表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 槍の勇者のやり直し
755/1285

恋しさの限界

「おお……」


 視線を前に向けるとローブを着た男達がこちらに向って唖然としていた。

 もうこの光景は何度目ですかな?

 ここでは脊髄反射的に錬と樹を仕留めたくなる様な衝動に駆られますが我慢ですぞ。


 まず状況の整理ですな。

 前回のループの原因はなんですかな?

 思い当たる原因が特に浮かんできませんが、きっと理由があるのでしょう。

 いや、なんとなくですが心当たりがありますぞ。


 最初の世界で……俺が死んだ時間、なのかもしれません。

 つまりどれだけループを重ねようとも俺が死んだ時間を超える事が出来ないと思って間違いないでしょう。

 限られた時間の中でどれだけの事が出来るのかを考えなければいけませんな。

 俺はフィーロたんへの愛を貫く勇者であり狩人ですぞ。

 時間が定められているからといって歩む事を辞める気はありません。


 この時間の中で俺はフィーロたんと再会して愛を貫くのみですぞ。

 世界を平和にする事が使命ではありますが、限られた時の中で平和にして見せれば良いだけですな。

 ま、気にしてもしょうがありませんな。


 前回のループの世界は続いているかもしれません。

 ライバルは否定していますが、俺は諦めません。

 もっと前向きに、俺が居なくてもお義父さん達は俺の後を継いで世界を守るために戦って下さっていると思うしか出来る事はありませんな。


 とりあえずやらねばならない事を整理しますぞ。

 まずは錬と樹の信頼を得る。

 これが成功例であるのは間違いないですぞ。変える必要性はありませんな。

 その後は前回のループで学んだ事を参考にお義父さん達が整理してくれた手順で事に挑むとしましょう。

 何、失敗しても諦めずに進めば未来は切り開かれますぞ。


 それにしても……フィーロたんは一体どこに居るのですぞ?

 前回のループで育てたフィロリアル様は500体は越えたと思いますぞ!


 フィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんお義父さんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたん


 貴方は一体どれだけの奇跡で構築された方なのですかな?

 俺の恋しさも限界に近いですぞーーーーーー!


「おーい」


 何度か小突かれる感触で我に返りますぞ。


「フィーロたん!」

「は!?」


 目の前にはお義父さんが唖然とした表情で俺を見ております。

 錬も樹も怪訝な視線を向けておりますぞ。

 ああ、思わずお義父さんに飛びつきたくなってきましたぞ。

 いい加減、フィーロたんの匂いを嗅げないと狂ってしまいそうです。


「失礼、ぼんやりとしていて驚いたのですぞ」

「この状況でぼんやりしてるとか……わからなくもないが、召喚時のショック?」


 お義父さんが今までよりも軽いと言うか優しさがあまり感じられない口調で小首を傾げて聞いてきました。

 思えば最初の頃のお義父さんはこんな感じでしたな。

 お義父さんは人に優しくされればその分やさしくなれる方なのですぞ。


 ああ、蔑む様な視線で俺を元康と名指しで呼ぶ、最初の世界のお義父さんが若干懐かしく思いますな。

 今回のループではそう呼ぶようにお願いしてみますかな?

