着せ替えパンダ
「サディナさんがいるとラーサさんは飲み比べをした後、泥酔してドサクサに逃げちゃうから、上手く話を切り出さないとね」
「あらー? そういえば昨日のササちゃんは付き合い悪かったわね。今日は逃がさない様にお姉さんがんばるわよー」
お姉さんのお姉さんが気を使っている様ですぞ。
こういう所をフィーロたんは信用していたのですかな?
「つまりササちゃんと話がしたいんでしょ? お姉さんだってそれくらいわかるわよー」
と言いながら酒を飲んでますな。
村に居た頃から思ったのですが、お姉さんのお姉さんは独特の空気を持っている気がしますぞ。
普段から酔っ払っているように見えて、みんなのサポートはお義父さんと同等にやり遂げる。
凄い人なのでしょうな。
「まあ、大丈夫だと思うけど……サディナさんは帰らないの?」
「私は大丈夫よー」
「なんかいつの間にか、混ざって来て手伝ってくれてるけど……」
お義父さんが頭を掻いてお姉さんのお姉さんを見つめていますぞ。
良いのではないですかな?
「ナオフミちゃん、もう夜も更け気味だから海は面白くないだろうけど、明日にはササちゃん達を誘って海へ狩りに行ってみない?」
「狩りかー……ラーサさんってそういうの好きそうだから良いかもね」
「じゃあ決まりね。ササちゃんを明日の狩りに誘うわよ」
「と、同時にラーサさんを逃がさない様に勧誘する……と、傭兵だからお金をチラつかせれば大丈夫かなー? いや、あんまりがっつくと警戒されるから日を置いてさりげなく……勇者とばれない様にした方が得策かも」
お義父さんはブツブツとどうやってパンダを仲間に引き入れるか考えている様でしたな。
それからしばらくして予定が決まったらしく、お姉さんのお姉さんが言いました。
「じゃあ行ってくるわねー」
「行ってくるね、元康くん、ユキちゃん」
「いってらっしゃいですわ」
「後で合流しますぞ。昨日の酒場で良いのですな」
「たぶんね。もしも移動するようだったら酒場のマスターとかに言付けをするから」
「わかりました」
お義父さん達は俺達に手を振って、パンダを勧誘しに出かけて行きました。
そんなこんなでユキちゃんが寝るのを待ってから俺はお義父さん達を迎えに出かけました。
お義父さんは警戒しておりましたが、どうやら打ち合わせ通りの酒場にいる様ですな。
遠くでサクラちゃんが船を漕いで眠そうにしているのが見えましたぞ。
「ササちゃん可愛いわよー!」
「うんうん! もっとリボンとかで着飾ればもっと可愛らしく成るんじゃないかな? 亜人の姿もとても美人だったしー」
お義父さんがお姉さんのお姉さんに後ろからおさえられたパンダにリボンを巻いて着飾っておりますぞ。しかも何やらドレスっぽい服を着させられています。
パンダは抵抗しようとしておりますが、お姉さんのお姉さんの所為で出来ない様ですぞ。
大柄のリボンの付いた服を何処で購入したのか……ああ、モグラがサイズを合わせたのですかな?
それともお姉さんのお姉さんの顔の広さを利用したのでしょうか?
前回は俺が仕立てたのが記憶として蘇りますぞ。
「お前等はあたいで遊ぶのをやめてくれよ! ああもう! このウワバミ女が増えちまった様な気がしてしょうがねえ!」
「「「姐御! 似合ってやすぜ!」」」
「うっさい!」
パンダは大声で配下の獣人を睨んでいますぞ。
配下の獣人達はあんな感じでしたかな?
着飾る事を覚えた後に獣人共がお義父さんに異議を唱えた気がしますぞ。
と言うよりもお姉さんのお姉さんとお義父さんが悪乗りして、いるように見えますな。
「ササちゃんが魅力的になってお姉さん楽しいわ」
「そりゃあお前が遊んでいるからだろ!」
「サディナさんはねー」
「偽名を名乗ってて、挙句それか……じゃねえよ! お前も同類だろうが!」
「サクラちゃん達を見ていちゃもん付けていた癖にー」
そのサクラちゃんは既におねむのようですぞ。
「なの! ガエリオンの可愛い姿に目が離せないなの」
ライバルはフリフリのエプロンドレスでお義父さんにアピールするかのようにくるくると回っていますぞ。
助手はそんなライバルを見て若干呆れ気味に見ております。
ちなみに同様のドレスを着ています。
何処かで着替えたのですかな?
