ハーレム強要
「アマキ殿は一体何を怒っているのだ?」
エクレアがキョトンとした様子で首を傾げていますぞ。
「あのねエクレールちゃん、レンちゃんは――」
「黙れ説明するな。わかったから尚文と乳繰り合ってろ!」
早口でお姉さんのお姉さんに錬は言い放ちました。
そんなにもこの話題が嫌ですかな?
「くそ! 最初の世界とやらの尚文に是非とも会いたくなった!」
「どういう捨てセリフ?」
「ふむ……よくわからないが私は怒って良いのだな?」
「まあまあ」
お義父さんがエクレアを宥めますぞ。
「とりあえずわかりましたよ。尚文さんに春が来た訳ですね。おめでとうございます」
気の無い様子で樹と錬が拍手をしました。
俺も合わせて拍手しますぞ。
このまま行けばお義父さんはお姉さんのお姉さんと結婚という事ですな。
最初の世界でフィーロたんと不純な関係を築きそうだった様に見えたので、お姉さんのお姉さんと結ばれた所を見るに大きく違うのだと知って安心しました。
「うん……ありがとう。祝ってもらえてうれしいよ」
お義父さんはお姉さんのお姉さんと手を繋ぎ合って微笑みました。
「絶対にサディナさんを幸せにして見せるからね。ラフタリアちゃんって子も絶対に見つけよう。みんなの親代わりになってさ」
「素敵ね」
お姉さんのお姉さんはウットリしている様に答えますぞ。
で、何処から持ってきたのかワインを飲み始めました。
「でもナオフミちゃん、私だけを愛しちゃダメよー?」
「え?」
お義父さんを含めて錬、樹、そしてエクレアがお姉さんのお姉さんの言葉に首を傾げました。
「サディナ殿は何を言っているのだ?」
最初に口を開いたのはエクレアでしたな。
しかし錬も樹も状況がわからないのか、黙ったままですぞ。
「い、いや、俺はサディナさん一筋で――」
お義父さんが答えるよりも前にお姉さんのお姉さんはお義父さんの頬に手を添えます。
これは最初の世界のお姉さんのお姉さんと変わらない気がしますな。
「ナオフミちゃんは世界を救う盾の勇者なのよー? という事は沢山の人達を幸せに、愛せる人に違いないわ」
「え? え? え?」
お義父さんは困惑した様な表情をしております。
「恋人にハーレムを作る事を望む女性ですか。変わった方ですね」
樹が呆れた様な顔をしていますぞ。
「いやーん。ナオフミちゃんがお姉さんだけしか幸せに出来ないはずないわー。どうやらナオフミちゃんは年下はダメなようだから」
お姉さんのお姉さんはお義父さんの手を握ってそのままパンダの下に歩いて行きます。
そしてパンダの腕を取って立ち上がりますぞ。
「ん? なんだ?」
「さ、ササちゃん。肉欲の宴をしましょう」
「は?」
「え? サディナさん!?」
「お姉さんは知ってるのよ。ササちゃんもナオフミちゃんへ淡い恋心を宿しているのを」
「な、何を言ってんだい? あたいは――」
「さあ! 夜はこれからよ。ナオフミちゃん、ササちゃん、いっぱい楽しみましょうね」
「「え? いや、ちょっと!」」
そんな感じにお姉さんのお姉さんにお義父さんとパンダは連れられて行きました。
俺はどうしたら良いのですかな?
今からでも止めに行きますかな?
お義父さんは困惑していましたが拒んでいる訳でもありませんでした。
お姉さんのお姉さんとエッチな事をしようとしているのですかな?
豚を追っていた時に覚えがある様な無い様な光景ですな。
ですがお姉さんのお姉さんですから悪い結果にはならないと思いますぞ。
「いや……さすがにあんな関係は嫌だ」
錬が言った台詞が印象的でしたな。
「ですね。尚文さんもとんだ相手に惚れましたね」
「あれですな。惚れた弱みですな!」
「……用途を間違ってません?」
「ま、まあ……壊れる前の元康だったら何処までも都合の良い女とか思ったんじゃないか?」
「お姉さんのお姉さんですかな? 好みじゃないですぞ」
豚を追っていた俺を思い出してみたら、確かに関係は持てるなら狙ったかもしれませんな。
ですが、俺ではお姉さんのお姉さんとはきっと付き合い切れないと思いますぞ。
お姉さんのお姉さんは酒があまりにも強すぎますからな。
「お姉さんのお姉さんは好みのタイプは酒に強い方だそうですぞ」
「聞いた事がある。私の父の領地に化け物の様に酒に強い者がいて、その者は未来の旦那は自分よりも酒が強い者だと言っていると。サディナ殿だったのか……」
「じゃあ尚文さんは適任ですね。酒に酔わないそうですから」
「くっつくべくしてくっついたという事じゃないか。尚文は女運が悪いな」
そうですかな?