 どちらにしても今は演技をするべきですな。


「俺の名前は北村元康ですぞ。年齢は21歳、大学生なのですぞ」

「ですぞって……」

「舞い上がってんじゃないか?」


 錬は相変わらずですな。

 クールを気取って残念な未来を歩みそうですぞ。

 とりあえず、ある程度は前回のループを参考にする様にお義父さん達には注意されています。

 ここで騒ぐと錬は俺への疑いを深めるからあまり目立つなと錬自身に注意されています。

 間違っても召喚直後に、コンプレックスのある相手がいるとか突きつけてはいけないと言っておりましたぞ。


「そういう部分があるのは否定出来ませんな」

「その割にはぼんやりとか、おかしな人ですね」


 柔和な笑みを浮かべる樹ですが、この時は自分の幸運に酔っていたそうですぞ。

 出来る限り目立たず強くなる事を頭に浮かべていたとかなんとか。

 もちろん、召喚直後は見知ったゲームか懐疑的だったそうですがな。


「ふむ……レンにモトヤスにイツキか」

「王様、俺を忘れてる」

「おおすまんな。ナオフミ殿」


 前回と前々回のお義父さんの言葉通りに俺は行動する事を心がけましょう。

 やがて案内された部屋で各々武器に関して調べているお義父さん達が、ニヤニヤ笑いをしております。


 そういえば今回、お義父さん達の言った作戦が上手く行けば、ある程度は自由に行動できるとおっしゃっていましたな。

 ただ、女王の話ではメルロマルクに滞在するのはある程度強さを得てからの方が望ましいそうですぞ。

 その為、三勇教の刺客を追い払える間に滞在可能な場所が望ましいとか何とか。


 現在の俺は大抵の国のポータルを取得しております。

 行こうと思えばフォーブレイに初日から行く事が出来ますぞ。

 ここでお義父さん達にパーティー編成に関して質問し、俺がリーダーになってお義父さん達を全員、フォーブレイに連れていく事など造作も無く出来るでしょうな。


 ですが、タクトとその一派がおりますぞ。

 そんな中にLv1のお義父さん達を連れていくのは少々危険ですし、連携の意味も兼ねて避けろと注意されています。


 さて、その夜の事ですが、前回のループとほぼ同じ問答を致しましたぞ。

 お義父さんが最弱では無いと言う知識を錬と樹に疑問として提示させました。

 そして食事の時間の時ですぞ。

 お義父さんが異世界の料理は変わっているなと言う顔で食べていたのでさりげなく声を掛けます。


「おと――尚文はここの料理、どう思いますかな?」

「え? まあ、変わった味をしてるな」


 お義父さんの感想に樹も同意した様に頷きます。


「そうですね。なんか想像と違って驚きますね」

「ゲームだと見た目だけで能力アップ程度だと認識していたが、実際はこんななのか」


 錬が食べつつ、感想を述べます。

 ……お義父さんが料理の話題に食い付きません。

 そうでしたな。お義父さんは料理が上手な自覚が無い方でした。

 前回のループが今まで一番長かった影響か、まだ認識のズレを感じますな。


「どうやったらこんな味付けになるか気になりますな」

「元康は気になるの?」

「ですな。おと――尚文は分かりますかな?」

「んー……未知の食材だからよくわからないかな。見た感じオムレツみたいだけど味がオレンジみたいだし」

「ああ、そういやそうですね。このオムレツみたいな料理は何なんでしょう?」

「シンプルっぽいから卵自体がオレンジ味なのかもしれない。ただ……珍味なだけで美味いかと言うと別だな」


 もぐもぐとお義父さんは分析しながら説明しますぞ。


「で、こっちの料理はベースがカレー……なのかな? ただ、複数の香辛料の味じゃなくて、何か野菜類を煮て、香草と油で味付けした物だから……カレーとは違って辛い訳じゃないのにスパイシーっていう不思議な食感だね。逆にこの鶏肉っぽい肉はなんだろう?」


