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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
盾の勇者の成り上がり
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ラースシールド

「流星剣!」

「流星弓!」


 錬と樹のお得意、流星シリーズが教皇に向かって放たれる。

 しかし、それを複製品の結界で受け止めた教皇は、涼しい顔で立ち尽くしていた。


 仲間たちも続き、それぞれの技や魔法を放つ。

 しかし、教皇を中心とした結界が再度展開されてしまっていて、傷一つ負わせられない。


「所詮は偽者、この程度ですか」

「く……」

「これは厳しいですね。まさかこんな隠し玉を持っているとは」

「お前等何の為に出てきたんだ!」


 勝算も無く出てくるとか何を考えているんだ。


「何の策もなしに来たと思っているのか?」

「幾らなんでも僕達を舐めすぎではありませんか?」


 錬と樹の武器が光りだした。ただ、撃つのに時間が掛かっている。


「雷鳴剣!」

「サンダーシュート!」


 バキンと音を立てて教皇の結界は砕け散る。教皇の奴、驚愕したのか大きく目を見開いて攻撃を受ける。


「撃つのに必要な時間を稼いで居たのですよ」


 おお、俺のセルフカースバーニングでやっと破壊できる結界を貫くなんて、腐っても勇者、元康とは次元が違う。


「俺だって……出来なくは無い。でもSPが……」

「今だと負け犬の遠吠えだぞ」


 というかそんな強力なスキルがあるなら何で俺に撃たなかった。

 ああ、発動までの時間がかかりすぎて俺が警戒するからか。


「ふふふ……愚かな、伝説の武器を所有する私に勝てると思っているのですかな」


 教皇の負傷を咄嗟に教徒達が回復魔法を掛けて治療する。

 あれは厄介だぞ、一撃で沈めなければ配下が完全回復させる。


「お前さえ倒せば、他は抑えることが出来る。それが俺達、勇者の役目だ」

「さあ皆さん。裁きの詠唱に入ってください」


 教皇の命令に教徒たちは頷き。魔法を唱え始める。


「偽者に与する者達は全て悪なのです」


 すげぇ。もはや狂信的。

 勝てば官軍とは言うが、勇者が揃っている状況で勝てるとかまだ思っているのが凄いな。


「さて、では、トドメと行きますかね」


 教皇の奴本気で俺達を殺る気だ。先ほどよりも高出力のブリューナクと思わしきチャージに入っている。


「尚文」

「なんだ?」


 錬が俺に近づいて尋ねる。


「力を合わせて奴を倒すぞ」

「本当は協力なんて真っ平ごめんなんだがな」


 あれから逃げ切るのは不可能だ。

 しかも裁きとか言う強力な魔法と併用して打ち出すつもりだ。さすがの俺も耐え切れないだろう。


「俺が接近するから誰か俺に敵意を持って攻撃しろ。俺の攻撃は味方を巻き込むからな、全力で離れろよ」


 有効な攻撃手段が俺にはセルフカースバーニングしかない。となれば接近するのは俺となるだろう。


「分かった」

「じゃあ、いくとするか!」


 それぞれの仲間達には魔法で援護するように指示を出し、万が一の妨害に備えて接近戦しか出来ない奴は魔法を使う奴を守るようにさせる。

 アタッカーは勇者、援護は魔法、防御はその他とまあ、期待できない編成だな。


「行くぞ!」


 俺が先行で教皇に向けて駆け出す。

 教皇の奴は、スキルを放つのに集中していて俺を無視する。

 確かに攻撃手段が乏しい俺には決定打を与えるのは一つしか方法が無い。

 しかも定期的に結界を展開するので、ダメージを負わすことが困難を要する。


「尚文!」


 元康が俺の盾に槍をぶつけ、セルフカースバーニングを作動させる。


「うおおおおおおおおお!」


 裁きの詠唱に入っていなかった教徒がそれを浄化する魔法を掛けて無効化、しかし結界の破壊は成功。俺は咄嗟にエアストシールド&チェンジシールドを出し、フックを使用して他の勇者たちの後方へ下がる。

 フックは紐を出す専用効果があり、思い通りに操る事が出来る。だから俺の腕に紐を結ばせて勢い良く下がれた。


「雷鳴剣!」

「イナズマスピアー!」

「サンダーシュート!」


 その瞬間に他の勇者達が一番威力の高いスキルを教皇に向けて放った!


「ブリューナク!」


 しかし、教皇もスキルを発動させて、俺達に撃ち出す!

 勇者達の攻撃と教皇の必殺スキルがぶつかった。

 バチバチと音を立てて、それぞれのエネルギーがぶつかる。


「いけえええええええ!」

「このおおおおおおお!」

「でりゃああああああ!」


 昔の格闘漫画のような必殺技で構成された極太ビームとでも言うのだろうか、それが飛び出して攻防を繰り広げている。

 仲間達の魔法援護もあり、少しずつだけど教皇の攻撃を押さえ込んでいる。

 かに……思えた。


「フフ……その程度ですか」


 教皇の奴が変わらず笑みを浮かべている。

 まさか、加減しているのか!?


