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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 槍の勇者のやり直し
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触手の森

「で? マジカルハザードって何が起こったの?」

「私どもでは詳細に関しては上手く説明できません。現地にて責任者が事情を説明いたします」

「何が起こっているか詳しくない人の主観では説明不十分な事態と言う事ですか」

「わかったよ。魔物の研究所って事はラトさんの所かな? あそこで何かが起こったと言う事は……嫌な予感がするなぁ」


 お義父さんが面倒そうに髪を掻いておりますぞ。

 そのまま俺達はフィロリアル様達に乗って移動を開始しました。

 やがて辿り着いたのは生い茂る植物に浸食されつつある主治医の研究所ですぞ。


 おかしいですな?

 仮にバイオプラントの異常だとして、俺が主治医に渡したのは危険性を全て排した物ですぞ。

 しかもなんですかな?

 蔓が緑では無く肌色っぽいですぞ。


「あ、ラトさん!」


 お義父さんが避難していた主治医を見つけてサクラちゃんから降りて近寄りますぞ。

 どうやら無事の様ですな。


「久しぶり……なのかしら? 盾の勇者さん」

「そうなるのかな? それで……これは一体何があったの? 被害状況は?」


 お義父さんの質問に主治医はウンザリするとばかりの目で鬱蒼と生い茂る肌色の触手の森を睨みますぞ。

 ふむ、この反応、犯人は主治医では無さそうですな。


「ホムンクルス研究所の残党よ。自分達の部署が潰れたのは私の所為だって八つ当たりで厳重に管理していた勇者達から借り受けた植物を弄り回したのよ」

「え? これが元康くんの話していたバイオプラントなの?」

「それにしては妙ですな。アレは植物ですぞ。紫色になる事はあってもこんな肌色になる事は無いですぞ」

「そこが厄介な所なのよね。ホムンクルス研の連中、いろんな薬品から何まで強引に混ぜ込んだ挙句、ホムンクルスの要素を組み込んだみたいなのよ」

「つまり……大本はバイオプラントなんだけど、いろんな改造の結果、ホムンクルスの化け物と化したって事?」

「でしょうね」


 主治医が溜息をもらしますぞ。


「警備が杜撰だな」


 錬が皮肉とばかりに言いましたな。

 とはいえ、錬に同意ですぞ。


「厳重にしていたわよ。内通者がいなければこんな事件は起こらなかったわ」

「これもタクト一派の被害だと思えば……良いのでしょうかね」

「三勇教並みに厄介な勢力だな」

「ま、私の研究所を占拠して四聖勇者は間違っているとか宣言していたのは良かったのだけど、暴走した実験体に襲われたみたいね」

「うわぁ……」


 目も当てられない状況ですな。

 しかも少しずつ勢力を伸ばしている様ですな。


「ラトさんの所の魔物達はどうなってるの?」

「事件発覚直後に私が逃がしたわ。今は別の所で大人しくしてる。みーくんはー……直ぐにカプセルに避難させたわ」

「ではどうしたら良いのですかな? 物理的に消し飛ばしますかな?」

「いろんな薬品あるから避けてほしいわね。変な変異をしたらそれこそ……」


 面倒ですな。

 主治医の指示など無視して前回の様に消し飛ばしますかな?


「確か薬品のレシピに除草剤がありましたよね? それを使うと言うのはどうでしょう?」

「どちらかと言うと植物では無くなっているから効果はあまり期待できないと思うわよ? やらないよりはいいと思うけど」

「となるとあるかわからないが、何処かにある本体を仕留めるとかか?」

「あれば良いわね……ちなみに勇者達が来る前に調査とばかりに乗り込んだ研究員がいたのだけど……」


 主治医が映像水晶を取りだしましたぞ。

 そして映し出された映像を俺達に見せます。

 そこには触手と体が融合し、うめき声を上げて苦しむ人らしき物が所狭しに居りますな。


「ヒィ……」


 樹が小さく悲鳴を上げますぞ。


「な、なんだこれは!?」

「なんか古いゲームで見た事があるけど……これって……」

「苗床と言う奴ですか!?」

「これの撮影後にさすがに身の危険を感じた研究員は全員帰還したわ。体の一部を奇形化させてね。僅かでも触ればアウト。変異性が激しくて何時、種とかばらまいて爆発的に広がるかわからないわ」