 お義父さんがフォークとナイフで盛られた……肉を向けますぞ。

 こ、これは……。


「んー……臭みはあるかな? 隠し方が上手いんだと思う。ただ……鶏とも違うし、かと言って七面鳥でも無さそう。ダチョウの肉にしては食感が異なるし、なんだろう?」

「……フィロリアル様ですぞ」


 そうでした。

 この日だけは俺は知らずにフィロリアル様の肉を食べたのですな。

 最初の世界だけですが。

 それ以降のループでは俺は絶対に手を付けていません。


「フィロリアル? この世界の魔物かな?」

「じゃないか? 騎乗用やペットとかに鳥型の魔物がいる。元康のゲームだとそういう名前なんだろう」

「なるほど、しかしよくわかりましたね」


 ギク……ですぞ。

 ここは上手く誤魔化さないと怪しまれますな。


「そうじゃないかと思ったのですぞ」

「なるほど、しかしこれがですか」


 樹と錬がパクパクとフィロリアル様の肉を食べております。

 その度に殺意が湧いてきますが、今は我慢ですぞ。


「ですが尚文さん、妙に詳しいですね。ダチョウの肉なんて食べた事があるんですか?」

「大学の知り合いが変わった食材と言って持ってきてね。俺が調理したんだよ。肉がすぐに硬くなるから気を付けろってネットに書かれていたし、素材に癖があったかな」

「なるほど」


 やがてドンと若干大きなトカゲの丸焼きが運ばれてきます。

 何度もループしていますが、この時ばかりは錬も樹もどん引きでしたな。


「ワニやオオトカゲとかじゃなさそうだ。ドラゴンとか?」


 と言いつつ臆せずお義父さんはその肉を食べたのが印象的ですぞ。

 俺も最初はどん引きしましたな。

 ワニやオオトカゲを食べた事があるのか? と。


「な、尚文?」

「ん? どうした?」

「い、いや……」


 錬も樹も呆気に取られたまま順応能力の高いお義父さんを見ていました。

 食事を終え、俺達は部屋に戻って就寝する事になったのですぞ。

 もちろん、寝る前に俺はフィロリアル様の所へ遊びに行きました。

 じゃなきゃ寝つけませんしな。


 いい加減フィーロたんの匂いを嗅ぎたいですなぁ。

 お義父さんの服とサクラちゃん辺りの匂いを混ぜて嗅げば良いかもしれません。

 寝ているお義父さんから服を盗むか悩みましたな。



 翌朝、フィロリアル舎で起床した俺はお義父さん達と合流しました。


「なんか元康が臭くないか?」


 毎度お義父さんがこの時は言いますな。

 何度も言いますが、俺は臭くありません。

 これは高貴なフィロリアル様の香りですぞ。


「夜中、夜風に当たりたくて城の庭を歩いていたら馬小屋にフィロリアル様がいたので、撫でていたら、いつのまにか寝ていたのですぞ」

「ああ、昨日食べたあの鳥肉の魔物ね」

「元康さんって動物好きなんじゃないですか? フィロリアルの肉を食べませんでしたし」

「そうなのかも……いや、あのトカゲ肉はパクパク食っていたぞ」

「どっちにしても興奮が冷めなかったって感じか」


 お義父さんが若干呆れながら俺を分析したようですぞ。

 錬も俺を小馬鹿にした目を向けています。

 若干眠そうな目つきをしている癖に何を言っているのでしょうな?

 熟睡したのは俺とお義父さんだけですぞ。

 などと待っていると城の連中に呼ばれて四人で玉座の間へと行く事になりましたぞ。


「勇者様のご来場」


 もう何度目ですかな? いい加減聞きあきた気がしますな。

 まあ、特に問題なく偽りのメンバーが集まっているのでしょう。

 そう言えば女王を含めてお義父さん達は、コイツ等に関しては説明をしていませんでしたな。

 状況次第で皆殺しにすれば良いのですな?

 まあ、出来る限り被害を出すなとも言われてますがな。指定はされていませんぞ。

 ま、生かしておいても碌な結果にならないからですな。


「前日の件で勇者の同行者として共に進もうという者を募った。どうやら皆の者も、同行したい勇者がいるようじゃ」


 ふ……鼻で笑いますぞ。

 クズの命令ですぐに裏切る様な連中が仲間ですかな?

 こんな奴らを仲間と呼ぶなど反吐が出ますぞ。


「さあ、未来の英雄達よ。仕えたい勇者と共に旅立つのだ」


 やはりお義父さん達が驚いていますぞ。

 どう考えてもおかしいですからな。

 しかし未来の英雄ですかな? 誰も生存出来ないのに英雄もクソも無いですぞ。

 仕える? 最後まで仕えた奴が居ない訳ですしその心中は碌な奴がいない様ですぞ。


 錬、5人

 俺、4人

 樹、3人

 お義父さん、0人


 本当、まったく違いが無くて安心とも言えるのですかな?

 数が違っても結果は変わらないですぞ。

 しかし何度見ても反吐が出ますな。

 すっかり忘れていましたが燻製もおりますぞ。


 前回はクズと一緒に皆殺しにしたし、前々回は暗殺したのでしたな。

 今回も下手な事を仕出かしたら仕留めないと樹の命が危険かもしれません。

 注意しますぞ。


「ちょっと王様!」


 お義父さんの異議が飛び出しました。

 大丈夫ですぞお義父さん。俺が貴方にピッタリの仲間をフォーユーしますぞ。

 何せ前回のお義父さんに注意されていますからな。

 最初の世界でお義父さんの相棒をしていたお姉さんと出会わせなければいけません。


 更に言えばお姉さんのお姉さんとも早く会わせるべきでしょう。

 何せ元からかなり強い方ですからな。

 お義父さんとも仲睦まじい様ですから、きっと快くお義父さんと友好を築いて下さるでしょう。

 不自然なくらい、すぐに仲良くなる様ですからな。


「う、うぬ。さすがにワシもこのような事態が起こるとは思いもせんかった」

「人望が――」

「人望がありません、ですかな?」


 大臣に向けて挑発的に俺が言いますぞ。

 俺の喋りの真似をさせませんぞ。

 思い切り睨んでやりましょう。


「盾の勇者に仲間がいないとは、この先の事を考えると不利すぎなのではないのですかな?」


 きっと、この程度は問題ないですぞ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
なんか紛れてるぞww
[気になる点] この周回でテオ(うさぎ男)、シオン(雑種のリザードマン)、ヴォルフ(狼男)が仲間になったらどう変わるだろう?
[一言] フィーロたんのうちひとつが別の文字だぞ! 探してみよう!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