「馬鹿な……まだ、まだ負けては居ない!」

「そうだ! 俺達はまだいける」

「ええ、もっと出力を上げましょう!」


 三人は持ちうる全てのSPをスキルに込めて放った。

 ほんの僅かだけど、押し出している。

 よし……。

 だが、何故だろうか。どうも不吉な予感が拭えない。


「さて、ではそろそろ行きますか」


 教皇が淡々と呟き、力を込める。

 くそっ! お前等に今死なれると俺が困るんだよ!

 もっと別のタイミングで、この状況が起こって欲しかった……。


 俺は勇者達を突き飛ばしてスキルを中断させ、前に出る。

 全身を通り過ぎるエネルギー、痛みと爆音に頭がおかしくなりそうになった。

 しかし、俺は必死に盾を前に出して堪えた。

 そしてエネルギーを撃ちきったのか、通り過ぎていった。


「はぁ……はぁ……」

「ほう……まさか耐え切られるとは思いませんでした、さすがは盾の悪魔」


 悠々と教皇は槍を振り回して言い放つ。


「だ、大丈夫か?」


 霞む目で振り返る。

 すると俺の真後ろは辛うじて守ることは出来たがそれ以外が一筋の大きな跡しか残されていなかった。

 幸い、みんな俺の後ろに回っていたお陰で大した傷は負っていない。


「「ツヴァイト・ヒール!」」


 重複する回復魔法を受けて、傷は即座に塞がった。

 三人の勇者の必殺スキルを受け、威力が殺されていたのに、なんて威力なんだ。


「ぐ……SPが……」

「こっちもだ」

「僕もです」


 三人ともSPが足りないのか、回復アイテムである水筒に手を伸ばしている。

 大きく回復するには時間が足りないだろう。

 喊声が聞こえてくる。見ると、錬達が言っていた通り、三勇教の討伐軍が俺達の方へと駆けてくる。


「さて、茶番はこれくらいにしてそろそろ真なる勇者を呼ぶために悪魔達を処分しなくてはね。あの連中の相手もしなくてはいけませんし」


 教皇の奴、槍を剣に変えて、構えを取った。

 教皇の持つ剣の刀身がまるで炎の鳥のような形を成す。

 おそらく、ブリューナクとか言うスキルよりも上位のスキルだと見て良いだろう。

 やばいな……討伐軍の連中は教皇がこんな隠し玉を所持しているとは思っていないだろう。

 ともすれば一網打尽にされてしまう可能性がある。


「では皆さん。裁きと共に行きましょう」


 配下との同時攻撃を行うつもりだ。若干の時間的余裕は生まれたが、何時出されるか分からない。


「これまでか……」


 他の勇者の顔色が悪い。

 勝算は有ったのだろうが、幾らなんでも無謀だったな……。

 いや、出てこず、元康と俺がやられていたらもっと悪かったか。そう考えたら最善を尽くしたとも言えるのか。

 俺は……最善を尽くしたのか?

 そこでふと、一つの可能性に気付く。

 どうしてもすることのできなかった、一つの大きな賭け。

 どうせこのままでは死ぬんだ。賭けてみるのも悪くは無い。


「錬、ちょっとこっちにこい」

「なんだ? 何か策があるのか?」


 俺は錬に近づくように言い、錬は訝しげながら俺の方へ来る。

 ドクン、ドクン。

 盾が脈動を強め、震えだす。

 意図的に封じていたが、憤怒の盾の中には錬に殺された竜の核が入っている。

 視界に今際の記憶が映し出され、目の前の敵を屠りたいと盾が叫ぶ。

 そうだ……もっとだ。もっと怒りを爆発させろ!

 俺はラフタリアのお陰で制御できている憤怒の盾の怒りを最大限にまで引き出そうと試みる。


「ラフタリア、手を……」

「はい」


 ラフタリアと手を繋ぎ、錬に盾のある方の手を向ける。

 そしてビッチと元康に視線を向けて、思い出さないようにしていた怒りを呼び覚ました。


 全てが憎く、怒りで全てを忘れ、見える全てが黒く染まったあの感情を呼び覚ます。


 感情の解放によるグロウアップ!

 カースシリーズ、憤怒の盾の能力向上! ラースシールドに変化!


 ラースシールドⅢ

 能力未解放……装備ボーナス、スキル「チェンジシールド(攻)」「アイアンメイデン」「ブルートオプファー」

 専用効果 ダークカースバーニング 腕力向上 激竜の憤怒 咆哮 眷属の暴走 魔力の共有 憤怒の衣(中)


 瞬く間に心にどす黒い感情があふれ出す。


「――――――――――!」

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