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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 槍の勇者のやり直し
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回復の兆し

「気持ちはわからなくもないが、樹……落ちつけ」

「落ちついてなんていられませんよ!」

「八つ当たりしたい気持ちはわかるけど、落ちついて! まだ十分に……立ち直ってくれる可能性が無い訳じゃないんだから!」


 お義父さんが制止すると樹はやっと落ちついた様ですな。

 なんですかな?

 そこまでストーカー豚が大事ならどうしてああも適当に扱っているのですかな?

 完全に下っ端扱いですぞ。


 最初の世界だとむしろ樹がストーカー豚に思う通りに利用されている様に見えますぞ。

 カースに浸食されて……今と反対の状況ですな。

 それから助けたのに、ストーカー豚がそんなに重要なのですかな?


「はぁ……希望を捨ててはいけないですよね」


 ストーカー豚に近づいて手を握って樹は呟きますぞ。

 死んだ目をしているストーカー豚はその動きをぼんやりと眺めていますな。


「えっと……ここでは無い何処か別の時間軸で、とても酷い扱いをしていた僕を何処までも信じて貴方は僕の目を覚まさせてくれたそうです。なので今度は僕の番です。僕は貴方に助けられた恩に報えるようにがんばりたい。例え声が届かなかったとしても……どうか立ち直ってください」


 などと樹はストーカー豚に言いました。

 そんなにこやつが大事なのですかな?


「えっとー……この子を何処かへ運ぶのー?」


 コウが首を傾げて聞いております。


「そうですね。しばらくは僕達で介護をしなきゃいけないでしょうね」

「そうなんだー?」


 とまあ気楽な様子のコウが居ますな。

 樹とずっと一緒だったから久しぶりに感じますぞ。


「それじゃあ尚文さん、元康さんへの教育、お願いしますよ」

「わかったよ……とはいえ、なんだろう。俺もそんな相手がいそうで凄く怖いよ」

「いたら仲間ですね」

「うう……手招きしないで……なりたくないけどまたループした時の事を考えて元康くんには十分に注意しないとね」


 という事でその日の晩、お義父さんは俺に何度もストーカー豚を助けるようにと頼みました。

 そんなに何度も言わなくても覚えたので問題ないですぞ。



 翌日からはお姉さんのお姉さんとその配下の者二名、そしてパンダとその配下が仲間として俺達に加わったのですぞ。

 ちなみにお姉さんのお姉さんが連れている配下ですか、最初の世界でお義父さんの村に居た覚えがありますな。


「これからよろしくねーナオフミちゃーん」

「うん、よろしく。ラーサさんもね」

「あいよ。で、これからどうするんだい?」

「色々と仕事はあるけど、一番は波に備えたLv上げかな? サディナさんやラーサさん達のクラスアップをさせて資質を伸ばしたり、色々とやる事はあるから覚悟しててね」

「あらー楽しみね」

「あたいはちょっとなー」

「ちなみに強くなったら七星武器に挑戦、上手く選ばれたら給料もアップするよ」


 そう言うとパンダがやる気を見せるように親指を立てて見せました。

 また金ですか。

 どこぞの怠け豚みたいな反応ですな。

 あっちは金よりも怠ける事の方が優先順位が高かった様ですが。


「まあ、強くしてくれるんだったら悪い話じゃないねぇ。勇者に勧誘されたってんで箔は付くし、良い事尽くめであるのは変わらないか」

「ササちゃん、最初疑ってたのにねー」

「目の前で人が消えたら驚くだろうが! しかも勇者の証として盾をポンポン変えるわ、魔物を盾に入れるわ……」

「信じてもらえてうれしいよ。もちろん同時併用でラーサさんの改造計画は進めていくから安心して!」

「どう安心しろってんだ!」


 わかりましたぞ!

