メルロマルクの闇
「ここは何処でしょうか?」
「何処かの町……なのかな?」
ポータルで俺達はとある町へ移動をしましたぞ。
辺りは大きな豪邸がありますな。
この町の貴族の屋敷ですぞ。
若干高低差のある見晴らしの良い土地ですな。警備は若干厳重な様で町の出入りする所に壁がありますぞ。
そんな貴族の豪邸……屋敷の近くに俺達はポータルで移動しました。
そうそう、お義父さんは今までのループの全てで実質失った召喚直後に着ていた服を赤豚から取り返しております。
売りに出される前だったそうですぞ。
なんと言いますか、くさりかたびらを含めてやっと全てを取り戻した様な気がしますぞ。
最初の世界では持っていた気がしますがな。
「では隠蔽の魔法とスキルを唱えますぞ。ちゃんと俺に触れているのですぞ」
「ああ」
「わかってますよ」
「うん。ちゃんと元康くんに触れて居れば良いんだね」
みんなが俺に触れているのを確認してから俺は隠蔽スキルと魔法を同時に使って姿を隠しました。
「では忍び込みますぞ。ちゃんと付いてくるのですぞ」
俺達は跳躍して塀を超えますぞ。
俺のステータスの前ではこの程度造作も無いですな。
「うわー忍者みたい」
「お義父さんもいずれ出来ますぞ」
「Lvをあげるとそんな事が出来るんだ? 楽しみにしてるよ」
まあお義父さんがハイド系のスキルや魔法を使っている所は見た事が無いですがな。
そもそも盾役であるお義父さんは、どちらかと言えば注意を引くスキルの方を重視していました。
「シ!」
そこで見張り臭い兵士が近づいてきますぞ。
他に警備の飼い魔物も居る様ですな。
面倒ですな……。
ですが俺が唱えた魔法もスキルも高度な補正を掛けていますからな。
見つける事は出来ないでしょうな。
もちろん、女王と婚約者が同行していますぞ。
「ここに捕えられてるの? 権力者のトップがいるなら忍び込まなくて良いんじゃない?」
お義父さんの言葉に女王が首を振りますぞ。
「正面からの査察では言い逃れをする可能性が高いでしょう。保護をしていると。最悪の場合、処分される可能性も高いでしょうね」
「確かに……」
お義父さんに頼まれたのはお姉さんの救出ですぞ。
俺は女王にお義父さんの仲間として活躍してくれたお姉さんがメルロマルクの貴族の奴隷として虐待されていると言う事実を説明しました。
そしてメルロマルクのシルトヴェルトとの友好で築かれた地出身の奴隷達の保護をお願いしたのですぞ。
今なら日が浅いですからきっと前回よりも遥かに多く助けられるでしょうな。
お義父さんは未来の右腕にしていたお姉さんを助けに行くのは鉄板でしょうが良い機会なので錬と樹も連れてきたわけですな。
女王と婚約者は水戸黄門でいう所のご老公と印籠のポジションですかな?
まあ、この国の貴族は都合が悪いとクズの様に女王の偽者と言う可能性が高いので、女王に歯向かったら俺が消し飛ばしてやる算段ですがな。
今回は許可をちゃんと得てますぞ。
今までの周回でお姉さんを苦しめた罰ですぞ。
もちろん、前回の周回でこの屋敷に捕えられていたのは判明していますぞ。
間取りに関しても覚えるようにしています。
「どうやって入るんですか? 窓からにしても扉からにしても騒ぎになりそうですよ?」
「問題ないですぞ。この屋敷には中庭があって、壁を乗り越えて屋根伝いに中庭から内部に入る手はずですぞ」
「身体能力の所為で壁が機能していない……」
お義父さんが若干呆れ気味に言いますぞ。
「音を立てない様に窓を切って入るとかで良いんじゃないか?」
「警報装置とかあるかもしれないからじゃないですか?」
「どちらにしても元康くんの身体能力の前では無意味なのかもしれないね」
まあ、正面から乗り込んでお姉さんを救出する事も出来ますが、それでは人質にされるかもしれないとお義父さんは注意していた為にやむなくこう言う手を使う事になったのですぞ。
ま、人質にしてもお姉さんに攻撃が入るよりも素早く動いて仕留められるとは思いますがな。
なんて言いながら俺は壁を足場にして勢い良くみんなを連れて屋根に跳躍しました。
それからスタッと中庭に着地しましたぞ。
何か変わったオブジェがありますな。偉人か何かの墓ですかな?