 主治医が仮設テントの方を指差しますぞ。

 お義父さんが治療の専門家ですからな、錬と樹がお義父さんの背中を押しながら中を覗きこみますぞ。


「うわ……」


 お義父さんも驚きで声が上ずっております。


「これが数時間前の映像よ。それまでは呻き声が聞こえていたんだけど、それも聞こえなくなったから生存者は絶望的ね……」


 もはや本家よりも悪質に進化してますな。

 完全にバイオプラントの原型を保っていませんぞ。


「と、とりあえず、まだ大丈夫な人にイグドラシル薬剤を……っと」


 お義父さんの指示に、兵士達がテキパキと薬を持ってきますぞ。

 よく用意できましたな。

 ふわっとテントに光が溢れ、テント内から安堵の声が聞こえてきましたぞ。


「あー……治せちゃったか」


 それに反して主治医は若干落胆気味ですぞ。


「治せると問題があるんですか?」

「色々とね。何だかんだで取り潰しになった部署だけど、タクト一派と認定されていない人が結構いるのよ。見殺しにしたとか言われるとねー」

「あの映像に映っている人達は、まだ序の口なんですよね? それを全員助けろと言うのですか!?」

「王の一声を待つにしても、今は就寝中でしょ? 起きるまで待って居たらどれだけ被害が広がるかしら?」

「……これ以上被害を出させないためにやらないといけない訳だね」

「ですね。とはいえ、物理的な攻撃だと化学反応を起こしてしまう。除草剤は効果が薄い。となると魔法でしょうか?」

「出来ればそれが望ましいわね。ただ、儀式魔法による鎮圧が行われたけど、効き目が悪かったのよ。魔法防御も中々の物だわね」


 主治医の分析力は中々あるようですな。

 さすがフィーロたんの主治医ですぞ。


「後はそうね。今の所、人肌をベースにしている様だけど、場所によって魔物の特徴を表しつつあるわ。寄生から自力で歩きだすのは何時間後かしら?」

「では俺が魔法で焼き尽くしますかな?」


 あの程度の建物ならば俺の魔法で一瞬で消し炭に出来ますぞ。


「焼き尽くすと言う事は火ね? 出来れば複数の魔法を絶え間なく掛けてほしいわ」

「それに意味があるんですか?」

「ここまで変異性が高いと火の防御が高い場所が生き残って加速増殖をしてしまうの」

「ウィルスとかの抗体みたいなもんじゃないかな? 抗生物質に耐性を持ってるって奴」

「となると元康は鉄板として俺と樹が同時にか……」


 お義父さんは攻撃魔法が使えませんからな。

 こう言う時には若干不利ですぞ。

 さすがに異世界に来て色々と魔法に関して学んできたお義父さん達はある程度、コツを掴んできておりますぞ。


 ライバルの加護もあって習得は順調ですぞ。

 ただ、まだリベレイションを唱える所には及んでおりませんがな。

 さすがにエネルギーブーストの習得は出来たので、後少しと言う所ですぞ。

 若干、樹が遅れ気味ですがな。


「ドライファでどうにか出来るでしょうか?」

「待って、魔法なら専門家が居るじゃないか」


 お義父さんが閃いた様に言いましたぞ。


「急いでここに戻るから、誰かのポータルで行こう。メルロマルクに」

「なるほど! メルロマルクの女王に頼むんだな」

「複合属性を使うと言う意味でも杖の七星武器なら容易いですね」


 錬と樹は何度も頷きますぞ。

 こうして俺達は一度メルロマルクにポータルで飛んで女王に会いに行きましたぞ。

 ただ、女王は外出中で若干時間が掛りましたがな。


「申し訳ありません。私も世界の為にと行動していたもので……」


 女王が謝罪致しましたが、いきなり会いに行った俺達の方が失礼だったのですぞ。

 まさかフォーブレイでこんな状況になっているなど、想像出来る方が凄いですぞ。


「いやいや、女王様は何も悪くないですよ」

「そうだな。とりあえず、あの研究所に向けて尚文以外の勇者と魔法が得意な奴が一致団結して魔法をぶっ放す」

「これで上手く行けばいいんだけど……」

「やるしかない」

「ホント……元、鞭の勇者一派は碌な事をしないわよね」


 面倒ですなー……。最初の世界のお義父さん達はこの辺りの問題をどうやって解決していたのか聞いておけば良かったですぞ。

 どうにかして一発で仕留められないですかな?


「アル・ドライファ・マジックブーストⅩ!」


 おお、お義父さんの初めて聞く魔法援護ですな。

 ふわっと俺達に援護魔法が降りかかりますぞ。

 ステータスを見ると魔力の項目に大規模な付与が掛った様ですな。

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