美の向上
「よ!」
槍を軸にして少しずらして覗きこみますぞ。
「セカンドシールド」
またもお義父さんが邪魔をしますぞ!
負けませんぞ!
「尚文さんだけには任せられませんね! 僕もスキルを使います! ブッシュカモフラージュ!」
樹が今まで聞いた事の無いスキルを使いましたな!
すると俺が見ようとしていた垣根の先が謎の草木で遮られました。
なんですかな、これは。
どんなスキルなのは今一わかりませんな。
「本来は隠れる為の茂みを出すスキルみたいなんですけど、こういう使い方もありますからね」
「ふむ……じゃあ俺はこれだな、ソードディフェンス!」
錬が剣を地面に突き立てると垣根を補強するように何本もの剣が俺の前にそびえ立ちました。
「守護系のスキル?」
「みたいだな。尚文の盾に似た感じで相手の攻撃を遮る事が出来るようだ。難点は地面に剣を突き立てていないといけないがな」
く……厄介なスキルを所持しておりますな。
これでは簡単に見る事は出来ませんぞ!
ですが……。
「俺はみんなの裸体を見て美を高める使命があるのですぞ!」
「かっこつけて何を言っているんですか!」
「さっき聞いたんだが、今じゃこの時間には島に滞在している冒険者や女共は基本入ってこない様になってしまったらしいぞ」
「なんだかなー……裸体を見たけりゃ元康くんなら見ず知らずの女性でさえも頷いてくれそうな顔してるのに……」
「豚の裸体なんて見て何が楽しいのですかな?」
「フィロリアルなら良いのか?」
「言えば良いよーとか言うと思いますよ。部屋で勝手にやってください」
「お風呂で見る事に意味があるのですぞ! 女性はお風呂で見られる事で美が上がるのですからな」
「毎晩思うんですが、本当にそんな要素があるんですか?」
「無いでしょ……あったら嫌だし」
お義父さん達が何やら溜め息を漏らしておりますぞ。
「今までの周回の尚文さんの苦労がわかりますね」
「そんな事をわかられてもな……」
「ちなみにお義父さんは大抵、温泉に浸かっているだけですぞ。一緒に見ましょうぞ!」
そういえばサクラちゃんに女湯へ拉致された事はありましたな。
「出来れば避けたいなー……」
お義父さんは何やら遠い目をして答えておりますぞ。
「最初の世界でもお義父さんはあんまり覗きに興味が無い様でしたな」
「女で酷い目にあったんだから当然だろ!」
「俺達が覗きをしている事に気付いて捕まった時に、お姉さんが急いでお義父さんを追い掛けて行きましたな」
「俺が覗いていたと思ったんじゃないの?」
「それからしばらくして残念そうにしていたのが印象深いですな。なのできっと見て欲しかったのですぞ」
真の愛に目覚める前の俺でもそれくらいは察する事が出来ますからな。
お姉さんはきっと見て欲しかったのでしょう。
それが愛という物ですぞ。
「そこに繋ぐのか……」
「あ、あの……」
「ん? どうしたのだ、イミア」
エクレール達の会話が聞こえてきますな。
「その、私達がどれだけ大きくなったか盾の勇者様に見てもらうのは良いんじゃないかと思うんですけど……」
「何を言っているのだイミア?」
「えっと……すいません」
「ふむ……」
エクレアが何やら困った様な声を出しておりますぞ。
「イミア、もっと自身を大事にしなきゃいけないぞ。例えイワタニ殿であってもな。大きくなったと言うのは服を着ていてもわかる」
「は、はい……」
「なの! 仲間が増えたなの! ささイミアも一緒になおふみに見てもらうなの!」
「勧誘するんじゃない!」
「ポカポカー……」
「お? サクラが時間を迎えたな」
ポンと言う音と共にザブンと水しぶきが聞こえてきましたぞ。
おそらくサクラちゃんが覗きに興味を失ってお風呂で半分寝始めたのですな。
「エクレールさんの障害が一つ減った……のかな?」
「そうなると良いんですけどね。って元康さん! いい加減にしてください!」
おう! 樹が俺に弾を撃ってきましたな。
ゴスッと俺の腹部に当たりますが、痛くも痒くも無いですぞ。
「く……元康さんを押さえつけるには足りませんか!」
「しょうがない! 魔法で抑えつけるか!」
「錬は氷魔法でしょ? 温泉が凍るから却下!」
「状況が面倒臭すぎる! エクレール! 早く温泉から出ろ!」
「ゆっくり温泉にも浸かれないのか!」
お義父さんが定期的に妨害の盾を出すので今夜はまだ女湯を覗けませんぞ。
「ホテルの人に別の風呂を要求しても元康とフィロリアル共は近い所に入りたがるしな」
「もう諦めますか?」
「それも手かも知れないがー……何故だろうか、反対しなきゃいけない気がする」
「犯罪臭がするからね……かと言って好きにさせると元康くん側も興味を失いそうなんだよねー……反対するからってパターン」
「一度試します?」
「それでこのホテルでは槍の勇者が女湯を覗きますと風聞させるの?」
お義父さん達が白熱した議論をしておりますぞ。
く……お義父さんが出した障害が思いのほか大きいですぞ!
