騎士の依頼
「リベレイション・プロミネンスⅩ!」
俺の太陽の如き炎が研究所を焼き尽くしますぞ。
カッと上空に小さな太陽が出現して炎の柱を伸ばしながら落下してきますぞ。
「ドライファ・トルネイドⅩ」
樹がフィーロたんが唱えた事のありそうな竜巻を起こす魔法を唱えました。
渦の中心は真空にでもなっていそうですな。
俺のプロミネンスの炎を巻きこんで威力を増加させているのが分かりますぞ。
「ここで……錬が間に入るのは無理だから女王!」
「わかりました。リベレイション・ライトニングⅩ!」
ここで女王が雷を降り注がせる魔法を唱えましたぞ。
雷……確かお姉さんのお姉さんが得意としていた魔法でしたな。
「よし! じゃあ三人の魔法が終了したら残りの人達は儀式魔法。錬は限界まで魔力を込めて放って!」
お義父さんが攻撃指示を出しております。
何分、出来る事は少ないですからな。
俺達が唱えた魔法の効果が切れてフッと静かになりますぞ。
「ドライファ・ブリザードⅩ」
錬の氷の魔法が発動し、氷の嵐が研究所を包み込みますぞ。
「行きますわよ! 合唱魔法『竜巻』ですわ!」
ユキちゃんがコウとサクラちゃんと力を合わせて巨大な竜巻を出現させました。
完全に錬のブリザードの威力が向上しておりますぞ。
凄いですな。お義父さんの指示で魔法の威力が上がって行くのが目に見えて分かりますぞ。
「なおふみの意図が分かったなの! だからガエリオンも合わせるなの!」
『我ここにガエリオンの力を導き、具現を望む。地脈よ。我に力を』
メルロマルクの決戦を思いだす連携でライバルは助手とモグラと一緒に息を合わせておりますぞ。
『力の根源足る。私が命じる。紡ぎだされる水に力を合わせよ!』
「合唱魔法『アバランチD-ブレス!』」
水属性が強めなのか今度はライバルは半液体のドラゴンに変身して土石流を吐きだしておりますぞ。
で、最近地味なエクレアはと言うと……おや? 儀式魔法に力を合わせているようですな。
空気では無かったのでしょうな。
幾重にも重なった魔法の雨によって研究所のあった場所には巨大なクレーターが出来ていましたぞ。
「ふう……これで、どうにか出来たかなー?」
「そうなのでしょうけど……まだ予断を許せないんじゃないですか?」
「そうだね。念の為に地中深くにも攻撃を……確か儀式魔法『聖域』だっけ? アレが効果ありそう」
「では唱えましょう」
で、最終的に何度も根絶とばかりに魔法を重ねがけしたお陰で暴走したバイオプラントの根絶は出来たのですぞ。
「まったく……厄介な事件が立て続けに起こって嫌になってくるよ」
お義父さんもかなり御疲れですな。
最終的な報告を受けて主治医の研究所は再建される事が約束されましたぞ。
魔物も主治医の命令に素直に応じるばかりか逃げ遅れた研究員の救助までしたと美談になっているようです。
さすがにここまで問題を起こしたタクト一派と関わりを持つホム研やタクト一派の悪行は世の中に知らされることになりました。
もはや何をしてもタクト一派の悪事となる時代になったのですな。
良い時代になったものですぞ。
「便利な種と言う話でしたが……無くなってしまいましたね」
「ですな。最初の世界でもそれ以外の世界でも食料問題を一挙に解決させる奇跡の植物でしたぞ」
「はぁ……食糧事情が悪化する事はしょうがない……のか?」
「元康くんが技能を持っているなら、普通の植物で再現すると言う手があるよ」
「ガエリオンもお手伝いするなの!」
「俺は御免ですな」
ライバルと共同作業なんて死んでも御免ですぞ。
「元康くんと?」
「違うなの、ガエリオンじゃなくて……ごにょごにょがやるなの」
もぞもぞとライバルは言い辛そうにしてからお義父さんに耳打ちしましたぞ。
すると一瞬ですがライバルの表情が親の顔になって呻いておりますぞ。
「ウィンディアちゃん、確かドラゴンってどんな魔物とも配合出来るんだっけ?」
「え? うん。そう聞くよ?」
「植物型の魔物とも出来るのかー……凄いねー……」
「え? ガエリオン。卵産むの?」
「ガエリオンのはなおふみとだけなの」
助手が首を傾げていますぞ。
これは親の方がやらされるのですな。
「と、とりあえず元康くん。普通の植物を改造しただけじゃ無理だったらお願いするよ」
く……お義父さんも酷な命令をするのですぞ。
ならば俺はやるしかないですぞ。
こうして俺はバイオプラントの再現の為に植物を収集する仕事が増えたのですぞ。
割と繁殖力の旺盛な植物をベースにどうにか再現が出来たのが開発五日目でしたぞ。
細かなステータス調整が難航しましたからな。
普通の植物は脆弱で、繊細に弄らないといけなかったのですぞ。
失敗すると壊れてしまいました。
バイオプラントを作った錬金術師は主治医並みの化け物だったのではないですかな?
