助手の帰郷
「うん……出来れば見つかって欲しいけど、それまでにサディナさんが立ち直ってくれると良いんだけどね」
お義父さんの目が何やら今までと違う何かを宿しているように見えたのは俺の気の所為では無いと思いますぞ。
なんとなく、最初の世界のお義父さんを思い出しますぞ。
フォウルの妹が亡くなった頃からこんな目をしている時がありました。
その後のお義父さんは、若干態度が和らいで村の者やお姉さん、フィーロたんと更に信頼を高めた様に見えました。
お義父さんも色々と成長しているのですな。
きっとお義父さんが更なる強さに目覚める兆候なのでしょう。
俺も精進しないといけませんな。
「じゃあそろそろ寝ようか。おやすみ、元康くん」
「おやすみですぞ」
お義父さんは夜泣きしそうな奴隷達を宥める為に廊下に設置させたソファーで休むそうで、俺はフィロリアル様の下へ戻ったのですぞ。
翌日。
「じゃあ行ってくるなの!」
ライバルの背に助手と錬は乗っかって、出発しようとしています。
声は大きいですが、若干ライバルは腰が引けていますぞ。
対照的に助手は静かですな。
「うん、いってらっしゃい。錬、ウィンディアちゃん、ガエリオンちゃん、がんばってね」
「ああ」
「ちゃんと準備を整えたから大丈夫、後は訓練あるのみ」
助手は脳内で色々とシミュレートをしているのか、作戦がある様ですぞ。
その道具の類を錬に発注しておりました。
勇者の武器で作るつもりですかな?
しかも防具や武器、道具もある程度、新調するつもりのようで、城下町で買い足しもするとか。
ライバルは山の近くまでしか送らず、助手と錬が山に入ったら親の方に切り替わって相対する様ですぞ。
助手が諦めるまでの勝負になるのですかな?
ちなみに助手は地味にカルミラ島でもLv上げに拘りましたし、資質向上もしているので、冒険者程度じゃ手も足も出ませんぞ。
そろそろ勇者に選ばれるかもしれません。
と、樹が呟いていたのが記憶に新しいですぞ。
「三日くらいしたら帰るから」
「そ、そんなに掛るのか? 半日もあればあの山にいけると思うが」
「罠や儀式は入念に……念には念を入れてお父さんを倒してみせる」
ふふふふふと邪悪そうなオーラを立ち上らせて助手は答えました。
不吉な笑みですな。
三日分も準備された攻撃を受けるのはライバルですぞ?
「ギャ――な、なの!」
逆にライバルは震えていますぞ。
中の親の方ですかな?
錬も呆れ顔ですぞ。
「じゃあ行ってくる」
「絶対に帰ってくるなのー!」
こうしてライバル達と錬は出かけて行きました。
「さてと、じゃあ今日も隣国の奴隷商人を回って捜索をしよう……かな」
お義父さんの表情が暗くなりましたぞ。
そしてお姉さんのお姉さんの部屋の前に来て食事と薬を飲ませに行きました。
お姉さんのお姉さんの風邪の悪化が酷く、高熱が出てきたとか……。
「ご、ごめんなさいねーゲホゲホ!」
お姉さんのお姉さんはベッドから起き上がってお義父さんに応じようとしましたが、咳で何度もむせていました。
それをお義父さんが止めてから言います。
「大丈夫だから、サディナさんはゆっくりと休んでてよ」
「ゲホ――でも、悪いわ――よ。ゲホッ!」
お義父さんが食事をテーブルに置いてお姉さんのお姉さんを寝かしつけますぞ。
「今はゆっくりと休んで。サディナさんがそんなんじゃ、ラフタリアちゃんが見つかった時にどうするの」
「あらー……これは一本取られちゃったわね。ゲホ!」
お姉さんのお姉さんは普段よりも弱々しい様子でお義父さんに応じてベッドで休みました。
「じゃあ今日は俺と元康くんで探すね。だから休んでて。ちゃんと薬を飲めばすぐに良くなるんだから」
「はいはーい」
と、お義父さんはお姉さんのお姉さんに薬を飲ませました。
武器の効果でお姉さんのお姉さんにはかなりの治療効果が作動したのではないですかな?