モグラにはフリルの付いたフードを被せていますな。
ちょっと豪華に見えますぞ。
リボンもアクセントとなって……完全にパンダを攻略するための布陣ですぞ。
「お義父さん、迎えに来ましたぞー」
「ああ、元康くん」
「ちょうど良かった! お前、コイツ等を連れて帰ってくれ!」
パンダがこれ幸いとばかりに俺に近寄って来て懇願してきますぞ。
これはアレですな。
「メイド服をベースにした衣装を俺が縫えば良いのですな?」
「何を言ってんだコイツは!」
パンダが俺に対して何やら言ってますぞ。
何かおかしな事を言いましたかな?
前回のパンダにお義父さんが着させていた衣装を作るのが俺の出来る方法だと思いますぞ?
「ああもう! ここにはあたいの敵しかいねーのか!」
パンダが思い悩むかのように頭を抱えてうずくまりましたぞ。
どうしたのですかな? お前はキールの格好に嫉妬した可愛い物好きでは無いのですかな?
既に頭にも胴体にもリボンが巻かれていて、動物園のパンダよりは豚受けしそうな格好ですぞ。
「化粧させる? 今のままでも十分だと思うけど」
「ササちゃんは素材が良いから薄くさせましょうよ」
「や・め・ろ!」
パンダがドスの利いた声で言い放ちましたぞ。
「そっかー、わかったよ。ラーサさんも嫌だよね」
お義父さんが素直に応じるとパンダは呆気にとられた様な様子で手を伸ばして空を切る感じになっていますぞ。
「え……いや、別にあたいは、ケバイ感じにされなきゃ良い訳で」
「じゃあお姉さんがササちゃんに御化粧をさせちゃおうかしらー?」
「ええい! アンタは近寄るな!」
パンダはお姉さんのお姉さんには抵抗しました。
しかしお義父さんは問題ない様ですな。
「まずは化粧という訳じゃないけど毛並みを揃えた方が良いかもよ? 後、毛は出来る限り柔らかくしてさ、ラーサさんを可愛くさせるのってなんか楽しそう」
「もっと綺麗にしないのー? ナオフミちゃん」
「ラーサさんはどっちが良い?」
「え、いや……あたいは、その」
とか言いながら視線がサクラちゃんやライバル、モグラに向かいますぞ。
やはりかわいい系の衣装が好きな様ですな。
素直じゃないパンダですぞ。
「ほらー、やっぱ可愛い方がラーサさんの好みなんだよ、サディナさん」
「あらー、そうなの? ならお姉さんそういうお店を紹介するわよ」
「……もうどうにでもしてくれ」
パンダは諦めたように座り込んでいますぞ。
「「「姐御のファッションショーをもっと見せてくれー!」」」
「ふふ、ここに映像水晶が複数ある」
お義父さんが映像水晶をパンダの配下にチラつかせ始めましたぞ。
それも準備していたのですかな?
何から何まで事前準備は万端で挑んだのですな。
「今までの着た格好がここに収めてある。君達……わかるよねー? オークション!」
「銀貨10枚!」
「銀貨15枚!」
「お前等勝手に何してんだー!」
脱力していたパンダが輪をぶち壊して配下は元よりお義父さんが持っていた映像水晶を破壊しましたぞ。
「おっと、それはダミー」
と、お義父さんは更に懐から映像水晶を出します。
「お、お前は何が目的なんだ! あたいで何をする気だ!」
パンダが絶叫しながら言いますぞ。
「ササちゃんをゼルトブルの美少女コンテストに出すのよね?」
「や、やめてくれ!」
パンダが悲鳴を上げましたぞ。
それを察したのかお義父さんが首を振りました。
「ないない。ちょっと悪乗りしてただけだよ。さーて、明日は早いしそろそろ帰ろうかな。ラーサさんもちゃーんと準備しててね」
おや? 俺が来る前に話を終わらせていたのですかな?
さすがお義父さんですぞ。
お姉さんのお姉さんがいれば鬼に金棒なのですかな?