お姉さんやフィーロたん、その他大勢を見るにそうでもないと思いますが。
「確かにあの亡霊王女に騙されたり、ガエリオンさんに狙われている訳ですからね」
「それもともかく、サディナ殿はイワタニ殿と不思議な程息が合う訳だし、勇者として世界が平和になった後の事を考えるに、サディナ殿は良いと私も思うぞ……少々彼女の性的嗜好は問題があるようだが」
「というか僕達、尚文さんを平然と見捨てた様な気がしますが、良いのでしょうかね?」
「本気で嫌なら尚文も逃げれただろ。あのパンダ……ラーサズサだって」
錬の分析に樹はしばし考えた後に頷きますぞ。
「……そうですね。尚文さんは勇者の中でも一番堅い方ですから、本気で嫌がればサディナさんが引っ張るなんて出来ないでしょう」
「で、この後あいつ等はヤルのか?」
「アマキ殿」
エクレアが注意しますぞ。
「勇者、色を好むとも言う。イワタニ殿がやっと好みの異性に出会えた事を祝福するしか、私には出来ない」
「その理屈だと俺達も色を好む事になるのだが……」
「ですね……異世界に召喚されてから色々とショッキングな事があって、そういう話題はてんでありませんでしたからね」
「ブェ!?」
「気にしないで良いですよ。リーシアさん、僕にその気は無いですから」
「……そうだな。挙句豚王に狙われたり、欲望の滾った目で言い寄られたりして女性不信になっていたのは尚文も変わらないな」
「特に尚文さんは亡霊王女に騙されていた訳ですしね」
「アマキ殿も見つかると良いな。陰謀に負けず、イワタニ殿やカワスミ殿、キタムラ殿の様に意中の相手を見つけられる事を祈っている」
「……」
最初の世界の錬が泣いている様な気がするのは俺の幻覚ですな。
そこで樹がポンと納得した様に手を叩きましたぞ。
「なるほど、ガエリオンさんが失神したのはこれを察してという事ですか」
「ああ、そういう事か。大方、尚文とサディナがやった匂いか何かを察して……」
「ガエリオンさんは尚文さんに対して熱烈なアピールをしていましたからね。サディナさんに取られたと知ってショックを受けたのでしょう」
「だが、サディナが相手ならガエリオンもチャンスくらいあるだろ」
「ですね。経過を見守って置きましょう」
「ライバルとお義父さんとが恋愛関係ですかな? させませんぞ!」
「あー……元康さん、尚文さんの自由なんですから、邪魔をするとフィーロさんの婚約を認めてもらえませんよ」
く……樹に最悪の可能性を言われてしまいましたぞ。
ですが俺は我慢できませんな。
ライバルがお義父さんと恋愛などしようものなら気づかれずに抹殺しますかな?
考えておきましょう。
「とりあえず、そろそろ解散して明日に備えて寝ましょうか」
「そうだな」
という訳で俺達は湯上りで涼んだ後、その日は各自部屋で就寝したのですぞ。
翌日の朝。
「良い朝ですな」
清々しい目覚めですぞ。
俺は窓から朝日を眺めました。
今日はノースフェラト大森林へと出かける日ですな。
収集したフィロリアル様の卵の中にフィーロたんが出てくる事を祈るばかりですぞ。
「さて、こんな良い朝は少し散歩にでも行きますかな」
「すー……」
ユキちゃんとコウを起こさない様に俺は静かに部屋を出ました。
これが意外と難しいのですぞ。
みんな勘がとても鋭いですからな。
安らかに眠っているフィロリアル様達を起こさない様に動くのは愛の狩人として当たり前の事なのですぞ。
そうして散歩の為に廊下を歩いていると、宿の入り口……過去に俺がお姉さんを怒らせて、お姉さんがお義父さんを待っていた場所で、お義父さんとパンダが真っ白になって座っているのに気づきました。