咳が収まりましたが、顔色はまだ悪いですぞ。
「じゃあ行ってきます」
「いってらっしゃーい……」
「行ってきますぞー」
という感じで今日もお義父さんと近隣の国にある奴隷商人の巡回をしました。
一緒にフィロリアル様探しも並行していますぞ。
その移動している最中。
お義父さんがポツリと呟きました。
「やっぱり……サディナさん、昨日よりも悪くなってたね」
「そうですな。ですがちゃんと薬を飲ませたので治るのではないですかな?」
「そうなんだけど……薬の効果が悪いなってさ」
「お義父さんは心配性ですな。お姉さんのお姉さんですぞ。今夜はお義父さんが卵酒か何かを飲ませれば元気になるかと思いますぞ。酒が足りずに体の調子が悪い人なのでしょう」
「樹みたいな異能力者的に言えば強靭な強さを持つけど燃料として一日一回酒を飲まないとダメ、みたいな?」
おお、ありえなくないですぞ。
きっとお姉さんのお姉さんはそんな感じの異能力者なのでしょうな。
「ですぞ。俺の知る限り、お姉さんのお姉さんはいつもほろ酔いだった様に見えますからな」
「あはは、サディナさんは最初の世界でもそんな感じだったんだね。良いね……変わらない感じが」
お義父さんの言葉がなんとなく、乾いた感じに俺には聞こえましたぞ。
「ナオフミーなんのお話ー?」
足代わりに乗せてくれているサクラちゃんが首を傾げておりますな。
俺はユキちゃんに乗っておりますぞ。
「サディナさんが元気になって欲しいねって話だよ」
「うん。なんかー……調子でないね」
「そうだね。こう……最近暗く感じるね。どうにか出来ると良いな」
「ですわね。もっと明るい方が良いですわ!」
ユキちゃんも意見を述べますぞ。
そうですな。
「じゃあ今夜はサディナさんに元気になってもらえるように良いお酒を使って卵酒を作って見るよ」
「きっとお姉さんのお姉さんは元気になると思いますぞ!」
お義父さんが俺の言葉を聞いて朗らかに微笑みました。
その日は村の奴隷が一人、見つかりましたぞ。
フィロリアル様の卵も確保出来ましたな。
「ただいまー……!?」
メルロマルクの城に戻るとお姉さんのお姉さんが保護した村の奴隷の世話とばかりに城の庭で鬼ごっこをしておりました。
元気になったのですかな?
「え、えっと……」
「その……」
村の奴隷達も何やら挙動不審ですぞ。
「サディナさん! 今日はゆっくり休んでいてと言ったのに!」
「あらー? 大丈夫よ。ナオフミちゃん達のお陰で元気になったもの」
そう言い切る前にお姉さんのお姉さんの胸辺りが変な痙攣をしておりましたぞ。
咳を我慢している様な気がしますな。
「無理に元気ぶってもダメだよ! ほら、ゆっくり休んで!」
お義父さんは若干詰問するように言い切りました。
「うん。お願い。休んで」
「お願い」
村の奴隷達も同様にお姉さんのお姉さんに頼みこみました。
「あらー? お姉さんだけ除けものかしらー? 寂しいわー」
「そうじゃなくて、まだ風邪を引いてるんだから、サディナさんは元より、この子達にもうつりかねないでしょ」
「えーでもー……」
若干駄々をこねるかのようにお姉さんのお姉さんは体を揺らしていますぞ。
お義父さんは黙ってお姉さんのお姉さんの額に手を当てます。
「ほら……やっぱり熱がまた出てる。早く部屋に戻って」
「お姉さんは風邪なんかに負けないわよー」
「はいはい。じゃあみんな、サディナさんを寝かしつけてくるからね。元康くんも、みんなをお願いするね」
「わかりました!」
「私もやりますわ!」
「サクラもー」
「じゃあお願いするね。さ、サディナさん」
「ブー……サクラちゃん達の真似ー」
「はいはい」
と、言った様子でお姉さんのお姉さんはお義父さんに連れられて部屋へと連れてかれて行きますぞ。




