定通りなの! なのなのなの!』
と謎の声が俺の脳裏を通り過ぎました。
な、なんですかな?
この不吉な予感は!?
とは思いましたが俺の気の所為だと言う事でそのまま俺達はゼルトブルへと向かったのですぞ。
ゼルトブルへ移動した俺達、お義父さんにサクラちゃんが生まれる卵の登録を教えてから酒場の方へ移動しました。
「それでサディナさんってどんな人なのかな? 元康くんの話だととても強くて面倒見が良いみたいだけど」
「サディナお姉さんですか? 優しくてとっても強い人だよね。ラフタリアちゃん」
「うん。お酒が大好き」
「そうなんだ。会えると良いね」
お義父さんの言葉にお姉さんとその友人は頷きました。
そうですな。
きっとお姉さんならすぐに会えますぞ。
「外見はどんな感じかな?」
「えっと……水生獣人です。確かルカ種だっけ?」
「よくわからない……」
「お姉さんのお姉さんの外見ですかな?」
「うん。元康くんは知ってるんでしょ? どんな人?」
「亜人形態はお義父さんと同じくらいで、スタイルは良い方だと思いますぞ。獣人形態はシャチですな」
という所でお姉さんとその友人が首を傾げました。
「サディナお姉さんって亜人の姿あったっけ?」
「んー……? 無いと思うけど」
「ってラフタリアちゃんとリファナちゃんは言ってるけどどうなの?」
おや?
お姉さんとその友人は知らないのですかな?
「そういえば基本的には獣人姿でいる事が多い方でしたな。知り合い相手では滅多に亜人の姿で居なかったとか……聞いた様な気がしますぞ」
前回の周回では割と亜人の姿で居ましたな。
何か理由があったのかもしれませんが俺は聞いていませんぞ。
「へー……で、この酒場に来るから俺は待って勧誘すればいいんだよね?」
「ですぞ」
「待ってないで探した方が良いんじゃないかとは思うんだけどな……」
「それもそうですな。では俺が探しますかな?」
「勇者権限とか女王様の指示とかで探せないの?」
おお、その手がありましたな。
さすがお義父さんですぞ。
「まあ、活性化イベントに挑む前に仲間を集めるって意味もあってここで待つけどさ。合流出来ると良いけど……」
サクッと強くなる必要がありますからな。
「出発はいつになるの?」
「魔物商からキールやその他の奴隷を預かったらすぐに行くと良いと思いますぞ。じゃなきゃ行く意味が低下しますからな」
俺が明日孵化するユキちゃん達の育成を終えたらお義父さん達のLv上げ等容易く出来ますぞ。
出来れば早く、それでありながら資質自体の上昇も見込める活性化を利用しない手はありません。
「了解。じゃあ俺が酒場のマスターとかに掛けあってサディナさんって人が来たら探してる人が居るってラフタリアちゃん達の名前を言付けておくよ」
なんて言いながらお義父さんは酒場のマスターの方へ気さくに声を掛けに行きました。
物怖じしないのがお義父さんの強みですな。