限られた垣根を制限された状況で覗く事に意味があるのですぞ。
「とりあえずエクレールさん。ゆっくり入りたかったら後でお願いー」
「わかった! さ、みんな! もう充分に体を洗っただろう? そろそろ出るぞ!」
「まだ元康様に見てもらってませんわ」
「んー……すー……」
「ガエリオンは男湯を覗いてないなの!」
「覗いてどうすると言うのだ!」
「はぁ……騒がしい」
助手が脱力したような声をしたのが印象的ですぞ。
やがて声が遠くなって行きました。
くー……今日はお義父さん達のスキルに敗北しましたぞ! 次は負けませんぞ!
「ところで錬、樹……気付いてる?」
お義父さん達は何やら周りを気にしているようですな。
「「「あ、もう出るみたい」」」
「「「見れなかったみたいだねー」」」
「「「帰ろー」」」
見渡すと、外から船に泊っているフィロリアル様達が船から降りて遠い山側からこちらを見ているようですな。
とても目が良いですぞ。
何をしているのかは今一わかりませんがな。
「ああ、フィロリアル共を十分躾けておいてくれよ?」
「わかってるけど……どうして温泉を観察しているんだろうね?」
「構って欲しいとかでしょうか?」
「覗き騒ぎを観戦していたんじゃない? 完全に外から丸見えなのはどうなんだろう……」
「遠くから狙撃するみたいに覗くのもどうなんでしょうね?」
「樹、一応注意するから、遠くから覗いている子が居たら麻痺弾で狙撃をお願いするね」
「わかりました……せっかくですから個人風呂にそれぞれ寄り道して入りますか……」
「だね。エクレールさん達もそっちへ行ったんじゃない?」
「まったく! 毎晩毎晩、面倒臭い戦いがあるもんだ!」
などと言いながら俺達は風呂を後にしたのですぞ。
お義父さん達はその後、個人用の小さな風呂に入浴したそうですな。
露天風呂の良さがわからないのですかな?
そんなこんなでカルミラ島の日々はあっという間に過ぎたのですぞ。
「「「キャッキャ!」」」
「「「わーい!」」」
浜辺でフィロリアル様達が思い思いに楽しんでいる天国のような光景が展開されております。
お義父さんが管理したお陰で前回のような入島制限も無く、フィロリアル様達は揃って大きくなりました。
非常に残念なのは、これだけのフィロリアル様がいてもフィーロたんがいなかった事ですぞ。
「なんだろうね。フィロリアルがこんなに沢山、海岸に居る光景を見るとやらかしてしまった様な気持になるよ」
「わかっててやった事だろ?」
「壮観なモノですね。これだけいるとすがすがしいですよ。それで尚文さん、フィロリアルの研究は進んだんですか?」
「俺自身がやった訳じゃないけど、ブリーダーの人と一緒にマメに観察はしたよ? 本来は微々たる差しか存在しないはずが、フィロリアルクイーンやキングになると大きく現れるってさ」
「では投げますぞー! みんな上手く取るのですぞ」
「「「はーい!」」」
俺は海岸でフィロリアル様と遊びに夢中になっておりますぞ。
ああ、やはりここは天国ですな。
青い海、白い雲……後はフィーロたんさえ居れば万々歳ですな。