そんなこんなで今日も波に備えて訓練と勉学に挑んでいた俺達ですな。
……何か忘れている様な気がしますぞ。
青い海……白い砂浜――
おや? 豚王が俺達を呼び付けたので行きますぞ。
「え? 城の騎士からの相談?」
「ブフフフフ……うむ。どうも数カ月前からとある違和感があるとの話でのう。もしかしたら四聖勇者達なら解決できるのではないかと相談に来た様じゃ」
「はぁ……」
お義父さんはピンと来ないと言った様子で空返事をしてますぞ。
「ブフフフ……ワシも良くわからんのじゃ。詳しい事はその騎士達に聞くが良い。ではさらばじゃ」
豚王は割とアッサリと謁見を切りあげました。
相変わらずのエリート豚でしたな。
単刀直入で話が短いのが長所だと思いますぞ。
「なんかピンとこない依頼だね」
「そうですね。違和感とはどういう違和感なのかとか、仕事の内容すらも触れていないのに斡旋ですよ?」
「どこも杜撰なのか?」
先日、マジカルハザードがあったばかりですからな。
俺達もお疲れムードですぞ。
「えー……今回の依頼に関してなのですが、王族の末席に位置する女性に関してです。その警護をしている騎士の三名が相談を持ちかけてきました」
「ああ、詳しい内容はちゃんと上がってるのね」
「問題は王の方だったか……」
お義父さん達は若干呆れ気味に答えますぞ。
「それで? 違和感というのは?」
「騎士の代表が待っております。こちらへ」
と、案内された応接間で俺達は黒い鎧を着こんだ……男が座って待機しておりました。
お義父さん達が騎士の顔を見て、たじろいでいますぞ。
どうしたのですかな?
「なんだろう? すごく整った顔立ち?」
「美形ですよね?」
「長身で美形……」
ああ、顔の良さで物おじしているのですかな?
心配ご無用ですぞ。
お義父さん達も負けず劣らずですからな。
顔だけで人を判断するのは総じて豚ですぞ。
「でも、元康くんで慣れてるから結構平気だね」
「ええ、元康さん程の美形もそういませんからね」
「そうだな。だが、彼がですぞと口走ったら、俺は尚文に任せて退室させてもらう」
「錬、あのね……まあいいけどさ」
ですぞ、の何が悪いのですかな?
「それで相談に来た騎士と言うのはお前ですかな?」
俺が無駄に偉そうな態度で言うと騎士は立ち上がり、名乗りました。
「は、ローリック=イトヴィスと申します。四聖勇者の皆さま!」
おお、見事な敬礼ですな。
エクレアが釣られて敬礼をしておりますぞ。
「盾の勇者である岩谷尚文です」
「剣の勇者の天木錬だ」
「弓の勇者である川澄樹です」
「愛の狩人――」
「この人は槍の勇者の北村元康くん」
お義父さんに遮られてしまいました。
何やら最近、お義父さん達が俺の先の行動を読んでいるように感じますな。
「よ、宜しくお願いします」
ふむ、この騎士……隙が無いですぞ。
中々にやりますな。
とはいえ、敵愾心などは感じません。
本当に相談に来ている様な雰囲気ですな。
「とりあえず、立って話をするのもなんだから座るか」
「は、はい」
錬の言葉にお義父さん達と騎士がソファーに座りました。
なんか面接みたいな雰囲気ですぞ。
 




