豚王のペット
「僕の世界にも似た様な話がありますね……」
「なまはげと同じか……確かサンタクロースとかにも似た亜種があった気がする」
「怖いのはマインドイーターとかマジックポイズナーとか呼ばれる方ね。こっちは、捕まったら精神を直接吸い取って来るし、魔力に直接毒を流し込んで長い事魔法を使用不能……使用不全にしたりもするわ。しかも意識も浸食するし」
「危険な化け物は何処にも居るんだな」
「あれ? 四聖勇者ってシルトヴェルトの方から来たって聞いたけど……」
主治医の言葉にお義父さん達は俺の方を見ますぞ。
なんですかな? そんなに見られたら照れますぞ?
それから徐に武器項目をチェックしている様ですぞ。
「あった! あったよ! 気付かず倒してる!」
「危ない! そんな危険な魔物が居たのか!」
「ゲームだった時はただの魔物でしたが、そんな危険な魔物だったんですか!」
「あんまり強くは無いですな」
俺が言うと主治医が頷きますぞ。
反面、お義父さん達はなんとなく俺を睨んでいる様な気がしますな。
「まあ、単純な戦闘能力は高く無いわね」
「負けたらシャレになりませんよ」
「ゲームだった頃は、同Lvの敵にしては経験値が多めだと思っていたが……こんな裏があったのか」
「ちなみに狩ってた?」
「いや、もっと効率の良い奴がいた」
錬も素直に答えるようになりましたな。
「ラトさんは現在、そういう区別が付く研究をしてるの?」
「ううん。しようかな? って思ってる所だったわ。幸いにして別の部署が先取りして色々とやってるみたいなんだけど、上手く行って無いみたいなのよね」
「時間が掛りそうだな」
「短期に終わりが見えないと混乱の収拾は難しいのでは?」
「お金は集まってるから、四聖勇者達の協力さえあれば意外と早く終わると私は見てるけど」
「もしかして、貴族が援助してくれてるとか? 家の子供が侵略者じゃありませんように……って感じで」
「半分はね。残り半分は阻止しようとお金を出してるみたいだけど、それは四聖勇者を前に無謀でしょ?」
世の中色々な勢力が暗躍しているのですな。
俺から言わせてもらえば、今回の豚はサクッと仕留めておけば良いとは思いますぞ。
ただ、お義父さんに注意された事を考えればわからなくもないのが悩ましいですな。
サクラちゃんが悪霊に取り付かれたから殺そう、などと言われても俺は頷けません。
で、主治医や他の錬金術師が、偽物と本物の区別が付く道具の開発をしているのですな。
「まあ、良いや。俺達も多少は力を貸せるとは思うけど……どうしたら良いの?」
「そうね。四聖勇者達は私が何を出来るか知っているかしら?」
俺が手を上げますぞ。
主治医が主治医である理由を俺は最初の世界で知っておりますぞ。
「じゃ、槍の勇者から」
「人語を話せないフィロリアル様と話が出来るそうですぞ」
「あー……まあ、間違いは無いわね。正確には魔物とある程度話が出来る、だけど」
「ウィンディアちゃんも出来るよね?」
「そうだな。ついでに言えばガエリオンが居れば不要だな」
「三人も要りませんね」
「なんで私が二軍の挙句、リストラみたいな流れになってるのかしら?」
主治医が半眼で俺達を睨みますぞ。
「俺はウィンディアちゃんと同じだと言っただけだよ」
「ウィンディアは関係なく魔物と話すならガエリオンとフィロリアルが居れば必要ないだろと言っただけだ」
「ぼ、僕は既に十分居ますねと念を押しただけで、あまりにもテンポが良過ぎてポロっと口が滑っただけです」
主治医が部屋の奥の扉を開けて錬と樹を手招きしますぞ。
奥には魔物の影が蠢いていますな。
錬と樹は首をブンブン振ります。
「コホン! とりあえず私は魔物とある程度話が出来るの。つまり魂に関して本能で理解している魔物ともね」
「おお!」
「ガエリオンも知っては居たようだが……」
「見分けつかないって言ってなかったっけ? 他の子にも聞いてみれば良いんじゃない?」
「……そういう事か」
「ただ……そういう難しそうな注文となると、相手の知能の高さとかいろんな要素が必要でね。ソウルバキューマーってあんまり頭の良い魔物じゃないから参考にならないのよ」