 お義父さんとお姉さんのお姉さんに掛ればパンダも子供みたいな物なのですな。


「「「はぁはぁ……可愛い姐御も良いけど、色っぽいのも頼みますぜ兄貴!」」」

「お前等……死ね! いや、殺す!」


 獣人達もノリノリですな。

 とまあ、どんどんと賑やかになってきましたな。


「ふむ……傭兵か」


 錬とエクレアがパンダを見ております。


「金銭で戦う事を良しとする者達だが……不思議と悪い印象を覚えないな」

「尚文達にからかわれているからじゃないか?」

「そうかもしれんな。上手く連携出来るように私達も努力するとしよう」

「ああ、まあフィロリアル共と大して変わらないだろ。むしろやりやすいかもしれないぞ」

「そうだな。次のノースフェラト大森林で訓練できるから期待するとするか」


 既に色々とやる事が決定していますな。

 そこにストーカー豚の介護に行った樹がやってきましたぞ。


「な、尚文さん!」

「そんなに慌ててどうしたの樹?」

「リーシアさんが……」


 廃人になっていたストーカー豚ですが、翌日には応答出来るくらいには回復したそうですぞ。

 助けてくれたのが樹であるのを理解した様で、感謝の言葉を言われたとか。

 ただ、まだ無表情というか、違和感があるそうですぞ。


「良かったじゃないか」

「ええ……こんなに回復が早いなんて驚きですよ」

「人間、意外とタフだと聞くからな」

「考えてみれば樹に手酷く捨てられたにも関わらず、何処までも貫き通せる強いメンタルの持ち主なんだよね」

「いじめられても耐えきる精神の持ち主だからな。凌辱されても復帰まで早いのか……本気ですごいな」

「う……」


 何やら樹が目を逸らしていますぞ。

 ああ、ストーカー豚が誰かの物になっていた事を気にしているのですな。


 何をそんな小さな事を気にしているのですかな?

 俺は処女では無かった豚と過去にやったおぞましい記憶がありますぞ。

 赤豚もそうですな。

 反吐が出ますぞ。


「樹」

「な、なんですか?」


 俺は親指を立てて力強く言いました。


「童貞はステータスですぞ! そんなにもストーカー豚を大切にしたいと言うのなら処女の代わりに童貞をフォーユーすればもっと治療は早まるのではないですか――」


 言い切る前に眉間と胸、そして股間に激しい痛みが走りました。

 遅れて銃声が鳴り響いた気がしますな。


「うおおおう……」


 痛くて悶絶しました。

 な、何が起こったのですかな!?


「ちっ! まだ死にませんか!」

「い、樹!? 落ちつけ!」


 悶絶しながら薄く目を開けて状況を理解しようとするとお義父さんが俺を守る様に前に立ち、錬が樹を羽交い締めにしております。


「錬さん離してください! そいつを殺せません!」

「やめるんだ樹! そんな事をしても根本的な解決にはならない!」

「なりますよ! これでループです! 最初に戻ってしまいますが僕はそれで満足です!」

「確かにそういう考えはあるかもしれないが危険だ! カワスミ殿! 落ちつけ!」


 どうやら樹は俺が対処するよりも早く、俺の眉間、胸、そして股間に銃を放った様ですぞ。

 ですが痛みに悶絶していてそれどころではありません。

 幸い、怪我はしていませんがとんでもなく痛いのですぞ!

 撃たれて30秒……どうにか立ち上がります。


「リーシアさんがこんな目に遭ったのは誰の所為だと思っているんですか! 僕は撃っても許されるだけの資格があると思います! だからどいてください! この人に報いを受けさせるんです!」

「樹、リーシアさんが回復の兆しを見せているんだ! 元康くんを処刑するよりも目の前の出来事に取りかかるべきだよ!」

「た、多分反応からして元康なりの励ましのつもりだったんだろ。樹……受け入れろ。元康には十分な恩義があるだろ……これも代償だと思わないとやってられないぞ!」

「く……」


 やっと樹は大人しくなった様ですぞ。

 しかし凄いですな。

 勇者の武器は感情で能力がある程度上下しますが、俺が対処に遅れる速度で樹は俺を撃ち抜きましたぞ。

 まあ、次は避けますがな。


「元康くん、自業自得だからね。もしも次があったら本当にお願いするよ?」

「とは言いますが、いつ頃の樹に話をすればいいのですかな?」

「……え?」


 樹は呆気に取られた様に答えますぞ。

 そこで錬とお義父さん、エクレアは考え込みました。


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