「ここまでくれば警備もある程度おざなりでしょうな。行きますぞ」
中庭を抜けて、ゆっくりと扉を開いて建物に侵入しました。
幸い、鍵は掛っていませんでしたぞ。
完全に警備がザルですな。
上空からの侵入を考えていないようですな。
竜騎兵とかの対処を考えていないのですかな?
まあ、馬鹿正直に空を飛んでいたら一発でばれますな。
後は奴隷商繋がりと事前調査で教わった通りに地下室への入り口を開けて侵入しましたぞ。
まずはお姉さんの安全の確保を頼まれていますからな。
ついでに証拠を得るのが先決ですな。
これを女王が目の当たりにして、上の貴族を告発するのが一応の筋書きですぞ。
抵抗したら仕留めても良いと前回のお義父さんから許可も得ています。
まあ、メルロマルクの法律でも禁止されている事だそうですからな。
今までの周回で苦しんだ分のツケを払って貰いますぞ。
地下室の階段を音を立てない様に魔法を唱えてから降りていきます。
途中で鍵の掛った扉がありましたがサクッと槍の穂先で切って進みましたぞ。
「う……なんか異臭がするぞ……」
錬が鼻を押さえて呻きます。
死臭がなんとなく漂ってきますな。
これは年季の入った匂いですぞ。
「ここにいるのかな?」
「おそらくは、ですな」
本当にお姉さんがここに捕えられているかどうか確かな証拠はありません。
あくまで魔物商が調べた資料を元に時系列から来ただけですぞ。
「オラァ!」
そこでパァンと強く……音からして鞭の音が響きました。
発見される可能性は極めて低いですが俺達は腰を落としながら音の方へ近寄って行きますぞ。
薄らと松明の明かりが地下室を照らしております。
奥には檻があり、その手前では宙づりにされた……お姉さんですかな?
特徴的な耳と尻尾をしていますぞ。
少しやつれていますな。
が、小太りの貴族に鞭で打たれております。
「くぅ……」
痛みに堪える声をお姉さん……にしては背が低いですな。
ああ、そういえば亜人はLvに合わせて背が伸びるのでしたな。
つまりお義父さんに出会う前のお姉さんはあんな感じだったのでしょうか?
豚か判断が出来ないのが難しいですな。
「もっと泣き喚け!」
「うぐう!」
泣かない様に声を必死に抑えている姿……その我慢する姿は最初の世界で出会ったお姉さんの片鱗をみせている様な気がします。
「オラァ! さっさと泣けって言ってんだコラァ!」
しかしこんな昼間からよくやりますぞ。
上でふんぞり返っているかと思ったら昼間から虐待ですかな?
「お前等亜人は苦しみ、のた打ち回るのが生まれた意味なんだ! この意味が分からない奴等が多すぎる! 生まれた時から悪の分際で我等が国でのうのうとしおって!」
へらへらと笑っているのか声が半笑いですぞ。
いや、怒っているのですかな?
この国の貴族はよくわかりませんぞ。
「この世界は人間の物なのだ! 魔物と同等の分際で人間ぶりおって! 苦しめ! それが我等の救いとなる! ハハハハハ!」
ガバっと樹が思い切り飛び出しそうになるのを俺は引きとめますぞ。
同時に錬と女王が抑えます。
「止めないでください! あんな事が許されるはずがありません!」
「気持ちはわかりますぞ。ですが下手に人質にされたら弱っている……お姉さんの救出に失敗しますぞ」
俺の制止に樹は燃え上がる正義感をどうにか抑えつけた様ですな。
お義父さんはと言うと既にスイッチが入っているようで表情が厳しいですな。
「正義感って訳じゃないけど、まともな神経でやっている様には見えないね。俺もまだ貧弱で助けてもらった立場だけど……国が総出で俺をああいうふうにしたかったって事で良さそうだ」
どう助けるかをお義父さんは知恵を巡らせているようですな。
自分では何もできないとしても助ける手段の模索をするのがお義父さんですぞ。
お義父さんは女王に顔を向けます。
女王と婚約者は申し訳なさそうに目を伏せながら応じております。
「メルティ、よく覚えておきなさい。これが我が国の闇です。オルト……クズが推進しているのはこう言う事なのですよ」
「はい。母上……これは間違っていると思います」
女王は亜人差別に関して憂いていた覚えがありますからな。
婚約者にマジマジと見せつけたいのですな。