主治医がため息交じりに答えますぞ。
「つまりどうしたらいいと?」
「道具を作る指針にしても何にしても頭の良いソウルバキューマーが必要……後はわかるかしら? 特殊なフィロリアルとドラゴンを育てている四聖勇者様」
主治医の挑発にさすがのお義父さん達も気付いた様ですぞ。
「俺達が勇者の技能でソウルバキューマーの能力を引き上げてラトさんに預ければ研究が加速できる?」
「そういう事、城に掛けあって見て欲しいけどダメかしら?」
「まあ、良いのではないですか? 雲を掴む様な話だった訳ですし」
「そうだな、わかりやすくて良いと俺も思う」
「ですぞ!」
お義父さんは若干考え込んではいましたが、頷きました。
「わかったよ。城の人に掛けあって、ソウルバキューマーを預かって見るよ」
「出来れば幼少個体からの育成をお願い、成体になると知恵の変化って少ないから、勘違いしている人が多いのだけど知恵と知能は違うわよ?」
「了解。じゃあ……手短にやってみよう」
こうして俺達は城に戻ってソウルバキューマーの発注をしたのですぞ。
そんな訳で城でソウルバキューマーの幼体をお義父さんが預かって来て、みんなでサクッとLv上げをしました。
「青白く光るミミズ……ですね。やっぱり何だかんだで大きいですよ」
全長が3メートルに達しつつある大きなミミズですな。
夜には淡く光っておりますぞ。
「なのー」
ライバルが指差すと素直に従っておりますぞ。
お義父さんが村で育てていたデューンという魔物と良く似ていますな。
「俺の居た日本のアニメだとノヅチとか呼ばれていそうな形状だね。髪の毛を飛ばす妖怪の少年とかが従えてそう」
「ウィンディアか?」
「……なんで私の名前が?」
日数的には数日ですな。
どうも最近、何かを忘れている様な気がしてそわそわしますぞ。
「魔物の少女って……かなり違わない?」
「雰囲気からそうなのかと思ってな」
助手が錬を睨み、お義父さんが尋ねておりますな。
「魂を食べるって言うのは本当みたいだよね。全然、食事を与えても食べない。それなのに倒した魔物の近くで、何かを吸ってた感じだし」
「無駄が無いと言えば無いですが……」
「経済的だね」
「お金が掛らないとなおふみは良いの?」
「かと言って倒した魔物の魂を食べて生活するとかガエリオンちゃんは言わないよね?」
「なおふみが望むならやるなの! その気になればガエリオンは霞を食べてでも大丈夫なの!」
「それもどうなのかなー……」
お義父さんがソウルバキューマーの頭を撫でておりますぞ。
やはり反応が良いですな。
飼い魔物には基本的に嫌われないのがお義父さんですぞ。
マメに面倒を見てくれるからですかな?
「俺も最近、ソウルイータースピアの良い運用方法を掴めて来ました!」
なんとこの槍、上手く突き刺すと獲物の魂の部分だけを引き抜けるのですぞ。
まあ、コツがかなり必要なので、上手く引っこ抜くのは難しいのですがな。
肉体を傷つける事無く魂を抜いて餌にすると言うのが出来たのですぞ。
問題は、俺の目視で抜けたかちょっとわからない所ですかな?
俺自身に霊視能力はありませんからな。
怨霊クラスにならないと難しいのですぞ。
「とりあえずある程度大きくなりましたね。ラトさんの話では幼体からでしたっけ?」
「少し面倒だったがな」
「かと言って城で飼育されているソウルバキューマーを連れて行ってもね……何か凄かったし」
そう言えば、譲り受ける時に見させられましたな。
ぶくぶくと膨れ上がった大きなソウルバキューマーがボスとして君臨していた様ですぞ。
女王とかそんな個体らしいですな。
下手をすれば俺が一撃粉砕している所でしょう。
ちなみに豚王のペットですぞ。
「人の手が入るとあそこまで大きくなるなの。ただ、あんまり考えて無い感じだったの」
ライバルが話をしようとして、諦めていたのを覚えていますぞ。
魔物の会話と言うのは分かりかねますが、難しいのですな。
その点で言えばフィロリアル様は何をおっしゃってるか非常にわかりやすくて良いですぞ。
ふかふかですぞ。




